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zoom RSS 旅役者 (1940) 日本

<<   作成日時 : 2015/12/07 02:36   >>

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[1184]馬脚をやっているしがない旅役者を描いた成瀬巳喜男の大傑作

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YouTubeおすすめ傑作選(^^♪

ユーモア作家・宇井無愁の小説「きつね馬」を、
成瀬巳喜男が昭和15年に映画化。名作。
数ある成瀬作品の中で私これが一番好きかもね(^^♪

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ポ〜、ポ〜。日差しの暑い盛り。
信州のある田舎町へガタンゴトンガダタンゴトンと、
煙を吐きながら汽車がやってきた。いいよねえ。
日本文明、この辺りで止めておきゃ滅ばなかったかも(笑)。

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汽車に運ばれて村へやってきたのはこの御仁。
六代目「菊五郎」親方(高勢実乗)とその一座だべ。

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お〜、懐かしき村芝居だあ(^^♪
昭和20年代、おらが村にも立ったなあ、幟が。
こんなに立派なものではなかったが。

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到着早々、すぐに「馬」の稽古に励む役者がいた。
誰かと思いきや、

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お〜、到着早々、駅のプラットホームでニンジンならぬ
芋を喰らっていたあの二人ではないか(笑)。
さてこの二人、脇役俳優として日本映画を支えて来た
我が愛しき二人なのだが、分かる人も少なくなったかもな。
左、柳谷寛。右、藤原釜足(この頃は鶏太)だよ〜ん(^^♪

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「おい、仙平、コーヒーでも飲みに行くか」
「はい、兄貴」「お、馬だ」 
と道中、俵六と仙平の「馬」コンビは
常に馬の研究と勉強に余念がない(^^♪

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「信州の別嬪さん、氷とラムネを二つくれ」
「あんた達、一座の人でしょ。道具の方でしょ」
「道具方じゃないよ。これでも役者だよ」
「どんな役? まあ、馬? あははは(^^♪」
「信州の別嬪さん、そりゃあ芸知らずってもんだ。
馬たって生易しいもんじゃねえんだ゛。
俺はこう見えたって後足5年、前足15年やってきたんだ。
こいつはまだ後足2年だけどよ」
「兄貴、氷が解けちゃうぜ」「うん。まあ観に来てくんな」

信州の別嬪さんを演じてるのは山根寿子♪
「蛇姫様」(衣笠貞之助)で長谷川一夫の相手役をやって
一躍人気スターになった女優さん。

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はい、初日。
わ〜い、馬だ馬だと舞台にかぶりつく子供たち(^^♪
しかし二階桟敷まであって立派な小屋だなあ。
ちゃんと花道もあるでよ。

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一座の当たり狂言は「塩原多助」。
といっても今時の人には分からんわな。
分からん時はサイトで調べないでちゃんと隣人に聞く(笑)。
つう訳で、俵六・仙平の馬ナシでは一座はやっていけんのだ〜。
めでたく村人にも大受け(^^♪

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ところがこの一座に物申す者が一人あった。
愛の床屋を経営し、町の顔役でもあるこの男(左)、床甚だ。
興行師の若狭屋と北進館に騙されて
一座の興業に出資する格好になってしまったのだ。

何を騙されたのか? 「菊五郎」なんて言うから
てっきり大歌舞伎の尾上菊五郎かと思ったら、
中村菊五郎なんていういわば騙り役者だったんだわさ(笑)。

あゝ、私は思い出す。
「美空ひかり」なんていう幟が立ったんで私はてっきり、
あの「美空ひばり」だと信じ込んで観てしまったのだ。
子供の頃に観た遠い遠い村芝居の話さね(^^♪

左がその床甚。誰だかわかるよね。
そう。若き日の我らが中村是好♪

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で、床甚は
「俺の顔が潰れた、出て来い若狭屋」と酔って小屋に殴り込み、
ついブシュッと馬の頭を踏み潰してしまう。
さあ大変(^^♪ 
これじゃ幕を開けられない、すぐにでも修理して貰わないと。
と菊五郎に言われ、床甚は馬の頭を町の提灯屋に持ち込み
修理することに。

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その頃、俵六は仙平を連れて桟敷に上がり、
芸者相手にすっかり上機嫌(^^♪
「俺なんざ後脚5年、前脚10年務めて来た。
言ってみりゃあ、俺あ日本一の馬の脚だ。
俺って者がいなきゃ塩原の芝居は出せねえんだ。
俺の馬脚の方が本物の馬よりずっと馬に似てるんだ。
いつだったか軽井沢の小屋でやった時、
何とかっていう偉い博士が観に来てこうおっしゃった。
あの前脚は馬かね、それとも人間かね」
「まあ、偉いのねえ、あんた」

なんてしきりに感心する姐さんは、
お〜、これも若き日の別嬪、我が清川虹子ではないか(^^♪

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思い出すなあ。
23、4歳の頃、福田善之さんに連れられて私、
渋谷へ清川さんの芝居を観に行き、
楽屋でご挨拶した事があったんだよな。
なんで私がこんな大スターに会えるんだろう。
東京って良いなあ〜とドキドキしたもんだべ。

ん? 福田さんとは何で知り合ったんだっけ?
福田さん家でオレ、毎日書棚の整理をしてあげたな。
あれ? 気づくと吉行和子さん交えて麻雀までしてたぞ。
何で何で? う〜ん、東京って怖い所だよなあ(爆)。

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が、宿へ帰ると親方に小屋へ呼ばれ馬を見せられた。
俵六はギョギョッ、な、何なんだこれは、
俺の馬が「きつね」に化けてやがる!と腰を抜かす(笑)。

親方が事情を話し、明日はこれでやっくれと言う。
俵六が日本一の馬のプライドに賭けて上がれない、
親方も名が廃るってもんでしょ、とダダを捏ねる。
と、傍にいた床甚が
「手前、馬の脚のくせに面に文句言うなんて贅沢だ」
と返し、喧嘩がおっ始まった(爆)。

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翌日、結局、「親方急病のため本日休演」の立て看板(^^♪

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俵六にごねられた親方は
とりあえず舞台には曲馬団の本物の馬を使う事にし、
俵六と仙平に伝えた。
「俵六、俺あお前のお陰でとんだ恥をかいた。
借りが出来て今後は勧進元の言いなりだ。
勧進元がお前たちは宿にも泊められねえってんで、
今夜から楽屋泊まりにしてくれ」と。

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こら、俵六に仙平、贅沢言うんじゃねえ。
俺は毎日稽古場泊まりだったぞ、とコレは私(^^♪

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そして翌日、二人は
小屋には銭湯がないのでこうやって川で体を洗い、
河原に洗濯物を干す。
風情豊かでいいねえ、夏の信州の温泉場は(^^♪

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その夜、名作「塩原多助」に
元曲馬団にいた本物の馬が馬役「あお」として登場。
何と本番中に小便垂れたりして、これがまた観客にバカ受け(^^♪

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小屋の外にいても観客の笑い声と拍手が聞こえるので、
俵六と仙平はトボトボへ川原へ行き夜空を眺めた。
「空って随分広えもんだなあ」
「そら広えさ。昼間見たって先が見えねえじゃないか」
「そりあそうだな」
「なあ、仙平、
こうやって空眺めてると何だか気が大きくなるようだぜ。
小っちゃな事で腹立ててるようで、こう、
大きな気持ちで働きてえような気がするじゃねえか。
明日はひとつ、馬の面を直すとするか」(^^♪

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が、せっかくの改心も翌朝の親方の一言でオジャン。
「あのな俵六、あの馬大変な評判なんでな、
これから先ずっとあいつを使ってやる事にしたんだ。
そこでひとつ、俵六は馬について明るいから、
今後あの馬の面倒をみてやっちゃくれねえか」
「……」
「親方、あっしは?」
「仙平には別の役をな」
「今度は人間の役ですか」
「仙平」

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「てやんでえ。仙平、ドブロク買って来い」
と二人して昼間っからやけ酒飲んでいる所へ、
先だっての芸者・清川姐さんたちが現れた。

「あんた達、夕べ観に来たのに出てなかったじゃない。
まさかあの馬のお腹に入ってたとか(^^♪」
「俺あ出るの止しちゃったんだ。
この辺のやつらには俺たちの芸は分からねえよ」
「ほんとの馬と取り換えっこになっちゃったんじゃないの」
「よし、ここで今やってやらあ。
あの馬とどっちが勝ってるか面洗ってよく見ときやがれ」

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てんで馬になって颯爽と登場するのだが、
「あら、嫌だあ〜、ふふ、ははははは」と笑い出す姐さんたち。

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「お〜い、村の衆、来てみろ。
きつね馬だ、きつね馬だぞ〜。うわははははは!」
とコレは私。ごめん(^^♪
とは言え、脚と尻尾はさすがだがや。

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と誉めたら調子づいたかヤケクソになったか、
きつね馬は今や超人気の本馬に近づいて暴れ毒づき、
しまいには馬小屋まで壊してしまったからさあ大変。
本馬が逃げ出してしまったがや(^^♪

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と、俵六が本馬を追って走り出した。
「兄貴!」「俵六さん!」
通りへ出ると馬の面を踏み潰した床甚がいたんで、
ヒヒ〜ンと襲い掛かって床甚を側溝に蹴落とし、

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おい、こら待ちやがれ、と
本場の後を追って信州の山の中へと消えたのであった。
はい、おしまい(^^♪

成瀬巳喜男は1951年に撮った林芙美子原作の
「めし」が高評価を受けると、
林や川端康成、室生犀星の純文学を初めとする
文芸作品を中心に女性の姿を描き始めた訳だが、
戦前はこういう作品も撮っていたのかと
ちょっと驚かされるよねえ。

冒頭で言ったように私個人としてはこういう作品の方が好き。
先の文芸ものはややもすると生真面目さが目立つが、
こっちはしがない人間の生き様を描いてて、笑えるし、
人生こんなもんだよと思わせてくれるもんね(^^♪

脇役に過ぎなかった藤原鶏太(釜足)と
柳谷寛を主役に起用したのもほんと偉いと思うよ。

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しかし藤原釜足、柳谷寛、中村是好、高勢実乗、清川虹子と
役者陣の演技がなんとも良いよなあ。ほんと上手い。
現在はもうこういう演技できる俳優、ゼロ。

何と言っても「からだ」が違うよね。
汗を垂らしながら労働をしたことのあるからだ。
足腰がしっかりしてて、下半身で芝居してるんだよね。

それにちゃんと笑わせる事ができる。喜劇が出来る。
いまも笑わせる事のできる人はいるけど、
みんなあざといんだよな。下品(笑)。
この人たちはホント上品(^^♪

私は生の舞台を観た事がない訳だけど、
どうも浅草オペラ、浅草軽演劇の影響が大きかったんじゃないかな
と思ってる。

こういう演技が出来た人、私は一人だけ知ってる。
誰あろう、私が師と仰いだ唐(十郎)さんなんだよね。
唐さんは戯曲はむろん天才的なんだけど、
俳優としても天才だったと思う。

笑わせ方が抜群にうまかったのよ。
それも下品じゃなくて何やっても上品なの。品があった。
相手俳優との、あるいは観客との「距離」の取り方が上手くて、
ちょうどこの俳優さんたちみたいに近過ぎもせず、
遠過ぎもせずって言えばいいのかな。

その距離の取り方が一方で人間の哀しさを自ずと
醸し出すんだよね。

実際、唐さん、シミキン(清水金一)が好きだった
と言ってたもんなあ(^^♪

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■70分 東宝 ドラマ
製作 氷室徹平
原作 宇井無愁 「きつね馬」より
監督 成瀬巳喜男
脚本 成瀬巳喜男
音楽 早坂文雄
撮影 木塚誠一
照明 佐藤快哉
美術 安倍輝明
録音 長谷部慶次
出演
藤原鶏太
柳谷寛
高勢実乗
山根寿子
清川虹子
清川荘司
御橋公
深見泰三
中村是好
伊勢杉子
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