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zoom RSS ヴェラの祈り_1 (2007) ロシア

<<   作成日時 : 2015/12/31 02:59   >>

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[1188]大地と接する女性の心身を描いた アンドレイ・ズビャギンツェフ の傑作

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「父、帰る」を撮ったロシアの監督、
アンドレイ・ズビャギンツェフの長編第2作。
原作はアメリカ人作家、ウィリアム・サロイヤンの小説。
読んだ事ないが、話の大筋を借りただけかも。

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丘陵の向こうから車が走って来る。
丘には一本の大樹。お、俺の芝居と同じだ、と思うよな(^^♪

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烈しくアップダウンする道。車が消えたり現れたり。
これはこの映画の構造を表しているとも言える。
語れる事、語れない事。見えるもの、見えないもの。
物語はそれを軸に展開されるのだ。

人間も世界も全てを語る事などできない。
語った瞬間に、言葉にした瞬間に嘘になる事は多々ある。
アンドレイ・ズビャギンツェフはその事に対して極めて敏感なのだ。
この作品の素晴らしさはその事と、
映像の見事さに尽きると言っても良いかもしれない。

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車は突然、街に入る。
これも先に言っておけば丘陵(大地)は女性像を、
街(人工物)は男性像を表しているとも言える。

またこの物語では乗物(列車、車)と電話が
重要な交通手段として用いられているのだが、
それは女と男の「交通」を主題化している事と無縁ではない。

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車を運転しているのは、
主人公アレックスの兄・マルコである。腕を負傷している。
踏切で止まった瞬間、雨がどしゃ降り始める。
この雨はたぶん彼が関わった人間の涙である、
と同時に生命の源を表象している。

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弟アレックスのアパートに兄マルコが現れる。
アレックスはマルコの腕の傷を見て医者を呼ぼうとするが、
マルコは呼ぶな、銃弾を摘出してくれと言う。
アレックスはマルコの腕の銃弾を摘出する。

マルコに一体何があったかは一切語られない。
アレックスも聞こうとしないので、彼にとって
兄マルコの身に起きた事はすでに了解済みなのだろう。

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アレックスは妻のヴェラ、息子キール、娘エヴァを連れて
別荘代わりに使っている亡き父の田舎の家へ行く。
家族休暇と気を使っているのかもしれないが、
この夫婦にはとことん会話や接触が欠けている気がする。
危ないなあ、この夫婦、と私は何げに思う(^^♪

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別荘の向こうで村の男が羊を追っている。
羊はたぶん99匹いる筈だと数え始めてすぐに中止した。
「父、帰る」を観ているせいかどうもこの監督には用心深くなる(笑)。

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一段落したあと家族四人は丘の上の森にクルミを獲りに行く。
傍を流れている小川(溝)の水が涸れている。
これも何か危ない(^^♪

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夕食後、ヴェラが突然アレックスに告げる、
「赤ちゃんができた。あなたの子じゃない」と。

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アレックスは混乱する。ホラ見ろ、と私は彼に忠告する(^^♪
彼は山を下り、駅へ向かいへ、兄マルコに電話をする。
話がしたい、車を借りてそっちへ行く、と。
知り合った郵便配達夫に車を借りて向かおうとするが、
何故か思い留まり途中で家へ引き返す。

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すでに朝である。
ヴェラがアレックスに「話を聞いて」と声をかけると、
アレックスは俺に何を期待してるんだ、奴(妊娠の相手)が好きか
と言い、ヴェラをぶん殴る。

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父親の友人のゲオルギ−や、
アレックスの旧友のヴィクトルらが食事にやってくる。
そこへ兄マルクからいま駅にいると電話が入る。
アレックスはゲオルギ−に車を借りて会いに行く、
仕事仲間のロベルトが来たので会ってくると言い。
息子のキールが一緒についていく。

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車中、息子のキールがロベルトについて語る。
ママの代わりにニーナおばさんとサーカスに行った時、
家に帰ると、ロベルトおじさんが家に来ていた。ママと一緒にいた、と。
アレックスはその話を聞いて、妊娠の相手はロベルトだと確信する。

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アレックスは兄マルクにヴェラの妊娠の事を話し、
どうすれば良い、殺してしまいそうだと相談する。
マルクは「自分で判断しろ。殺したきゃ殺せ。許したいなら許せ」と言う。
アレックスは苦慮する、
俺は兄貴のように子供たちを手放す事はできない、と。

ここに来て漸く冒頭のマルクの腕の負傷の理由が何気に分かる。
彼の妻もおそらく不倫をしたのだ。マルクはそれを知り離縁した。
そしてその後相手の男をピストルで射殺したか、
あるいは決闘を申し込んで殺し、自分は腕に負傷した?
ロシアだもんね(^^♪

もしかしたらこの兄弟の父親も同じ道を踏んだのかも。
この兄弟の間には何故か一度も母親の話が出て来ないし。

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その夜アレックスがヴェラに話し合おうと言うと、
彼女は「話をするのが怖い。あなたやマルクがどんな人か知ってる。
キールの将来も」と言う。
やっぱりそういう事なのか、とオラは思う(^^♪
ヴェラはアレックスの家系に流れる男の血に近づけないのだ、
その血が怖いのだ。

「お腹の子は」とヴェラが続けようとすると、
「知りたくもない」とアレックスは遮り、一体どうする気だと問い詰める。
ヴェラは言う、まるで他人事ね、いつもそうだった、これからも、と。

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お前なアレックス、と私も言う。
結構二枚目な良い顔をしてるけど、人の話は最後まで聞け。
人の心に疎すぎるぞ、察知能力に欠け過ぎてるぞ、と(^^♪

ヴェラは分かり合えないのかと絶望するが、
アレックスには堪えない。分かり合えてるつもりでいる訳だ。
いるよねえ、視点・思考が硬直してるこういう人間(^^♪

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ヴェラとアレックスの宿命的とも言える交通不能が浮かび上がる。

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吉本隆明はその人間の資質、核はすでに
胎児の段階において決定されているかも知れないと
良く語っていたが、結構長く生きるとそうかも知れんよなあ
と私も絶望的に思う(^^♪

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家族4人はアレックスの父親の墓参りへ行く。
途中、飼われている羊の群れに出会う。

この羊たちに交通不能の事態は起こるのだろうか
と、またつい余計な事を考えさせられてしまう(^^♪
本能が壊れていないから起こらないか。
でも迷える子羊もいる訳だしな。
しかしイチイチ意味ありげだけど、映像がとにかく重厚でいい。
こういう写真を観ているとタルコフスキーを初め何だか
ひどくロシアを感じさせるよねえ。

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父親の墓には名前が刻まれていなかった。
娘のエヴァが「どうして?」と聞くと、
アレックスは「さあ、本人の望みじゃないか」と答えた。
99匹の無名の羊でいたかった。でもいれなかったって事、監督?(^^♪

旧友ヴィクトルが子供たち二人を自分の家で遊ばせろと
車で迎えに来る。
アレックスは息子キールと娘エヴァを送りに外へ出る。

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その間にヴェラはロベルトの声を聞きたくて彼に電話する。
ロベルトは「元気か」とヴェラに尋ね、
自分と子供たちを大事にしろと伝える。
ヴェラは礼を言い、「さよなら」とさりげなく別れを告げる。

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アレックスはヴェラに言う、
子供を堕ろそう、君を責める気はない、やり直そうと。
ヴェラは「好きにして。これ以上は待てない」と答える。
アレックスは兄のマルクに電話して医者を手配してもらう。

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マルクが医者を二人連れてやってくる。
彼らはヴェラの堕胎手術を終えると、
数日は苦しむだろうが大丈夫だと痛み止めの薬を置いて帰る。

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息子キールと娘エヴァはヴィクトルの子供たちと遊びを楽しみ、
その夜は同家に泊まる。
が、子供たちをまた何でわざわざダヴィンチの
「受胎告知」の絵の上で遊ばせる必要がある訳、監督?
と私はイチイチ疑うよなあ(^^♪

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深夜、ヴェラの様子が急変する。昏睡状態に陥ったのだ。
マルクが慌てて知り合いの医師ゲルマンに来て貰うのだが、
医師がやってきた時、彼女は何とすでに死亡している。
アレックスは驚き、後悔し、のたうち回る。

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遺体はすぐに葬儀場へ運ばれる。
堕胎のシーンから彼女の姿は画面から一切消えて
漸くここでまた姿を現すのだが、それもご覧のようにホンのちょこっと。
死とは不在だが、見事な不在。この監督やってくれるよねえ(^^♪

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しかも遺体を預けて帰宅したと思ったら今度は兄マルクが
突然倒れて、先の医師ゲルマンがまたやって来る。
え、病気? うそ、ヴェラの祟りだろうとつい思ってしまうよな。

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更に医師ゲルマンはマルクに重大な事実を告げる。
ヴェラの死は堕胎の手術のせいではなく、
自殺かも知れない、ベッドに阿片の瓶が落ちていたと言うのだ。
そしてヴェラが書き残したメモを渡す。

それを読んだマルクにゲルマンが弟に言うのかと尋ねると、
マルクは「いや」と手紙を仕舞う。
もちろん観てる私らには何が書いてあったのか分からない。
この監督、とことんやってくれる(笑)。

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マルクは医師ゲルマンの忠告にも関わらず、
翌日、アレックスとともにヴェラの埋葬に出かける。
この墓地は先にアレックスらが出かけた父親の眠っている墓地だ。

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そしてアレックスの運転する車で帰宅した時はすでに
後部座席に横たわり死んでいる。
マルクはヴェラの死に責任を感じていたのか。
あるいはヴェラが死んだ時、すでに自分の宿命を受け入れていた?

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アレックスはマルクが家の引き出しに残していたピストルを手にし、
丘の道を街へと走る。
ここは冒頭に負傷したマルクが走っていたアップダウンの激しい道。
という事はマルクも、実家で何かをしでかし、
弟アレックスの家(アパート)に駆け込んだという事だよね(^^♪

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丘を抜け街へ入る。ここも兄マルクが冒頭に走っていた道。
アレックスが向かう先は想像通り、
仕事仲間でヴェラの不倫相手、ロベルトの家(アパート)である。

こうなるともう分かるよね。
すでに言ったように、弟アレックスは兄マルクと同じ事を
繰り返そうとしてる訳だよね。
マルクが父親の愚行を繰り返したように。

そうだ。人間は決して賢くならない!
飽きもせず永遠に愚行を繰り返す!
つうのがこの物語の一方の主題と言っても良いのかもな(^^♪

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一方、こっちはアレックスの実家。
医師ゲルマンが窓を閉め、玄関の扉に鍵を掛けて辞去する。
マルクの遺体をベッドに横たえたあと帰るのかな?

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扉に鍵が掛けられた後、突然、奇跡が起こる!
いや、ホラー映画に変貌すると言うのかな?(^^♪
この画像では分かりにくいが、扉の桟の中央部が
何かムニュムニュっと動き始めるのだ!


※「ヴェラの祈り」_1
※「ヴェラの祈り」_2


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■157分 ロシア ドラマ
監督: アンドレイ・ズビャギンツェフ
製作: ドミトリイ・レスネフスキー
原作: ウィリアム・サロイヤン
脚本: アルチョム・メルクミヤン
アンドレイ・ズビャギンツェフ オレグ・ネギン
撮影: ミハイル・クリチマン
編集: アンナ・マス
音楽: アンドレイ・デルガチョフ
出演
アレックス/コンスタンチン・ラヴロネンコ
ヴェラ(アレックスの妻)/マリア・ボネヴィー
マルク(アレックスの兄)/アレクサンドル・バルエフ
キール(アレックスとヴェラの長男)/マキシム・シバエフ
エヴァ(アレックスとヴェラの長女)/エカテリーナ・クルキナ
ロベルト(アレックスの旧友)/ドミトリー・ウリヤノフ
ヴィクトル(アレックスの旧友)/イゴーリ・セルゲイエフ
ゲオルギ−(アレックスの父の友人)/アナトリー・ゴルグリ

長編デビュー作「父、帰る」で高い評価を受けたロシアの俊英アンドレイ・ズビャギンツェフ監督による長編第2作。ウィリアム・サロイヤンの小説を原作に、夫婦のすれ違いが辿る家族の悲劇を鮮烈な映像で描き出す。主演は「父、帰る」のコンスタンチン・ラヴロネンコと「恋に落ちる確率」のマリア・ボネヴィー。コンスタンチン・ラヴロネンコは本作の演技でみごと2007年カンヌ国際映画祭男優賞を受賞。
美しい妻ヴェラと2人の子どもに恵まれたアレックス。家計は苦しく、なかなか家族サービスのできない彼は、せめてもの罪滅ぼしにと、家族を連れて亡き父が遺した田舎の家を訪れる。人里離れたのどかな田園地帯で、家族水入らずの時間を過ごし、互いの愛情を再確認しようと考えていた。しかし、アレックスとヴェラの間には終始すきま風が吹いていた。やがてヴェラはアレックスに対し、別の男性の子どもを妊娠したと衝撃の告白をするのだったが…。

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