こんな日は映画を観よう

アクセスカウンタ

zoom RSS ヴェラの祈り_2 (2007) ロシア

<<   作成日時 : 2015/12/31 12:33   >>

トラックバック 0 / コメント 0

[1188]大地と接する女性の心身を描いた アンドレイ・ズビャギンツェフ の傑作

画像


画像

カメラは一転、森の中の小川(溝)を捉える。
ここはアレックス家族4人が入った丘の上の森で、
息子キールが「水が枯れている」と言った処なのだが、
そこに突如、水が湧き始めたのだ。
一瞬、処女の泉だ!と私は危うく叫びそうになる。
そう。あのベルイマンの「処女の泉」を思い出したのだ(^^♪

画像

その水はじきに側溝を辿って下へと流れて行く。

画像

そしてそのままアレックスの実家の床下へと流れ込み、

画像

溜まった水がアレックスの実家を映し出す。
扉の桟に映ったムニュムニュはこの水(の前触れ)だったんだよね。

アレックスは息子キールが「水が枯れている」と言った時、
「昔は水が家の脇を通って沢に注いでいた」と教えるんだけど、
「昔は」というのはたぶん
「母親が家にいた頃は」という意味なんだろうな。
その母親が死んだか、あるいは父親に離縁されていなくなった。
と、湧水も涸れたって事。

画像

突如、雨が降り始め、雷鳴が轟く。
沢の向こうを羊の群れが通る。
またも羊かといった感じなんだけど、
この羊たちはこの大地と水が産み育てたんだという喩?
実際、この後ヴェラがそんな事を言うんだよね。

画像

ロベルトの家の前へ着いたアレックスは
この激しい雷雨と雨の前で一瞬逡巡する。
と、まだ何も知らないロベルトがアレックスに気づき
「中へ入れよ」と声を掛け、そのまま部屋へ戻る。

画像

アレックスは
ダッシュボードに入れて置いたピストルを取り出す。
と、この時、隅にあるヴェラのメモ書きに気づき手に取る。
兄マルクが死ぬ前にここへ仕舞ったのだが、
アレックスの行動を予知してここに入れて置いたのかも(^^♪

画像

アレックスはロベルトの前に座る。
手元にはピストルがあるが、撃つ気配はすでにない。
ヴェラのメモ書きを読み、全てを知ったからだ。
ロベルトも言葉を失い、沈痛な沈黙が流れる。
アレックスにヴェラの事を聞かされたのだろう。

やがてロベルトは、アレックスには話さないで
とヴェラに止められていた話を問わず語りに始める。

画像

ある日、彼は電話でヴェラが自殺を図った事を知る。
すぐにアレックスの家へ飛んで行き、ヴェラの命を救う。

画像

翌日、郵便配達夫が一通の手紙をヴェラに配達してくる。
病院で検査を受けたのか、妊娠しているという通知だった。
ヴェラは子供たちをサーカスへ連れて行く予定だったが、
具合がよくないと子供たちをニーナに預け、通知表のウラに何か
書きつける。

そこへ「気分はどうか」とロベルトから電話が入る。
ヴェラが優れないと告げるとロベルトが心配して訪ねてくる。

画像

ヴェラはロベルトに棚にある家族写真を見せる。
ちなみにこれはアレックスが子供の頃の写真で、
父親に兄マルクと弟アレックス。母親の姿はない。

画像

これはマルクの家族の写真。
妻が3人目の子供を抱きかかえているが、
すでに何処となく家族が壊れている雰囲気がある。
ほかに結婚する前のヴェラの写真、ヴェラの母親の写真等。

ロベルトが昨日の自殺未遂の理由を尋ねると
ヴェラは言う。

画像

妊娠したのだが、それをアレックスに伝えるのが怖かった。
彼に説明できなくて、と。

ロベルトが彼の子ではないのかと聞くと、「彼の子よ。でも違うの」と答える。
ロベルトと私が「?」となると彼女は続ける。

彼の子である事は事実だが、でも私たちの子は私たちの子だけじゃない。
私たち自身だって両親だけの子じゃない。だけど彼にはそれが分からない。
アレックスはただ私たちを自分のためにだけ愛している。物扱い。
私は怖いほど孤独。

昔は会話があったが、今は話し合ってるようでいても話が通じてない。
彼に説明ができない。どうにかしなきゃ。このままじゃ破滅。
産んでも不幸になる。でも状況は返られる。きっとできる。方法はあるはず。
彼が私の気持ちを分かってくれたら、と。

さすがロシア、妻まで哲学をしてる。でも言ってる事が
分かるようでもう一つ私にはよく分からないなあと頭を抱える(泣)。
もっとも彼女だって私にも伝わるように説明できたら
こんなに苦しまなくても済むかもしれない。と、仕方なく私は
自分で自分を慰める事にした(^^♪

画像

そこへ子供たちがニーナ叔母さんとサーカスから帰宅する。
息子キールはロベルトと母親ヴェラがベッドにいるのを見て
「なんでこの人が僕の家にいるの?」と驚く。

画像

ヴェラが「キール、失礼よ」と嗜めると、キールは走って家を出た。
キールが父親にロベルトの話をしたのはこの時の事なのだが、
ヴェラが言った通り、まさに父親にしてこの息子あり。
事象だけを見て憶測し、その憶測を真実と疑わない訳だよね。
息子が父親を繰り返している(^^♪

画像

ロベルトの話を聞き終えるとアレックスは旧友ヴィクトルの家へ
子供たちを引き取りに向かう。
途中、あの一本の大樹の傍に座り込み、ヴェラの事を思う。

画像

丘陵。沃々たる大事。その上に一本の大樹。
この大地は女性の性を、
そして一本の大樹は生まれてくる子を表しているんだろうね。

ヴェラにして見れば自分の体が産む性である事は分かっている訳だが、
その体=性はヴェラの意志を遥かに超えている。
そのため生まれてくる子は、アレックスの子である事は事実だが、
「でも私たちの子は私たちの子だけじゃない。私たち自身だって
両親だけの子じゃない」と考えざるを得ない。
男のアレックスにはその事が分からない。
結果、わが子を、あるいは家族を私物化してしまう、「物扱い」に
してしまうって事をヴェラは言いたかったのかも知れない。

言ってみれば映画は近代家族に対する警告(^^♪

画像

アレックスは再び車を旧友ヴィクトルの家へ向かわせる。

画像

カメラは右にパンし、丘=大地で働いている女性たちの姿を捉える。
女の一人が幼い子を抱きかかえている(^^♪

この農婦たちは実は歌を唄っている。
ロシアに伝わる民謡なのかなという感じなのだが、
いかんせん歌詞が字幕化されないんだよね。
これは明らかに翻訳者の手抜きでは?
その歌詞が分かるとこの物語も観客にもっと分かりやすくなる
ような気がするよな(^^♪

「父、帰る」に較べると物語が少し図式的で、
映像もその図式を映像化している感を免れないが、
しかしやる事なす事、さすがロシア、大人だよなあと感心ぜざるを
得ないよなあ。

ロシア人である知人の演出家・アニシモフさんの
「日本人の舞台は子供」という言葉がまた耳に突き刺さってきたよ(泣)。


画像


■157分 ロシア ドラマ
監督: アンドレイ・ズビャギンツェフ
製作: ドミトリイ・レスネフスキー
原作: ウィリアム・サロイヤン
脚本: アルチョム・メルクミヤン
アンドレイ・ズビャギンツェフ オレグ・ネギン
撮影: ミハイル・クリチマン
編集: アンナ・マス
音楽: アンドレイ・デルガチョフ
出演
アレックス/コンスタンチン・ラヴロネンコ
ヴェラ(アレックスの妻)/マリア・ボネヴィー
マルク(アレックスの兄)/アレクサンドル・バルエフ
キール(アレックスとヴェラの長男)/マキシム・シバエフ
エヴァ(アレックスとヴェラの長女)/エカテリーナ・クルキナ
ロベルト(アレックスの旧友)/ドミトリー・ウリヤノフ
ヴィクトル(アレックスの旧友)/イゴーリ・セルゲイエフ
ゲオルギ−(アレックスの父の友人)/アナトリー・ゴルグリ

長編デビュー作「父、帰る」で高い評価を受けたロシアの俊英アンドレイ・ズビャギンツェフ監督による長編第2作。ウィリアム・サロイヤンの小説を原作に、夫婦のすれ違いが辿る家族の悲劇を鮮烈な映像で描き出す。主演は「父、帰る」のコンスタンチン・ラヴロネンコと「恋に落ちる確率」のマリア・ボネヴィー。コンスタンチン・ラヴロネンコは本作の演技でみごと2007年カンヌ国際映画祭男優賞を受賞。
美しい妻ヴェラと2人の子どもに恵まれたアレックス。家計は苦しく、なかなか家族サービスのできない彼は、せめてもの罪滅ぼしにと、家族を連れて亡き父が遺した田舎の家を訪れる。人里離れたのどかな田園地帯で、家族水入らずの時間を過ごし、互いの愛情を再確認しようと考えていた。しかし、アレックスとヴェラの間には終始すきま風が吹いていた。やがてヴェラはアレックスに対し、別の男性の子どもを妊娠したと衝撃の告白をするのだったが…。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文
ヴェラの祈り_2 (2007) ロシア こんな日は映画を観よう/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる