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zoom RSS 恋人たちは濡れた(1973)

<<   作成日時 : 2016/01/31 22:23   >>

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[1197] 時代の大転換期、1970年代初頭を描き出した神代辰巳の大傑作

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舞台は70年代初頭、房総のある漁港町。
最近、何処からかフラリとやって来た若者が
寂れたポルノ映画館「公楽館」で住み込み働きを始める。
名前が不明なので、以下その若者をAと呼ぶ事にする(^^♪

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上り坂。
駅に届けられたフイルムをそのA(大江徹)が
自転車の後ろに積んで「公楽館」へ運んでいる。
途中、何度も背後を振り返る、まるで誰かに
追われているかのように。しかし
その人影らしきものがスクリーンに姿を現わす事はない。
巡礼者たちの歌声(お経)と鈴の音が聞こえる。
この辺り、巡礼地ではない筈なのだが(^^♪

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下り坂。男にぶつかりそうになり「あ〜あ〜」と
自転車ごと倒れてしまう。
積んでいたフイルムがコロコロと海の方へと転げ落ちる。
寸での所でAが拾うが、フイルムが転げる様が
妙に当時の映画斜陽と重なって見え、私は哀しい(^^♪

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Aは「公楽館」の映写室に飛び込み、
フイルムの汚れを落とす。
映画館主(高橋明)がAの顔を覗き込み、
「お前は中川のカツ(克)じゃねえのか」と頻りに訝る。
Aは「違うよ」と答える。

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Aが自転車で走っていると
トラックの運転手が声を掛けてくる。「よお! 
お前、中川の克じゃねえか。俺だよ。ホラ、俺、三浦」と。
Aは返す。「俺はカツって野郎じゃねえ。お前も知らねえ」と。

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公楽館のチケット売り場に座り込んでいる美女が、
帰って来たAに執拗に尋ねる。
「ちょっと。あんた、ここに来る前に何かよくない事をして
来たんじゃないでしょうね」
「警察か何かに追われてるんじゃないでしょうね」
「あんた、過激派か何かじゃないわね」
Aは「違いますよ」と笑う。
映画館主の妻よしえをやっているのは、
神代辰巳と共に一時代を築いた我等が絵沢萠子である。
おっとりとしたその肉感的な声にゾクッとする(^^♪

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Aは館主妻に返す。
「旦那、帰りが遅いですね。出て行くと大体遅い」
館主妻が言う。
「あんたには関係ないわよ。とやかく言わないでよ」
「俺だってゴチャゴチャ言われたら良い気持ちしないよ」
「生意気言うね」
館主の旦那は若い女と遊びまくっているのである。
館主妻は話相手の若い男が出来てちょっと嬉しい(^^♪

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「全国の農協の皆さま、いらっしゃいませ。
わたくし、三波春夫で御座います。あなたあっての三波です!」
観客のいなくなった館内でAは何故か三波春夫となり、
「世界の国からこんにちは」を歌う。

♬こんにちは こんにちは 西の国から
 こんにちは こんにちは 東の国から
 こんにちは こんにちは 世界のひとが
 こんにちは こんにちは さくらの国で
 一九七〇年の こんにちは
 こんにちは こんにちは 握手をしよう

館主妻よしえがAに聞く、「あんた、役者なの?」(^^♪

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雨の日、Aは三浦(清水国雄)に捕まる。
「お前、五年前に東京に行っちまった克だろう。
親友だった三浦だよ。困った事があったら相談に乗るよ」
が、Aは克じゃないと言い張り、
結局、怒った三浦にぶん殴られてしまう。

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館主妻は、ズブ濡れになって帰って来たAを
着替えさせようと裸にする。そのお尻を盗み見て館主妻は
Aに「まだ子供ね」と言う(^^♪

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Aのお尻をオトナにして上げたいと思ったのかどうか、
館主妻はその夜、Aを海辺の散歩に、
更に廃船の奥へ奥へと誘い、「私が好きならキスして」と
そのまま関係をする(^^♪

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翌日、薄ケ原で関係をしている若い男と女を目撃する。
「こんなに寒いのに大変だ」と呟きながら二人に近づき、
視姦する。事を終えた男・光夫(堀弘一)が
立ち上がれないほどAをぶん殴る。

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殴っちゃったし、見られちゃったし、しょうがねえや
という感じで以後三人の間に何となく裸の友情みたいな
ものが生まれる(笑)。
女は光男の恋人、洋子(中川梨絵)である。

ちなみにダウン・タウンの
「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」(1975)は
この「恋人たちは濡れた」の洋子から生まれ、
この映画の洋子は我らが緑魔子が演じた
「非行少女ヨーコ」(1966)から生まれたものである。

というのは今のところ私の勝手な妄想だが、
案外的を得ているかもと将来誰かに言われる日が来ない
とは限らない、かも知れないではないか!(爆)

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「お前、女いないのかよ」と光男が
アレの好きな女・幸子(薊千露)を紹介する。

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幸子が松林に誘うと
Aは和姦を拒否し、強姦に転じようとする。
が、モノ扱いは嫌とばかりに幸子が暴れ未遂に終わる(^^♪

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「あんた、どういう人?」と洋子が聞くと、
ここに来る前は東金のパチンコ屋にいたとAは言う。
「どの位?」「半年位かな」
「その前は何処にいたの」「船橋だよ、パチンコ屋」
「船橋の前は?」「水戸だよ」
「へえ。まるで巡礼みたいじゃない」
で、ここでも巡礼者たちの歌が聞こえてくる事になる(^^♪

「この町は俺の性に合わねえ」
「出て行くの? もう少しいなさいよ。みっともないわよ」
「みっともないの、俺は嫌いじゃねえよ」
うん、良い科白である(^^♪

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夜、Aはまた三波春夫になり、
「お客様は神様です。でもさようなら」と
お別れに「梵坊の子守唄」を歌う。

♬ひとつ 昼間する炭鉱のぼんぼよ 
 ふたつ 船でする船頭のぼんぼよ 
 みっつ 道でするほいど(乞食)のぼんぼよ 
 よっつ 呼んでする芸者のぼんぼよ 
 いつつ いつもするみょうと(夫婦)のぼんぼよ 
 むっつ 無理にするこもり(強姦)のぼんぼよ 
 ななつ 泣いてする別れのぼんぼよ 
 やっつ 山でするきこり(樵)のぼんぼよ 
 ここのつ 今度する義理あるぼんぼよ

この後「青春の門・自立編」(1975)の中でも
杉田かおるに歌われるこの歌はもともと長崎県松浦の
子守唄で、炭鉱夫たちが仲間の弔いに歌ったものである。
性(誕生)と葬送は一つ事ってことなんだろうね(^^♪

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町を出る前に飯でと思って酒場に入ると、
映画館主が浮気相手の若い女といた。
彼がAに言う。「お前、俺の女房と出来てるそうだな。
うまくやってくれよ。俺の方からもお願いする。
あいつを慰めてくれ。俺のためにもなるしな。な!」

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Aは公楽館に引き返し、
「愛してる」と館主妻よしえを抱く(^^♪
Aは彼女の境遇に自分を見ているのかも知れない。

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しばらくいる事にしたのか、翌日Aは通りに出て、
にっかつロマンポルノ「淫獣」上映の宣伝をする(^^♪
「故郷は何処よと尋ねて聞けば、憐れなく…」

と、そこへ光男と洋子が現れ、
昨日の彼女(幸子)が会いたがってるぞと
Aを浜に連れて行く。

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幸子はAを一人の中年女性と引き合わせる、
「あなたのお母さん連れて来てあげたわよ」と。
Aは言う。「笑ってすまされない冗談だぜ。
俺はこんな人は知らないね」と。
「お母さん、どうなんですか。本当の事を言いなさいよ」
と幸子が言うのだが、女はそうだとも違うとも言わず、
黙したままその場を去る。

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Aは「昨日の続きだ」と怒って幸子を裸にし、強姦する。
見よ、神聖なるスクリーンの上の真っ黒を。
何たる暴力ぞよ(^^♪

「昨日の続きだってさ。あいつにも続きがあったのかね」
と洋子は笑う。これも良い科白だ(^^♪
光男と洋子はお返しと言う訳ではないが、
Aのセックスする姿を傍で覗く。

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強姦された幸子は立ち上がるとAに言葉を投げつける、
「こんな事で何かやった気になったの」と。
この作品の中で最高に輝いている科白である。
Aは痛さのあまり画面上に出れない'爆(。
Aだけではない、光男や幸子も堪えている。

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Aは「淫獣」の幟立つ自転車に乗り町へ帰ろうとする。
洋子はその自転車の後ろに飛び乗る。
「降りろよ」「いいじゃない」
あんたは淫獣、私も淫獣。
洋子はとAにそう伝えたかったのである(^^♪

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Aは三波春夫になる。

♬こんにちは こんにちは 西の国から
 こんにちは こんにちは 東の国から
 こんにちは こんにちは 世界のひとが
 こんにちは こんにちは さくらの国で
 一九七〇年の こんにちは
 こんにちは こんにちは 握手をしよう

承知のようにこの曲は日本万国博覧会(大阪万博)の
テーマソングで、三波春夫の他に坂本九、吉永小百合ら
たくさんの者が歌った。が、圧倒的に歌われたのは
三波春夫の「世界の国からこんにちは」だった。何故か?

言うまでもなく三波春夫が徴兵されて満州で戦い、
4年間ほどのシベリア抑留生活と戦後を体験していた
歌い手だったからである。
それを知る者も知らない者も皆、
三波春夫の空に抜けるような、あの明るい歌声に
「戦後」を感じ取っていたからである。

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そしてこの歌にうたわれた「1970年」=大阪万博開催と共に
吹き荒れた学生運動は、いや世界のスチューデント・パワーも
一気に引き潮の如く引いた。つまり戦後は終わった…。
神代辰巳はそれを刻印すべくこの歌をこの映画の中で使った
のだと私は確信している(^^♪

この画面に現れ、
後方に置いていかれる女=母親とはその意味では
「戦後」の喩である。

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もっとも神代辰巳は戦後を捨てた訳ではない。
そういう意味で言えば神代は戦後を引き摺り、
70年初頭のどこか空虚で浮遊感の漂う時代と、
荒廃した砂漠のような戦後の風景とを
微妙に折り重ねながらこの映画の中に刻印したのだ。

それを最も鋭く感じ取ったのが神代に傾倒した
我等がショーケン(萩原健一)だったと言っても良い(^^♪

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生まれ変わりたい、自分の過去を切り捨てたい
と思っているAは公楽館に戻り、この町を出ようとする。
「行かないでよ。私はどうなるの」と、館主妻よしえは
客のいる場内でAに乳房を差し出し、必死に止める。
ロマンポルノ館内でロマンポルノを演じる。
客は当然「うるさい」と怒鳴る。最高の見せ場である(^^♪

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よしえは駆けだしたAを追う。

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形振り構わず追う。
待ってました、絵沢! と私は声を上げる。
ロケ先の地元商店街の人たちが何事かと驚いて見る(^^♪
光男と洋子も車でAを追う。
追いつけず、よしえの足が止まった。

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よしえは公楽館から梯子を持ち出し、
岬の「忠霊塔」へと向かう。

♬ここはお国を離れて何百里
 離れて遠き満州の
 赤い夕日に照らされて
 友は野末の石の下

 思えばかなし昨日まで
 真先かけて突進し
 敵を散々懲らしたる
 勇士はここに眠れるか

「戦友」の音楽が流れる(^^♪

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彼女はその忠霊塔に梯子を掛け、
何が英霊だと梯子の踏み段に紐を通して縊死しようとするが、
紐がズルズルと伸びて地に足が届いてしまう。
この国はいつしか彼女の死ぬ自由すら奪っていたのだ。
「あ〜、あ〜」と彼女はただ絶望の声を上げるしかない。

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Aはバスに乗る。

♬さようならさよなら 元気でいてね
 好きな二人は いつでも逢える
 たとえ別れて 暮らしても
 お嫁なんかにゃ 行かないわ
 待って待って
 待っているのよ 独りでいるわ
 さようならさよなら 好きになった人

洋子は都はるみの「好きになった人」を歌い、
さよならを告げる。

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のかと思ったらバスに飛び乗って言う、
「次で降りましょうよ。
彼、何処までも追いかけて来るわよ」と、
車でバスを追いかけて来る光夫に目をやりながら。

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「畜生。何だよ、この野郎」と
光男はバスに乗ってる洋子に蜜柑を投げつける。
いつ買ったのか知らないが(笑)。

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気まぐれで、ただ無意味に、
でも楽しそうに日々を送る洋子。
演じる我らが中川梨絵、最高である💛
こんな女の子、当時ほんと多かったような気がする(^^♪

また巡礼者たちの歌(お経)とお鈴が聞こえて来る。

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洋子、光男、Aは浜で馬跳びをする。
Aはバスを降り町へ戻ってきたのだ。

明日は見えない。
やる事もない。
過去も、故郷も結局、切り捨てられない。
巡礼したい町もある訳ではない。

が、似たような二人の友人がここにいる。
とりあえずお互いの体を巡礼するか(^^♪

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洋子は二人を馬跳びするたびに
衣服を一枚ずつ脱ぎ棄てる。生まれた時の裸に戻る。
Aは光夫に「抱いてやれよ」と言う。

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光夫も裸になり洋子を抱く。裸になったAの前で。
洋子はAに目をやる。本当はAに抱いて貰いたいのだ。
Aも洋子を抱きたいと思っているが、抱かない。
この時、光夫も淫獣に堕ちている事になる(^^♪

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三人は仁義を切り、義兄弟の約束を交わす。
明日は見えないが、やっぱり無意味に、極道ものとして、
無用ものとして生きて行くしかない事は分かっているのだ(^^♪

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Aは洋子に金を見せて告白する、
実はこれで人を殺してきたのだ、と。
洋子が笑う、「たったそれだけの金で人を殺すの」と。
Aは言う、「金の問題じゃねえよ」

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次の瞬間、車から降りてきたヤクザ風の男が
自転車に乗っているAを背後から襲った。
呻くAを洋子は胸に搔き抱く。

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Aは洋子を乗せたまま自転車もろとも海に落ち、沈んだ。

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公開時にこの映画を観た時、
私らの世代が初めて映画に描かれたと思わず
涙してしまった事を思い出す。
私はずっと若松孝二に入れ込んでいたが、
それでも若松映画は私にすればちょっと兄貴世代の映画
という感じだったものだから(^^♪

ブログの字数制限が迫っているので一言だけにする。
にっかつロマンポルノは、素晴らしい伝統を持った日本映画を
受け継ついだ最後の映画である。
受け継ぎながら新しい日本映画の地平をも切り開いた。
その流れは結局、胡散霧消してしまったが。

その最大の原因の一つはやはり映画人が
高度消費資本主義社会の到来とともに
「組」から「個」へと解体されてしまった事、
そして「プロ」は不要と切り捨てられてしまった事だと思っている。
職人の時代が終わったのだ。


■76分 日本 ドラマ
監督:神代辰巳
企画:三浦朗
脚本: 神代辰巳 鴨田好史
撮影:姫田真佐久
美術:坂口武玄
編集:井上治
音楽:大江徹
助監督:海野義幸
出演
中川梨絵 洋子
絵沢萠子 よしえ
薊千露 幸子
大江徹 克
堀弘一  光夫
清水国雄 三浦
高橋明 映画館主

「一条さゆり 濡れた欲情」がヒットした神代辰巳が監督と脚本を担当。他に脚本は鴨田好史も担当している。撮影は姫田真佐久が務めた。故郷に戻った青年の暗い心の内を映し出す青春官能作品。
克は五年ぶりに故郷へ戻ってくる。海辺の映画館でフィルム運びの仕事に就くが、そこの女主人よしえとの情事にふける日々。街の人間たちは、五年前に街を出た「克」ではないのか?と疑問を抱くのだが、克は否定し続ける。同級生の光夫と洋子のセックスを見てしまった克に、光夫は幸子を紹介する。光夫たちは克の母親と対面させようとまでするのだが、克は母ではないと突き返す。光夫、洋子と奇妙な三角関係に陥っていく克の過去にあった事件とは…。

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