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zoom RSS 愛妻物語 (1951) 日本

<<   作成日時 : 2016/01/20 01:23   >>

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[1193]新藤兼人、乙羽信子、殿山泰司の生涯を決定した新藤兼人の監督デビュー作(^^♪

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1950年(昭和25年)、新藤兼人は松竹を退社し、
吉村公三郎、殿山泰司らと独立プロダクションの先駈けとなる
近代映画協会を設立。

で、良く知られているようにこの「愛妻物語」を書き、
初めて自らメガホンを手にしたのである。理由? 
自伝的な作品なので他人に渡すのは嫌だったんだって(^^♪

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映画は突然、我が乙羽信子(孝子)のアップから始まる。
それも「結婚させて下さい!お願いです!」
と母親に訴える科白で。ギエ〜!ワナワナとなるよねえ(^^♪
え、ならない? 私はなるよ。断然なる(笑)。

ごめん、訂正。ほんとは
このカットの前に海辺を前にしたナレーションから始まる。
「これはシナリオライターの私のお話です」みたいな。
要らん要らん、そんな下らん前説など要らん。
若き日の乙羽さんのこのアップからで良いのだあ!
新藤兼人、監督失格!って私は言いたいよな(爆)。

乙羽信子(孝子)は誰と結婚したいのか。
我が家に下宿しているこの男、

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我等が若き日の新藤兼人なのだあ!
ごめん、訂正。我等が若き日の宇野重吉である。
いや、宇野重吉演じる若き日のシナリオライター、
いやシナリオライター見習いの新藤兼人である。
映画では沼崎敬太にしてるけどさ。

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その沼崎が孝子との結婚を父親(香川良介)に申し込む。
父親が断固として許さない。なので孝子が
母親(英百合子)に直訴する処から始まる訳だ。
ね、良いだろう。最高だろう(^^♪

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即刻家を出ていけと言われ、
沼崎は「分かりました」と即刻孝子の家を出、
アパート暮らしを始める。と、そこへ孝子が訪ねてくる、
「おとっちゃんと喧嘩して家飛び出しちゃった」と。

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で、頼む。父が下田に転勤する事になったの。
私をここに置いてちょうだい、お母さんは許してくれているし、と。
沼崎は一応君が後悔しないならと言うが、
本心はもうダダダッと天に上りたい気持ちなのであった。
ちょい同業の私には分かる(^^♪

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「百萬弗のゑくぼ」、我が乙羽信子💛

宝塚歌劇団27期生で淡島千景と人気を二分していたが、
1950年(昭和25年)に大映へ入社。
何作か出演した後、新藤兼人のこの台本を読んで大感動、
是非ぜひ私にやらせて下さいと拝み倒して出演したのだ。

続いて52年、大映の反対を押し切って「原爆の子」に出演、
同時に大映を退社して近代映画協会の同人となった。
後は言わなくても分かるよね。

何で誰も新藤兼人の「小説田中絹代」の向こうを張って
「小説乙羽信子」を書かないのか、私は全く不思議でならない(^^♪

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二人はこうして父親に逆らい結婚する。
昭和17年春の事だが、映画界は折からの戦争に巻き込まれ、
製作本数は半減、撮影所も合併させられてしまう。

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お先真っ暗、沼崎の心は挫ける。
シナリオライター予備軍に過ぎない自分は首になる、
旋盤工にでもなろうか、と。
さすが我らが宇野重吉、気弱な
覇気のない青年を演じると抜群である(笑)。

孝子が励ます。シナリオを辞めてどうするの、
京都の撮影所へ行きましょう、あなたを今の会社に
世話してくれた増田さんが力になってくれるわ、と。
で、二人は京都へ向かう。

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新藤兼人は22歳時の1934年(昭9)、新興キネマに入社。
美術助手などをやりながらシナリオを書いていた。
41年(昭16)に京都興亜映画へ出向し、溝口健二の下
「元禄忠臣蔵」の原寸大の松の廊下を製作したのは超有名。
この映画を観ないと人生間違いなく大損するよ。
世界映画史上、稀に見る大傑作。美術、カメラ、物語と
とにかく全てが凄いのだ。

一方、乙羽信子演じる孝子とは
当時新藤の内妻だった久慈孝子さんの事で、
当時スクリプターの仕事をしていたんだって(^^♪

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沼崎が京都撮影所に増田(清水将夫)を訪ねると、
じゃあ坂口監督の下で試しにシナリオを1本書いてみろ、
と坂口監督(中央)に引き合わせる。
つまり採用試験をする訳だ。

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沼崎は大監督の坂口に認めて貰えれば
1本立ちできると喜び、愛妻・孝子に報告する。
孝子も大喜びし、二人して物干し台で将棋を指す。
仲良き事は善き事かな、美しき事かな(^^♪
と私はニコニコする一方でこりゃあかんわと泣く。

あのな沼崎、溝口監督は…、訂正。坂口監督は
ゲージツに没頭し過ぎてわが妻を発狂させた人なんやで。
そんな悠長な事で監督のシナリオ書ける思うとるん?
ほんまに思うとるん? 我等が溝口健二は
田中絹代が好きで好きでたまらんかったのに、
ゲージツのために指一本触らなかった人なんやで(笑)。

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第一な、見ろ。隣家のこの友禅職人・安さんかて
年に2、3回しか笑わず、ひたすら仕事に邁進してんのやで。

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はい、隣家の我らが安さん。我が心の殿山泰司はん。
ギエ〜!と当然、私は歓喜の叫びで天井をぶち抜いてしまう(^^♪
どうだ、凄いだろう。デビュー作から
新藤兼人、乙羽信子、殿山泰司の揃踏みなんだぜ💛
過去の事やけど私はもうそれだけで涙出ちゃうよね。

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1ケ月後、沼崎は撮影所に坂口監督を訪ね、
「先生!」と元気よくシナリオを渡す。
そして翌日、監督の家へ評を伺いに行くと…、
「拝見しました。沼崎君、これはストーリーですね。
シナリオになってない。筋書程度。芝居が全然書けてない。
こんな事じゃ駄目だね」と一言の下にバッサリ。

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呆然と奈落に落ちる新藤兼人…、訂正、沼崎敬太。
ほんと上手いよねえ、重吉さん、この姿笑えるもん(笑)。
坂口監督を演じてるのはむろんく我らが滝沢修。
せやねん。滝沢修、宇野重吉、清水雅夫と
こっちも民芸三羽烏勢揃いで、信じ難いほどの豪華キャスト(^^♪

あ、既に言ったようにこれは新藤兼人の自伝。
上の評は、新藤さんが溝口健二にシナリオを読んで貰って
頂いた言葉のまんまなんだってさ(笑)。

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全身で愛妻孝子に結果を報告する沼崎(^^♪

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すぐに訪ねて来て「東京に帰ったらどうだ、ん?」と、
出て来た西瓜をパクつきながら、仮借なく
仲間・宇野重吉を地獄に突き落とす我らが清水雅夫。
新藤兼人の神髄、デビュー作にして早や全開の趣あり(^^♪

私に言わせれば、ま、当然だよね。
何しろ故郷・広島を原爆でやられた訳だから
既に他の映画人と一線を画さざるを得ない。
近代映画協会を設立した理由もそこにあったんだと思う。

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沼崎はすっかり自信を失くし、東京へ帰ろうと言い出す。
孝子はもう一年頑張りましょう、
それでも駄目だった私も諦めると励ます。
そして一人撮影所を訪れ、増田に頼む。
もう1年置いて下さい、手当は要りませんので、と。

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孝子に再び勇気を貰い、沼崎も増田に願い出る。

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希望が受け入れられた。
沼崎は一からやり直しだと
世界中の戯曲を読み直す事から始める。

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隣の我らが安さんも、
俺を見ろ、才能じゃない。何事も辛抱、努力だ根性だあ!
と若き日の新藤兼人を叱咤激励する。
んだんだ、才能なんて横一列、所詮皆チョボチョボだべ、
とコレは私(^^♪

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孝子の父親が連れ戻しに来るが孝子は帰らない。
そんな孝子を坂口監督は裏でこっそり励ます。
男は女の支えがないとダメなもんだ、力になってやりなさい。
いやあ、如何にも溝口健二らしい科白だと私は泣く(^^♪

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そして1年後、沼崎は再び
その坂口にシナリオを書いてみないかと言われる。
沼崎は喜びと不安の中で必死にシナリオを書く。

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それを読み坂口がよく書けたと誉めた。
祇園で沼崎にビールを奢った。
人に奢らない事で世界に知られるあの溝口健二が!(^^♪
孝子は愛する夫を抱き締め、泣いた。オラも貰い泣いだ(笑)。

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だがここからが本番である。まだ映画にはならない。
何しろ相手は名にし負う天下の溝口…、いや坂口なのだ。
第1稿を下に第2稿を書きなさいと沼崎に迫る。
増田が一転坂口をどやしつける。
あんたはこれで良いと言ったじゃないか。早く撮れ、と。
これでは撮れん。もっと良いホンになる筈だ。撮れ!
所長と沼崎の前で怒鳴り合いが始まる。増田にすれば
戦時中なので悠長な事を言ってられない事情もある。

わっ、民芸幹部分裂か!と、私は一瞬ヒヤリとするが、
よく考えると映画だったので胸を撫で下ろす事にした(^^♪

と、突然デスクの電話が鳴る。沼崎への電話で、
掛けて来たのは隣家・安さんの内儀さんだった。

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内儀さん(大美輝子)が電話口で悲痛な声を上げた。
「Please come home! Your wife`s bomiting blood!」
直訳すると、「早よ帰っておくれやす。
奥さんが血吐きやったんどすえ」となる(爆)。
ついでながらこの内儀さん、安さんの内儀にしては少し可笑しい。
リアリティに欠ける。美人で素敵過ぎるのだ(^^♪

沼崎は動揺を隠し所長に言う。
書き直します、打合せに入ってください、と。

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打合せが終わると沼崎は孝子の元へ飛んで帰る。
医者に急性結核です、絶対安静にと告げられる。
すぐに帰宅しなかったのはむろん、仕事を
放り出して帰宅すると孝子が泣くと思ったからだ。

孝子は鉛筆で文字を書き、沼崎に伝える。
「心配しないで。私は死なない」と。

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沼崎からの知らせを受け、
孝子の母親が下田から駆けつける。
今だと帰れるだろうから下田へ帰ろうと母親が言う。
孝子は訴える、「ここで良いの。沼崎の傍にいたいの」と。
母親は一端下田へ帰る事になる。

沼崎は病床に就いた愛妻孝子の傍で
シナリオを書き直す。孝子の命を賭け。

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1ケ月後、沼崎は書き直したシナリオを提出する。
「もう一度書き直し」 坂口は容赦なく要求する。
何しろ盟友ライター依田義賢をいつもスタジオに呼び、
何度もその場で科白の書き直しをさせた溝口なのである(^^♪
またも増田との戦争勃発である。
「無駄な努力は止した方が良い」
「無駄かどうかやってみなきゃ分からんよ」
「この脚本は完成してるよ」
「ぼ、ぼくが無理な注文をしてるって言うのか!」

沼崎が申し出る。「書き直します、3日下さい。
坂口さんの気に入るように書き直そうとは思ってません。
ぼくの力がどこまで書き切るかやってみるのです。
坂口さんとの真剣勝負です。斬るか斬られるかです」と。
孝子が新藤兼人に命を賭けてる訳だから、
新藤本人が自分に命を賭けない訳には行かないのだ。

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空襲警報のサイレンが鳴り渡る。
既に避難する力のない孝子は沼崎に頼む、
二階に行って書いて、と。
沼崎は孝子と自分の心血を文字に注ぎ込んだ。

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深夜、階下から孝子の呼ぶ声が聞こえた。
沼崎が降りると孝子はアルバムを見せてと言った。
沼崎はアルバムを取り出し、開いて見せた。

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孝子の差し出す手鏡に
沼崎と出会った頃の写真が映し出された。
容態が急変した。
孝子は坂口先生を呼んで欲しいと言う。

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沼崎は医者を呼んだ。医者は首を横に振った。
坂口が駆けつけ、孝子に声をかけた。
「奥さん喜んで下さい。沼崎君が良いシナリオを書いてくれました」
孝子は喜び、坂口に言った。
「先生、沼崎の事をどうぞよろしくお願いします」
そして沼崎に「あなた、一生シナリオを書いてね。
あなたの一生はシナリオなの」と言い、目を閉じた。

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沼崎は一人残された。
孝子と暮らした部屋にいると、孝子の歌う清らかな声が
聞こえてくるような気がした。

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彼の愛した孝子は朝顔を想わせる女性だった。

この映画を観ていると新藤兼人が100歳まで生き、
370本以上ものシナリオを何故書き得たのか。
そして何故溝口健二を師と仰いだのか良く分かるよね。
ちなみに乙羽信子に声を掛けたのは
乙羽信子が亡き妻孝子さんに良く似ていたからだそうだ。

乙羽信子は生涯新藤兼人の映画と心中し、
後年新藤兼人と結婚もするのだが、
なんだかこの話、溝口の「雨月物語」の上を行く話みたいで
全身がブルブルと震えてしまうよね。
こういう至高の人生が生まれる事もあるのかと感極まって(^^♪

しかし新藤さん、ほんと凄いよな。
自分の裸をゴロンとスクリーンの上に投げ出すもんね。
宇野重吉、滝沢修、清水将夫、そして殿山泰司然り。
乙羽信子はその様を見て若くして自分の道を決めたんだと思う。

あ、これを単純に愛妻物語だと思ってはいけないよ。
いや、それでも良いんだけどさ、
戦時中、沼崎と孝子が二人の愛と仕事(映画)を生きるって事は
「反戦を生きた」って事を意味し、それがまたこの映画の
隠されたモチーフでもあったんだよね。

YouTube、英語版だから映像も綺麗だよ。
オラが新藤兼人、乙羽信子、殿山泰司、
そして心美しき民芸三羽烏を是非ご覧あれ(^^♪


■1951年 大映 97分
監督 新藤兼人
脚本 新藤兼人
撮影 竹村康和
美術 水谷浩
音楽 木下忠司
出演
沼崎敬太 宇野重吉
石川孝子 乙羽信子
石川浩造 香川良介
石川弓江 英百合子
坂口監督 滝沢修
増田 清水将夫
所長 菅井一郎
製作部長 原聖四郎
安さん 殿山泰司
内儀さん 大美輝子
芸妓 柳恵美子
大河内傳次郎

新藤兼人の監督デビュー作。本作でも脚本と監督をつとめ、主演には乙羽信子を迎えた。実際のエピソードを数多く盛り込みつつ、駆け出しのシナリオライターを描いた、新藤兼人の自伝的作品。
脚本家見習いの沼崎敬太は、下宿先の娘だった孝子と駆け落ちし、東京で生活を始めた。敬太は東京の撮影所で脚本研究生をしていたが、戦争の影響で映画会社の規模が縮小。敬太は孝子をともなって京都へ行き、有名な映画監督である坂口の仕事をもらった。孝子の内職による収入を家計として、敬太は脚本を書き上げるが、坂口監督から酷評され脚本を返されてしまう。孝子はさらに内職を増やし、敬太は勉強に集中。ついに書き上げた脚本が坂口監督に認められるが、孝子は無理がたたって喀血してしまう。

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