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zoom RSS サンダカン八番娼館 望郷 (1974) 日本

<<   作成日時 : 2016/02/15 09:57   >>

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[1200] 田中絹代の演技の素晴らしさが栗原小巻や監督には分かってるのかなあ(笑)

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いまでも鮮明に憶えている。
封切時に観た時、私は泣いて新宿の映画館を後にした。
感動したからではない。
なんだ、あの栗原小巻は。田中絹代が
せっかく良い芝居をしてるのにバカにしやがって!
と悔しさ、怒りが心頭に達して泣いたのだった。

二度と観ないぞと決心していたのだが、
田中絹代の遺作なのでもう一度観て紹介しておく事にした。
もちろん我等が田中絹代を見て欲しいからだ。

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女性史研究家・三谷圭子(栗原小巻)は、
からゆきさんについて書きたいと思って天草を訪れる。
天草はからゆきさんを多く輩出した土地だからである。
ちなみに原作者の山崎朋子は長崎県佐世保市生まれである。
「サンダカン八番娼館 底辺女性史序章」(72年)が出た時、
私もすぐ読んだものだ。

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三谷は食堂へ入った時たまたま一人の老女(田中絹代)に出会う。
「私は子供の時から外国さ行ってた」と彼女が言う。
三谷をガイドしていた女がアメリカかと聞くと、
「そんな上等な所じゃなか」と老女が言うので、
ガイド女は声を張り上げて言った。
「わかった!お婆さん、からゆきさんでしょう!」

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瞬時に老女の顔が曇り、口は閉じられる。
私が傍にいたら大声を上げるこのガイド女を即座に
ぶん殴っただろうなあ。そのわざとらしさ、
他人に対する無神経さに怒り心頭に達して(^^♪

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三谷はその老女の顔を見てからゆきさんに違いないと確信する。
私が監督だったら栗原小巻の顔にダメを連発し、
終いにはやはりぶん殴ったかも知れない。
「からゆきさん」の実態について凡そは理解してる筈の
女性史研究家がこんな顔をして目の前の老女を見るかい?
ちなみに地元の人々は「地元の恥」「国の恥」として
からゆきさんには近づこうともしないんだよね。

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老女がそのまま食堂を出ると、
三谷は老女の忘れ物を手に追い、手渡す。
と、老女はちょっと私の家に寄っていかないかと
三谷に声をかける。

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老女はサキと言い、村外れのアバラ家に一人住み、
猫たちと暮らしていた。
近所の老女二人が油を売りに来ると
サキは京都にいる息子の嫁だと言って三谷を紹介した。

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サキが昼寝して目を醒ますと三谷がまだいる。
サキは礼を言い頭を下げた。京都にいる息子も嫁も、
このは家は汚いと寄り付きもしないのによう上がってくんなすった。
天草に来たらきっとまた寄ってくんなさい、と。
「汚い」とはむろん自分がからゆきさんだった事を含めて
言っている訳だ。

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「偶然巡り合ったからゆきさんの生き残り、おサキさん。
私はその優しい人柄に惹きつけられた。
そして顔に刻まれた皺の一つ一つ、波乱に富んだ過去の
一つ一つを何としてでも知りたいと思った」

栗原小巻のナレーションを入れながら物語を進行させていく
のだが、私は恥ずかしくて聞いていられない。
思い入れたっぷりで、もう嘘臭くてしょうがなくて。
表情もそうなんだけど、イチイチ説明する訳だよね、
自分の気持ちを、つうか何つうかさ。
お陰で語尾はあの世へ消えて聞き取れない(笑)。

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言葉自体がすでに指示表出性と自己表出性を持ってんだから
人間がイチイチ気分入れて説明する訳ねえんだよ!
と演出家の私は役者を怒鳴り散らす(^^♪

こんな事を言うのはすでに俳優座の
看板女優として売り出されようとしていた栗原小巻にして
そんな事がまるで分かってないからなんだけどね。
最後の田中絹代を紹介する一方で、
この頃からすでに日本の俳優がおかしくなった事や、
日本映画がひどくなっていく事がよく表れてるから
紹介してるんだと思ってくださいな(^^♪

あ、田中絹代と栗原小巻の表情、ちゃんと見較べるのよ。
体の発する表情を含めて(^^♪

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また寄ってくれという言葉に甘えてか、
三谷は辞した後にまたすぐにサキの家を訪れ
共同生活を始める。目的を隠す訳だけど、
どうもこのあたりも私には気持ち悪いものがある。
底辺女性の研究という「良い事」をしている訳だから
多少の嘘はしょうがないと思ってるのかなあ、
テレビ・レポーターみたく。だとすると最悪だよね(笑)。

あ、ついでだけど清原事件、宮崎謙介議員の不倫問題に
ついてコメントする芸能人やコメンテーターらが私は
何だか滅茶苦茶気持ち悪くてしょうがない(^^♪
芸人は人に笑われ馬鹿にされてナンボなのに、
おめえらが良い子ぶってどうすんじゃあ!
人に笑われ馬鹿にされてる清原や宮崎の方がよっぽど
芸人じゃねえかあ! 世のため人のためになってるじゃねえかあ!
と、我は往来を叫んで走りたくなるでよ、ホンマ(笑)。

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ある夜、三谷の布団に行商人の山谷初男が忍び込んで来る(^^♪
三谷は男を追い出すが、それを機にサキは自分の
重い過去について少しずつ語り始める。

三谷を演じている栗原小巻の心が
サキ=田中絹代の心に触れてないのが写真を見てもわかる。
科白を聞くともっと良く分かる筈だ。
声の出処が田中絹代と全く違うのである。
肚から声が出ていない。雰囲気ばかりやってるので
声が画面の中に籠ってしまっているのである。
と言っても違いの分からない俳優が圧倒的に多い訳だが。

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サキが4歳の時、父親が世を去り、田畑は全て他人の手に
渡ってしまった。母親は妻を亡くした父の兄と再婚する。

母親サトを演じているのは我等が岩崎加根子。
栗原小巻と同じく俳優座なのだが、もうまるで格が違うよね。
演技の質が全く違う。栗原小巻も
いつも傍で見ている筈なのに違いが分からないのである。

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セットや衣装、小道具も酷いよねえ。
貧乏な家な筈なのにその「貧乏」が全く表現できない。
叔父も農業か漁師な筈だからこんな家だなんてありえないよね。
明治40年頃の事で、サキ自身、
「生まれた時から貧しゅうてなあ」と強調してるんだよ。
画面はそれを平気で裏切る。阿保臭くて笑うしかないよね(^^♪

あ、田中絹代もナレーションやってるので
栗原小巻のナレーションとちゃんと聞き比べるのよ。
違いが分からない人は絶対俳優になろうなんて思わないでね。
ホント頼むよ、世のため人のため演劇のため(笑)。

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12歳の時、サンダカンで娼館を経営していた
太郎造(小沢栄太郎)は、サキ(高橋洋子)に外国行きを勧め
前金300円を渡す。

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サキは兄の矢須吉(浜田光夫)に
畑を買い戻して幸せになってとその金を送り、
村のハナ、ユキヨと一緒にサンダカンへ発つ。

ああ、しかしホント酷いよね、衣装もメークも。
スタッフはもう汚し一つ出来ない。
物語も時代考証もあったもんじゃない。

監督の熊井啓、何考えてんだろう? これで社会派監督だなんて
言う方も言われる方も私は気持ち悪くてしょうがないんだけど。
あ、コレ、日本は経済大国になったんだぞって世界にアピール
したかったのかしらん? ベルリン国際映画祭に出品してるし(笑)。

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英領北ボルネオ、サンダカン(笑)。

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当時、娼婦館は9館あり、太郎造の店は八番館だった。
サキは住み込み女中と言った感じで働き始めるのだが、
1年後、客を取るようにと言い渡される。
借金も2千円に膨れ上がっていた。

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13歳、初めての客はボルネオ人だった。
ん? この男、何処かで見た事があるぞと思ったら、
ギョッ、我等が苅谷俊介ではないか(笑)。おめえ、一体
何ちゅう恰好してんねん。いや、させられてんねん。大馬鹿者め!
画面の贋物(まがいもの)感がドンドン膨らんじまうじゃねえか!(爆)

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地獄の生活が始まった。
サキは現地の言葉を憶え、現地の客をも進んで取った。
一日でも早く借金を返して内地へ、島原へ帰りたかったからだ。

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サキは述懐する。
「わしは男と女子がアレをやっとっても良かと思った事は
一ぺんもなか。中にはヨガリ声を出す女子もおるばってん、
わしにゃわからん」
からゆきさんの物語だと感じさせるのはほとんど
田中絹代ひとりである。

「噂の女」を書いた時、田中絹代は映画や映画の世界に対して、
あるいは他人やこの現実に対して馴染めない自分を、
異和感を抱え込んでいたのではないかと言ったが、
この最後の作品ではその異和感が完全に払拭されている。
すでに身構えなければいけないものは自分の中には何もない、
と言った感じで、老いさらばえて「醜い自分」をそのまま体ごと
見事にカメラの前に投げ出して見せているのだ。
何て美しい人だろう。と、本当に涙が出る(^^♪

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絹代さんが上のようなからゆき体験を話している時、
栗原小巻はこんな顔をして聞いてるんだよ。
ね、どう思います、コレ? 千田さん、千田是也さん?
千田さん、可愛がって膝に抱っこして稽古してたらしいんだけど、
そんな事するから栗原小巻こんな事になったのかもな(笑)。

先達の者がこういう芝居をするから
後続する俳優がだめになったんだと私が怒ってる事、
勘の良い人には分かって頂けるかと思う(^^♪

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自分から抱いて欲しいと思った事など一度もない。
「女であっても女ではない」サキの前に初めて、
自分から抱いて欲しいと思う男が現れた。
一つ年下の青年、竹内秀夫(田中健)である。
父を亡くした彼は日本を出てシンガポールで働いている時、
ボルネオのゴム園主に拾われたのだった。

二人は恋に落ちた。サキは
金のない秀男のために身銭を切って逢い、抱かれた。
サキ、19歳の時の事である。

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秀男は誓った。
俺、銭を貯めてきっとお前を迎えに来る、と。

この映画が、そして田中絹代が救われているのは、
決して上手い訳ではないが、必死で体を張ってやっている
この若い高橋洋子と田中健のお陰だと言うしかない(^^♪

しかしまあ音楽もほんとセンスないよなあ。
物語を盛り上げる事ばっかりやってる。ド素人(^^♪
こういう事をやる人は俳優のやっている事が分からない人、
俳優を信じていない人なんだよね。

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やがて日本兵がボルネオに到達し、上陸してきた。
女たちは一晩に30人もの男を取らされた。

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秀男という恋人がいたサキの心と体はボロボロになった。
その姿を見やりながら秀男はサキに別れを告げた。
ゴム園の娘と結婚する事にしたのである。
以後、サキは全ての男が信じられなくなった。

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同じ時、日本兵が落とす金に興奮して
楼閣主の太郎造はあっけなく急死。女将のモトは
八番娼館をおキク(水の江滝子)に売り、
そうしてサキたち四人を女衒の余三郎に売った。

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サキらはプノンペンへ連れて行かれそうになるが、
八番館の新主人・おキクのチカラでサキら4人は
サンダカンに留まる事が出来た。

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おキクは島原出身でイギリス人と結婚していたが、夫は帰国。
その後、サンダカンの女たちにおかあさんと慕われるほどの
人物となり、八番館も今までと異なりまるで天国のようだった。
が、日本が世界の列強国と肩を並べるようになると、
からゆきさんたちは国辱だと次第に邪魔者扱いにされるように
なっていく。

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そんなある日、おキクは病いに倒れた。
彼女は自分の寿命を悟り、サキらに言い残す。
わしは日本には帰りたくない。お前たちも国に帰ると碌な事はない。
財産をはたいてこの地に共同墓地を作った。そこに眠れ、と。

我等が水の江滝子、
この時絹代さんより少し若くて60歳くらい?
圧倒的な存在感に満ちてて凄いよね(^^♪

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サキはおキクを共同墓地に埋葬した後帰国する。
が、天草はすでにサキにとって故郷ではなくなっていた。
母は既に他界し、仲の良かったたった一人の兄・矢須吉も、
「外国帰り」のサキを気にして避けたからである。

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サキは自棄酒に溺れた。そうしてペナンから帰郷した
同じ境遇の女(菅井きん)に誘われ、満州へ渡る。
奉天でかばん屋の男と結婚し、男の子を産むのだが、
戦争で財産を失ったばかりか引き揚げ途中に夫をも失う。

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帰国後、息子と京都で暮すのだが、
彼が二十歳を過ぎた頃、サキ一人天草へ帰されてしまう。
結婚するに至ってからゆきさんの母親が邪魔になったのだ。

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三谷とサキの生活は三週間ほど続く。
この間彼女はサキの問わず語りを聞き、サキの目を盗んで
それを原稿にして密かに東京の夫に送り続けるのだが、
ある日、ひょんな事から彼女の素性が村人に知られてしまう。

村人たちは三谷がサキの事を書くと
村の醜聞が知れ渡り大迷惑だとサキに談判する。

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それを知った三谷は取材を諦め、
サキの家を彼女と一緒に手入れし、別れを告げる。
自分の素性を初めて明かし、詫びて。

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サキは言う。

お前はいつか帰っていくものだと思っていたが、
ようこんなにも長くこの家にいてくれた。ありがとう。
お前の事を知りたいと思ったが、人には事情というものがある。
自分から話し出さない事をどうして他人の私から聞く事が出来るものか。
お前が本に書きたいなら何も構わん。
ほんとの事を書くのなら誰にも遠慮は要らん、と。

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翌朝、サキは三谷の使っていた手拭いを貰った。
使うたびにお前の事を思い出したい、と言い。
そして当たり憚らずサキはひとり声を上げて泣いた。
この泣くシーンは間違いなく我等の田中絹代が残した
最高のシーンの一つである(^^♪

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数年後、三谷はサンダカンを訪れる。
日本軍に火を付けられた街は既に再興され
八番館の面影は何処にもなかった。
三谷はおキクがからゆきさんたちのためにジャングルの中に
作ったという共同墓地を探し当てた。

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墓標の異変に気付いた三谷は北の日本に向かい、言った。
「おサキさん、みんな日本に背を向けて眠っていらっしゃいます」と。
一番大事な科白なのに、例によって
こんな情緒的な顔をして呟かれるとホント興醒めだよね(怒)。

田中絹代と栗原小巻はどう違うのか。
執拗に繰り返している事だが、
田中絹代は見事に物語を生きてみせているのに、
栗原小巻は物語の表面だけをなぞってお芝居をやってる。
嘘をやっている。物語を生きていない、という事だよね。

それは単に演技の勘違いなのか。
そうとも言えるし、そうでない可能性も考えられる。
これも一言で言えば、身体が拒食症的(病的)であるため、
どうやっても物語や、言葉や、相手の心が自分の体の中に
入らず、そのためいかにもそれらしく演じるしかない
という事態も考えられるんだよね。

私はこの30年、そうした拒食症的身体が蔓延している事を
あちこちで嫌になるほど見せられてきた訳だが、
その可能性も考えられる訳し、また、
そうした事態が80年代を待つまでもなく70年初頭あたりから
既に生じている事が如実に知れる。

もう一つ言っておくと、俳優も俳優だが、そうした演技に
NGを出さない監督、演出家の責任の方が大きいと私は思うよ。
演技は自分の身体に即してやらなくちゃいけないので、
演じてる俳優にも自分の演技の良しあしがもの凄く分かりにくい
んだよね。監督が鏡になってやらないとさ。

良い作品を残した
昔の監督は俳優の演技に徹底してダメを出した。
そういうエピソードはゴロゴロ転がってるもんね(^^♪

まあ、観れば分かるけど、音楽にしろ美術にしろ、
この監督、栗原小巻の演技と同じような事をしてるから
それは期待出来なかったかもね。

それにねえ、「望郷」ってタイトルどうなのよ?
からゆきさんたちはみんな日本に背を向けて眠ってるってのに、
「望郷」って何なのよと私はちょっと呆然としちゃうよね(^^♪

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台本も粗くてどうしようもない。
結局、全部田中絹代一人に負んぶに抱っこって感じ。
だったら最初からずっと田中絹代の一人語りにして、
回想シーンを半分以下にしたら良かったんじゃないの。
と、映画史上稀に見る傑作になったかもよ。
本当に田中絹代の演技は素晴らしいです!💛

あ、ついでに言っておくけど、DVD用の表紙見て。
絹代さんの写真ないよ、主役なのに。
いやあ、現在の日本丸出しだべ。
早よ消えて亡くなりなはれ!(笑)


■121分 日本 ドラマ
監督: 熊井啓
製作: 佐藤正之 椎野英之
原作: 山崎朋子 『サンダカン八番娼館』
脚色: 広沢栄 熊井啓
撮影: 金宇満司
美術: 木村威夫
編集: 中静達治
音楽: 伊福部昭
助監督: 相沢徹
出演
栗原小巻 高橋洋子 田中絹代 水の江滝子 水原英子
小沢栄太郎 神保共子 山田孝子 苅谷俊介 田中健
砂塚秀夫 信欣三 中谷一郎 岩崎加根子 浜田光夫
岸輝子 山谷初男 菅井きん

南方の島へと売春の出稼ぎに渡った“からゆきさん”と呼ばれる日本人少女たちの、辛く波乱に満ちた実態を描き第4回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した山崎朋子の原作を、社会派・熊井啓監督が映画化。女性史研究家・三谷圭子は、“からゆきさん”のことを調べる過程で天草で小柄な老女サキと出会った。サキがからゆきさんと確信した圭子は、彼女が経験した過去を聞き出すため、共同生活を始める。やがて、サキはその重い口を少しずつ開いて、あまりにも衝撃的な生涯を語り始めるのだった……。本作が遺作となった日本映画を代表する女優・田中絹代が全霊をこめた演技で自らの最期を飾った。

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