こんな日は映画を観よう

アクセスカウンタ

zoom RSS アンジェラの灰 (1999) アメリカ/アイルランド

<<   作成日時 : 2016/03/07 14:41   >>

トラックバック 0 / コメント 0

[1203]映像の美しさと、超貧乏物語を生きてみせる俳優陣に拍手

画像


「ミッドナイト・エクスプレス」 (1978)等で知られる監督、
アラン・パーカーがアイルランドを舞台に撮った
貧乏極北家族の物語(^^♪

時は世界的大恐慌が吹き荒れた1930年代。
アイルランド独立戦争を戦ったマラキ(ロバート・カーライル)は、
その後ニューヨークへと渡り、同じアイルランド人の
アンジェラ(エミリー・ワトソン)と知り合って結婚、四人の子をもうける。

画像

だが折からの大恐慌でなかなか仕事にありつけない。
ありついても彼の場合すべて飲んで消えてしまうので
家族の暮らしはごらんのように超貧乏である(^^♪
そこへ待望の世にも珍しい可愛い女の子が産まれるが、
環境の貧しさの余りわずか数日で死亡。
一転、マラキとアンジェラは移民の流れに逆らって
故郷アイルランドへ帰る事にする。

物語は後年、その一家の長男フランクによって語られる訳だが、
その極貧ぶりは筆舌に尽くし難く、観たらゴキブリ諸君も
そそくさ逃げ出すかも知れないという世にも残酷な映画だよ。
こら、誰だ、観ないうちに逃げ出す野郎は!(笑)

画像

船が故国に到着。もちろん船代はないので
アンジェラの母親に送って貰ったのだ(^^♪

港のある街からバスに乗り、首都ダブリンへ向かう。
明るい映像は帰国時に見る自由の女神の時だけ、
あとはすべて徹底して陰鬱なイメージのこのトーンである。
それがまたもの凄く美しいもんだからこの映画は始末に負えない(笑)。

画像

ダブリンへ着くとマラキは長男フランクを連れて早速
IRA(アイルランド共和軍)本部へ補償金の交渉へ行く。
「俺はIRA兵として独立戦争を戦った。金がない。
四人の子供が腹を空かしている。金を」
「君がIRAにいたという記録はない」
「四人の子供たちも必ず愛国者にする。お願いだ、金を」
「調べて連絡する。街へ戻るバス賃だ」
「是非ビール代を」「欲しいのは酒代か」
「憶えておけ、フランク。
こういう奴らが新アイルランドを仕切ってるんだ」(^^♪

画像

一家はアイルランド南部にあるアンジェラの故郷、リメリックに着く。
マラキがホームに出迎えた彼女の家族に「よろしく」と手を出すと、
見事に無視される(^^♪
実はマラキが北アイルランド出身だからなんだよね。

画像

とりあえずアンジェラの母親が借りてくれたアパートに落ち着くのだが、
ほとんど六畳一間の部屋。一家六人が雑魚寝状態で寝てると、
夜中子供たちがノミに喰われて大騒ぎ。
マットレスを通りに放り出して皆でノミ殺しが始まる。
マラキ曰く、「英国人の陰謀なんだ。我々への嫌がらせで
繁殖力の強いノミを持ち込んだんだ」(笑)

画像

石炭の配給券を手に配給所へ飛び込むが、
時間に遅れて門前払い。
フランクが通りに落ちいてる石炭を拾おうとすると、
「物乞いじゃないんだ、拾うな。誇りのない奴が拾うんだ」
とにかくマラキ父ちゃん、プライドだけは100人前なのである(^^♪
しょうがなくアンジェラが下の子二人を父ちゃんに預けて
子供たちと拾いに行く。

話は超貧乏の話なんだが、映像が超贅沢なので観てても
変に落ち込まなくて済む。さすが我がパーカーよ!(^^♪

画像

父ちゃんはまだ若いのだが一向に職にありつけない。
一家は僅かばかりの失業手当を貰うのだが、
酒なしには生きていけない父ちゃんが全て飲んでしまう。
子供たちは時々アンジェラの両親、兄弟に厄介になるのだが、
ガミガミ(悪口)も一緒に喰わされるので拙くてしょうがない。
この貧乏、「ジャガイモ飢饉」がまだ続いているのかよ?
といった感じ(^^♪

そうこうするうちに栄養失調のせいか、
まだ幼い下の双子が相次いで死んでしまう。

上は教会の慈善事業団が出してくれたお葬式。
死んだ子を馬車に乗せて墓地へ運ぶのだが、
通りで見送る人が時々こうやって馬車の前に水を撒くんだよね。
イングランドはカソリック教の国なんだけど何だろう。
日本で言う「穢れ」を清める風習なのかな?

ちなみに父ちゃんの北アイルランドはプロテスタントの国。
アンジェラの家族・兄弟が父ちゃんに手を差し伸べたがらないのは
背景にその宗教的対立もある。

画像

子供二人を亡くした家にはいられないとアンジェラが言い、
一家は引っ越す事になる。引っ越し先はスラム街のアパート。
これがまた凄い。凄すぎて感動しそうになる(^^♪
玄関前にアパートの共同便所があり、
部屋には絶えず異臭・悪臭が漂っている。
一、二階があって前より広いのだが、
ちょっと雨が降ると階下は洪水に見舞われるので結局、
二階の一間だけで暮らす事になる。
そのおまけでトイレは二階の部屋の前にバケツを置き、
そこで済ます事に(笑)。

画像

今夜も飲んだくれて深夜に帰宅、
大声上げて隣近所に怒鳴られる父ちゃん(^^♪
しかし凄いよねえ。何がって、この雨。街を覆う水溜まり。
アイルランドって年中雨期かよ。
霧のロンドン、雨のアイルランドかよ!と思って調べたら、
年間雨量は日本と同じ程度。冬は零下になる事ナシ、
夏は30度を超える事ナシなんだって。
霧のロンドンが嫉妬して侵略する筈だよなあ(笑)

画像

という事は排水溝が全くの不備のせいって事になるのか。
うん、有り得るな。海賊どもの血も残ってるだろうから街を
荒れ狂う海上にしたいのかも知れん。
という事で吾輩は一件落着させる事にした(^^♪

まあ、雨の日を多くする事で生活の貧しさ、苦しさを
描こうとしたんだろうけど、何度も言うようにその雨、
水のシーンが余りにも素晴らしくて吾輩の頭は混乱するばかり(笑)

画像

ついでながらこれは朝、労働者たちが仕事へ向かうシーン。
アイルランドは鉛や亜鉛等の鉱山産業も有名だけど、
鉱山労働者なのかな?
とにかくこの映画の凄さは、1930年代の世界恐慌の波を受けた
アイルランドの街と人々の光景を再現してみせている事に尽きる。
1930年代の日本をこういう風に再現してみせてくれる作家、
いまの日本にいる? それ考えただけで分かるよね(^^♪

画像

やがて弟が生まれる。おいおい、大丈夫かと心配になるが、
これだけ貧窮してると可愛い子供の笑顔だけが救済だろうから
父ちゃん母ちゃんを簡単には責められない。
実際、アンジェラはマラキを「役立たず」と罵るんだけれども、
嫌いなんじゃなくて愛はある。満杯(^^♪
子供たちも飲んだくれで役立たず父ちゃんだが、
貧乏にもめげず元気に物語を作って語って聞かせてくれる
父ちゃんが大好き。家族は少しも壊れてない(^^♪

画像

やがて長男のフランクは学校に通い始める。
ボロボロになった靴を履いてるので子供たちに揶揄われるが、
貧乏でない子供はホンの一握り。
カトリックの国だから先生も厳しい。引っ叩き教育である。
おいおい、韓国映画かよと初めちょっと驚いちゃったよ(笑)

画像

しばらくダンス教室に通っていたが、友達も出来て遊びまくる。
これは映画館に忍び込んで西部劇に他の子供たちと
雄叫びを上げるシーンだべ(^^♪
なんだ、俺が子供の頃より全然豊じゃないか(笑)
俺たちも鞍馬天狗が杉作を助けに馬で走ると
立ち上がって雄叫びを上げたもんだぜ。

画像

やがて父ちゃんマラキはイギリスへ出稼ぎに出る事にした。
が、連絡はおろかお金も届きやしない。
こうなったら自分が働くしかないとフランクは石炭運びのバイトを
始めるのだが、結膜炎を患ってしまい危うく失明しそうになる。

画像

父ちゃんがクリスマス・イヴの翌日帰国してきた。
顔中痣だらけ。大方イヴは酔っぱらって喧嘩したようだ(^^♪
お土産は喰いかけのケーキ。むろん家族に手渡す金などナシ。
そして翌日、羊の目玉を1個食って一人ロンドンへと戻る。
どこか穏やかならぬ気配を察したフランクがこっそり後を追うと、
父ちゃんマラキが振り返って言った。「帰れ、フランク」
以来、父ちゃんは愛する家族の前から姿を消した。
北アイルランドのマラキには、アルイランドにもイギリスにも暮らす
場所がなかったって感じでちょっと切なくなるシーン。

画像

アンジェラと子供たちは夜逃げ。今度の行く先は従兄ラマンの家。
家賃を滞納してる上、部屋の壁を皆して叩き壊し薪代わりに燃やして
しまったからだ(^^♪
しかしこの一人暮らしの従兄が酷い。家賃が払えないならと
アンジェラに体を要求するのだ。

画像

フランクは階段を上って従兄の部屋へ向かう母の姿が
見ていられず、一人叔父の家へ転がり込む。
そして自分が働かなければと学校をやめ郵便配達員になる。
結核を患って屋敷に引きこもる少女テレサに恋をし、
彼女が死ぬと初めてと言っても良いような深い悲しみを知る。
一方でこの国を出てアメリカへ行きたいと思い始める。
アメリカで生まれ、幼少期はアメリカで育ってる訳だから
「戻りたい」って気持ちなのかもね。

画像

配達先の強欲な金貸し業に見込まれ、
返済の催促状を書く高額なアルバイトにもありついた。
ある日、彼女は死んでいた。帳簿を見ると街のほとんどの人が
彼女から金を借りていた。もちろん母のアンジェラも。
フランクは彼女の貯めた金を頂戴し、帳簿は川に投げ捨てた。

画像

そして切符を買い、母や弟たちに別れを告げ、

画像

フランクは一人アメリカへと渡る。。。

この映画の原作は、
ニューヨー在住の元教師、フランク・マコートが書いた
自叙伝的な作品「アンジェラの灰」で、
A・パーカーは原作に即し、作家の凄まじく悲惨な
アイルランドでの少年時代体験を淡々と綴っている。

画像


私は原作は読んでいないが、
この超貧乏物語の作品はこの豊かな国・日本でも
もの凄く読まれたのだそうだ。
何でそんな皮肉とも言えるような事が起こるのか知らない。
フランクの場合、困窮の凄まじさ故に、幼児・少年時代の
一瞬一瞬が自己史として記憶に刻み込まれていく。
そうした自己史を豊かな社会に育った日本人は
もう失ってしまっているからだろうか。私には結構謎だ(^^♪

画像

しかし映像も素晴らしいが、エミリー・ワトソン にしろ
ロバート・カーライルにしろ、 俳優も本当に素晴らしい。
美男美女でおまけに金もあるだろうに、
こんな貧乏の物語を見事に生きてみせているもんねえ(^^♪
人間と動物の違いは作られた架空の物語を、
フィクションの世界をもう一つの現実として生きる事ができる
ということなのだが、今の日本の俳優にはもうそれが出来ない。
て事は、日本人はもう人間じゃないって事なのかも知れん(笑)
なんて笑ってるけど現場にいると、私マジにそう思う事があるのよ(泣)

画像

フランクは三人の子が演じていてみんな素晴らしいんだけど、
中でも私の好みはこの子かな。ジョー・ブリーン君(^^♪
監督がオーディションで選んだ素人の子らしいんだけど、
こうした子が素晴らしいのはうまくやろうなんていう
薄汚い根性が全くないからだよね。
これは大人の場合でも結構同じで、演技なんてやった事がないから
監督の言う事をただ素直にやろうとする。そんな時は結構
素晴らしい演技になったりするものなんだよね。
まあ、長年やればやるほど大体ダメになるって事なんだけどさ。

画像

ところで佐野史郎・石川真希夫妻の話によれば、
アイルランドって素晴らしい国らしいよ。
イギリス人はエリート意識、差別意識がめ滅茶強いらしいんだけど、
アイルランドの人たちってそれ全然なくて人懐っこくて
滅茶楽しいんだって(^^♪
大統領も庶民的な人で、「ジャガイモ飢饉」を忘れてないのか、
パーティで料理が余ったりすると残りものだけどと言って
街の人たちに配ったりするんだって!
しかもアート志望の人たちにはどこかの国と違って
もの凄く手厚い政策を採ってるんだってさ。

ね、今からでもアイルランドに住まないカニ(^^♪


■145分 アメリカ/アイルランド ドラマ
監督: アラン・パーカー
製作: デヴィッド・ブラウン  アラン・パーカー  スコット・ルーディン
製作総指揮: アダム・シュローダー エリック・スティール
原作: フランク・マッコート
脚本: ローラ・ジョーンズ  アラン・パーカー
撮影: マイケル・セレシン
編集: ジェリー・ハンブリング
音楽: ジョン・ウィリアムズ
出演
エミリー・ワトソン
ロバート・カーライル
ジョー・ブリーン
キアラン・オーウェンズ
マイケル・レッグ
ロニー・マスターソン
ポーリン・マクリン
リーアム・カーニー
エアンナ・マクリアム

大恐慌に陥った1930年代。アイルランドからニューヨークに渡ったマラキとアンジェラはそこで出会い結婚する。やがてふたりは5人の子どもに恵まれるが、マラキは仕事もなく、失業手当すら酒代に消えてしまう。末娘を亡くした一家は結局故郷のアイルランドに戻ることに。しかし、アンジェラの実家のある街リムリックも決して一家を優しく迎えてはくれなかった……。フランク・マッコートの小説を「ザ・コミットメンツ」のA・パーカーが再びアイルランドを舞台に映画化。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文
アンジェラの灰 (1999) アメリカ/アイルランド こんな日は映画を観よう/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる