早春 (1956)

[026]小津映画はなんでこんなに懐かしいんだろう……?

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杉山正二(池部良)は蒲田から丸ビルの会杜へ通うサラリーマンである。
妻昌子(淡島千景)とは結婚して8年が経ち倦怠期にある。
こんな綺麗な奥さんにでも倦怠するのかよと私は不思議だ。(^^♪

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都心へ向かう同じサラリーマンたちとはいつとはなしに親しくなった。
青木(高橋貞二)、辻、田村、野村、
それにキンギョという綽名の金子千代(岸恵子)などである。

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退社後はその仲間と
麻雀やパチンコをするのが最近の日課になってしまっている。

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妻昌子は毎日の単調な生活を紛らすため、荏原中延の実家へ帰り、
おでん屋をやっている母しげ(浦辺粂子)に愚痴をこぼしたりしている。

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ある日、通勤仲間と江ノ島へハイキングに出かける。
え、どこから歩いてるのよと私は魂消る。(^^♪

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その日を境に杉山とキンギョの仲が急接近。

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そてしある夜、キンギョ千代の誘惑に克てず、キンギョと旅館へ。
杉山は初めて家をあける。

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仲間は二人の仲に気づき、キンギョは吊し上げる。

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妻昌子も夫とキンギョの秘密を知り、家を出、
旧友のアパートに転がり込む。

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一方、杉山は会社の同僚三浦を見舞うのだが、
その三浦が死んだことを知らされ、いまの生活を考えこむ。

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ちょうど上司から地方工場への転勤の話が持ちかけられていた。
杉山はギッチヨとの関係も清算して田舎へ行こうと考える。

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妻昌子は家を出て以来、家へ帰っていなかった。
荷物を取りにきた彼女に母親は勧める。
「家へお帰り。取り返しがつかないことになるよ」と。

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杉山は通勤仲間に別れを告げ、
ひとり赴任先は岡山県の三石へ向かう。

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途中、大津で下り、仲人の小野寺(笠智衆)を訪ねる。
小野寺は言った。
「いざとなると、会社なんて冷たいもんだし、
やっぱり女房が一番アテになるんじやないかい」と。
笠智衆が言うとなんでも説得力があるから敵わん。(^^♪

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山に囲まれた田舎の三石に着任し、仕事を始める。

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ある日、工場から下宿へ帰ると、妻昌子の姿があった…。

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物語はともかく小津映画はいつも限りなく懐かしい。
どうしてなのか?

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誰でも知ってることだが、
むかしは映画のことを活動写真と言った。

いや、映画ということばが一般的になってからも、
ほんとに映画が好きな映画人は、
映画とは言わずに「写真」「写真」と言った。

小津安二郎はその典型で、
可愛がった笠智衆にも事あるたびに、
「笠さん、ぼくは君が撮りたいんじゃないんだよ。
写真が撮りたいんだよ」と、ダメ出ししていたという。

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じゃあ写真ってなあに?

一言でいえばたぶん、生きているものを殺す、ということだろう。
まだ生きているものの息の根を止める。殺す。
殺して、死んだものとして、紙切れに定着させる。
それが写真なんじゃないかと思う。

実際、写真が入ってきた維新前後のころ、
みんな写真を撮られることをとても怖がった。
写真に「殺される」「魂を抜かれる」と思ったからだ、
と、よく言われているしな。(^^♪

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そして小津映画が、
私たちにいつも懐かしさを感じさせるのは
小津映画がまさに写真だからだ。
そこに「死」が定着されているからだという気がしてしようがない。

けして昔懐かしい風景が映っているからでもなければ、
懐かしい俳優さんたちが出ているからでもない。
懐かしい古典的な物語が展開されているからでもない。
そのことだけは確かだ。

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小津安は、カラー映画が主流になってからも
白黒映画にこだわりつづけた監督だが、
それもひとえに白黒のほうがより「死」を感じさせるからだろう。

色のない世界…、死の世界…。

もう少し言うと、小津安は「死」の側のほうから「生」の世界を見たがった。
そのため白黒にこだわった。映画ではなく「写真」にこだわった、
というのが私の考えだ。

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「早春」はその意味では、
とても残酷な映画だよなあ、とおもう。

「東京物語」なんかだと、老いや死が主題だから
その手法にそう残酷さはかんじないですむが、
「早春」は老いや死にはまだほど遠い青年たちを描いた物語だからだ。

青年たちの物語を描きながら、同時に、
その青年たちを死の遥か彼方に押しやって撮っているからだ。

ともあれその写真の見事さにはただただ驚嘆するしかない。


■144分 ドラマ
監督: 小津安二郎
製作: 山内静夫
脚本: 野田高梧 小津安二郎
撮影: 厚田雄春
美術: 浜田辰雄
衣裳: 長島勇治
編集: 浜村義康
音楽: 斎藤高順
出演
淡島千景 杉山昌子
池部良 正二
高橋貞二 青木大造
岸恵子 金子千代
笠智衆 小野田喜一
山村聡 河合豊
藤乃高子 青木テルミ
田浦正巳 北川幸一
杉村春子 田村たま子
浦辺粂子 北川しげ
三宅邦子 河合雪子
東野英治郎 服部東吉
三井弘次 平山
加東大介 坂本
須賀不二夫 田辺
田中春男 野村
中北千枝子 富永栄
中村伸郎 荒川総務部長
永井達郎 田村精一郎
宮口精二 三浦勇三
長岡輝子 母さと
菅原通済 菅井のツーさん
山本和子 本田久子
諸角啓二郎 辻

小津安二郎が野田高梧とともに書いたシナリオを監督し映画化。不倫に揺れる昭和30年代のサラリーマン夫婦を描く。
蒲田に妻と住む杉山正二は、丸ノ内への通勤途中で知り合ったサラリーマンたちと仲良くなり、退社後に遊びに行くのが日課となっていた。妻は退屈な毎日から逃れるように、おでん屋を営む母の実家へ帰ったりしている。通勤仲間と出かけた江ノ島で、杉山は金子千代と接近。千代の誘惑に耐えきれず、関係を持ってしまう。二人の関係に気づいた杉山の妻は家出して、旧友のアパートに転がり込んだ。同僚の死をきっかけに、杉山は自分の生き方を振り返り、千代と別れようと考え始める。ちょうどその頃、会社で地方工場への転勤話が持ち上がった。

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