夜 (1961)

[016] アントニオーニに狂った……。

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アントニオーニは
10代後半から20代にかけて私がもっとも偏愛した監督。

自分でもなんで狂ったのか、いまでもよくわかっていない。
「愛の不毛を描く監督」だから……?
わからん。
ただとにかく映像が好きなのだ。
その映像につま先からてっぺんまで痺れてしまうのだ。

光と影。白と黒。
それがアントニオーニの映像の核。

しかもけして人物を映像の中心には置かない。
人物はたいてい映像の端っこ。
そして背景はいつも、イタリアの「石」の街、「石」の壁。

この作品でもっとも象徴的なショットは、
スクリーンのほとんどがビルの壁で、左下の
ちょっとだけ見える道路に人物・ジャンヌ・モローが配置されたショット。

背景が自然だと、
人間の気配はその自然に溶けてしまいがちだが、
「石」(オブジェ)が背景だと、人間の気配がわかる。
いや、人間は気配なのだということがよくわかる。

アントニオーニの作品は
ほんとうにそのことがよくわかるのだ。

マストロヤンニの背景に光(白)が溢れ、
マストロヤンニ自身は影(黒)として、
「影の動き」として描かれるところが、その象徴的なシーン。

光と影、白と黒の対比は音にもよく現れる。

アントニオーニはいつも街の騒音を取り入れる。
そして次の瞬間、不意にその音をなくす。
と、無音の状態(沈黙)がひどく神々しく感じられてくる。

視線の問題もおなじ。

アントニオーニは、
人物とはなんの関係もない人物をよく取り込む。
偶然をなにかの必然であるかのように描き出す。
そうやって人物をつねに相対化してみせることを忘れない。

こうした映像を駆使することで、
アントニオーニは人間はあたかもこの世界の
「脇役」にすぎないかのように描く。

その視線に私はしびれるのだ。


ところで、モニカ・ヴィッティ。
10代から20代にかけてやはり私がもっとも偏愛した女優。
いや、やっぱり、すごい。
豹のような眼差し。
いまでも観ると、吸い込まれて気絶しそうだ……。

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[016] 122分 イタリア/フランス ドラマ

監督: ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本: ミケランジェロ・アントニオーニ
エンニオ・フライアーノ トニーノ・グエッラ
撮影: ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ

出演
マルチェロ・マストロヤンニ
ジャンヌ・モロー
モニカ・ヴィッティ
ベルンハルト・ヴィッキ

結婚して十年になる作家とその妻が、病床にある夫の友人を見舞った。彼の姿を見て、作家の妻は心が傾いていくのを感じる。それは同時に、夫婦の絆が失われていくことを意味していた……。平穏な夫婦生活に潜む危機を描いた作品。


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