夢みるように眠りたい (1986)

[043] 林海象の映画と人間への愛情が溢れかえった素晴らしき傑作。

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もしかしたら林海象は、
デビュー作で生涯最高の映画を撮ってしまったのかもしれない、
という気がしてしょうがない。
小説家などにはままあることだけど。

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というのも、
ひとつは、この作品の手法は二度と使えないから。

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もうひとつは、
この手法は映画のはじまりの手法で、
ごく普通に考えると、
映画人が最終的に到達する、
あるいは最終的には回帰するしかない手法だから…?

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実際、林海象は、
以後、この作品を超える作品は撮れてないような気がする。
全作観れてる訳ではないので言いきることはできないのだが。

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といってダメだと言ってるわけじゃないからね。
生涯、1本だけでも、これだけの映画を撮れれば
もう、ものすごいことなんだよね。
映画史に残る傑作を撮れない監督なんて
けっこうたくさんいるわけだから…。

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作品は、映画のはじまり同様、モノクロ、サイレント(無声)。
セリフはサイレント時代そのままに、「字幕」。

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つまりセリフは最小限度。
それだけ物語を単純化してるってこと。
単純なのにものすごいことを伝えられるってこと。
これは基本。

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と同時に、映画に俳優の声(人間)は邪魔ってこと。
たしかに人間が映ってるんだけど、
映画はどこまでも写真なんだ、映像なんだってこと。
これも当たり前。基本。

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といっても全然音がないわけじゃなくて、
セリフ(人間の声)以外の、物音、音楽などはあって、
その使い方がほんと絶妙なんだよね。

そしてトドメが、
映画(の物語)を現実に侵食させてみせたこと。

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「夢みるように眠りたい」「死にたい」という
人間の最終的な欲望を
みごとに実現させてみせたこと。

文句なしに見事。大傑作!

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佐野(史郎)ちゃん、
あなた、ほんと幸せもんだよ、
こんなにいい映画でデビューしちゃったんだからさあ。

私の大好きだった吉田義夫、大泉滉も観れて
ほんとに幸せです。

林海象さん、ありがとう。ありがとう♫


■86分 映像探偵社 ミステリー/ドラマ

監督: 林海象
製作: 林海象 一瀬隆重
プロデューサー: あがた森魚 古沢敏文 長田忠彦
脚本: 林海象
撮影: 長田勇市
美術: 木村威夫 桜井陽一 藤木光次
編集: 長田勇市 林海象
音楽: 浦山秀彦 熊谷陽子 佳村萌 あがた森魚

出演
佳村萌 月島桔梗
佐野史郎 魚塚甚
大竹浩二 小林
松田春翠 赤柿独楽天
吉田義夫 松之肋
深水藤子 月島桜
大泉滉 手品師
あがた森魚 手品師
小篠一成 手品師
中本恒夫 片岡兄弟
中本龍夫 片岡兄弟
十貫寺梅軒 回転屋
遠藤賢司 駄菓子屋
草島競子 櫛屋老婆

当時、無名だった林海象が、モノクロ、サイレントで撮った昭和初期の浅草を舞台にしたミステリー。佐野史郎の初主演映画でもある。
私立探偵の魚塚は、月島桜という老女から、執事、松之助を通して、誘拐された娘、桔梗を探してほしいという依頼を受ける。浅草の町を調査するうち、次々と仕掛けられた謎を解いていく魚塚。やがてこの事件は、未完に終ったサイレント映画「永遠の謎」のストーリーにそって展開し、魚塚は、娘を探しているのではなく「永遠の謎」のラスト・シーンを追っていることに気づく。この映画は日本で初めてほんものの女優が主演したものだったが、警視庁の検閲に妨害され、ラストシーンの撮影が出来ず、葬り去られたものだった。魚塚が月島桜の家を訪ねると、失われたラストシーンの為のお膳立てがなされていた……。

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