悪い男 (2001)

[045] ヤクザに愛なんて……。


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「春夏秋冬そして春」が面白かったので、
キム・ギドク をもういっちょうと思って観たんだけど、
うん、面白かった。イケた。
ちょっとタケシの映画観てるみたいだったけど、
いい監督だなあ……。

ラストシーン近くでハンギ(チョ・ジェヒョン)が
「ヤクザに愛なんて……」
と、はじめて声を発するんだけど、そうだよね、
ヤクザが堅気の、純真な女子大生を愛しちゃだめだよね。

でも愛しちゃった……。

と、やっぱり、こうするしかないよね。

女子大生に出来心(拾ったサイフから金を抜き取る)起こさして、
それを契機に
自分の住んでるヤクザ(悪)の世界に突き落とすしか……。
突き落として、ラストシーンみたいに、
売春婦とヤクザとして生きていくしか……。
ヤクザものらしく、もう徹底してヤクザな愛のかたちを生きるしか……。

女子大生のソナ(ソ・ウォン)からすると、もうめちゃくちゃ……。
殺してやりたいと思うんだろうけど、だんだん気づくんだよね、
ハンギの自分にたいする行動がじつはとことん「無償」だってことに。
元恋人(学生)?の愛とは全然違うことに……。

あの野郎みたいに、
ハンギはけして自分をホテルに連れ込もうとしたり、
押し倒したりしないし……。

ソナのからだはどんどん汚れていく。
自棄になって自分からも汚していく。

でも、とことん汚れても、とことん汚しても、
自分を見つめているハンギに気づく。
そして、そうやっていくうちにはじめて気づく、
汚れたからだを超えて動いていくものがあることに……。
「無償の愛のかたち」があることに……。

言いかえると、
ソナは、イノセンス(無垢)な心身が壊れてはじめて、
それまで見えなかった何かが見えてくる……。

実際、
女子大生ソナと男学生の恋より、
娼婦ソナとヤクザ・ハンギの愛のほうが
なんか全然人間らしくていいじゃない……!
というふうに見えてくるんだねえ……。

まあ、そういうふうに創らないと映画にはならないだろうけど、
このあたりのことは、
2人の海辺のシーンに象徴的によく描かれている。

いやあ、
「悪い男」を撮ったキム・ギドクが
「春夏秋冬そして春」を撮るのもむべなるかなだよねえ……。

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●「ジュノ」さん
かもしれませんね……。
いずれにしろ
キム・キドクの作品、女性には「?」の傾向が強いようですね。
男性的すぎるせいかなあと思います。
三島由紀夫をもっと過激にしたかんじ……?
実際、かれは軍隊がすごく好きだったそうですし……。

●チェブさん
またまたうれしいコメントに感激です!
いいですよね、キム・ギドク……!!
倒錯してるかもしんないけど(笑)、ものすごい愛を感じます、
ハンギ(=キム・ギドク)には……(笑)。

●ことさん
そうですか、「悪い男」をごらんになってショックを…。
ギドク・ファンの私としてはめちゃくちゃ嬉しいです。
かれほど自分を徹底的に凝視して作品を作る作家は、
そんなにいないのではないかと思います。
本人は「自分は病気だ」なんて言ってましたが(笑)、
ことさんがおっしゃるように純粋なんだと思います。
そのことを意外に女性のほうがわかったりしているので、
私としては一層嬉しくなります…(笑)。
ギドク、最初はチェ・ミンシクで撮りたかったんですか!
チョ・ジェヒョンは常連で使っているので、たまには、
と思ったんですかねえ。
もったいない、ミンシク、1本逃したなあ、と思います(笑)。
「アリラン」私も観たかったんですが、そうですか、
ようやく買い付けを! 嬉しいですね、はやく観たいです。

●ことさん
そうですか、3月にいよいよ!
ぜひ観たいと思います。札幌にも行きますように!(願)
「ブレス」と「悪い女」で年越しを…!(笑)
ギドク、ほんといろいろと意表をついてきますよね。
昨年夏、学生たちに「魚と寝る女」を見せたら、
けっこうみんな面白く見てました。嬉しかったです…。

ありがとうございました。

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103分 韓国 ロマンス/ドラマ

監督: キム・ギドク
脚本: キム・ギドク
撮影: ファン・チョリョン
音楽: パク・ホジュン

出演
チョ・ジェヒョン ハンギ
ソ・ウォン ソナ
チェ・ドンムン ミョンス
キム・ユンテ ジョンテ
キム・ジョンヨン アンヒ

近年、各地の映画祭で高い評価を受けている韓国のキム・ギドク監督が、激しく、かつ倒錯した男女の愛憎を描いた衝撃の問題作。愛する想いをうまく表現できないヤクザ男と、その男の策略で娼婦にされてしまった女が辿る苛烈な運命を鋭利にしてスタイリッシュな映像で語っていく。主演は「Interview」のチョ・ジェヒョンと本作が2本目の映画出演となる新進女優ソ・ウォン。
売春街を取り仕切るヤクザの頭ハンギが、昼下がりの繁華街を彷徨っていた。やがて彼は一人の女性に眼を奪われる。しかし、その女子大生ソナはハンギに侮蔑の視線を向けると、待ち合わせていた彼氏のもとへと駆け寄る。その時、ハンギは強引にソナの唇を奪う。周囲は騒然となり、取り押さえられたハンギは男たちから袋だたきにあう。ソナにも唾を吐かれて罵られ、深い屈辱を味わう。抑えがたい復讐心と所有欲に駆られたハンギは、その後ソナを策略に嵌め、売春宿へと売り飛ばしてしまう。そして、見ず知らずの男に抱かれるソナを毎日マジックミラー越しに見守るのだった…。

この記事へのコメント

ジュノ
2008年04月09日 07:02
お早うございます。

山崎さんのお勧めで観ましたよ。

この作品は日本映画なら主人公の娼婦とヤクザで終わらないのでは(?)と思いましたがどうでしょうか?

主演のチョ・ジェヒョンさんはビョンホンさんのドラマ”Happy Togetyer”でも人の良い憎めないヤクザの役で出てました。

キム・ギドク監督の作品”うつせみ””サマリア”は随分前に観てたのですが、今回この作品と”春夏秋冬そして春”を観させて頂きました。

私にはいまひとつ???って感じでしたが。

”うつせみ”は”ひまわり”のイ・スンヨンさんが出てますよ♪
チェブ
2008年06月09日 10:29
山崎さんこんにちは

今日がお芝居の楽日かなと思います・・お疲れ様でした。
「悪い男」よかったですよ!久々にキム・ギドクワールドに浸りました。のっけからのキスシーン・・・ハンギはあの時から、いえ最初に彼女を見た瞬間からカタギの女子大生を愛しはじめてるんですね
ヤクザであるが故に「愛」なんてと自分の気持ちを封じ込め(自分気持ちに気づかないふり)それでも側に置きたい、見守りたい・・・その不器用な愛し方
悪い女もそうだったけど…ハンギはワルイ男じゃなかった。
それにしても終盤まで台詞なしのハンギ・・・すごいですね。「ヤクザに愛なんて」それだけの台詞なのに・・凄い。売春をすることで二人の愛が成り立っている?ヤクザな世界の愛し方
それでも最後に海岸沿いを走り去る車の映像をみると、なんか暖かい感じ、爽やかな感じさえ受けてしまう。

やっぱりキム・ギドク監督はいい!です。
こと
2011年09月18日 11:49
この映画を数週間前に観て、暫し軽いショック状態に陥り、次に借りてきたキム・ギドク作品をすぐ観ることができなかったくらいです。
本当に稀にみる素晴らしい映画でした。

華があって演技が上手い俳優の場合、そのオ-ラが強く出過ぎてしまうと、物語の核心が薄れてしまうことも
あるので、観る側としては惜しいなと思う作品もあります。

その点、キム・ギドク監督の映画は、俳優のオ-ラに負けてしまうことはありません。
100%自分自身の中にあった映像を緻密に具現化している。
ギドク監督が観客に対して投げたボ-ルがきちんと観客の心の深部までに見事に命中させてくれてます。
天性の才能があり、人一倍純粋な方なんだと深く感じました。

思い出しましたが、3年前に「絶対の愛」を観てました。その時はこの監督だなんて知らなかったんですけど、映画の断片が記憶にあるので、印象の深い作品だったのでしょう。ただの暴力や一時の情愛作品じゃないところが凄い。

俳優を"生かすも殺すも"脚本と演出なんだということが改めて思い知りました。
キャストは最初、チェ・ミンシクにしたかったらしいのですが、都合がつかず、チョ・ジェヒョンになったのですね。この役はチョ・ジェヒョンで大正解だった思います。

これから少しずつ過去の作品も観て行こうと思ってますが、今、最も一番見たいのは、ドュキュメンタリ-映画の「アリラン」。
嬉しいことに今年、日本で買い付けしたらしいですが、きっと上映館は東京に限られるでしょう。残念です。
キム・ギドクの切なる叫びを受け止めたいです。

真っ当な考え方をもった方で、偏った純粋さのある方だと思います。

このような思いの賛美を多少なりとも理解してくださるのは、山崎さんしか知らなかったものですからこの場をお借りして発散させていただきました。感謝。
こと
2012年01月10日 00:43
山崎様、初春から嬉しいお知らせが!
『アリラン』3月(東京都)から順次全国ロ-ドショ-
ですって!(ウレシ~)
http://arirang-arirang.jp/

監督自身が一人3役、いや"正確"には4役やっているって、おっしゃってました
どうか、北海道にも来てくれますように(お願い☆)

年末は「プレス」と「悪い女」で年越しました
作品ごとにいろいろ変化があるので、個人的に好きなもの、そうでもなかったものもありますが、なんといっても毎回、意表をつく導入部分が凄すぎ。
物語りも結末が予想しにくいのが、ほとんどなのでワクワクします。

山崎さんも絶対観て下さいね!!!

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