殺人の追憶 (2003)

[033] 「普通のひと」の恐怖……。

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いやあ、これもほんといい映画だよなあ……。

流行のCGなんか一切使わず、
最初から最後まで、すべてが「手作り」の映画。
その手作り感がほんといいの……。

オジサンに戻って言うと、
邦画の古き良き全盛時の映画みたい。

だけじゃなくて、
田園の風景も、人間の様子も、
刑事たちの取調べの様子も、物語の進行のさせ方も、
昭和30年代から40年代にかけての日本みたい……。

俳優たちが日本語で喋って、
焼肉をつつくシーンさえなければ、
ほんともうまったく当時の「日本」そのもの……。

思わず懐かしくて抱きしめたくなっちゃった……。

しかもラストシーンがいいよなあ。

元捜査員(ソン・ガンホ)がたまたま
最初の事件の現場に立ち寄って溝を覗いてると、
子どもがやって来て、
この間もオジサンとおんなじように溝を覗いてるひとがいた、
なにしてるの? と聞くと、
昔オジサンがここでやったことを思い出したもんだから……、
と言ってたと告げる。

つまり真犯人が現場に戻ってきたわけ。

で、元捜査員がハッとして、
その子に、その男はどんな男だったかと尋ねると、
その子、考えたあげく、
「普通のひとだった」って答えるんだよね。

普通のひと……、
普通のひとが真犯人だった……。

怖いよねえ……!

捜査員たちは事件当時、
「普通のひと」ではないひとたち、
「徴のある」ひとたちを次々に容疑者としてあげ、
自白を迫っていったんだね。

でも、じつは真犯人はそういう徴のあるひとじゃなくて、
なんの徴もない、ほんとにごくごく普通のひとだった……、
という結末なんだけど、怖いよねえ。
それこそ、いまの日本みたいで……。

日本じゃいまや「普通のひと」、
「普通の子」がいちばん怖いもんねえ……。


話変わって、ソン・ガンホ。
「JSA」もよかったけど、これもいいよなあ。

この顔とこの体型だと(ごめん)、
まあ、日本じゃけして主役なんて回ってこないよね。

韓国の映画界の凄いとこは、
そういう俳優を、間違っても美男とは言えないような俳優を、
どこにでもいそうなひとを平気で主役にしたりするところ……。
その俳優の演技力だけを問うところ……。

ほんとはものすごく当たり前のことなんだけどねえ……。

日本映画が衰弱した一因は、
美男美女しか使わないからだって思わない?
文化の程度が知れない?

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●「sino」さん
うわっ、むつかしい質問ですねえ……。
あくまでも私の推測ですが、
たけしもギドクもけしてビョンホンのこと嫌いじゃないと思います。
俳優としてはじゅうぶん評価していると思います。
でも自分の映画に使うかどうかとなると、「?」かなと思います。
理由は単純です。ふたりとも美形の俳優……、
とくに男優を使うタイプの監督じゃないからです。
2人とも映像を絵のように……、もっと言えば
「ゴツゴツした絵」のように撮りたがる監督だからです。
それはもうしょうがないんじゃないでしょうか。
持って生まれた感覚というか、資質みたいなものですから……。
もちろんビョンホンにはビョンホンの資質があるわけで、
お互いに認め合っても、資質の相性みたいなものがあって、
なかなか一緒に仕事をやれないことはよくあることだと思います。
ついでですが、私はたけしもギドクもビョンホンも大好きです。
きっと根がいい加減なんだと思います……。

●ライラックさん
ラスト、ずるいと言えばずるいですよね。
わっ、やれたあ。でも、真犯人捕まえてよお……、みたいな感じ(笑)。
ソン・ガンホ、イ・ビョンホンと同じくらいいい俳優だと思っています。
ただ残念ながら
ビョンホンみたいなカリスマにはなれないと思いますが……(笑)。

●スクリーンさん
「ガンホ氏の濡れ場シーン」
必要だったのではないでしょうか(笑)。
ごくありふれたセックスシーンがはさまれることで
事件の異常な性愛が強調される仕組みになっているのだと思います。
「日本の冤罪事件」
冤罪事件に限らず、まあ、いまでもだいたい似たようなもんだ、
と思っていたほうがいいんじゃないでしょうか(笑)。
「ラスト、気になって、消化不良」
はい、告白しますと、私も同じような気分でした(笑)。

ありがとうございました。

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130分 韓国 サスペンス/ドラマ

監督: ポン・ジュノ
プロデューサー: チャ・スンジェ ノ・ジョンユン
脚本: ポン・ジュノ シム・ソンボ
撮影: キム・ヒョング
音楽: 岩代太郎

出演
ソン・ガンホ パク・トゥマン
キム・サンギョン ソ・テユン
パク・ヘイル パク・ヒョンギュ
キム・レハ
ソン・ジェホ
ピョン・ヒボン
パク・ノシク
チョン・ミソン
イ・ジェウン

韓国で80年代後半から6年間に10人の犠牲者を出し、空前の捜査態勢にもかかわらず迷宮入りしてしまった実在の未解決連続殺人事件を基に映画化したサスペンス。事件を追う2人の刑事が次第に心理的に追い詰められていく様が乾いたユーモアを織り込みつつ緊迫感溢れるタッチで綴られる。監督は「ほえる犬は噛まない」のポン・ジュノ。出演は「シュリ」のソン・ガンホと「気まぐれな唇」のキム・サンギョン。
1986年10月23日、ソウル南部の農村で手足を縛られた若い女性の無惨な変死体が発見される。また数日後には、同様の手口で2人目の犠牲者が出た。さっそく地元の刑事パク・トゥマンら捜査班が出動。だが、懸命な捜査も空しく、一向に有力な手掛かりが掴めず、捜査陣は苛立ちを募らせる。その上パクと、ソウル市警から派遣されたソ・テユン刑事は性格も捜査手法もことごとく対称的で、2人はたびたび衝突してしまう。こうして捜査は行き詰まり、犠牲者だけが増えていく。そんな中、ついに一人の有力な容疑者が浮上してくるのだが…。

この記事へのコメント

sino
2008年04月07日 02:36
はじめまして!
韓国映画の入口は、すみません、ビョンホンでした。
でも、”JSA”の ガンホさんは魅力のある美味しい役どころで、印象に残り、主役級の俳優さんに納得しましたよ。
美男じゃないけど、この人なら見たいって俳優さんの一人です。”殺人の追憶”題名とガンホさんという事でテレビで観ました。未解決の実在の事件を扱っている感触のある映像、空気、陽射し、汗の感じが印象に残っています。捜査もかなりメチャクチャで、うっかりしてると犯人にされそうな勢いでしたよね。やっぱり、最後が秀逸と思いました。犯人らしき男を演じるパク・へイルも印象的でした。舞台出身って感じでしたよね。山崎さんがここで取り上げてくださったビョンホン・ガンホさんの映画、奇しくも観てる作品ばかりなので、お邪魔したいと思ってました。でも、手持ちの札はもうほとんど無いので、じき、追い越されますね。ギドク監督のの”悪い男”途中からですが、テレビで見れました。玄人受けするレベルの高そうな映画ですが・・・、ギドク や たけしは、ビョンホンを使わないって思いますか? 惚れてるもんで、すみません。 
ライラック
2008年05月13日 17:12
山崎さん、こんにちは。
山崎さんおっしゃるように、古き良き日本の作品を見ているような・・・だから、感情移入もしやすかったのでしょうか。
冷や冷やしたり、取調べとかも、それはないんじゃない?と呟いてみたり。
さんざん犯人探しを一緒にしている気分にさせておいて、あのラストシーン。
怖いな~、と思いました。すぐそばに犯人いるようですもの。
犯人の存在だけを強調して、それも普通の人ですね、で、おしまい。
余韻が残る、なんてものではなく、後が気になって仕方がなかったことを覚えています。
ガンホさん、存在感抜群です。
スクリーン
2008年06月01日 00:45
山崎様 こんばんは

まだカンヌ国際映画祭の余韻も残り、入手した全ての映像、ニュース資料もまだ消化していないのですが、ここらで 少し他の作品も観たくなり,本作品を観賞。

うん やはり ガンホ氏 旨い 味がありますね。
そして、ラスト、普通の人が一番怖い。その通りです。
丁度最近の事件 セキュリィテーがしっかりしてるマンションの隣人が容疑者(事件後平気な顔でインタビュー)普通の会社員でした。年頃の娘を持っているので他人事ではありません。
さて本題の 作品に戻りまして、。。
映画は最初のつかみが大事だなと いつも思います。
本作品は 子供たちが出てきて、バッタを捕まえる。。タイトルとムム。。無関係??ガンホ氏が、荷車に乗って登場。のどかな田園風景=殺人  めったに無い(いえ 私が観るガンホ氏作品では初めてかな)ガンホ氏の濡れ場シーン(あまりストーリーには影響ない気がしますが必要だったのかな?)^^
パク刑事と犯人探しを一緒にしてる気分で目が離せませんでした。
スクリーン
2008年06月01日 00:49
それにしても 韓国のこの時代の取調べ、こんな感じだったのでしょうかね。(夏物語も酷かった)日本の冤罪事件もこんなものかな。

ラスト 気になって 消化不良。未解決時間だからこんな終わり方もしょうがないかな。
どこに悪魔が潜んでいるか。。怖いです。

ガンホ氏の作品 現在日本で上映中です。
昨年カンヌで主演女優賞受賞のチョ・ドヨン共演
シークレットサンシャイン(韓国題名 蜜陽)時間が出来たら劇場で観ようかなと思ってます。

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