男はつらいよ 知床慕情 (1987)

三船敏郎の前で渥美清がかすんだ?

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中野に住んでいた頃、
「寅さん」は北口にあった松竹映画館で観ていた。

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老若男女、みんなして同じところでゲラゲラ笑い、
同じところでオイオイ泣いてたっけ。
そういう映画、「寅さん」が最後だったのかもな。(^^♪

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シリーズ第38作目。実は私の一番好きな作品。
理由はわが三船敏郎と淡路恵子のラブロマンスが最高だから。
それにホラ、私の大好きなすまけいがたっぷり観れるからだべ。(^^♪

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舞台は知床半島の斜里。

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寅さんはたまたま、
獣医・上野順吉(三船敏郎)のポンコツ車に乗せてもらったのが縁で、
彼の家に厄介になることに。

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嫌われ者・順吉はひとり暮らし。男二人して茶を飲んでいると、
そこへ順吉の世話を焼いてる「隣の女」が現れる。
わあ~、淡路恵子さんだあ~!と騒ぎたくならないカニ。(^^♪

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隣の女は実はスナック「はまなす」のママ悦子さん。
店は斜里町のアホ男たちの溜まり場で、
そこにはいつもおらの船長さんがすまけいが来るのだあ~!
と騒ぎたくならないカニ。(^^♪

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翌日、根性曲がりの男・順吉の不機嫌さが増す。

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親父の反対を押し切って男と東京さ駆け落ちしたひとり娘、
りん子が離婚して突然戻ってきたからだ。
おらが竹下景子。懐かしい~♫
好きだったなあ。なんて言えばいいんだろう。その、何でもないところが(^^♪

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りん子が帰ってきて「はまなす」組は大はしゃぎ。

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その晩、娘にブチ切れるおやじ。

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「うるさい!歌なんか歌うな!」と台所にブチ切れるおやじ。

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刺身を拵えていたおらが船長は「へ?」と思わず屁をこいてしまう(笑)。

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ともあれりん子とかあちゃんの墓に参る不機嫌おやじ。

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おい、わしらにも愛のチャンスが来たぞお~、
とルンルン気分のアホ「はまなす」組。(^^♪

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なんで三船敏郎がそんなに好きなのか?
どうしてなんだろう。わかんない(笑)。
まあ、強いて言えば、「ド大根」役者だから?
実際、三船敏郎は大根役者だってよく言われた。
なにやっても、どんな映画やってもいつも同じことしかできない。ド下手って。
そんな人でも三船に魅力があることは認めてた訳だけど。

大根役者ってのは要するに芝居ができないってこと。
芝居ができないのはウソつけないってこと。
俳優の大半はウソつくのが芝居だって思ってる。
ホントはそんな気持ちサラサラないのに、いかにもあるかみたいに
演ってみせることだって。

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普段だって人間はそういう芝居よくやってる訳だから、
それが芝居だ、演技だって言えばたしかにそうなんだが、
三船敏郎は転んでも死んでも、そういうことができないひと。
そういうことに凄く異和をかんじるひと、そういうことが許せないひと。
まあ一言でいえば、徹底して不器用なひと…、子ども…。

だからいつも三船敏郎のまんまで演るんだよね。
普段も間違いなくああいう人だったと思うけど、
とにかく不機嫌で怒ったようにしか喋れないひと。
実際、生涯ずっと何かに怒ってたんじゃないかなあ。(^^♪

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そういう意味で言うと、渥美清はまったく正反対?
徹底してウソをやるひと、お芝居をするひと。
けど、それがウソだってことがもの凄くよくわかってるもんだから、
もう恥ずかしくて恥ずかしくてしようがないひと。
自己嫌悪に陥るひと。死にたくなってしまうひと。

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だからやりかたとしては「これはウソですよ」「私はウソですよ」
って端々に匂わせながらやるしかないひと。
言いかえると「わざとらしく」しかとても演じることができないひと。
結局、表現のしかたはまったく正反対だけど、
根っこは三船敏郎も渥美清も同じってことになるんだけどさ。

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じゃあ、なんで渥美さんは三船さんみたいにやらなかったのか。
たぶん自分の「素」はとても人様に見せられたもんじゃない
って思ってたんじゃないかと思う。

いまはどうか知らないが、柄本明が
財布に渥美さんのスナップ写真をお守り代わりに入れてた。
その写真を見せてもらったことがあるんだけど、そう思ったなあ。
まあ、暗いというか寂しいというか、視線があてもなくさ迷っているというか。
あの飄々としたイメージは欠片もなくて、
とてもじゃないが、こんな素顔はひとに見られたくないだろうなあって。

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そういう渥美さん、映画にもちゃんと出てる感じするよな。
100%楽しそうにやってるわけじゃないもん。
楽しそうにしててもどこか寂寥感がある。外部に対する異和感が。距離が。
だから渥美さんは、寅さんは最後はひとり旅に出ちゃうんだよな。(^^♪
渥美さんがずっと病気患っていたことと関係あるのかなあ…。

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帰る者あれば去る者あり。
悦子が、家主が店(はまなす)売ったので北海道引き払い、
新潟にいる妹と一緒に暮らすことにしたと言い始める。

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長い付き合いなのにあんた手も握ってくれなかったわね、
と言い寄る悦ちゃん♫
「いかん。いかん」とただ憮然とする、ブチ切れおやじ。(^^♪

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身辺整理のため東京へ行ってたりん子が斜里へ戻ってくる。
いいよねえ、人肌が刻み込まれた田舎の駅。こういう駅まだあるのかなあ。
そう言えば、おれ、斜里行ったことあるんだな。
と言っても通り過ぎただけなんだけどさ、シャケ釣りに行ったとき。
あの川、網走川だったのか常呂川だったのか。
帰りに斜里でカニいっぱい買って帰ったでよ。(^^♪

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りん子は寅さんに
おやじと悦子の間の秘められた愛を聞かされ、仰天。

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はい。翌日、「はまなす」組の知床半島バーベュー遠足(^^♪

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りん子も「断固行かん」と言うブチ切れおやじを騙して参加。

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頃合いを見計らって悦子ママがみんなに話しはじめる。
実はカクカクシカジカで新潟に帰ることにした、
この間、先生にはちょっと話したんだけど、
先生も「仕方ない」って言ってくれたし、と。

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みんなでギロリとブチ切れおやじを睨みつける(^^♪

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ブチ切れおやじがブチ切れる。
「俺は言わん。言わんぞそんなことは、俺は。
とにかく行っちゃいかん。反対だ。俺が許さん」(^^♪

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寅が狼に噛みつく。
「反対するその訳を言え、訳を。男らしく。
いま言わなかったら一生死ぬまで言えないぞ」と(^^♪

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おやじはついに堪忍袋の緒をブチ切る。
「行っち行かんというのは、おれが、おれが」

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緊張の一瞬。
「惚れてるからだ!」で爆だよね。(^^♪

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堪らず嗚咽する、悦ちゃん(^^ 良かったねえ、悦ちゃん♬

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感極まっておらが船長が歌いだす。

♫知床の岬に はまなすの咲くころ
 思いだしておくれ 俺たちのことを
 飲んで騒いで丘にのぼれば
 遙か国後に 白夜は明ける

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はい、おしどり夫婦の誕生(^^♪

いやいや、いいよねえ、
頑固おやじと頑固ママの、この知床慕情のシーン。
笑って笑って涙チョチョ切れ。
寅さんのシリーズの中でも最高の名シーンじゃないかと思うよ。

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え、寅さん? 帰っちゃったよ、さっさと。
「りん子様。渡り鳥は南に帰ります。
貴女様の幸せを祈りつつ」だなんてカッコつけて♫

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こら、船長、おめえが悪いんだべ。
「寅さん、あんたりん子ちゃんが好きなんでねえの」
なんてからかうもんだからさ。

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寅さん、ブチ切れおやじにはあんなこと言って説教してたけど、
あのおやじより愛の告白が苦手なんだよ。(^^♪

あ、これはラスト。寅さんの旅先、岐阜の長良川。
おら、目の前の河原でも何度か遊んでるんだわさ、20代の頃。(^^♪

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<追記>
この映画の撮影は中標津でも行われている。
その中標津はすまけいさんの故郷である。
実は私がそのことを知ったのは最近のことなのだが、
そのため私はこの作品にいっそう深い愛着を抱くようになった。(^^♪


●「チェブ」さん
寅さん、ほんと、いいですよねえ……。
お笑いをやっている俳優さん、芸人さんは基本的に
すごくまじめなひと、根が暗いひとがやってる……、
と思っていいんじゃないでしょうか。
根が暗いということば、ホントは好きじゃないんですが、
歳をとると、それが必ず表れてきます。
シリアスな芝居をやらせると、もうめちゃくちゃいいんですよね……。

●アマポーラさん
私もまったく同じです。
「用心棒」のころの黒沢明がいちばん好きです。
悔しいので今夜観ます、書きます……!
朝に強いのか弱いのか?
朝の5時~6時ころにかけて寝てお昼ころ起きてるんです。
もう若いころからの習性で、なんどか
朝型に切り替えようとしましたが、だめでしたあ……(苦笑)。

ありがとうございました。

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■107分 松竹 ドラマ/コメディ/ロマンス
監督: 山田洋次
プロデューサー: 島津清 深澤宏
企画: 小林俊一
原作: 山田洋次
脚本: 山田洋次 朝間義隆
撮影: 高羽哲夫
音楽: 山本直純
出演
渥美清 車寅次郎
倍賞千恵子 さくら
竹下景子 りん子
三船敏郎 上野順吉
淡路恵子 悦子
下絛正巳 車竜造
三崎千恵子 つね
前田吟 諏訪博
吉岡秀隆 満男
太宰久雄 社長
美保純 あけみ
すまけい 船長
赤塚真人 マコト
冷泉公裕 ホテルの二代目
佐藤蛾次郎 源公
笠智衆 御前様

北海道の知床を舞台に、無骨な獣医と居酒屋のおかみを結びつける寅次郎の奮闘を描くシリーズ第38作目。“とらや”に久しぶりに帰ってきた寅次郎だったが、例のごとく口論が始まり、また飛び出してしまう。やって来たのは北海道知床。無骨な獣医・上野順吉と出会いそのまま彼の家に泊まることに。順吉はやもめ暮らしでスナック“はまなす”のママが身の回りの世話をやいていた。そんなある日、順吉の娘・りん子が戻ってきた。駆け落ちして東京で暮らしていたが、結婚に破れ帰ってきたのだ…。

この記事へのコメント

チェブ
2008年04月07日 16:40
山田さんこんにちは
何をかくそう私も寅さん大好きなんです。この知床旅情編は観てないのですが、近いうちに観てみますね。いろいろなところに旅していろいろな人に会ってそれでも最後はさくらやおいちゃんのところに帰ってくる。寅さんて根無し草のようでも帰るところがある。待ってる人がいる。だから旅先での出来事が生きてくる…勝手な解釈かな。
いつも飄々としてバカやって、恋もして、それが時にはおかしく時には切なく。潔いほど自分の流儀で生きているのに、人の気持ちを考えすぎるほど考えている。
そんな寅さんが大好きです。でも渥美さんは山田さんが言われるような一面をお持ちなんですね。なんだかまた寅さんに会いたくなってきました。
アマポーラ
2008年04月20日 09:46
山崎さん、おはようございます。
余談ですが山崎さんは朝に強いですか?(笑)
ゆうべBS2で黒澤明監督の「用心棒」が放映されましたね。
それを観て山崎さんの三船敏郎論を思い出してました。
やっぱり「三船敏郎」でした。でもこの作品は面白いですね。黒澤さんの作品は、この頃のが好きです。「椿三十郎」なんかも良かったなぁ~。^^

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