弓 (2005)

う~ん、三島由紀夫みたい、どんどん上昇していくなあ……?

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「うつせみ」を観て、「……?」となったんで、
慌てて次の作品のこれを観たんだけど、
正直言って、
ほんと、どうしたんだろう、まいったなあ、
という感じなんだよねえ……。

困ったなあ。
キム・ギドク、まだ映画創りはじめて10年でしょう。
10年でこんなに老いるの……?

「春夏秋冬そして夏」までは、観てると
下半身から感動が突き抜けてくる感じだったんだけど、
もうほとんどからだに入ってこないんだよ。
頭で観るしかなくなっちゃったんだよね。

なんだか三島由紀夫みたい……?
実際、三島が生きててこれ観たら誉めたんじゃないかなあ。

三島由紀夫、「肉体」を主張するわりには、
初期のいくつかの作品を除いてほとんど身体がなかったよな。
観念の操作だけで作品を書いてた……。

映画「憂国」だって、身体をテーマにしてるようにみえて
じつは全然身体感覚が欠如してたもの……。

理由はたぶんすごく単純で、
三島の身体が猥雑さを抱えていなかったから……。
幼少期、厳格な祖母に育てられたことが大きいんだろうけど。

キム・ギドクの作品が
なんで三島的な世界に上昇していくのか、わからない。
三島とは資質は間逆で、
めちゃくちゃ身体的なひとだと思うんだけど……。

論理的に推測できることは、
「春夏秋冬そして春」以降の世界とはまったく違う世界を、
身体的にひじょうに屈辱的な、
あるいは猥雑な世界を生きすぎてきたんで、
そこから遠く遠く離れようとしてるんじゃないかってこと……。

表現ってのは転倒だからさ。

かれは海兵隊を除隊したあと牧師になりたかったらしいけど、
ひょっとしたらそういうものが刻印された
自分の身体を浄化したかったのかもしんない。
贖罪しようとしちゃってるのかもしんない……。

でも、ちょっと待ってよ、ギドクさん、
これじゃもう死ぬしかなくなっちゃうよ、
なんて私はいま
かなり本気で心配しちゃってるんだけど……。

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●スクリーンさん
すぐに思い浮かぶのは「飼育」という小説だと思います。
実際にあった事件のドキュメントみたいな小説ですけど、
若松孝二をはじめ、何人かの監督が競演するかたちで撮ってます。
キム・ギドクはそれでもやっぱり鬼才、天才なんだと思いますねえ。
鬼才とか天才ってのは、要するに並外れた才能を持っている……、
言いかえると、無意識がひとより桁外れに大きい、
あるいはその無意識がひどく不安定だ、荒れてる……、
ということなんでしょうけど……。
私はもちろんかれの創る映画も面白いと思うんですが、
キム・キドクという人間にすごく関心があるって感じです。
幼児期、どういうふうに育てられたのかなあという……。
ごらんなったらぜひご感想を聞かせてください。

ありがとうございました。

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90分 韓国 ドラマ/ロマンス

監督: キム・ギドク
製作: キム・ギドク
脚本: キム・ギドク
撮影: チャン・ソンベク
編集: キム・ギドク

出演
チョン・ソンファン 老人
ハン・ヨルム 少女
ソ・ジソク 青年
チョン・グクァン 青年の父親

「サマリア」「うつせみ」の鬼才、キム・ギドク監督が、海に浮かぶ一艘の船に2人だけで暮らす老人と少女のいかがわしくも美しい愛の物語を神秘的かつエロティシズム漂う独創的なタッチで描き出す異色のラブ・ストーリー。少女役には「サマリア」で注目を集めたハン・ヨルム。
広い海に浮かぶ船の上、老人と少女は2人だけで穏やかに暮らしていた。10年前、どこからともなく連れてきた少女を、老人は慈しむように大切に育ててきた。少女が17歳になったら2人は結婚する予定だった。3ヵ月後に迫ったその日を、老人は心待ちにし、夢みてきた。老人は船を釣り人に開放し、生計を立てていた。老人が持ち歩く弓矢は、少女のために奏でる楽器にもなれば、客の中にいる不届き者から少女を守る武器ともなった。老人と少女の固い絆はいつまでも変わらないと思われた。ところがある日、少女が釣り客の青年に淡い恋心を抱いたことから、2人の穏やかな関係は大きく揺らぎ始める……。


この記事へのコメント

スクリーン
2008年04月13日 21:17
キドク監督 こんな作品もあったのですか。
紹介のストーリーから ある作品(小説)を思い浮かべました。 題名が出てこない。歳の離れた女性を、囲い、自分の思いのままに育てていく話。>もしかして、山崎さんが仰る、三島由紀夫さんの小説だったかな。

いつか 観てみたい作品ですね。
それにしても やはり 奇才=鬼才 監督なのでしょうか。この監督は。。。

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  • mini review 06172「弓」★★★★★★★★★☆

    Excerpt: ヨーロッパの映画祭を中心に高い評価を受ける、韓国の鬼才キム・ギドクの監によるラブロマンス。海に浮かぶ船の上で、2人きりの生活を営む老人と少女の愛ときずなが神秘的なタッチで描かれる。主人公の老人を演じる.. Weblog: サーカスな日々 racked: 2008-07-10 19:57