コースト・ガード_1 (2001) 韓国

[089]ギドクが描く38度線の狂気と、雷に打たれるかのようなその映像美

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> (2008/04/26の記事に加筆)


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キム・ギドクは
自ら志願して海兵隊へ入り5年間過ごしたという。
なぜ自ら志願したのか知らないが、
米軍基地のある村で生まれ育ったことから察すると、
なんとなくわからないでもない。
村から脱出を図ったつもりだったけど、そこは地続きの
海兵隊だったという…。
自伝的作品「受取人不明」を観る限り、極貧生活で
お金もなかっただろうしね。

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これはその海兵隊経験をもとに創られた作品で、
「受取人不明」の姉妹編とも言える傑作。

コースト・ガードというのは沿岸警備隊のことで、
北朝鮮のスパイ侵入を防ぐべく、
日夜、湾岸を警備している兵士たちと、
隊のそばにある村人たちとにまつわる物語。

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舞台は東海(トンヘ)の海岸。

主人公の一人はこのカン・ハンチョル上兵…、チャン・ドンゴン。
ドンゴンはすでにスターだったんだけど、
ギドクの作品に出たい、激安のギャラでいいからって
ギドクに頼みこんだらしいよ(^^♪
俳優も気持ち、志だよね。ドンゴンの最高傑作だもん(笑)。
ちなみに後方にいるのはカン上兵の親友でもある
キム上兵…、キム・ジョンハク。

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カン上兵は登場した時からすでに常軌を逸している。
北鮮のスパイ、特殊部隊の侵入を阻止すべく
休憩時間でもひとりたゆまぬ訓練を続けてる訳。
こういう絵柄を拵えて自分のシャツに刷り込んだり(^^♪
ま、米軍基地のある村からやってきた
ギドク本人をちょっと髣髴させるっていうかさ。
この絵も絶対ギドク本人が描いたんだべ。欲しいよお~!(笑)

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もう一人は村の女のミア…、パク・チア。
この「コースト・ガード」がギドク作品初出演で、
以降、ギドク作品の常連になった女優。
「ブレス」(2007)なんかも最高で私の超お気に入りなんだけど、
他の監督彼女をあまり使わないよな。
才能あり過ぎて使う勇気がないのかもな(^^♪
ちなみに左はミアの恋人のヨンギル。

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左の男はミアの兄チョルグ…、ユ・ヘジン。
そう。この映画で私は彼の大ファンになり、
以後、ヘジンの追っかけをやってる訳だわさ(^^♪
大久保鷹+十貫寺梅軒みたいなタイプで、
存在そのものが素敵なんだべさ(笑)。

あ、そうそう。チョルグとミアは海岸で
村人相手に居酒屋みたいなのをやって生活してるんだよね。

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警告版。「警告!夜7時以後、こちらに近づく者は、
スパイと誤認され射 殺されることもあります」と書かれているのだが、
ある夜、酔ったミアと恋人ヨンギルは鉄条網を超え、
禁止区域の海岸でセックスをする。

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と、カン上兵はスパイと誤認し、銃を乱射、
ミアの体に乗っかっていたヨンギルを殺してしまう。

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当然、家族や村人たちはカン上兵と沿岸警備隊に抗議、
非難するのだが、

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軍はカン上兵を咎めず、
任務に忠実だったとして表彰し、勲章と特別休暇を与える。
カン上兵にすれば望みに望んでいた栄誉なのだが、
民間人を射殺したショックに襲われ、そのままソウルへ。

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ソウルの友人たちは押し黙ったカン上兵に
ただならぬものを感じる。

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恋人とホテルへ行くが、鏡を叩き割ったり、
トイレに蹲って泣きだしたりする彼に薄気味悪くなって
堪らず逃げだしてしまう。

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ヨンギルの体が吹き飛ぶのを目の前で見たミアの神経も
すっかりおかしくなる。
小便を垂れ流したり、包丁で自分の髪を叩き切ったり、
水槽の魚を玩具にして遊び始めたり、と。

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そして警備隊員たちに近づくとヨンギルと声をかけ、
誰彼見境なく誘い寝るようになる。

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カン上兵が帰隊する。
と、気づいたミアの兄チョルグと村の連中が取り囲み、
彼を散々殴りつける。

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ミアはそのカン上兵にまでヨンギルと声をかけるが、
違うと呟いて立ち去る。
カンはヨンギルを射殺した兵士だと直感したのかどうかは
わからない。

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カン上兵の行動も常軌を逸してくる。
部下をぶん殴ったり、銃とバイクを盗んでソウルへ向かったり。

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ついに医師に通常の勤務は無理だと診断を下され、
除隊処分を受ける。

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ミアの兵士に対する誘惑は止まらない。
兵士たちも彼女がおかしいのを良いことに、
彼女を誘って寝たりするようになる。

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兄チョルグはそんなミアにまだ気づいていない。

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ある日突然、カン上兵が隊に戻って来る。
当然、舎には入れないのだが、

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彼は外で待ち受け、元部下に訓練を命じたり、
罰として殴ったりする。
そんなカン上兵を上官が止める。
部下たちもカン元上兵の狂った行動に怒り始める。

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だがカン上兵に同情する者もいる。カンと同期で、
カンがヨンギルを射殺した時に一緒にいたキム上兵だ。
部下たちは混乱、キム上兵に食ってかかる者も出る。

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その一人はカン上兵が近づいてくると、
ついに我慢できず彼をぶん殴り、痛めつけた。

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海岸で眠るカン上兵にミアが現れ、
ヨンギルと声をかけ手を引っ張る。

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カンがその手を引くと、ミアの腕がもげる。
もちろん悪夢(幻覚)を見ている訳だ。

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警備兵たちが暗闇の中、禁止区域にいるそのカンに乱射し、
手りゅう弾を投げつける。

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そして近づくとカンで、すでに完全に狂っていることを知る。

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隊は彼を入院さすべく病院に移送するのだが、
カンは一瞬の隙を狙って逃亡する。

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チョルグは妹ミアの腹が出ていることに気づき、

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包丁を片手に海兵隊基地に怒鳴り込んだ。
妹と寝た男を出せ。
出さないと憲兵隊を呼びお前らを営倉送りにしてやる、と。

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指揮官は内密にすますべく警備兵たちに
彼女と寝た者は前へ出ろと命令する。
兵たちが沈黙するとミアが自分と寝た兵を名指しした。

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チョルグは彼らを殴り倒し、指揮官は彼らに罰を与える。
が、その指揮官も実はミアを抱いていたことがバレた。


※「コースト・ガード_1」
※「コースト・ガード_2」


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■94分 韓国 サスペンス
監督: キム・ギドク
製作: イ・スンジェ
脚本: キム・ギドク
撮影: ペク・ドンヒョン
音楽: チャン・ヨンギュ
出演
チャン・ドンゴン カン上等兵
キム・ジョンハク キム上等兵
パク・チア ミヨン
ユ・ヘジン チョルグ
キム・テウ

南北軍事境界線の海岸を警備し、民間人を北のスパイと誤認して射殺してしまうことから始まる、ある兵士の悲しみを緊迫感と狂気と満ちたタッチで描いた心理サスペンス。『ロスト・メモリーズ』の次回作として、チャン・ドンゴンが選択したのは低予算映画ながらも海外映画祭では高い評価を得てきたキム・ギドク監督作品。独特な映像感覚で<韓国映画界の異端児>と言われてきたキム監督の作品に俳優としてトップスターの地位を確立したチャン・ドンゴンが自ら出演を志願し、破格の安いギャラで出演し大きな話題を呼んだ。本作はキム監督自身が5年間海兵隊で過ごした経験をもとに、朝鮮半島の現在を生きる人々の現実と葛藤を生々しく描いた<戦闘シーンのない戦争映画>である。キム監督は本作のインタビューでは「チャン・ドンゴンはスターとは思えないほど、謙虚で知れば知るほど素晴らしい人物」と賞賛の声を惜しまなかった。撮影は全羅北道扶安郡ウェドの海岸で行われた。


●ヤグディンさん
はじめまして。
はい、「遠い道」みなさんお薦めなので観てみます……。

●チェブさん
「ワイルドアニマル」と「絶対の愛」、まだ観てないんですよねえ。
私の行ったところにはどこも置いてなくて……。ツタヤで探してみます。
この作品もほんといいです。
キム・ギドクには失敗作がない、すごいです。
まあ、本人にとってはどうなのかわかりませんが……。
しかし本まで購入されて、私より本格的ですねえ(笑)。

●アマポーラさん
えっ……! ガクッ……! です。
私んちWOWOW加入してないんですよねえ。
前は入ってたんですけどあんまりいい作品やんないなあって
止めちゃったもんですから……。
テレビで映画をみようという根性がだめなんじゃないでしょうか(笑)。
NHKはまだいいんですけど民放の、しかもゴルデン・タイムは最悪……。
抗議しても無駄だと思いま……(沈黙)。
余談ですが、40年近く前上京したとき、
テレビ東京は、午後と深夜に毎日映画放送してましたよねえ。
うわあっ、東京ってすごい……! って感動して、
あのころ私は毎日が映画祭りの「美しき日々」でした。
結果、いまでもテレ東のファンです……(笑)。

●チェブさん
う~ん、いまものすごくチェブさんに絶対の嫉妬をしております。
キム・ギドクはやっぱり映画で絵を描いてるんだと思いますねえ。
物語なんかその付けたしだったりして……。
この「コースト・ガード」にも彫刻が出てきます。
ひょっとして、使いまわし……?(笑)
やっぱり……、本なんか後回しにしたほうがいいですよぉ(笑)。

●チェブさん
「大スターが出てしまうと何だか映画とバラバラに感じてしまいます。
キム・ギドクの世界が壊れてしまうような。」
チャン・ドンゴンをよく知っているひとが観ると、
チェブさんのおっしゃる通りだとおもいますね。
私はチャン・ドンゴンをあまり大スターだと思っていないので(笑)、
そこまでバラバラには感じなかったんですが、
それでも正直言うと「?」という感じはちょっとありましたから……。
キム・ギドクの作品の創りかたは俳優を見せる、スターを見せる
というふうにはなっていません。ですからスターが出ると、
見る側の意識がそのスターにやはりすちょっと取られてしまうので、
そのスターはどうしても浮いてしまうとおもいます。
たけしが俳優にスターを使いたがらないのもそのせいです。
いいかえると、あまり有名な俳優を使わないほうが、
監督の創りたい世界がよく見えてくるんですよね……。
ただチャン・ドンゴンの意気込みは買ってあげたほうがいいかなあと……(笑)。

●チェブさん
オダギリジョー使って、キム・キドクが
日本でももっとよく知られるようになるとひじょうにうれしいです(笑)。
監督の絞り出すような声がちょっと聞こえてこないのは、
ギドクが得意とする(?)「性」が直接的な主題ではないからだと思います。
ギドクの私小説的な世界ではないから、というか……。

●チェブさん
じつは私はもっと穿った見方をしています。
この映画、じつはギドクが「JSA」が気に食わなくて
撮ったんじゃないかなあと……(笑)。

ありがとうございました。


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発売日2007年11月22日仕様●監督:キム・ギドク●出演:チョ・ジェヒョン/ウ・ユンギョン/チャン

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この記事へのコメント

ヤグディン
2008年04月30日 07:05
 はじめまして。いつも楽しく読ませてもらってます。
イ・ビョンホンの作品をすべて観終わってしまったんですね。「遠い道」というドラマですが、以前観られた「ひまわり」と同じで、前編・後編の作品です。一度ご覧になって見てください。韓国の家族愛が垣間見れると思います。
チェブ
2008年04月30日 07:58
山崎さん、この作品も相当お勧めなんですね
私も今、プチキム・ギドク月間です
彼に関する本まで購入してしまいました・・・ご存知かもしれませんが「キム・ギドクの世界、野生もしくは贖罪の山羊」~(実は前から欲しかったのですが思いきって)
監督のインタビューあり、それぞれの映画へのコメントありの読み応えのある一冊です
それで昨日はTSUTAYAにて「ワイルドアニマル」と「絶対の愛」レンタルしました
先に鰐を観たいのですがーずっとレンタルされてて・・・
「ワイルドアニマル」はもともと「野生動物保護地域」というのですか?二作目なのだそうですが前出の本が書かれた段階では監督の一番好きな作品だそうです

では、観てからまた感想かきまーす
アマポーラ
2008年05月03日 10:25
山崎さん、お知らせです^^

5月7日(水曜)0時30分~2時15分・・だから木曜日になってるけど(笑)
「絶対の愛」がWOWOWでありますよ♪
たぶんBS5のほうだろうと思います。
録画という方法も!
これは余談で・・
淀川さんのお名前が他であがっていたので^^
「日曜洋画劇場」高校生のころは淀川さんの解説が楽しみでよくみていたんですが、最近は映画のEND部分がよくカットされていて「何だこりゃ」なんですよ~
テレビ朝日の方、何とかなりませんかね (>_<)
チェブ
2008年05月04日 09:26
山崎さんこんにちは
ワイルドアニマル、絶対の愛観ましたよ

監督が好きだというワイルドアニマル…キム・ギドクはやっぱり画家になりたくてそれに未練があるのかな
そんなパリへの思いが見え隠れしているような作品でした
キレイ!絵画的です。濃いめの油絵というよりは薄めの?パステルカラーの油絵?
そして絶対の愛…整形天国の韓国ならではの作品。怖いほどの愛です。監督の作品最近のものの方がわかりやすいように思います。彫刻が多くでてくるのですが、やはり濃いめの油絵かな?ワイルドアニマルに出てきた彫刻の頭部がさりげなく絶対の愛にも出てくるのです
お気に入りだったのかな?
ネタバレにならないよう二作ともさらっと感想書きました。山崎さんがまた作品評かかれた時にもう少し詳しく書きますね
本の方は途中で読むのを辞めてしまいました。なんだか先入観が入ってしまうのが嫌だったので。
チェブ
2008年05月17日 01:16
山崎さんこんにちは
コーストガード…狂気と正気は隣り合わせ?そして緊迫した毎日を送る沿岸警備隊と村人の平凡な生活も隣り合わせ?
一つのことを境にどんどんくずれていく…人間はもろい、流されやすいってことかな

軍隊があるという国の事情…そんな国だから生まれる映画もありますよね
知人の韓国人男性に聞いたことがありますが訓練は相当過酷みたいです。でも慣れてくると楽しいのだそうです。やはり軍隊に対する思い入れって私たちの理解の範疇を超える気がします
チェブ
2008年05月17日 01:38
続きです

チャン・ドンゴンさんゾクゾクするような狂気を上手く演じていましたね。
けれど、大スターが出てしまうと何だか映画とバラバラに感じてしまいます。キム・ギドクの世界が壊れてしまうような。
私はビョンホンさんのファンですが、たぶんビョンホンさんがでても同じように思う気がします。
やはり監督の映画が芸術性が高いからでしょうか。
そして鰐などにくらべると、しぼりだすすような監の声が聞こえてこないようにも思いました
でも嫌いじゃないです。
チェブ
2008年05月21日 11:10
山崎さん、ありがとうございました。
はい、もちろんドンゴンさんの意気込みはうけとめていますよ(笑)
さて、そうなると次回作、非夢がオダギリジョーの出演で、どんなふうになるのかドキドキしますね。
楽しみです!
チェブ
2008年05月26日 13:34
そこなんです!気になっていたのは。
いつものキム・ギドクなら、狂った?ミヨンと狂った?カン上等兵の狂った性が描かれて然るべきかと思っていたのですが…肩透かしを喰らったような気がしていました。

なぜ?と思った時に、カン上等兵がスター、チャン・ドンゴンだったから?と穿った見方をしてしまいました。
私の思い過ごしかもしれませんが(笑)

ありがとうございました

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