大統領の理髪師 (2004)

[058]韓国映画にトドメを刺された……?

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60年代から70年代にかけての韓国の
政治的な、あるいは時代的な背景をつぶさに知ってれば、
もっと面白く観れるのかもしれないんだけど……、
でも生半可にしか知らない私でも、いやあ、面白かった。
いや、いや、めちゃくちゃ凄い。
ものすごい映画……!

観終わったあと、
ああ、これで韓国映画にトドメ刺されたなあ……、
って思っちゃった。

大統領官邸に市井の床屋さんが出入りする
なんてことがあるのかどうか知らないけど……、
いくらなんでもナイと思うけど、まずそういう物語の発想が凄い。

どうしてそんな発想ができるんだろ?

ある意味、単純明快……、なんじゃないかな?

南北に分断されてるため、
市井の人々の生活がつねに政治と密着してる。
密着してるから、こういう物語の発想が
ひょいと生まれちゃったりするんだとおもう。

韓国映画がだんぜん面白いのも、
そのことを抜きには語れないんじゃないかなあ。

これも単純に、というか、わかりやすく言うと、
韓国の映画人たちの映画創りはもう、
ぼくらの言う「映画」という枠を超えちゃってるわけ……。

映画を、娯楽だとか、
エンターテイメントだとか、あるいは芸術だとか、
そういう枠で考えて撮ってるわけじゃなくて、
映画を撮ろうとおもうと、もう否応なく
自分の生活だとか、人生、家族、社会、民族、国家……、
そういう課題が全部入ってきちゃうんだよね、きっと……。

もちろん南北に分断されて、
ずっと冷戦状態にあるという現実を
否応なく強いられてるからなんだけど、
結果、映画という枠組みが途方もなく大きくなってる……。

「ディパーテッド」の中で、
「中国(香港)映画や韓国映画がいまとても面白いのは、
表現されたものの抱えているその無意識が
とても大きいから、豊かだから、だと思うんだけど」って書いたのも、
まあ、そういうことだったんだけど……。

もうソン・ガンホ観てるだけで納得しない?

かれが凄いのは俳優じゃないからだよ。
ぼくらの言う「俳優」の枠もう超えちゃってるからだよ。

かれ、インタビューで
「この映画の中では、ある特定の父親像ではなく、
いつの時代にも通じる一般的な父親をイメージしました」
と語ってるんだけど、
「いつの時代にも通じる一般的な父親」像
というのは結局、
「過酷な歴史と生活を強いられてきた自分たち朝鮮人の平均的な像」
いいかえると、
「自分。自分の父親。友人たち。友人たちの父親……」
の像ってことだよね……。

一言でいえば、
自分の父親役、物語はけして他人事じゃない。
他人事としては演れないってこと……。
映画創るとき、いつもそうなってる。
そこから生まれる演技、映画創り……。

命がかかってるんだから
面白くないわけがないじゃない……。

■116分 韓国 ドラマ/コメディ
監督: イム・チャンサン
脚本: イム・チャンサン
撮影: チョ・ヨンギュ
音楽: パク・キホン
出演
ソン・ガンホ ソン・ハンモ
ムン・ソリ キム・ミンジャ
リュ・スンス チンギ
イ・ジェウン ソン・ナガン
ソ・ビョンホ チャン・ヒョクス
パク・ヨンス パク・ジョンマン
チョ・ヨンジン 大統領

韓国の激動の時代を背景に、様々な歴史的政治事件を庶民の目線から描き出したドラマ。一介の小市民にしかすぎない一人の男が、ひょんなことから大統領の専属理髪師に選ばれたことで、政治の暗部を目の当たりにし、やがては時代の渦に巻き込まれていく姿を、家族の絆を軸に、笑いと涙で綴る。監督は、これが長編デビューのイム・チャンサン。主演は「JSA」のソン・ガンホと「オアシス」のムン・ソリ。
1960年代の韓国。大統領官邸“青瓦台”のある町、孝子洞で理髪店を営むごく普通の男、ソン・ハンモ。彼は、近所の人々同様、大統領のお膝元であることを誇りに思い、時の政府を妄信的に支持し、熱烈さのあまり町ぐるみの不正選挙にも加担するほどだった。新米助手のキムを無理やり口説いて結婚し、やがてはかわいい息子ナガンも生まれ幸せな毎日を送るソンに、ある時大きな転機が訪れる。ふとした事件をきっかけに、彼は大統領の理髪師に選ばれるのだった。これによって、ソンは思いがけず、権力をめぐる政争の渦に巻き込まれてしまうのだった…。

●「minmi 」さん
平和ボケというより、社会が成熟しすぎて、
あるいは高齢化して、社会的な主題や
「生きる」ことの主題を喪失しちゃったからじゃないか
と思ってます。そんなことじゃだめなんですよねえ……。

●「ゆう」さん
コメントを読んで、観てみようという気になって、
それでほんと面白かったと言われるのがいちばん嬉しいです。
父と子が自転車を乗り回すラストシーン、
ほんとにいいですよねえ……。
それから、名前間違えたからって
コメント欄べつに汚れやしません。大丈夫です。
なにも心配しないでください。

●「透明の向こう側」さん
息子の脚を治そうと、漢方医(仙人?)のことば思い出して、
龍(大統領)の目をそぎ落とすんですけど、
あそこでもう私は「わぁーーー」となってしまいました……。

●「スクリーン」さん
探しあてた漢方医(仙人?)が、
「体は私が治す。だから心はあなた(おとうさん)が治しなさい」
と言いますよね。
ソン・ガンホは「?」みたいな顔ですけど、
私はあのシーンがものすごく好きです。
「国の拷問でうけた傷はおとうさんしか治せない……」
ほんとにそう思います。
(おかあさんでもいいんですけど、この映画の場合、
おとうさんがきっかけを作ったんだから、
おとうさんしか治せないって言うんでしょうね)
それが家族のチカラなんだよ、って。
家族は国家を超えるんですよね……。

●「透明の向こう側」さん
「ブラザーフッド」「ディパーテッド」も
男性性のひじょうに強い監督が撮ってるとおもいます。
そういう監督が撮るものは、創る側が気をつけないと
お客さんはひじょうに入っていきにくくなるんですよね。
北野武、キム・ギドク、黒澤明らも
男性性がひじょうに強い作家なんですけど、
観察や考察が人間の心の奥にきちんと届いているから、
女性もまだ入りやすいんだと思います。
「アート」を志向しているからと言ってもいいと思いますが……。

●Leeさん
これも私の大好きな映画です。
「悲惨な現実がいくつもあるのになぜか
作品自体が暗く感じないのは不思議です」
ですよね。どうしてなんでしょう……?
最後には、家族の愛が勝つ、からなのかなあ(笑)。
ちなみに私は「恋愛&家族主義者」です……(笑)。

●ライラックさん
ソン・ガンホ、あの顔とあの体形でものすごく得してますよね。
圧倒的な存在感……(笑)。
しかしライラックさん、ものすごい勢いでコメントを……。
これ、いま全部観て書き込まれてるわけじゃないですよね?
だとするとさすがの私も超驚異的なのですが……(笑)。

ありがとうございました。

 

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この記事へのコメント

minmi
2008年04月03日 14:30
こんにちは。
また書かせていただきます。
ソンガンホは、私も大好きです。
韓国の名優といってもいいくらいの存在ですね。
コミカルな映画から、「漢江の怪物」などにも出演していて、チェ・ミンスと並ぶくらいの韓国を代表する俳優だと思います。
余談ですが「漢江の怪物」って、「殺人の追憶」のポンジュノ監督の映画で、「殺人の追憶」で刑事をやったガンホと、重要被疑者役のパクヘイルが兄弟役で出演しているんですよね。
韓国国内での評判はさんざんでしたけど(何も日本の特撮映画に張り合わなくてもいいのに、というのが韓国の批評家たちの言い分だったみたいです)、日本ではけっこう評判よくて、面白い現象だな、と思いました。
minmi
2008年04月03日 14:32
↑の続きです(字数制限があるのですね。全文送れませんでした)。

あと、こちらでは韓国映画というジャンルの中で語られていますけれど、やはり、一つの民族が二つに引き裂かれていて、しかも常に「休戦状態」という緊張の中で、徴兵制が敷かれていることの影響は、韓国の大衆文化全般に現れてくる一番の特徴だと思うのです。
先日も、韓国では少女たちから絶大な人気を誇っていた男性歌手が入隊しました。
彼は中華圏でもとても人気があり、いわゆる韓国の対外的な文化戦略でもあった「韓流」の担い手の一人でしたけど、兵役は免れないし、あまり日本のメディアには流れていませんけれど、大統領の対北政策が微妙に厳しくなったことで、また南北の緊張が高まりそうだから、ファンにはとても気になることなのです。
韓国文化を語る上で、男子徴兵制の存在は、それくらい絶対切り離せない、私のような日本のファンにとっても、常に意識せざるを得ない問題なのです。

もっとも、あまりこんなことばかり書いちゃうと、日本の文化がダメになったのは、平和ボケのせいだという結論になりかねないのが、自分でも困っちゃうのですけど。
ゆう
2008年04月04日 21:41
川崎さん こんばんは
今日 休みで 大統領の理髪師 借りて観ました
ガンホさんの言うとこの一般的な 親父さん・・あの時代の一般的な庶民は 上から 言われたら断る事も出来ない中で 一生懸命に家族の為に働いて・・その報いが子供が歩けない状態にされても 怒る事も出来ない 時代・・最後は アボジ ハンモが 新しい政権の大統領に ノーと言えて 息子ナガンが歩くことが出来るようになった・・・新しい時代の幕開けでしょうか・・・
映画全体の流れに気を使うという ガンホさん 川崎さん ガンホさん 観てるだけで 納得です・・。
韓国て 大統領を扱う? 映画 ドラマが結構ありますが、一市民がそう簡単に 大統領に接する事て 出来ないでしょうに・・あの時代に起きた事件を扱ってるのも 今の時代だから出来るのでしょうね
川崎さん 面白かったですょ ありがとうございます♪ 
ゆう
2008年04月05日 01:08
山崎さん 本当にごめんなさい
コメント欄汚してしまいましたね
お手数ですが コメント 削除お願いします
透明の向こう側
2008年04月05日 14:44
いつも有難うございます。
奇想天外とも見える 突拍子もない話なのに、人間臭いありふれた日常からの延長に「大統領」と関わるという、まさかの展開が嘘にも思えない不思議さ。大統領を選ぶは自分達・という意義からの発想なのか、国民という文字が「国と民」である、などと今更ながら感じ入ったりしたり…。
観終えた時「佳い映画だなぁ」とほっとした作品です。

書かれた文面にうなづきながら、熱いか冷たいか、好きか嫌いか、「普通」と応えるのは無い?と予想される部分に覚醒させられます。
スクリーン
2008年04月07日 01:28
大統領の理髪師 再度観賞
以前 JSA出演者のガンホssi作で観ましたが、韓国のお国柄もその時 まだ理解できないものあり、さら~と流しただけでした。
今回 山崎様のお勧め 一作でしたので、押入れからDVD出して、本日観賞。一言 面白かったです。12年間の年齢差も 旨くガンホssi表現してましたね。

一市民の床屋さん 大統領の床屋さんになったが為に、政治に巻き込まれて行く姿。。息子まで拷問にあう姿。。。こっけいなぶぶんあり、ジーンと来る部分あり。今回は真剣に見ましたよ。
その理由には 【夏物語】やドラマ 【砂の器】で政治や 拷問(過酷な取調べ)学習していたからはこの種の映画も入りやすくなったのかな。。

透明の向こう側
2008年04月07日 18:16
再度お邪魔致します。>政治的な、あるいは時代的な背景をつぶさに、
コメント送信直後、記された意味をようやく理解。『トルマッコル』で感じた“そ知らぬ振りしない”はもしかしたら報道されていた『太陽政策?』 
それを意図して撮られたかどうかは解かりませんが、観る者がその様に感じ取るという事は“大統領と理髪師”こうした話もあながち否定はできない?。ならば観る者が感じ取るそのような事柄は作り手の意思が背景(根底)にあるから?。では戦争映画にも観賞出来る作品と途中で挫折する作品とあるが、それは反映されている何らかを感じるから?。
「ブラザーフッド」「ディパーテッド」数日に分けてでも最後まで、と、トライしてみるものの途中で挫折。安全を失いかけている現実社会、その上映像まで観賞耐えられずと個人的解釈していたのですが、別の側面もあるのかと目からウロコ。今迄そうした考えをした記憶がなく新たな発見気分です。有難うございました。

書いて下さった場面記憶に残る 同感。上手く書けず
先日の書き込みとなりました。有難うございました。
Lee
2008年05月13日 23:47
山崎さん、こんばんは<(_ _)>

やっと「大統領の理髪師」を観ることが
できました(^^)
普通の人々の生活の中に、突然北朝鮮の
侵入者のシーンが現れたり、スパイ容疑が
かかる要因がなんと言いましょうか・・・(~_~;)

でも現実に国家権力の下に泣いた人々は
大勢いたのでしょうね。
自分の意見も口にできないような時代に
強い絆の父子愛が心をうちました。

我が子が自分の足で立つことができない
ことに、泣きながら自分の髪をきる父親。
真冬の凍るような川の中を足を治すために
我が子をおぶって渡る父親。
私も、もし我が子の足を治すためなら
なんでもしてしまうだろうと思います。

悲惨な現実がいくつもあるのになぜか
作品自体が暗く感じないのは不思議です。
自転車で二人並んで走るシーンには
涙がぼろぼろでした。

音楽もとても合っていておもいっきり
映画の余韻に浸れました。
観て良かったです(^^)
ありがとうございましたm(__)m

ライラック
2008年05月15日 17:33
山崎さん、こんばんは。
ストーリーとしては無理があるような気がして、どこまでついていけるか、くらいの気持ちで見始めましたが、ソン・ガンホさんの父親像に見入ってしまいました。

子役のイ・ジェウン 君、可愛いですね。どこかで見たことある!・・・チェ・ミンシクさんの「春が来れば」で、貧しくても健気に暮らす少年役で出演していました。ここでもいい演技しています。自分の状況をぐっと飲み込んで、健気に生きる役といいましょうか。
余談ですが、この「春が来れば」は、強烈な役ばかりのチェ・ミンシクさんを見ていたので、ほっとしながら見たのを思い出しました。
もうひとつ、ムン・ソリさん。「オアシス」は山崎さん、ご覧になりましたでしょうか。ソル・ギョングさんとムン・ソリさんの作品で、お二人も素晴らしい俳優さん!この作品でのムン・ソリさんのイメージが強かったので、ガンホさんの奥さん、ミンジャでは拍子抜けでした。もったいない、という感じです。
ガンホさんがあまりに大きくて、でしょうか。(笑)

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