戸田家の兄妹 (1941)

[090]小津はなんで次男昌二郎を「天津」へ行かせたんだろう……?

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佐野史郎も小津安二郎フェチ。
売れる前? 毎晩、妻でもある石川真希と「小津ごっこ」をしてたほど。

おいおい、夫婦で稽古するなよ。
それじゃまるで蟹江敬三家みたいじゃないか、
なんて言いたくなっちゃったよな(笑)。

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その佐野ちゃんにある日、
戦前の小津作品でなにが好き?って聞いたら、
「父ありき」と「戸田家の兄弟」って言うの。

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え?戸田家の兄弟?
「父ありき」はおれも同じだけど、ほかにいいのあるじゃないか。
「淑女は何を忘れたか」とか「生まれてはみたけれど」とか
喜八ものの「浮草物語」とか。
よりによってなんで「戸田家…」なのよって聞いたら、

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「う~ん、なんでかなあ。東京物語の起点だから?」
「まあ起点といえば起点かもしんないけど、それだけ?」
「う~ん、わかんない」「……?」「だって好きなんだも~ん」
も~んだなんて子どもじゃねえんだからさ(笑)。

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物語は、戸田家の主が急死して、
老いた母親と未婚の三女節子が兄姉の家をたらいまわしにされる。
天津へ働きに行っていた次男の昌二郎(佐分利信)が帰国後、
それを知って兄姉に説教して、母親と節子を連れて天津へ渡ろう
とする…、というもの。

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前年の「淑女は何を忘れたか」とか、この作品あたりで、
後年の小津映画の構図はほとんど完成してたことがわかるが、
私の中で戦前の代表作にならないのは
やっぱりお話が上流家庭のお話だからかな?

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いや、上流家庭の話が悪いってわけじゃなくてさ、
家族や住まいの雰囲気がやっぱり上流(上品)すぎて、
皮膚感覚的にもうひとつピンと来ないというか、
どうしてもちょっと馴染めないものを感じちゃうからなんだよね。
まあ、内容的にはよくわかるんだけどさ。
なにしろ私は九州の片田舎の農家の子だからさ。

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ん? そう思ったらハタと来た。

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「ね、佐野ちゃん、ひょっとしたら」
「怖いなあ(笑)」
「佐野ちゃんちの庭」
「どこの家の? 吉祥寺?」
「実家。松江」

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「…の庭がなんなの?」
「1000坪あるんだよな?」
「ううん、そんなにない。家屋もひっくるめて」
「ちょっと頂戴」
「なんであげなきゃいけない訳?」
「ケチ」
「んなこと言われても(笑)」

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「しかも長男だよね、史郎ちゃん。佐野家の。医院の」
「でも落ちこぼれ。医者になるのが嫌で上京してきてさ」
「それで好きなんじゃない、昌二郎(佐分利信)が」
「…?」
「昌二郎(佐分利信)も戸田家のはぐれものだし」
「う~ん…」
「それに戸田家観ると、自分ちの家族の雰囲気とピタッと来ちゃって」
「……」

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「ほら、幼少期の家族体験」
「ああ、かもしんない」
「自分のことなんだからさ、今ごろ気づくなよ(笑)」
ということがそのとき判明したのだった。(^^♪

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ま、そんなことはいいとして、
この「戸田家の兄妹」でずっと気になってるのは
小津はなんで次男の昌二郎を中国の「天津」にやったのかってこと。

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おやじが死んだあと
「これからバリバリ働こう」と言って昌二郎は天津へ行くんだけどね。
やっぱり戦時中だったことと関係あるのかなあ。

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もちろんいま観るからそう思うんだろうけど、
「だから天津へ行く」というのがどうももうひとつ。
日中戦争に疑いがなさすぎるってのか、
ちょっとノー天気すぎるってのか。

すこしは時流に乗っかってるフリをしないと
官憲に目をつけられると思ったからなのかなあ。

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そのあたりのことは小津のこと研究してる訳じゃないので
よくわからないんだけどさ。
戦後、自分でもそのあたりのことがちょっと気になって、
それで「風の中の牝鶏」とか「長屋紳士録」とか、
どっちかっていうと小津さんが苦手とする社会派的なドラマを
創ったのかなあ。


●minmiさん
人間、育ちで培われた感性は超えられないんじゃないでしょうかねえ、
まあ、悔しいですけど……(笑)。


■106分 松竹 ドラマ
監督: 小津安二郎
脚本: 池田忠雄 小津安二郎
撮影: 厚田雄治
美術: 浜田辰雄
衣裳: 斎藤耐三
編集: 浜村義康
音楽: 伊藤宣二
出演
藤野秀夫  戸田進太郎
葛城文子  母
吉川満子  長女千鶴
斎藤達雄  長男進一郎
三宅邦子  妻和子
佐分利信  二男昌二郎
坪内美子  二女綾子
近衛敏明  夫雨宮
高峰三枝子  三女節子
桑野通子  時子
河村黎吉  鈴木
飯田蝶子  女中きよ
葉山正雄  千鶴の子良吉
高木真由子  進一郎の子光子
岡村文子  鰻屋の女将
笠智衆  友人
坂本武  骨董屋

実業家として財をなした戸田家の主・進太郎 (藤野秀夫)が急死し多額の借金があることが判明した。次女綾子(坪内美子)の嫁ぎ先雨宮(近衛敏明)の発案で、残った財産を処分し返済にあてることになる。独身で気ままな次男昌二郎(佐分利信)は、屋敷まで処分してしまった母(葛城文子)と三女節子(高峰三枝子)を、長男夫婦(斎藤達雄・三宅邦子)に預け海外勤務を申し出て中国へ渡ってしまった。しかし、母と長兄の嫁は上手くいかず、二人は長女千鶴(吉川満子)の家に身を寄せるのだが…。



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この記事へのコメント

minmi
2008年05月02日 15:25
私は、なぜかどうしても小津映画が苦手だったのですが、
本日解説を拝見して、初めてその理由に気がつきました。
そうかぁ。
あの高級感溢れた由緒正しき日本家屋が超苦手だったんだ…。
ゴチャゴチャした長屋のようなところで育ったからでしょうか。
あの高級料亭みたいな庭園と家屋(に見えちゃうんですよね。悲しいことに…)に、どうしても馴染めなかったようです。
逆に、どうして小津作品が海外(とくにフランス)で評価が高いのかも、なんとなくわかりました。
彼らにしてみたら、典型的なジャパネスクなんでしょうねー。
育ちって、大事なんだなぁ。

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