東京物語 (1953)

仏みたいな顔をしてるくせに小津さん実は鬼だった(^^♪

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(2008/04/05の記事に加筆、修正)

物語も映像も完璧。
小津安二郎の最高傑作なのは誰しも認めるところなので
あんまり書くこともないなあ。

なにか書くよりひたすら観ていたい映画。
空気感が好き(^^♪ 10数回は観てるのかなあ。

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まあ、あえて書くとすれば、
高橋豊さんと大坂志郎のことくらいかも(^^♪

高橋豊さんも大阪志郎も名脇役で、
当時たくさん映画に出てらしたけど、どっちも私の大好きな俳優さん。

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高橋豊さんが隣の細君の役でトップとラストに登場するんだけど、
いいんだよねえ。ほんといいの。凄いの。
これ、トップ。笑ってるはずなのに笑ってないの。
何が気に喰わないのか知らないけど、怒ってんの、目が。

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これ、ラスト。ちょっとわかりにくいけど、
妻を亡くした笠智衆を慰めているはずなのに、
やっぱりなんだか怒ってんの、目が。何も変わらんの、トップと(^^♪
もうじつに素っ気ないというか怖~いというか、ただ笑うしかない。

しかしいいよねえ、風貌というか佇まいが。めちゃめくちゃいい。
高橋とよさん観てるだけでジーンとする。
高橋とよさんが出てるおかげでこの老いと死の家族物語が救われる(^^♪

小津さんは俳優に、
「喋る大道具になってくれ」「人間じゃなくてブツになってくれ」
って要求した監督だとおもうんだけど、
高橋豊さん、もう見事にそれやって見せてるんだよね。
ひとが死のうが何しようが、もうビクともしない。
高橋とよさんがそういうふうにそこに居てくれるから笠さんも救われる(^^♪

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これは私が「東京物語」をやった時の隣の女。名優・十貫寺梅軒(^^♪
そう、私やったのよ、これ、舞台で。台本のまんま。
なに言ってるの、できるのよ、シナリオそのまんまでもちゃんと舞台に。
私はなんだってできるのよ。やっちゃうのよ、怖いもの知らずだから(笑)。

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これは同じく隣の女。名優、大久保鷹(^^♪
交代でやらせたのか? なに言ってるのよ、
そんな失礼なことできる訳ないじゃん、私の先輩にして名優に。
梅軒が出て立ち去ると鷹さんが出てきて、
同じセリフを喋って立ち去るの。(^^♪ そ、リフレインやる訳(^^♪

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はい、「東京物語」=「お化け煙突物語」。
あ、「お化け煙突物語」は唐(十郎)さんの作品だった(笑)。
ま、要するに北千住のお化け煙突ね。東京(^^♪

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そう言えばこの舞台やった時、唐さんも観に来てくれて
「びっくりしたあ、哲」って驚いてた。
いや、鷹さん、梅軒が出てたからじゃなくてさ。

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こうやって舞台が進行していく中、
上下に退場した役者がそこで…、舞台上で着替えたりしてたから。
そう。役者は袖に引っこまないでこうやって舞台上の上下に退場し、
ずっとそこに座ってる訳。つまり全員出ずっぱり。
大久保鷹も十貫寺梅軒も。名優だろうがチョイ役だろうが知るかだよね^^♪
もともと演劇学校で私がやってたスタイルなんだけどさ。
しかし唐さん、いつも変な所で驚くんだよなあ(^^♪

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大阪志郎(^^♪ 三男・敬三の役。
有名なエピソードが残ってるんだよねえ。

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敬三は大阪の国鉄職員で、小津は
私のお気に入りの佐田啓二を予定してたんだよね。

でもスケジュールの都合がつかなくて、
大坂志郎をキャスティングしたんだけど、
秋田県出身で秋田訛りが抜けないもんだから、小津さん、
例によってリハーサルを何度も繰り返して絞りはじめたの。

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で、スタッフがハッと気づいたら、
大阪志郎が座ってるあたりがぐっしょり濡れてたんだって。
もちろん大阪志郎の汗(^^♪

それでもイメージするようなセリフにならなくて、
小津さん、とうとう切れちゃって
「俺は、大坂志郎だから大阪弁が得意だろうと思って
お前をつかったんだ。それなら秋田志郎と改名しろ」
って怒鳴りまくったらしいのよ。
そしたら大坂志郎、号泣したらしくて(^^♪

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いつも仏さんみたいなやさしい顔してるくせに、
小津さん、ほんと鬼だよね。もうムチャクチャ。
「大坂志郎だから大阪弁が得意だろうと思ってお前をつかった」
だなんて、そんな屁理屈ある?
え?お前の言えたセリフか? お願いだから話振らないでな(^^♪

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ともあれ特訓の甲斐があったのかどうか知らないけど、
大阪志郎、いいんだよねえ、特にお葬式のシーン。
席そっと抜け出して原節子にぼそっと喋るシーン。

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「どうも木魚の音いかんですわ。
「どうして」
「なんやしらん、おかあさんがポコポコ小そうなっていきよる。
ぼく、孝行せなんでなあ」

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「いま死なれたらかなわんわ。
さればとて墓に布団も着せらずや」

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ああ、このセリフ喋らせたくて小津さん、
東京物語、書いたんだあってわかるシーンなんだけど、
あれ、大阪志郎が兄弟の中でも
ちょっと落ちこぼれの3男坊に見えるからいいんだよね。
そんな3男坊が喋るからセリフ(ことば)が際立ってくる。

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かりに佐田啓二がやったと想像すると、ちょっと無残かもしれない。
名優だから間違いなくやりこなすだろうけど、
でも佐田啓二がやるとどうしたってみんなできのいい、
優等生みたいな息子・娘ばっかりになっちゃってさ(^^♪

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たしかに杉村春子がいるけど、
名演技だから優等生のイメージは拭いきれないもんね。
だからあれは絶対、できの悪い、落ちこぼれの大阪志郎以外には
考えられないんだよねえ。
大阪志郎がやったから映画史に燦然と輝く傑作になった。
もう間違いないなくそう(^^♪

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もちろん小津さんも実はそういうことは計算済みで
高橋豊さんと大阪志郎キャスティングしたんだとおもう。
徹底してしごくことで大阪志郎に、
「できの悪い息子」「落ちこぼれの子」をイメージ、造形させたんだとおもうよ。
高橋豊さん、大阪志郎、万歳~(^^♪

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あ、これは舞台でやった時のお葬式のシーン。
お葬式のシーン、セリフは上に紹介したセリフくらいなんだけど、
あとはセリフなしで延々と40分くらいやったなあ(^^♪
中野光座がこの舞台を最後に取り壊されることが決まってたんで、
光座に哀悼の意を込める意味もあってさ。
お客さん怒るかと思ったら、40分ちゃんとお葬式に付き合ってくれたよ(^^♪

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周吉・とみ夫婦がバスで東京を観光するシーンは、

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これ(^^♪

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宿泊客がうるさくて夫婦が眠れない熱海の夜のシーンは、

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これ(^^♪ 
うるさいどころかみんなでドスドス踊りまくるもんだから
舞台中央を中心に床が50センチほど凹んじゃってさ。
亜沙美、あれは絶対チアガールやってたおまえのせいだぞ(^^♪

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結局夫婦が長男夫婦、そして長女夫婦の家にもいられなくなって
東京をうろつくシーンは、

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これ(^^♪
ちなみに周吉は木之内頼仁、とみを石川真希。

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周吉が東京の同級生二人を訪ね、
結局一晩飲んだくれてしまうシーンは、

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はい、これ(^^♪
私はもう遊びまくるこの三人を抑えるのにもう必死だよね(笑)。

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「東京物語」
笠智衆、東山千栄子、原節子、杉村春子、山村聡、大坂志郎、香川京子、
三宅邦子、東野英治郎、中村伸郎、金子庫造、十朱久雄、長岡輝子、
桜むつ子、高橋豊子、安部徹、三谷幸子。
世界に誇る信じがたい布陣。

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まさか観てないなんてことはあり得ないよね(^^♪

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■136分 松竹 ドラマ
監督: 小津安二郎
製作: 山本武
脚本: 野田高梧 小津安二郎
撮影: 厚田雄春
美術: 浜田辰雄
衣裳: 斎藤耐二
編集: 浜村義康
音楽: 斎藤高順
出演
笠智衆 平山周吉
東山千栄子 妻・とみ
原節子 二男の嫁・紀子
杉村春子 長女・金子志げ
山村聡 長男・平山幸一
三宅邦子 妻・文子
香川京子 二女・京子
東野英治郎 沼田三平
中村伸郎 志げの夫・金子庫造
大坂志郎 三男・平山敬三
十朱久雄 服部修
長岡輝子 妻・よね
桜むつ子 おでん屋の女
高橋豊子 隣家の細君
安部徹 鉄道職員
三谷幸子 アパートの女
村瀬禪 平山実
毛利充宏 平山勇
阿南純子 美容院の助手
水木涼子 美容院の客
戸川美子 美容院の客
糸川和広 下宿の青年
遠山文雄 患者の男
諸角啓二郎 巡査
新島勉 会社の課長
鈴木彰三 事務員
田代芳子 旅館の女中
秩父晴子 旅館の女中
三木隆 艶歌師
長尾敏之助 尾道の医師

日本映画を代表する傑作の1本。巨匠・小津安二郎監督が、戦後変わりつつある家族の関係をテーマに人間の生と死までをも見つめた深淵なドラマ。故郷の尾道から20年ぶりに東京へ出てきた老夫婦。成人した子どもたちの家を訪ねるが、みなそれぞれの生活に精一杯だった。唯一、戦死した次男の未亡人だけが皮肉にも優しい心遣いを示すのだった……。いまでは失われつつある思いやりや慎ましさといった“日本のこころ”とでもいうべきものを原節子が体現している。家でひとり侘しくたたずむ笠智衆を捉えたショットは映画史上に残る名ラスト・シーンのひとつ。


●「アマポーラ」さん
ほんと、すごいキャスティングですよねえ。
このキャスティングなのに小津さん、杉村春子さん以外、
徹底的にダメ出ししながら撮っていたらしいんです。
それだけでも、小津さん、もう何ていうか……、いやあ……。
まったくの余談ですが、私は
小津さんに決定的な影響を受けながら芝居をやっています。
「東京物語」「秋刀魚の味」「戸田家の兄妹」と
3本も舞台にしちゃいました……。

●村石太マンさん
残念ながらもう観れない作品もあるんですよねえ…。

●ひまわりの種さん
私も大好きな映画です。
嵩じて2年前、本舞台でもやってしまいました(笑)。
おっしゃるように観てるだけで充分な映画ですよね。
当時、ご自宅も
あの杉村春子がやってるような美容室だったんですか?
で、ミノル君くらいのトシだった…?(笑)
都電に乗っていたひとたち、当時、皇居が見えてくると、
みんなお辞儀してたらしいですね。
私は九州育ちなので当然このころの東京は知らないんですが、
都電は、いま唯一残ってる荒川都電にたまに乗るんですよ、
稽古場の割と近くを走っているものですから…。
カタンコトン…、気持ちまでゆったりしてきます。
笠さんの方言、私はあまり気にならなくて、
同じ九州なものですから。すいません…(笑)。
あれでも笠さん、小津さんに口移しで教えられて、その通りに
喋ってるみたいです…(笑)。
佐田啓二、わたしも子供のころから大好きで、
日本の二枚目俳優は佐田啓二しかいない、
といまだに思ってるんですよねえ…(笑)。

●ひまわりの種さん
返信が遅くなり申し訳ありませんでした。
パソコンが炎上しちゃったものですから…。
お父さん、熊本ご出身だったんですか! うれしいです(笑)。
この映画当時は、家族はむろん、友人も縁者も近所も、
もっと距離が近くてワイワイガヤガヤといった感じでしたよね。
韓国映画を観てて時に懐かしく感じるのは、
このころの日本の雰囲気があるせいかもしれません…。
「東京物語」、シナリオ通りにやったんですよ、舞台なのに。
それではちょっと癪にさわるので(笑)、
お寺でおかあさんのお葬式をやるシーンは、セリフもなく、
延々と30分くらいやらせていただきました(笑)。
自分でもけっこうお気に入りの演出でした。役者は、
座りっぱなしなので足が痺れると愚痴っていましたが…(笑)。
こちらに舞台写真があります、もしよろしかったら…。

ありがとうございました。



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この記事へのコメント

アマポーラ
2008年04月09日 10:02
おはようございます。

「東京物語」・・もうこんなキャスト、二度とできないような俳優陣ですね。
私は笠智衆さんに弱いんです。笠さんが画面にでるだけで泣けてきて・・ドラマ「ながらえば」でもそうでした。訛りもぬけてらっしゃらないし、上手いのか素のままなのか、でも泣けるんです。

高橋豊子さん、大阪志郎さんに注目してもう一度見てみたいと思います。レンタル店へGo!
あっ、長岡輝子さんの声にも痺れてます。
村石太マン
2011年03月26日 16:06
小津監督作品 まだ 秋刀魚の味  1本しか 見てないです。世界の小津作品 全部みたいです。
映画同好会(名前検討中
ひまわりの種
2011年04月06日 17:18
今日は。
NHKBSでの放送があり録画しておきましたものを
観ました。デジタルマスター処理をしたとかで
鮮明な画面でした。
杉村さんの美容院、丁度あの頃小学生でした私の
家が店舗住宅で母が経営者(技術者の方達はスタッフ
でしたが)、とても懐かしかったです。 家族の出入り
は裏側からでしたが、お店の従業員の女性は皆さん
しっかりと自立して技術を持っておられました。
杉村さんの芸達者ぶりと笠さんの”有難う”の台詞
の他は相変わらずの九州訛りなのが監督さんもお許し
になったのでしょうか。
佐田啓二さんですか、いっそのこと亡くなった次男の
役でしたら紀子も何時までも忘れられないほどの夫で
したでしょうと又余計な事でした。
夫々の家庭がある子供達にとって何もしてあげられない
ままに過ぎてしまった日々だったなあと・・。
子供の頃父と銀座に行くのに地下鉄に乗らずに都電で
お堀端を通って行ったのも映画を観て懐かしく思い出し
ました。
ただ観ているだけで充分な映画、今の心痛む日々に
一時の幸せをいただきました。
ひまわりの種
2011年04月07日 16:00
今日は、度々お邪魔します。
二つ下の弟がミノル君みたいでしたよ。
笠さんですが父の郷里が同じで、当時も熊本
の友人がお出でになると特徴のある言葉で大きな
声で談笑していました。 あの頃ってさして広くない
家にお客様も家人も一緒に寝たりとそれが又
愉快な時代でした。
”皇居が見えるとお辞儀を・・”、私の周りには
そんな方はおいでではなかったです。 父も結構
捌けた人物でしたので。

しかしこの映画の頃の俳優さんは皆さん個性的で
場面に登場するとすぐにあーあの人って、それに
お声も皆さん素敵ですね。

先生が舞台になさった「東京物語」はどんななので
しょうか、出来るものなら拝見したいです。

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