ワイルド・アニマル (1997)

[104]ギドクはパリ時代がいちばん幸福だった……?


画像


あった、あった、ありました。
「鰐」につづくキム・ギドク監督の第2作
「ワイルド・アニマル」、巣鴨のツタヤに……!

ひさしぶりにギドクの絵を堪能……。

舞台は一転してパリだが、
韓国からやってきた画家の卵チョンヘ(チョ・ジェヒョン)は、
「鰐」同様、川べりに繋留してある舟に住んでいる。

かれの夢は、
この舟を自分のアトリエにして好きな絵を描くことだが、
家賃が払えず家主に立ち退きを迫られている。

そこでたまたま知り合った
北朝鮮の男ホンサン(チャン・ドンジク)と一緒に
フレンチマフィアの傘下に入り、金を稼ごうとするのだが、
やることなすことうまくいかず、
しまいには2人ともども殺されてしまうという
70年代前後のアメリカン・ニュー・シネマによくあるお話……?

キム・ギドク自身は、
「個人的にはこの映画いちばん好き」らしいんだけど、
自分が青年期を過ごしたパリが舞台で、
主題にしている「水」「絵」「セックス」「暴力」を
作品に存分にぶち込めたからかもしんない……。

実際、いかにもありそうな物語を救っているのは
ギドクの絵画的な道具仕立てなんだよね。

全身白塗りの女性の彫像……。
青の照明を生かした女のストリップと、
窓ガラス越に眺めるホンサンのシーン……。
男の腹に突き立てられた凍ったサカナの頭……。
ホンサンがチョンヘのために切り落とした
ロダンの彫像の首……。

随所にギドクの「絵」がはさまれて
もうそれだけで
私なんかほんと泣いて喜んじゃうんだよねえ……。

おまけに物語は
ギドク作品としてはドジな2人がけっこう笑えて、
とてもおおらかというか健康的というか……。

そのあたりも案外、
ギドク自身がこの作品を気に入っている理由かも……。

ラストもいいよね。

2人ともども袋に入れられて海中に投げ落とされて、
やっとこさ脱出してパリに帰ってきたと思ったら、
殺した男の恋人にピストルで
「バン、バン」とあっけなく射殺されちゃうんだけどさ、

2人の血が路地の石畳を雨に混じって流れていくの。

それ見てると、
「ああ、2人してパリの路地に自分の血で絵描いてる」
みたいな、なんとも切ない気分になって……。

チョ・ジェヒョン、
「悪い男」とはまったくはんたいに超軽口の男を好演。

ギドク・ファンならずとも楽しめるよ……?

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●ちょごりさん
ほんと、私もキム・ギドクの映像が大好きなんですよねえ。

●チェブさん
やっと観れました。うれしかったです(笑)。
「キム・ギドクが画家ならキム・ジウンは写真家」
ムムッ、まったくその通りですよねえ……(笑)。
「初期に比べて最近の作品の方が絵画的な感じが少なくなってる」
なんですよねえ。
最近はどういうつもりで撮っているのかとちょっと気になります。
本国での評判が思ったより芳しくないからなのかなあ、
いじめられたせいで過去の作品を自分で否定してみせてんのかなあ、
と色々考えてしまいます……。

ありがとうございました。

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103分 韓国 犯罪/ドラマ

監督: キム・ギドク
脚本: キム・ギドク
撮影: ソ・ジョンミン

出演
チョ・ジェヒョン
チャン・ドンジク
ドニ・ラヴァン
リシャール・ボーランジェ

パリ。北朝鮮から脱出し、ここまで辿り着いて外人部隊に入隊しようとしていたホンサン(チャン・ドンジク)は、到着そうそう「同じ朝鮮人」のチョンヘ(チョ・ジェヒョン)に騙されて荷物と金をネコババされそうになる。チョンヘを追い、叩きのめそうとするホンサンだったが、彼の口車に乗せられて奇妙な友人関係を結ぶに至る。チョンヘは実は、韓国から筆一本で身を立てようとしてフランスにやってきた画家の卵であったが、落ちぶれてチンピラとなっていたのだ。だがチョンヘが欲を出してフレンチマフィアのボス(リシャール・ボーランジェ)の下で働くことを決めてから、更なるふたりの没落は始まってゆく。キム・ギドク監督2作目。

<キム・ギドク作品>
「ブレス 」(2007) 「絶対の愛」(2006) 「弓」 (2005) 「サマリア」(2004) 「うつせみ」(2004)
「春夏秋冬そして春」(2003) 「悪い男」(2001) 「受取人不明」(2001) 「コースト・ガード 」(2001)
「魚と寝る女」(2000) 「リアル・フィクション」(2000) 「悪い女」(1998) 「ワイルド・アニマル」(1997)
「鰐~ワニ~」(1996)



この記事へのコメント

ちょごり
2008年06月23日 23:34
ワイルド・マニアル、ギドク監督の2作目なのですね。
あることは聞いてましたが、・・・
私は映画を語るほど、観ていないので、でも、私の好きそうな映画です。

何と言っても、映像がいいな~と、ギドク監督の映画はそう感じます。
チェブ
2008年06月24日 01:41
山崎さんこんばんわ

ワイルド・アニマルご覧になったのですね
監督が一番好きだという作品、舞台が監督の憧れていたパリでしかも監督のお得意の主題がみんな盛り込まれているから…納得いたしました

水辺の船のアトリエって、まさに監督の理想なのでしょうね

監督の作品は何度も言いますがやはり絵ですよね
でも、いろいろな作品を観てふと思いました。当初は作品によって受ける印象が違うと思っていたのですが、年代別にもう一度振返ってみると、流れのようなものがあって、やはり初期に比べて最近の作品の方が絵画的な感じが少なくなってると思いました。
絵画的なところがギドク監督の醍醐味だと、私は思っているのですが…

さて、7月3日は楽しみにしています。二人のキムですね。
キム・ギドクが画家ならキム・ジウンは写真家だと思っています。

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