カルメン故郷に帰る (1951)

[111]日本初のカラー映画は、強烈に「戦後」を感じさせる……?

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よく知られているように、
日本ではじめての「総天然色」(カラー)映画。

じつはカラーが失敗したら…、と心配し、
平行してモノクロでも撮影されたらしい。
で、スタッフも俳優も一流どころを揃えているのだが、
みんな、モノクロ撮影のときのほうがリラックスしていて、
そっちのほうが仕上がりがいいという噂だ。

そっちは観ていない訳だが、
そうかあ、なんだかんだ言うても、みなさん
じゅうぶん人間してたんだあと感動しちゃわないカニ?(^^♪)

木下恵介というと、日本的な情緒を
たっぷりまぶした作品を創る監督というイメージがあるが、
ほんとうは当時ものすごくモダンな監督だったんだよね。

いずれ紹介するつもりが、
木下が撮った「四谷怪談」など、
そのモダンな解釈と切れ味鋭い映像で、
数ある四谷怪談の中でもほんとにもう最高傑作である。

物語は、
ストリップを芸術だと信じて疑わないダンサーおきん(高峰秀子)が、
同僚の踊子朱実(小林トシ子)を連れて故郷の浅間山へ帰り、
珍騒動を繰り広げるという古典的ともいえるコメディ。

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上州北軽井沢の浅間山、麓村の小学校。
オルガンを演奏しているのは小川先生…、おらが佐田啓二。
運動会の練習中だよ。

物語の舞台の中心はこの小学校と言ってもいいのかな。
つまり学校がまだ村や町のの中心だった時代っことを現わしてる訳だよね。
いまの村や町の中心は、え~とえ~と…、何もなかばってん(笑)。

これもちなみに撮影は、ほぼ全編、浅間山麓でのロケ。

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小川先生に代わり田口(佐野周二)がオルガンを弾き始める。
かれは戦争で視力を失った男で、じつはおきんの初恋の相手。
いまは光子(井川邦子)と結婚し、子供がひとりいる。

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右…、
ゲージツ家になったおきんが東京から里帰りしてくるそうじゃないか、
と教え子の出世に胸を張るおらが校長先生(笑)…、笠智衆。
左…、
何がゲージツ家だ裸になりおってと早や行く末を案じ、
項垂れるおきんの父親・青山正一(笑)…、われらが坂本武。

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ゲーシツ家リリィ・カルメン(おきん)が
同僚のマヤ朱美(小林トシ子)を伴い、故郷に錦を飾るの巻。
校長先生をはじめ村人総出で迎えまちたべち(笑)。

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はい、UP…、アチャー、おらが高峰秀子が高峰秀子が!(笑)
そのあまりのアプレゲールぶりに画面から隠れようとする校長先生(^^♪
ええなあ、ええもん着て、
と羨ましがるカルメンの姉ゆきちゃん…、望月美恵子(望月優子)(^^♪

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ストリップを裸芸術と信じて疑わないわれらが浅間山カルメンは、
アプレ・シャンソンを鼻高々と謳いながら荷馬車に乗り、
意気揚々と故郷の山麓を横断するのだべち(^^♪

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ヤッホー~♬ ヤッホヤッホヤッホ~♬
あたいたちを見て。日本は変わったのよお。
浅間山さん、あんたも変わらんといけんよお。明るくノー天気に~!
と浅間山に呼びかけるおらがカルメン&マキ。違うた、アケミちゃん♬

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戦前の古い因習に縛られた村人たちを解放してあげたい。
アプレ化してあげたい、あたいたちのゲーシツ的美とチカラで!
と、村の中をアプレ闊歩するカルメン&アケミ♬

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そうだわ。天皇も人間宣言をされたのだから、
自然に宿る神たちも人間に戻してやらないとだめね。
と、浅間山の木立の中を歩きまわり、草木にアプレ化を呼びかける
東京帰りのカルメン&アケミ(笑)。

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放牧された牛たちに惜しげもなく美身を曝け出し、
歌って踊ってアプレ化を呼びかける。

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そして浅間山の大地に、浅間山の抜けるような大空にも…!(^^♪

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カルメン&アケミの奇行を陰で噂し、笑い転げる村人たち(笑)。

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あいつはなあ。
子供の頃によお、牛さ頭ば蹴られて、それがもとでよ、
頭すこし弱くなってもうたんだべ。
と、可愛い娘カルメンを哀れに思い患う父ちゃん(笑)。

おらも本気で少し心配になる。
大丈夫かなあ、こんなに胸はだけちゃって。
ああ、パンツ丸見えだべ、高峰秀子さん、と(^^♪

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だが意外にも
カルメン&アケミの故郷アプレ化運動は効果をあげるかに思えたべち。

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村の大行事、子供たちの運動会。
ゲージツ家カルメン&アケミの参列で
教師楽団は急遽予定を変更して「りんごの唄」のアプレ演奏を始める。
カルメンのちょいとしたご挨拶だけで村人たちは
大いに盛り上がりはじめたからである。

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そしてクライマックス。
田口さん家族がオルガンで歌を歌い始めたとき事件が起きる。

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な、なんとアケミのスカートがずり落ちて、会場は爆笑の渦(^^♪

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このカルメン&アケミの大失態におらが校長先生は
頭から湯気を立てて怒りまくり、
田口は田口で自分たちの演奏が笑われたと思い、
会場を抜け出そうとして先生たちに止められるのだったが…。

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しかしそんな失態にもめげないのが
この少し頭の弱い二人のよいところ(笑)。

スカートが落ちたくらいで何よ。
さらずんばわてらの裸芸術をばご披露してやろうじゃないの。
お目々が潰れたって知らないわよと村での劇場公開を告げ、
すっかり手なづけた浅間山の丘でもう特訓(^^♪

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その噂を聞きつけた校長先生は、
己の教育の不徳と致すところと二人に止めさせようとするのだが、
カルメンの父正一は泣いて校長に頼む。

わしはあいつが不憫でなりません。
踊りたいってんなら踊らせてやってください。
笑われたって構いやしません。わしも一緒に笑われますだ。
日本のド真ん中で踊ってる踊りなら、
この山ん中で踊ったって立派な踊りに決まってまさあ、と。

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こうして浅間山カルメンの、
故郷に錦を飾る一世一代の裸芸術=ストリップの幕が開いたのだった…。

なにがいいかって、まず俳優さんたちの演技だよね。
ものすごく学芸会ぽくてさ、笑えるの。

カルメンをやっている高峰秀子はむろん、
笠智衆(校長)の、こよなく浅間山を愛するアホ校長さんなんかもう最高。
小津作品の初期を支えた坂本武もほんと相変わらずいい味だしてるし…。

それに歌と踊り。

古きよき日本や故郷をかんじさせる唱歌を、
佐田啓二や佐野周二が弾くオルガンに合わせて
子どもらが学校の運動場で歌い、一方で、
おきんと朱実が浅間山をバックにシャンソン歌謡をうたいながら踊ったり…。

アンバランスなはずなのに、
なぜかそれが絶妙なハーモニーを醸し出すんだよね。
そしてそこに健康で、強烈な「戦後」の一面を感じるのは果たして私だけ?

いろんな意味で必見の価値ありだよ(^^♪


●sinoさん
ほんと、カラッとしたいい映画ですよねえ。
「あの頃の俳優さんは皆さんスキッとしてますね。姿勢が良く美しいです」
ほんと、いまの日本人となんかえらく違うって感じですよね、
土臭いところはありますが……(笑)。
「DVDにもとってるの沢山あるんだけど、全然観れなくて」
でも映画持ってるだけで気持ちが豊かになりますから、まあ……(笑)。

●sinoさん
みなさんが楽しそうに喋ってるのを観ているだけで
こっちまでうれしくなりますねえ……(笑)。
「ビョンホンを乗り回しているような興奮」
いやあ、いい言葉ですねえ、凄い……(笑い)。

ありがとうございました。


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■86分 松竹 ドラマ/コメディ

監督: 木下恵介
製作: 月森仙之助
製作補: 桑田良太郎
製作総指揮: 高村潔
脚本: 木下恵介
撮影: 楠田浩之
音楽: 木下忠司
色彩技術: 小松崎正枝 赤沢定雄
助監督: 小林正樹 松山善三 川頭義郎

出演
高峰秀子 おきん(リリイ・カルメン)
小林トシ子 マヤ朱実
坂本武 青山正一
磯野秋雄 青山一郎
佐野周二 田口春雄
井川邦子 田口光子
城澤勇夫 田口清
小沢栄 丸野十造
三井弘次 岡信平
笠智衆 校長先生
佐田啓二 小川先生
山路義人 村の青年

ほぼ全編を浅間山麓でロケ撮影し、国産初の「総天然色映画」として公開されて話題を呼んだ。

都会でストリッパーをしているヒロインを演じる高峰秀子の爽やかな演技が光る。戦後の自由でどことなく軽薄な風潮と、それに対する賛否両論の世論を風刺した軽快な喜劇で、新しい時代の映画の創作意欲が随所に見て取れる作品である。また父娘、姉妹、夫婦の情愛などが非常に丁寧に描かれている。

上州北軽井沢の浅間山のふもとの村で育った娘・おきんは、家出をして東京に出、リリィ・カルメンという名のストリッパーになっていた。彼女は男性たちを魅了する裸踊りを芸術だと信じて疑わない。とある初秋に、おきんは同僚の踊子・マヤ朱美を連れて故郷へ錦を飾りに帰ってくる。芸術の擁護者を自任する校長先生は、村から芸術家を輩出したと大喜び。村人たちも共に帰郷を歓迎した。ところがふたりを目の当たりにして、村とは不釣合いな派手な出で立ちと言動に戸惑ってしまう。おきんの父は彼女が子供の頃に牛に頭を蹴られ、それが原因で少し頭が弱くなったと疑っており、かわいい娘を不憫に思い憂う。学校で運動会が開催されふたりも見学に行くが、カルメンが昔好きだった田口春雄(結婚して子供も一人いるが、戦争で目が不自由になり、生活にも困っている)のオルガン演奏の際に大失態を起こして滅茶苦茶にしてしまう。名誉挽回とばかり芸術披露を思いつき、業者のおだてもあり「裸踊り」を行うことになるが、父や校長先生は恥かしいやら悲しいやらで、校長先生は興行主の丸十の親父(丸野十造)を投げ倒して、当日は仲間と家で酒を飲む。翌日、カルメンとマヤは村を離れるが、踊りでたんまり儲けた丸野十造は、田口春雄の借金のかたに巻き上げたオルガンを田口春雄に返してやり、妻の光子は泣きながら、学校の校庭で自作の曲を演奏している春雄にそのオルガンを持っていく。校長先生とカルメンの父は、カルメンからもらったギャラの一部を春雄に渡し、本当の芸術家が村から出ることを祈る。

喜びも悲しみも幾歳月 ~木下忠司作品集
(株)カメラータ・トウキョウ
藍川由美

ユーザレビュー:
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この記事へのコメント

sino
2008年07月02日 00:13
みました!もちろんリアルタイムなんかじゃありませんよ!
それでも大分以前のことです。ですから、相変わらず印象も
朧です。 高峰秀子さんの最初の記憶は「二十四の瞳」の先生ですから、カルメーンとは! うはー、なんでも演じはると思った記憶があります。 カルメンも浮世の辛さはあったような・・・? でも、なんだかジメジメしてはいなかったという印象が・・・。原っぱで踊るシーンあり? 垢抜けないこと著しいんだけど、なんか健康的で、結構イイと思いました。楽しく最後まで観て、後味も良かった。なんか大胆ですよね。 ほんと、前衛芸術的かも! 高峰秀子さんの、可愛らしい、きりっとした顔立ち好きです。成瀬監督の作品に多数出てますね。あの頃の俳優さんは皆さんスキッとしてますね。姿勢が良く美しいです。DVDにもとってるの沢山あるんだけど、全然観れなくて・・・。とほほ。
sino
2008年07月04日 09:38
おはようございます。(山崎さんはお休み中ですね)
昨日は "皿皿”で盛上がったことでしょう。ちと、羨ましくもありますね。

―持ってるだけで気持ちが豊かになります―
とてもなぐさめられる言葉です。ウーッ嬉しいです。(泣)
おぼろげな印象でコメントしてしまう私ですが、見たよ!知ってるよ!私も同感!って 是非言いたいのでしょう。(笑)
山崎さんのイ・ビョンホン論
素晴らしい興奮を味わいました。実際は現象としての自分が
分析されている訳ですから・・・。いろいろ触発され、考えてるうちに、反応の素早い皆さんがどんどんコメントしてるので、それを読んでるだけで、スゴイなーと。 新しい事何も言えないですよ。 「甘い人生」生き埋め後の乱闘シーンで
私はまるでビョンホンを乗り回しているような興奮を味わいましたから、憑依なんて、ショッキングな言葉で抵抗ありますが、頷ける面、確かにありますね。    以上

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    Excerpt: 憲フェスWebマスターです。今日は晴れているけど寒いっスね。さて、実行委員の間で「ことば」とよばれているものがあります。これは第1回憲法フェスティバルのときに、日本屈指の映画監督木下惠介さんが寄せてく.. Weblog: 憲フェスWebマスターのブログ racked: 2011-03-03 09:59