赤ひげ (1965)

[101]われらが黒澤明と三船敏郎に乾杯……!

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小津安二郎は、生涯、家族を描きつづけたんだけど、
黒澤明は、そういう意味でいうと、
生涯、物語の主題をもてなかった監督のような気がする。

もともと画家志望だったという資質のせいもあるんだろうけど、
徹底して映像(写真)にこだわった監督。
結果、晩年、物語をもとめてさ迷っちゃったような感がある。

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その意味でいうと、この映画は、
黒澤の映像美と物語の主題性とがみごとに溶け合ってて、
黒澤映画の最高傑作って言っていいのかも。

事実、その意気込みもすごかったんだろうなあ。
いまじゃとても考えられないことだけど、
撮影期間がなんと1年なんだよ、1年!

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おかげでこれを最後に東宝に切り捨てられちゃったんだけどさ。
名コンビを組んできた三船敏郎ともこれを最後に別れちゃうし。

このあとの黒澤や三船の映画人生おもうと、
ほんと、ああ、なんか涙なくしては観れない作品だよな。

しかし、なんど観ても、すごい、空前絶後!

私の記憶に間違いなければ、
公開当時、これ、あんまし評判芳しくなかったんだよなあ。
「七人の侍」以降、みんな黒澤に活劇ばかり期待してたからさ(笑)。

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冒頭の屋根、屋根、屋根…。

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そして保本(加山雄三)の背中越しに見えてくる小石川養生所。

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赤ひげ(三船敏郎)の入りも背中から。

いやあ、いいよねえ、いいよねえ。
絵、観てるだけでゾクゾクッって痺れてくる。

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贅沢このうえないオール・セット。
療養所、長屋など、ほんと、細部まできっちり拵えてあるの。

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特に私のお気に入りは、
佐八(山崎努)が町中で
子を背負ったおなか(桑野みゆき)に再会するシーン。
瞬間、手前の軒下の無数の風鈴がチリリーンって鳴るんだけどさ、
いいよ~!

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次の橋のシーンもすごい。
右回りにカーブする橋と桁、左から屋根の巨大な稜線。
なんなんだよ、これ~って、
黒澤の映像にガキッと掴まれて、もう卒倒寸前になる。

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あ、山崎努の芝居、
私の大好きな桑野みゆき相手に、だいぶ臭いんだけどね。
ま、それも美術に合ってるからいいか、許すかって(笑)。

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ついでに言っておくと、加山雄三。
あのノー天気な若大将というと怒られそうだけど、いいんだよねえ。
え? これ、加山雄三? 加山雄三、こういう芝居もできるの?
って、封切当時も、私の目がまん丸になっちゃったもんねえ(笑)。

黒澤はできるまで俳優を絞る監督だから、
そうとうやられたんじゃないかと思うんだけど。

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三船敏郎……。
いやあ、世界の、三船。
これもいまではありえないそうそうたる名優たちに囲まれながら、
あいかわらず三船敏郎やってんだよねえ(笑)。

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怒ってばっかりなんだよねえ(笑)。
それがいいんだよねえ。
文句ないんだよねえ。
物語の世界、支配しちゃってんだよねえ(笑)

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三船でないと、
やっぱりこのメンバー束ねられません。

あ~、寂しい。
黒澤さんと三船さん、これが最後だったんだよねえ。

あ、DVDで観るときは、大画面かプロジェクターで是非!


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●minmiさん
二木てるみ、いいですよね。
う~ん、「天国と地獄」の映像、バタ臭いですかね……?(笑)
緊張感のあるいい映像だとおもいますが……。

ありがとうございました。

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185分 東宝 ドラマ/時代劇

監督: 黒澤明
製作: 田中友幸 菊島隆三
原作: 山本周五郎 『赤ひげ診療譚』
脚本: 井手雅人 小国英雄 菊島隆三 黒澤明
撮影: 中井朝一 斎藤孝雄
美術: 村木与四郎
音楽: 佐藤勝
監督助手: 森谷司郎 松江陽一 出目昌伸 大森健次郎

出演
三船敏郎 新出去定
加山雄三 保本登
山崎努 佐八(車大工)
団令子 お杉(女中)
桑野みゆき 佐八の女房おなか
香川京子 狂女
東野英治郎 五平次(大家)
志村喬 和泉屋徳兵衛
笠智衆 登の父
杉村春子 娼家の女主人
田中絹代 登の母
西村晃 家老
千葉信男 松平壱岐
藤原釜足 おくにの父六助(蒔絵師)
三津田健 まさえの父天野源伯
菅井きん 長次の母
荒木道子 娼家の女主人
左卜全 入所患者
渡辺篤 入所患者
常田富士男 地廻り

山本周五郎原作の『赤ひげ診療譚』を基に、巨匠・黒澤明監督が三船敏郎、加山雄三主演で映画化したヒューマニズム溢れる人情ドラマ。江戸時代の小石川養生所を舞台に、そこを訪れる庶民の人生模様と通称赤ひげと呼ばれる所長と青年医師の心の交流を描く。長崎で和蘭陀医学を学んだ青年・保本登は、医師見習いとして小石川養生所に住み込むことになる。養生所の貧乏くささとひげを生やし無骨な所長・赤ひげに好感を持てない保本は養生所の禁を犯して破門されることさえ望んでいた。しかし、赤ひげの診断と医療技術の確かさを知り、また彼を頼る貧乏な人々の姿に次第に心を動かされていくのだった……。



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この記事へのコメント

minmi
2008年06月14日 13:06
公開当時売り出し中だった内藤洋子が、確か加山雄三の許婚か何かの役で出てましたよね。
私は二木てるみのファンだったので、彼女ばっかりしか観ていなくて。
二木てるみが出てくるたびに、すっげえとか思ってました。
この作品、原作が好きなので、観たのですが、
加山雄三は、若大将のイメージとあまりに違うので、びっくりしました。
黒沢映画は、原作に好きな作品が多いので、よく観てまして、私には映像以上に自然音の使い方とかの印象が強いです。
映像は「天国と地獄」のスチールなんか、外国映画みたいに見えて、バタ臭い映像なんだなーと思うことが多かったです。
私は黒沢作品はアクションより「蜘蛛巣城」や「酔いどれ天使」(モデルになったお医者さんは「下町の赤ひげ」と呼ばれていた人なんですよね)「赤ひげ」「生きる」なんかのほうが好きですけど。

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