キャリー (1976)

[102]青春ホラー映画の名作。突きつけられるイノセンスの解体。

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昔の映画館はたいてい
切符売り場が通りにじかに面していた。
それでたまたま通りかかって時間があったりすると、
「あ、これ、ちょっと観てみようかな」って気軽に入って観れたんだよねえ。
入替え制もあまりなかったし……。

いまの映画館はそういう意味ではあまりお手軽とはいかない。
売り場も館内もずっと奥まってしまったというか、密室化してしまったし、入替え制も多いし。

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この映画も、封切当時、
なんの予備知識もなく、そうやって偶然、新宿の映画館で観たんだけど、
いやあ、面白くて、ずっと記憶に残ってるんだよねえ。
偶然に感謝、偶然は神の恩恵?(^^♪

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スティーヴン・キングの小説の映画化はたくさんあるけど、
これが最高傑作なんじゃないかなあ……。
ちなみにこれはスティーブン・キングの処女作。

ホラーとかオカルトにジャンル分けされるけど、
青春映画って言ったほうがいい。

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冒頭でいきなりキャリーの初潮のシーン。

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高校生で初潮とはあまりにも遅すぎるんだけど、
それは狂信的なキリスト教徒である母親に
性は罪だと徹底的に叩きこまれたせいなんだよね。

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その初潮をクラスメートにからかわれることで
いきなりキャリーの超能力(念動力)が開花……?
電燈を砕き、灰皿を飛ばし、自転車をひっくり返す……。

いいねえ……、と、超能力にあこがれる私は唸る?

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ラスト。
トミー(ジョン・トラヴォルタ)に誘われて卒業ブロム(ダンス・パーティ)へ。

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トミーはスーの彼氏なんだけど、キャリーをからかったことを反省したスーが
トミーにキャリーを誘ってあげてと頼んだんだよね。

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で、キャリーは生まれてはじめてダンスをし、
ダンスしながら生まれてはじめて男(トニー)とキスするの。
キャリーが自分の性をほんのすこし肯定しはじめる、
キャリーのイノセンスがほんのすこし壊れはじめる、
ほんと、とてもいいシーン。

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しかもトミー&キャリーはキング&クィーンに選ばれて壇上へ。

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でも、これ、実はキャリーを嫌うクリスらの計略で、
壇上に上がったとたん天井に仕掛けられていた
豚の血(ケガレ)を全身に浴びてしまう。

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で、その姿を会場にいるみんなに笑われ、
怒り心頭に達したキャリーが
念動力を全開させてすさまじい惨劇を引き起こすんだけど、
ホントはどうなんだろう……?

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会場にいたものは
一握りを除いて笑ってないんじゃないのかな?
それまでのことがあるからキャリーにはみんなが……、
キャリーにやさしくし続けたジャルダン先生までが
自分を笑いものにしているように見えただけで……。

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ともあれ私がこの映画を気に入っているのは、
キャリーが「聖少女」のイメージを強烈に放ってるからなんだよね。
「聖」ってのは、いうまでもなく「聖なるもの」。
いいかえると、世間知らず、無垢ってこと。

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初潮のことに限らず、
キャリーはあまりにも世間知らずで、無垢で、
それでみんな彼女をからかうんだけど……、
ちょっと視点を変えると、そのからかいは
「キャリー、すこしは汚れろよ。自分のイノセンス壊せよ」っていう
メッセージなんだよね。

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でも彼女、全然、そうは受け取らないわけ。
「自分は全然、悪くない。悪いことなんてしてない。
なのにみんなは私を……」って受け取っちゃうわけ。

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つまり、どこまでも徹底してイノセント。

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トミーにブロムに誘われることでキャリーの性は、
一瞬、ケガレ(人間としての汚れ)を受け入れようとするんだけど、
豚の血を全身に浴びることで、
また一瞬のうちにイノセンスの状態に撤退しちゃうんだよね。
撤退して、学校(ケガレ)を破壊する。

それで「聖少女」に見えちゃうんだよね。

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もちろん彼女を徹底してイノセンスに囲い込んでいるのは、
あの狂信的な母親。

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母親はどうして徹底して性を憎むのか。
罪とみなすのか。神にすがりつくのか。
娘キャリーをイノセンスの状態に囲いこんできたのか。

最後にまた家に、
母親のもとに戻ってきたキャリーに母親が告白するけどさ。

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これから観るひとのために、その告白の内容は書かないけど、
それで最後にやっと見る側も思い至るわけ。

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この家にある十字架のキリスト像にどうして
刃物がいくつも突き立てられているのか。

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キャリーの悲しみや恐怖、怒りなどを見事に演じている
シシー・スペイセクに大拍手!

あ、それから、
この映画の日本上映は1977年なんだけど、
やがて日本の社会でもじきに
子どものイノセンスの解体がひじょうに困難になってくるんだよね。

この間、秋葉原で事件を起こした
加藤智大容疑者なんかもそうなんだけどさ。

いまから思うと、
この映画はその前触れだったのかと改めて感心する。

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●maymayさん
ぜひ思い切ってごらんください、
多感な少女期を描いた名作だと思って……(笑)。
ほんとに子どもたちや
若い世代が生きにくい社会になってしまいましたね。
みんなでなんとかしないと未来がないよ……、
と思っちゃいます。

●ろみさん
「エイミー・アービングは その後スピルバーグと結婚、離婚」
え~っ、知りませんでしたあ。
こういう情報にはどうもうといんですよねえ……(笑)。
スピルバーグは大好きな監督なのに。

ありがとうございました。

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98分 アメリカ ホラー

監督: ブライアン・デ・パルマ
製作: ポール・モナシュ
原作: スティーヴン・キング
脚本: ローレンス・D・コーエン
撮影: マリオ・トッシ
美術: ジャック・フィスク
音楽: ピノ・ドナッジオ

出演
シシー・スペイセク キャリー
パイパー・ローリー マーガレット
ウィリアム・カット
ジョン・トラヴォルタ
エイミー・アーヴィング
ナンシー・アレン
ベティ・バックリー
P・J・ソールズ
シドニー・ラシック
プリシラ・ポインター

超能力少女を描いたS・キングのベストセラーを映画化。友人からも嫌われ、母親からも疎まれている、さえない容姿の女子高生キャリー。だが彼女には怒りを引き金として念動力を発揮する力があった。プロムの夜、悪質ないたずらとも知らずクィーンに選ばれたキャリーの頭上に、ブタの血が降り注ぐとき、惨劇が幕を開けた……。重苦しい雰囲気の中で展開される悲劇の物語に娯楽性は少ないものの、ビジュアルによる強烈なインパクトを残す。画面分割を多用して描かれるクライマックスも迫力あり。主演のS・スペイセク始め、J・トラヴォルタ、W・カット、N・アレンなど70年代後半をリードした若手俳優が大挙出演しているのもポイント。

この記事へのコメント

maymay
2008年06月19日 15:05
山崎さんこんにちは。
ホラーやオカルトのジャンルが苦手で(そうおもってました)この映画は観ていませんが、シシー・スペイセクは好きな女優さんで、
彼女の出演で最近観た作品は、9人の女優がショートストーリーを演じる<美しい人>です。
キャリーは1976年の作品なんですね。
この時代結婚し、80年前後に出産を経験し子育てをして来ましたが、結構感受性の強い子供達だったせいでしょうか、戸惑いも多く、親子でまるで荒波の海を泳いでいたような思い出があります。そして、また不幸な事件が起きましたね。
この様な事件が起きると、親はいったいどんな風に子育てをしたら良いのか、不完全な人間が人間を育てるという事・・・考えてしまいます。
映画の感想になってませんね(笑い)
名作キャリー挑戦してみます。
ろみ
2008年06月20日 14:42
山崎さん こんにちは。
「キャリー」は公開された頃、 映画館に行く勇気は
無く・・・。 
その後のTV放送で 見ただけです。
細かいことはすっかり忘れてしまいましたが
ストーリーには 納得した記憶があります。
出演者、豪華でしたね。
シシーや トラヴォルタは 言うまでもありませんが、
エイミー・アービングは その後スピルバーグと
結婚、離婚したし、
ウィリアム・カットは80年代、愉快なTVシリーズの主演作品を思い出します。

スティーブン・キングといえば、
「デッド・ゾーン」が2002年から
TVシリーズ化され 
5シーズンまで 見ました。
原作より 話が膨らみすぎている感がありますが
面白いです。




Kuu
2021年01月23日 10:07
公開後40年以上経った今、ようやく見ました。
素晴らしいレビューだと思います。SNSでシェアさせてくださいね。
シシーの無垢な姿には驚きますね。(しかも、この時彼女はすでに27歳だったとは!)
スー&トミーは本当に善意からキャリーにプロムの件をオファーしたのでしょうか? 周りの高校生があまりに悪意に満ちているので、先生のように「何か裏があるのでは?」という疑いが最後まで消せませんでした。だって、プロムの相手をキャリーに譲るなんて‥‥プロムって、高校生にとっては、一生の一大事ですものね。

あまり映画に詳しくない私でも、「あの人は今!」的な部分でも、かなり楽しめました。
※細かいことですが、キャリーをプロムに誘ったトミーは、トラボルタではなくウィリアム・カットですね。

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