二重スパイ (2003)

[112]リオの陽光は人間の生死を超えて……?

画像


観ようかなあ、よそうかなあ……、と、ずっと躊躇してた映画。

理由は単純。
「八月のクリスマス」のハン・ソッキュがめちゃよかったから……。

また「シュリ」みたいなハン・ソッキュだとちょっと嫌かなあ、
イメージ大事にしてたいなあ、みたいな気がしてて……。

ところがどっこい、いいんだよねえ、ハン・ソッキュが……。

たしかに「シュリ」同様エンターテイメントなんだけど、
「八月のクリスマス」のジョンウォン(ハン・ソッキュ)が
ちょっと元気になって、そのまま
「二重スパイ」の世界に抜け出してきちゃったみたいな感じ……?

物語もタイトルから想像するのとえらく違って?
スパイ・アクションものというより、
たまたま南に潜伏させられた北のスパイの
リム・ビョンホ(ハン・ソッキュ)と、ユン・スミ(コ・ソヨン)の
ラブ・ストーリー……。

ハン・ソッキュ、徹底的に抑制した演技で
国家に翻弄される人間の心の微妙な陰影を
みごとに表現してみせてんだよなあ……。

かれも「シュリ」みたいな派手なアクションを極力押さえて、
「八月のクリスマス」みたいなラブ・ストーリーを、
もういっぺん作りたかったんじゃないかなあ、
なんて勝手に思っちゃった……。

それにしても、ラスト、もうめちゃ秀逸……。

普通だったら
国外に脱出する直前に殺されちゃうんだろうけど、
リム・ビョンホがユン・スミの後を追って
南米のリオまで行っちゃうんだよね、日本経由で……。

で、2年後、港湾労働者として働いてる姿があって、
南米の光溢れるアパートにはユン・スミの姿があって、
しかも、彼女のお腹がちょっぴり膨らんでたりして……。

でも幸せそうなぶん、観ててもうすごくハラハラしちゃうんだよねえ。

うそ、絶対そんなはずないよ。殺されるんだよ、これって……、
誰が見てもその予感がするように作ってあって、
それでリム・ビョンホが動くたびについ、
どこにいる……? 狙撃者はどこだ……?
あれ……? あいつ……? こいつって……、

もう観てるこっちが、一生懸命、画面の中に
怪しげなやつを鵜の目鷹の目で追っかけちゃったりして……。

海岸線で男に呼び止められたときも、
あ、こいつだ。絶対、こいつ。止まるな。
おい、車、降りるなよ。あ、そんなもん受け取るなよって、
ほんと、思わず声かけたくなっちゃったりして……。

でも、その一方で、
絶対殺されちゃうんだろうなあ、映画だもんなあって、
すでに覚悟決めてる自分がいたりして……。

それで……、あの南米の、
すべてを飲み込みそうな空の明るさと、海の明るさだろう、
人間の幸福も残酷さもそ知らぬふりをした……?

ほんと、参っちゃう。
ほとんどカミュの「異邦人」の世界なんだもん。

ユン・スミがまたなにも知らぬげに
丘の上のアパートの窓辺から港を眺めてたりして……。

ところで、コ・ソヨン、びっくりしたあ。
こんなにおとなを感じさせる韓国の女優さんはじめてだし、
すごくセクシーだし……。

監督のキム・ヒョンジョンもこれがはじめての映画なんだって?
しかもこの時まだ30歳……?
すごいよね、映画の創り方、ほんとしっかりしてるし……。
浮ついたとこ全然ないし……。

ちょっと難を言えば、
はじめから最後まで丁寧に作ろうとしすぎてて、
かえって流れがちょっと滞ってしまうことかな……?

うん。
「シュリ」より全然こっちのほうが面白かったわ……。

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●ろみさん
「ラスト、平穏で幸せな生活を手に入れたかに見えたのに」
幸せな生活を手に入れるラストじゃ映画にならないのかなあ。
たまにはそういう映画も……、という気持ちで観てました(笑)。

●ソルロンタンさん
韓国では興行失敗ですか。なんででしょう、面白いのに……。
「18日からソウルに行き『奴』『公共の敵1-1』だけ見て来ます」
お気をつけて。帰国したらぜひ感想をコメントくださ~い……。

●ひまわりの種さん
コ・ソヨンのラスト・シーン、抜群ですよね。
なんかもうヨーロッパの映画女優さんみたいで驚きです。
「恋の罠」、楽しみにしておきます。
しかし韓国の映画のタイトル、旧態依然としたものが多いですね。
原題がそうだとしても、
邦題にするときもちょっとなんとかならいもんですかねえ(笑)。
タイトルと内容に落差があることが多いです。
これも「二重スバイ」だなんて、あまりにもまんますぎて、
おいおい、ちょっとなんか違わない?って感じなんですよねえ……(笑)。

●ライラックさん
ラスト、ほんと、なんてことない場面なのに
ハラハラドキドキしっ放しでした。作り方、うまい……!(笑)
「コ・ソヨンさん、ビョンホンさんが、以前好きなタイプだとおっしゃっていたのを」
ムムッ、ビョンホン、どうも私の好みと似てるようで……(笑)。
ソン・ハッキュ(正解はハン・ソッキュ)、ほんと「思い切り普通っぽくて」いいですよねえ。
いそうでなかなかいない俳優だとおもいます……。

●ライラックさん
ははは……、ごめんなさ~い。
私もライラックさんの文章からコピー・ペーストしたので間違えてます。
でも記念にそのままにしとこ~(笑)。

ありがとうございました。

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123分 韓国 サスペンス1/ドラマ/ロマンス

監督: キム・ヒョンジョン
製作: ハン・ソッキュ ク・ボナン
原作: ク・ボナン
脚本: ペク・スンジェ キム・ジョンヘン チョン・ユンソプ
シム・ヘウォン キム・ヒョンジョン
撮影: キム・ソンボク
音楽: ミヒャエル・スタウダッハー
照明監督: シン・ハクソン

出演
ハン・ソッキュ リム・ビョンホ
コ・ソヨン ユン・スミ
チョン・ホジン ペク・スンチョル
ソン・ジェホ ソン・キョンマン
リュ・スンス

「シュリ」のハン・ソッキュと「エンジェル・スノー」のコ・ソヨン共演のサスペンス・ラブ・ストーリー。亡命を装い韓国に潜入した北朝鮮スパイとラジオDJをしている女性スパイが活動をともにするうち恋に落ち北と南の両方から追われる姿をスリリングに描く。監督は、本作が劇場長編デビューとなるキム・ヒョンジョン。
1980年、冷戦下の東ベルリン。迫り来る銃弾をかいくぐり何とか西側へ辿り着くひとりの男。男はそこで韓国の情報員に保護される。しかし、この男イム・ビョンホの正体は亡命を装い南に送り込まれた北朝鮮の工作員だった。ビョンホは偽装を疑う韓国の国家安全企画部(安企部)の執拗な取り調べもクリアし着実に信用を勝ち取っていく。そして二年後、正式に安企部要員に採用されたビョンホに北からの最初の指令が下った。それは、放送局の女性アナウンサー、ユン・スミに接触せよというもの。彼女もまた北のスパイだった。密命を帯びる2人は恋人を装い面会を重ねるのだったが…。


この記事へのコメント

ろみ
2008年07月03日 12:06
山崎さん、こんにちは。
この作品は TVにて 日本語吹き替え、
多分所々カットされているであろう状態のものを
見ました。
ラスト、平穏で幸せな生活を手に入れたかに見えたのに
やはり・・・。
そして 明るい空と海は 何も変わらないのですね。

コ・ソヨンさんが 20歳くらいの頃に
イ・ビョンホンの相手役として出演したドラマを
見たことがありますが
当時から とても大人の雰囲気がありました。
ソルロンタン
2008年07月04日 23:20
山崎さん しつこくまたお邪魔します。
「二重スパイ」地元のシネコン(また観客数人)とTV(WOWOWのノーカット版?)で観ました。
韓国では興行失敗でしたが私は凄く面白かった。
やはりハン・ソッキュの演技力抜群!
コ・ソヨンはほんとに大人の雰囲気ですね。
いつばれるかハラハラドキドキでしたが、極限状態の中の深~い内面の表現が見事で二人には幸せになってほしかった。
ラストでこうなるだろうと思いつつ「アァ~」と溜息でした。
ハン・ソッキュの新作「眼には眼、歯には歯」は31日公開で白髪の豪腕刑事役で凄みがあります。(18日からソウルに行き「奴」「公共の敵1-1」だけ見て来ます。)
日本でも大画面で観たいですね。
ひまわりの種
2008年07月05日 10:26
お早うございます。
便利な世の中、偶然ネット配信(但し12分割)で今
観られてこちらでのお話に頷けること沢山です。
主演のお2人、脇を固める方達いかにも現実にいそうな
やはりあの国独特の映画ですね。
コ・ソヨンさんのどこか冷めた大人の女性の雰囲気
が特にラストがいいですね。
ソッキュssiの「恋の罠」(2006年韓国公開)を今春
スクリーンで観ました。まだDVD化されていないようですが、絶対お勧めです。史劇なのに新しい、邦題が今ひとつピンと来ませんが、映画館でも大人の笑いが溢れて
良い雰囲気でした。
ライラック
2008年07月10日 22:45
山崎さん、こんばんは。
随分前に見たのですが、印象に残っているのがやはり最後です。
山崎さんの分析通りです・・・そう、そんなに甘いわけない、二人で逃亡したんだ!、逃げられたんだ!過去を捨て二人で家庭を築いていたんだ・・・穏やかな顔でアパートのベランダから景色を見ながら、夫の帰り(迎え)を待つ妻・・・外食に誘われたんでしたね。
二人でハッピーに暮らし続けていたら、インパクトがなくなっちゃう。
そう自分に言い聞かせながら、悲しい結末になるのを覚悟しながら見ました。そのドキドキ感がたまりませんでした。

南北関係、拷問、私には目を覆いたくなるような場面もありましたが、こういうことから目をそらせてはいけない、とも思いました。朝鮮半島が分断され、同じ民族でありながら支配された力により、過酷な人生を歩む登場人物の迫力にも参りました。
 (続きます)

ライラック
2008年07月10日 22:48
 (続きです)
コ・ソヨンさん、ビョンホンさんの若い頃のドラマでも共演されていましたが、ビョンホンさんが、以前TV番組で好きなタイプだとおっしゃっていたのを思い出しました。
美しく、セリフが無くても演技が光る女優さんですね。

ソン・ハッキュさんは、外見とか、思い切り普通っぽくて、重いものを背負っている役がすごくいいです。

毎度、山崎さんのコメントはよく分析されていて、胸にすとんと落ちてきます。
ありがとうございました。
ライラック
2008年07月12日 23:04
山崎さん、こんばんは。

↑ お恥ずかしい・・・
俳優さんの名前を書き間違えました。
(誤) ソン・ハッキュ
(正) ハン・ソッキュ   ですね。

これに懲りずによろしくお願いします。
            


ハン・ソッキュ

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