クライング・フィスト (2005)

[129]想像力をもっとも低い場所へと飛ばすことのできる韓国俳優たち……。


画像     ジャケットの口上で
     いまいち食指動かず
     ずっと後回しにしていた作品なんだけど、
     いやあ、面白かったあ……!

     妻子に逃げられたアジア大会の
     元銀メダリスト、カン・テシク(チェ・ミンシク)と、
     不良少年ユ・サンファン(リュ・スンボム)の物語を
     まったく別々に進行させるのはどうなの……?

二人の人間の生きる様を平行して描くんだったら、
ボクシングで対戦する場面はともかく、
最後まで二人を同一画面に置かないで、
平行したまま終わらせればよかったのに……、
と、ちょっと不満がないでもないんだけどさ。

でもそれを差し引いても、
韓国映画の中でも傑作中の傑作!
といっても過言じゃないんじゃないかなあ……。

なんでかっていうと、
二人の主人公の生活が
細部にわたってきっちりと描かれているから……。

周囲の俳優も含めて、
チェ・ミンシクとユ・サンファンがほんとうにきちんと
人物の置かれた生活を「生活してみせている」から……。

演技って物語を生きること。
もっと言えば、
物語の中の生活をちゃんと生活すること……。

舞台はほんらい神の降りる場所で、
俳優が物語の中の生活を
生活してみせる場所ではなかったんだけど、

神が死んでからは、
ということは近代に入ってからということなんだけど、
舞台は俳優が物語の中の人物たちの生活を
生活してみせる場所になっていったんだよね。

人間が生活している場所を演じてみせる。
人間が生きている場所を表現してみせる。
以前のように神に向かってではなく、
まさにいま現実を生きている人間に向かって……。

それが近代に入って
リアリズムが生まれた最大唯一の理由だと思うんだけど、

チェ・ミンシクも、ユ・サンファンも、
そしてまわりの俳優たちも
人物たちが生きている場所を、生活を、
ほんとうにリアルに、生き、生活してみせてて、
それだけでもう泣きたくなっちゃうくらい感動するんだよね。

実際、観てると、涙、止まんないんだけどね……。

すこし言いかえると、俳優たちが
いちばん低い場所で生きている人たちの生活や心を
みごとに表現してみせてるってこと。

自分をもっとも低い場所に置けてるってこと……。

まあ、俳優にとってはいちばん大事なことだと
思ってるんだけどね……。

中でも、
ボクシングのほかにはなにもできずにきた
どうしようもない中年男を演じている、チェ・ミンシク。

もともといい俳優で私のお気に入りなんだけど、
この作品がいちばんいいんじゃないかなあ。

ほんとに自然に、ストンってかんじで、
自分を低~い場所に置けてるんだよねえ。
全然、下駄履いてないんだよねえ……。

え~っ、ここまでやれちゃうんだって
ほんと正直驚いちゃった(ごめんなさい)……。

ほかにも、
リュ・スンボムをはじめ、
サンファンの祖母をやっているナ・ムニ。
サンファンの父のキ・ジュボン。
テシクの妻のソ・ヘリン。
チェ・ミンシクと互角に渡りあってみせてるイム・ウォニ。
サンファンのコーチのピョン・ヒボン……。

もう挙げはじめたらキリがないくらい、
みんなめちゃくちゃいい。

だよなあ……。
韓国の俳優がいいのは、みんな
ここに描かれている人物たちの生きてる場所、
生活してる場所をからだがちゃんと知ってるからなんだよなあ、
と思っちゃうんだよねえ。

それはたぶん間違いない……?

あ、音楽も、
もちょっと統一感をもたせたほうがいいとは思うけど、
すごくセンスいい。

映画ファン、必見の映画……!


●てっせんさん
こういう映画にコメントいただけるのはやっぱりてっせんさんだけで、
いやあ、うれしいです……!(笑)
この作品、もう25年来の友人(女性)にすすめられまして。
彼女、私の知らない間にすっかり韓国映画に嵌ってまして、
このブログ見たあと、後発の私に「これ見ろ、あれ見ろ」と
いろいろ指図してDVD送ってくれまして……(笑)。
まあ、昔から好みも似てるもんだから、わかるんでしょうが。
ところで、リュ・スンボム、すばらしいです!
「社会のどこにも寄る辺のない、さみしさの極み」を抱えた人間って、
彼のようなケモノの匂いを体中から発しますよね。
私の友人だった故・金子正次(「竜二」)がまさにそうでしたが……。
食堂の主人役、チョン・ホジンって俳優ですか。
かれもすてきですね。喋らずして心がわかりますよね。
「二重スパイ」にも……、チェックし直します。
「マルチュク青春通り」、上記の友人が送ってきてるので近々観ます。
クォン・サンウが子供騙しに見えるとは……、韓国俳優、恐るべし。
連中、ほかにもまだいっぱい隠してたりして……(笑)。

●てっせんさん
はい、金子は青春をともに雑踏で過ごした友でした。
想い出がたくさんありすぎて、じつは封切で観て以来、
いまだに「竜二」はまともに観ることができないんです。
すぐに画面が曇ってしまうものですから……(笑)。
撮ってる最中も「大変だあ……」って
夜中、よく私の稽古場にグチをこぼしに来てましたし……。
映画にも出てた1人娘のももちゃん、
はやいものでもう30歳すぎてるんですが、
時々、私の舞台、観に来てくれます。
東京FMでDJやってるのですが……。

追伸)
中原中也の悲しみに通じる……、同感です。
雑踏の悲しみですよね。
唯名性から無名性へ……。
そのあたりが私が小林秀雄より中也が全然好きなところなんですよね。

●mariko_bさん
はじめまして。
リュ・スンボム、素顔を見ると、ほんと人なつこい、
そのへんにいる青年って感じですよね。
それが映画になると豹変しちゃって……、その演技力には驚嘆します。
「品行ゼロ」、ぜひ拝見しますね。
リュ・スンワン監督はお兄さんで、お兄さんの映画にちょっと出たのが
俳優になるきっかけだったそうです。
その前はナイトクラブの専門DJになるのが夢だったとか……。
「冬のソナタ(恋歌)」ですか。
韓国、面白そうな映像を作るんですね……。

●mariko_bさん
こちらこそ失礼しました。
「甘い人生」のところではみなさんのコメントに返信をするの、
控えさせてもらったものですから……。
予期しないコメントの凄さに圧倒されちゃいまして……(笑)。
「恋のソナタ」ですね。わかりました。
「冬のソナタ」? とは思っていたのですが……(笑)。

ありがとうございました。
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■120分 韓国 ドラマ/スポーツ

監督: リュ・スンワン
脚本: リュ・スンワン
撮影: チョ・ヨンギュ
音楽: パン・ジュンソク

出演
チェ・ミンシク カン・テシク
リュ・スンボム ユ・サンファン
イム・ウォニ ウォンテ
チョン・ホジン サンチョル
ピョン・ヒボン パク コーチ
ソ・ヘリン テシクの妻
ナ・ムニ サンファンの祖母
キ・ジュボン サンファンの父
キム・スヒョン クォルロク
イ・ジュング ソジン
オ・ダルス ヨンデ
アン・ギルガン 刑務主任

すべてを失った元ボクサーの“殴られ屋”と、ケンカに明け暮れ少年院でボクシングに目覚めた愛を知らない青年、そんなどん底の2人の人生がボクシングを介して激しく交錯するさまを描いた熱き男のドラマ。主演は「オールド・ボーイ」のチェ・ミンシクと「ARAHAN アラハン」のリュ・スンボム。監督も同じく「ARAHAN アラハン」のリュ・スンワン。
かつてはアジア大会の銀メダリストになったこともある人気ボクサーのカン・テシク。しかし事業に失敗、莫大な借金を抱え、妻子にも逃げられた彼は、路上で“殴られ屋”をするしか道がなかった――。ケンカとカツアゲに明け暮れる荒んだ日々を送る19歳のユ・サンファン。強盗に失敗して、ついに少年院送りとなった彼は、そこでボクシング部に入部する。次第にボクシングの魅力にハマっていくサンファンだったが――。そんな2人はやがて、同じ新人王戦に自らの人生の再起を懸けリングに上がるのだった…。


この記事へのコメント

てっせん
2008年08月19日 00:00
こんばんは
実はリュ・スンボムについて、山崎さんの評価が知りたく、この映画に主演していることをご報告しよう思っていたのですが、一歩遅れてしまいました(笑)
この映画でのリュ・スンボム・・・社会のどこにも寄る辺のない、さみしさの極みのような、あの野良犬の目が実にイイなと思いました。非行少年役をやらせたら、韓国を超えてそれこそワールドクラスだなと・・・(笑)ただし、野良犬にしてはちょっと栄養がいい体つきでしたが・・・
もう一人、何かとテシクを気遣う食堂の主人役のチョン・ホジンも気になる俳優です。
「二重スパイ」では安企部でのハン・ソッキュの上司役を演じていて、私としてはハン・ソッキュ演ずる人物像よりもこちらの方にリアリティを感じていました。
また、「マルチュク青春通り」ではクォン・サンウの父親役として出て、テコンドーの回し蹴りをちらりと見せてくれるんですが、それが完璧に玄人の技(クォン・サンウのアクションが子供だましに見えるくらい)なので感心した覚えがあります(笑)
てっせん
2008年08月21日 21:07
こんばんは
金子正次さんは、山崎さんのお友達だったんですか・・・
「竜二」、いいですよねえ。
特にあのラスト・・・
夕暮れどきの賑やかな商店街。買い物客の雑踏の中に、女と平凡な生活を残して去って行ってしまう竜二・・・映画史に残る、哀切きわまりないラストシーンだと思います。さぞ、あの雑踏の仲間入りをしたかったんだろうなという、はぐれ者の悲しみが切々と伝わってきたのを覚えています。こうして思い出しても、涙腺に、きちゃいます(笑)
今、唐突に思ったんですが、この悲しみはなんだか、中原中也の詩にも通じるものがあるような気がします・・・
mariko_b
2008年08月23日 10:21
山崎さん、おはようございます!

この映画は未見ですが、リュ・スンボムの名前を見て思わず出てきました。
俳優イ・ビョンホンファンで映画大好きな私ですが、イ・ビョンホン関連作品を色々鑑賞の中でリュ・スンボムを知り全くタイプの違う彼と彼のの演技に心が揺れました。
山崎さんの言われるように、韓国の役者さんは本当に演技上手いですね~。(人にもよりますけど・・)

このリュ・スンボムを初めて見たのは、韓国の音楽DVの映像です。曲を引き立てる為の台詞のついていない映像の中でのリュ・スンボムの存在感と人なつっこい姿が印象的でした。
決してハンサムというタイプではないのに、こんなに強く惹かれるのはなんだろうと思っていたら、別の場所で都会的な彼を発見し「やっぱり演技力のある役者だった!」と確信しました。
それからです。韓国ドラマで見かけたり、なんとイ・ビョンホンの映画「夏物語」のチョ・グンシク監督の「品行ゼロ」という作品で主役を務めてます。この初作品で監督は世に認められたと聞いています。光っていますよ、ここでもリュ・スンボム! はまり役です!
機会があれば、是非ご覧下さい。続く

mariko_b
2008年08月23日 10:23
続きです。

ところで、リュ・スンワン監督は彼のお兄さんだったのでは・・うろ覚えですが。
それと前述の音楽DVですが、韓国の俳優さんが沢山出ていて、曲もいいのですが何よりそれぞれの映像、短い映画(5~10分)と言って
いいと私は思いますが、台詞がついていないのに(ま、判りやすいストーリー展開ではありますが)全78曲(DVD6枚組)の78本の映像で韓国の俳優(歌手)達の高い演技力と映像力?を感じました。
勿論、イ・ビョンホンの出演した2曲(2作品)は、一番好きですけど、他にも良い作品が
たくさんありますので、これもまた機会があれば、ご覧ください。冬のソナタ(恋歌)という商品名(6枚組)でネット販売されています。
(可能ならばお貸ししたい所です)

「クライング・フィスト」今度、観てみますね!

長々と失礼しました。
mariko_b
2008年08月23日 13:29
山崎様、お返事ありがとうございます。

実は「甘い人生」のところに、コメントをしたのが初めてだったんですが、ご挨拶をせず述べてしまい気になってました。
その節は失礼いたしました。

その上、お詫びも・・・
先ほどお伝えした音楽DVの名前を間違って入力しました。正しくは「恋のソナタ」です。
(頭の隅に「冬ソナ」があったのかな・・)

本当に、失礼いたしました。

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