オアシス (2002)

[132]われらが姫と将軍の愛に幸あれ……。


画像     つづけて観ちゃったんだよね、
     ソル・ギョング。
     「熱血男児」がよかったから……。

     そしたら、
     いやあ、この映画も
     めちゃくちゃいいじゃないか。
     たまんないよお……!


ホン・ジョンドゥ(ソル・ギョング)が刑務所出てきて、
大きな豆腐、パクパク食うところからはじまるんだよね。
季節は冬なのに、夏服着て……。

出だしからいいよねえ。
こいつ、もしかしたら、とっぽいやつかもって感じで……(笑)。

しかしなんで豆腐なんだろう、韓国、刑務所出てきた連中……?
豆腐(白)食うことで贖罪ようやく終わりってことだろうけど、
白いものってほかにもありそうなのに……。

あ……、人身事故起こして入ってたんだけど、
ほんとは兄貴の身代わりでお勤めしてきたんだよね。
兄貴には会社があるからおれが入っくるよ、おれは前科者だしって……。
あとでわかることなんだけどさ。

でも冷たいんだよねえ、兄貴も家族も。厄介者扱うみたいでさ。
まあ、しょうがないと言えばしょうがないんだろうけどね、
ホン・ションドゥ、子どもみたいで全然社会性ないから……。

で、数日後、
過失死させた遺族のアパートへ行ってみると、引越しの最中で、
兄夫婦はぼろぼろのアパートに
脳性麻痺の妹コンジュ(ムン・ソリ)ひとりを残して行っちゃうわけ。
ひどいんだけど、彼女名義で当たった障害者用の大きなアパートに。

それもあとでわかるんだけどね、
ホン・ションドゥ、彼女も自分同様
厄介者扱いされてるってこともあるんだろうけど、
一目惚れしちゃって?
翌日からなんとなく面倒見はじめちゃうんだよね。

その接し方がいいのよ。

手足も発語もすごい不自由なコンジュ見ると
まわりの連中は違和感かんじて近づきたがらないんだけど、
ホン・ションドゥは最初からもう全然、違和感なんて抱かないわけ。
ほんと普通に……、
健常者にたいするのとまったく同じように接するんだよね。

むしろコンジュのほうが、
なんで私みたいなのに近づいてくんのよって
警戒心抱いちゃうくらいでさ。

当たり前のことやってるって言えば当たり前のことやってんだけど、
みんな、その当たり前のことができないわけで……。

そのうち彼女にもホン・ションドゥの心がわかってきて、
「姫」「将軍」なんて呼び合う恋仲になっちゃうんだけど、
ちょっとあたまが足りない?ホン・ションドゥと
脳性麻痺で不自由なはずのコンジュの付き合い見てると、
こっちのほうがほんとだよな、
人間だよな、恋愛だよなって思えちゃうんだよねえ……。

社会化されてない人間の心のほうがほんとなんだよ、
大事なもの失ってないんだよって……。

最後もめちゃくちゃ面白い。

「姫」がやっと誘ってくれて寝るんだけど、
兄夫婦に見つかって強姦罪で逮捕されて、
弁明する術も知らなくて……。

ま、言っても、自分たちの仲、誰も信用しないだろうなって
わかっちゃってるからなんだろうけどさ(笑)。

でも取調べの最中に抜け出して、
「姫」が壁の絵(「オアシス」)に映る木枝にまた怯えてないかって、
彼女のアパート前の木をノコギリで
ギシギシ切り倒しはじめちゃうんだよねえ……。

ほんと、おかしいやら、泣けるやらで……。

ハン・コンジュやってるムン・ソリ、うまいよなあ。
「レインマン」のダスティ・ホフマンにも感動したけど、
それ以上かも……、脱帽。

そして、ソル・ギョング……、文句なし。
これといって取柄のあるわけじゃない、
そこいらのひとやらせるとほんとにうまい。

じつにさりげなくて、しかも、おとな……!

ただ一言いえば、
脳性麻痺のハン・コンジュが
地続きで健常者になるシーンがなんどかあるんだけど、
あれは必要なのかなあ。

鏡の反射する光がハトに見えたり
蝶々に見えたりするだけでいいんじゃないかな。
「健常者」になって伝えるんじゃなくて、ほかに方法なかったのかな……。

画面にある種の解放感を与える
という意味では必要なのかもしれないけど、
作家や監督、やっぱり健常者のほうが「普通」だと思ってんのかなと、
ちょっと気になったりしないでもないんだよね……。

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●てっせんさん
「この映画は、我が韓国映画ベスト10に入る作品です」
なんだか知らないけど、やったあって感じです(笑)。
劇は古来、神々と英雄の物語ではじまり、
近松歌舞伎でようやく
町人と最下層・遊女たちの物語にたどりつきます。
それでも町人や遊女たちは「粋」の文化を生き、
その延長で心中するわけですから、
じつはこの映画の「姫と将軍」のほうがより下層なんだよ、
その最下層の男と女が解き放つ自由な創造力の物語なんだよ、これ。
ここまで描けたとき「しゃべり言葉」による劇表現は
やっと目指すべき地平の表現を手に入れたんだよ、
って思っちゃうんですよね、片隅で40年、劇やってる人間としては…(笑)。
てっせんさんも大好きだというトップシーンは、
じつはそれを暗示してるので痺れちゃうじゃないかと思うのですが。
すごいことやっちゃってる作品の前で
あとから理屈つけても、まあ、しょうがないわけですけど……(笑)。
「女性に言わせると、ジョンドゥがコンジュを襲っちゃうシーンが、
どうにも許せないらしいのです」
う~ん、襲うことでしか表現できない男の愛情のありかたも
あるんだと思うんですけどねえ……(笑)。
「ペパーミント・キャンディ」、じつはず~っと探してるんですが、
まだ手に入らないんです……。
こうなったらどこかのレンタル屋さん襲うしかないかなあ……(笑)。

●Leeさん
お久しぶりです。お元気してらっしゃいますか。
この作品、ほんといい作品ですよね。
「ソル・ギョングさんてどこにでもいるような親しみやすい感じ」
「ビョンホンさんはオーラが眩しい雲の上の上の方(*^_^*)」
はいはい、まったくその通りです(*^_^*)……(笑)。
「ペパーミント・キャンディ」、夕べも近くのレンタル屋行ったのですが、
在庫もなしでした。こんどはちょっと遠くを探してみます(泣)。

●てっせんさん
「専門家」と言われるとちょっと恥ずかしいのですが……(笑)。

●ちょごりさん
ムン・ソリ、いいですよねえ。
「なぜ日本の俳優さんに、私は心揺さぶられる方がいないのか」
ほんと、少ないですね。現場にいても痛切に感じます。
女優さんだけではないですけど……。
あらゆる表現はこころが作り出すものですから、
やっぱりいまの日本人のこころの問題なんだろうなとは思います……。

●ライラックさん
韓国通の友人Kさんの話によると、いまは必ずしも、
出所したら豆腐を食うわけでもないらしいです。
「地続きで健常者になるシーン」
象が出てくるシーン以外にも数箇所ありますよね。
二人の心の中ではこんな感じなんだよ、ということなんでしょうけど……。
ムン・ソリさん、撮影後入院したんですか。
いやあ、あんなに無理な状態を続けるわけですから、
無理からぬ話です。ほんと拍手送りたいですよね……。

●ゆかさん
ムン・ソリ、すごいですよね。
私も芝居やってるものですから、こういう演技をしてくれると、
俳優ってすごいよなあと改めて思え、とてもうれしくなります。
「マラソン」のチョ・スンウや、「クライング・フィスト」のリュ・スンボム、
「エディット・ピアフ 愛の賛歌」のマリオン・コティヤールなんかも
そうだったんですが…。
「地続きで健常者になるシーン」になるシーンは、ゆかさんの
ご指摘の通りだとおもいます。
ただ私はそうしなくても観てる側にも十分伝わってくると
思ったものですから…。

ありがとうございました。

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132分 韓国 ロマンス/ドラマ

監督: イ・チャンドン
製作: ミョン・ゲナム
脚本: イ・チャンドン
撮影: チェ・ヨンテク
美術: シン・チョミ
音楽: イ・ジェジン

出演
ソル・ギョング ホン・ジョンドゥ
ムン・ソリ ハン・コンジュ
アン・ネサン ホン・ジョンイル
チュ・グィジョン ジョンイルの妻
リュ・スンワン ホン・ジョンセ
ソン・ビョンホ ハン・サンシク

前科者の青年と脳性麻痺の女性が、世間の無理解に苦しめられながらも互いの愛をどこまでも純化させ貫き通す姿を痛ましくもピュアに描いた衝撃のラブ・ストーリー。監督・脚本は「ペパーミント・キャンディー」のイ・チャンドン。2002年ヴェネチア国際映画祭で監督賞と新人賞(ムン・ソリ)を受賞。
暴行、強姦未遂に続いて、今度はひき逃げ事件による2年6ヵ月の刑を終えたばかりのジョンドゥ。出所して家族のもとに戻った彼を、誰も快く迎えようとはせず疎ましい感情を隠そうともしない。ある日、彼はひき逃げで死なせてしまった被害者遺族を訪れる。しかし、一家は引越しの最中で、部屋にはコンジュという女性一人が取り残される。彼女は重度の脳性麻痺のため手足が不自由で発語にも重い障害を抱えていた。兄夫婦は彼女の名義で障害者用の大きなアパートを手に入れ、そこへ移って行ってしまったのだ。ジョンドゥはそんなコンジュのことが気になり始める…。


この記事へのコメント

てっせん
2008年08月21日 21:32
何度も、すみません。
この映画は、我が韓国映画ベスト10に入る作品です(笑)
これは、山崎さんもお書きになっているように、ファースト・シーンにやられました。
真冬なのに半そでのシャツを着て、鼻水を垂らした冴えない男がバスから降りると、どこからともなく歌謡曲が流れていて、舗道の屋台で安物の女服を買うシーン。
文章では巧く伝えられませんが、なぜかこのシーンが好きで、いっぺんに映画の中に入っちゃったんですね(笑)
私はこの映画、とてもいい作品だと思うんですが、女性に言わせると、ジョンドゥがコンジュを襲っちゃうシーンが、どうにも許せないらしいのです・・・
それはさておき、同じ監督によるソル・ギョング主演の「ペパーミント・キャンディ」の評も、楽しみに待たせていただきます(笑)
Lee
2008年08月22日 17:45
山崎さん、こんばんはm(__)m
お久しぶりです<(_ _)>
「オアシス」ご覧になったんですね(^^)
私もこの映画好きです。
「ペパーミント・キャンディ」探して
くださっていたんですね。
山崎さんの感想を今か今かと待って
いるんですよ(^^)
てっせんさんも推薦してくださってますし、
是非、どこか襲っちゃってください(笑)
ソル・ギョングさんてどこにでもいるような
親しみやすい感じが好きです。

ビョンホンさんはオーラが眩しい
雲の上の上の方(*^_^*)

てっせん
2008年08月22日 23:19
さすがに、専門家の方は洞察が凄いです。感銘を受けております、鳥肌が立つほどに・・・。

・・・じつはこの映画の「姫と将軍」のほうがより下層なんだよ、その最下層の男と女が解き放つ自由な創造力の物語なんだよ、これ。
ここまで描けたとき「しゃべり言葉」による劇表現はやっと目指すべき地平の表現を手に入れたんだよ・・・

このご文章を何度も読み返し、反芻し、そして自問自答しています。なぜ、自分はあの冒頭のシーンがたまらなく好きだったのかと・・・

ありがとうございました。
ちょごり
2008年08月26日 10:33
ごぶさたしてます。

私、この映画で、「ムン・ソリ」さんという女優さんを知り、驚きました、そして、韓国には本当に凄い俳優さんが多くいるなあ~~~と、思い、なぜ!日本の俳優さんに、私は心揺さぶられる方がいないのか、とても、残念に思いました。
いろいろな事情があって、中々劇場へ映画を観にいけないけれど、DVDやテレビで、多くの作品を観ていますが、日本映画に心を揺さぶられる作品にめぐり逢えないのが、寂しいです。
ライラック
2008年09月05日 12:19
山﨑さん、こんにちは。

山﨑さん、ご覧になってくださっていたのですね。嬉しいです。
以前、「大統領の理髪店」で、ムン・ソリさんが素晴らしいので、この作品も見ていただきたいと思っていたのです。
見たのが、4年ほど前になるかと思いますので、記憶違いがあったらごめんなさい、です。

みなさん同様、出所のシーンはインパクトありましたね。寒い季節に夏服。もうこれだけで、
家族に愛想つかされている状態だと察しがつきます。

出所の時のお豆腐ですが、韓国の作品ではよく見られますね。いきなりわしづかみでむしゃむしゃと食べるシーンには違和感ありました。
豆腐のように白い物を食べて心入れ替え、まっすぐに生きよ、ということらしいですが、やたら見ますね。そんなに韓国って刑務所に入る人が多いの?・・・そんなことないですよね、ドラマティックに演出するためでしょう。
でも、多い!

(続きます)
ライラック
2008年09月05日 12:21
(続きです)
ジョンドゥとコンジュが精神の世界で、家族が俗社会。その対比が面白いです。
「社会化されてない人間の心のほうがほんとなんだよ」このコメントに大きく頷きました。

脳性麻痺という重いハンディのあるコンジュに外見より、コンジュの魂を見てしまうジョンドゥを演じたソル・ギョングさん、素晴らしい。誰だって外見で判断したり、能力も見極めて、ややこしいことから避けて生きたいのに、ジョンドゥにはまったくそれが無い。無理なく演じています。

最後、結ばれたと私は解釈しましたけど、強姦罪で捕まってしまい、抜け出して木を切るジョンドゥの愛。いいですよ~。

「地続きで健常者になるシーン」これって、像の登場で一緒に踊ったり、電車に乗ったりするシーンでしょうか。
ここは、外見じゃなくて魂の世界と簡単に解釈しちゃいました。なくても良かったかな?

ムン・ソリさん、この作品で実際に脳性麻痺の方と生活をさせてもらったか、一緒にいる時間を持ったか?ですが、役になりきるため、無理に体を硬直させたり、麻痺の体を続け、撮影後には入院したそうです。以前雑誌で読みました。

ゆか
2009年04月04日 23:55
こんばんわ。
最近この映画を観ました。
ムン・ソリさんすごいですよね。
この映画でのムン・ソリさんが衝撃的すぎて
インタビューなどで普通に話している彼女の姿に
違和感を感じてしまうほどでした。
「あれ演技だったの!?」って。
もちろん映画の中の演技だとわかっているんですが、
それが信じられないぐらいすごいと思いました。

「地続きで健常者になるシーン」は
コンジュの気持ちで、
「私の体が自由だったらあんなふうにしたいな」
って思っていることを表しているのかなと
私は感じました。
単純すぎでしょうか・・・。


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