僕の彼女を紹介します (2004)

[126]新しい物語として生き返った49日物語……?
★★★★★★

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「猟奇的な彼女」に続く<彼女>シリーズ2作目。

う~ん……。
前作同様、
前半の展開がちょっとたるいと言えばたるいんだけど、
クァク・ジェヨン監督、キム・ギドクに匹敵する天才かも。

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圧巻は、なんたってラスト。

死んだ恋人コ・ミョンウの49日に、
ヨ・ギョンジン巡査(チョン・ジヒョン)が
病院を抜け出して自分の部屋へ帰ると、

窓から風が入ってきて、
彼女が拵えて部屋のあちこちに挿していた風車が
いっせいに回りはじめるんだよね。

その風は
「死んだら風になりたい」と言っていた
コ・ミョンウ自身なんだけど、
映画史に残るすばらしいシーンなんだよ。

実作者的な経験から言うとたぶん、
クァク・ジェヨン監督、最初からこのシーンが頭にあって、
ひたすらこのシーンを成立させるために
物語を書いたんだと思う。

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「猟奇的な彼女」で言えば、
ラストのあの「一本の木」のシーンと同じなんどけどさ。

風が吹いて、
いっせいに風車が回って、
死んだコ・ミョンウがあらわれて、
ヨ・ギョンジンと最後の言葉を交わして、
そして永遠の死へと旅立つ。

つまり、ヨ・ギョンジンの部屋が
一瞬、あの世とこの世の中間(賽の河原)に変容する。

言いかえると、
現実を虚の空間に変容させる…。

そのために
49日が訪れる前に、
ヨ・ギョンジン自身が生死をさまようシーンが
必要だったわけだけどさ。

いやあ、クァク・ジェヨン監督、うまいなあと思う。

私はまだこの監督のことあまり知らないんだけど、
このひと、相当の日本びいき?

知らないのに無責任に書くけど、
大林宣彦監督の映画や、あだち充なんかのマンガ、
かなり観たり読んだりしてるような気がする。

いままで観てきた韓国映画の中で
こういう物語の発想しているひと、いなかったから。

高度情報社会で生きてきたいまの日本人は、
現実を途方もなく拡大しちゃったよね。

そう言ってよければ、
人間の生を前世や死後にまで拡大したわけ。

吉本隆明さんを真似て言えば、
「世界視線(臨死者的な視線)」を獲得しちゃったからなんだけどさ、
今日の高度情報社会で…。

結果、どこまでが現実でどこからがフィクションなのか、
その境界がひじょうに渾然としてきちゃって…。

クァク・ジェヨン監督が描く物語、あるいは映像方法は、
どちらかというと韓国の現在より、
そうした日本の「現在」にひじょうに近しいものを
感じさせるんだよねえ。

茫洋として渾然としてしまった現実。
いのちの手がかりを失ってしまった世界。

そうした世界のなかにあって、
かすかにだけど信じられるものを描こう、
過去の中から新しい物語を作り上げようと試みる、
クァク・ジェヨン…。

いやあ、また観たい監督が増えちゃった。

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●チェブさん
病床のヨ・ギョンジンの夢の中に、コ・ミョンウが現われますよね。
で、「おまえはまだ生きてるんだから」みたいなこと言って
バスに乗って去っていく。
ヨ・ギョンジンは追いかけるんだけどバスに乗れない…。
あれ、お気づきでしょうけど、臨死体験者がよく
「気持ちよくて川を渡ろうとしたら、向こう岸にいるひとに
来るな、帰れって言われて意識を取り戻した」みたいな話をしますけど、
あれを描いているんじゃないでしょうか。
ラスト、ほんと、ちょっとやり過ぎだよと笑っちゃいますけど、
その笑いがなんともいいんじゃないでしょうか。
この監督、遊んでるんだと思います。
ふざけている、といってもいいくらいですが、
私はこの監督のそうした遊びというか悪ふざけというか、
そのあたりがめちゃ好きなんですよねえ…。
じつは私にもそのケがあって、
芝居書いてるとどうしても時々冗談言ったり、
悪ふざけしたりしたくなっちゃうんです(笑)。
人間、真面目すぎるとロクでもないことになっちゃうぞ
っていう思いが頭に貼りついてるせいかもしれませんが…(笑)。

●真実さん
バスのシーン、いいですよね。
このバス、三途の川の渡し舟だあ。
ああ、コ・ミョンウ(チャン・ヒョク)行っちゃったあ、
みたいな感じでなんだか呆然と観てました。
クァク・ジェヨン監督、音のセンスもいいですよね。
やることなすこと、私がこれまで観てきた韓国映画の監督のなかでは
いちばんポップのような気がします…。

●たまねぎさん
「家門の災難」が旧作扱いになって借りに行ったら
たまねぎさんと同じ思いのひとがすでに借りてて、
しようがなくて「ダブル走査線」借りて観て、
私のこのブログに来てレビュー済みかと調べたら、なくて、
でもこの「僕の彼女を紹介します」を発見して読んで嬉しくなった?
いやあ、ありがとうございます。しかしびっくりしましたあ。
たまねぎさんの中では日々いろんなドラマが起きてるんですねえ。
起きついでにすみません。
ちょうど私、「ダブル走査線」書こうと思ってたところなんですよね。
で、コメント拝見して慌てて書きましたあ(爆)。
しかし、この映画ほんとにいいですよねえ!
私も超お気に入りの映画で、音楽も
拝借して何度か舞台で使ったことがあるんですよね。
風車のラストシーンは何度見てもボロボロにされます。

ありがとうございました。


■123分 韓国 ロマンス/コメディ
監督: クァク・ジェヨン
製作: ビル・コン チャン・フンタク チョ・スヨン
原案: チョン・フンタク
脚本: クァク・ジェヨン
撮影: チョン・ハンチョル
音楽: チェ・スンヒョン
出演
チョン・ジヒョン ヨ・ギョンジン巡査
チャン・ヒョク コ・ミョンウ
キム・テウク
チャン・ホビン
キム・スロ
(特別出演)
チャ・テヒョン
(特別出演)

日本でも大ヒットした「猟奇的な彼女」の監督クァク・ジェヨンと主演女優チョン・ジヒョンが再び手を組み撮り上げたラブ・ストーリー。チョン・ジヒョンが「猟奇~」のヒロインを彷彿とさせる正義感溢れる熱血美人婦警に扮し、心優しい高校教師と繰り広げる奇跡の恋をユーモラスかつファンタジックに描く。
街角でひったくりが発生。居合わせた婦警のヨ・ギョンジンは走り去る男を猛然と追いかけ、鮮やかに取り押さえる。しかしこの男性コ・ミョンウは、実際には犯人を追いかけていた善意の市民で、女子高で教師をしているまじめな青年だった。なんとか誤解が解けて解放されたミョンウだったが、後日、生徒の非行防止のため相談に訪れた交番で再びギョンジンと遭遇してしまう。逃げる間もなく夜間パトロールに付き合わされたミョンウは、何にでも首を突っ込むギョンジンのせいで命懸けの一夜を過ごすハメに。しかし、これがキッカケとなって2人は思いがけず恋に落ちるのだったが…。

この記事へのコメント

チェブ
2008年08月06日 03:17
山崎さん、こんばんわ
毎日暑い日が続きますが、いかがお過ごしですか

風車が一斉に回りだすシーンは圧巻ですよね。私は何度観てもあそこで泣きます(笑)
心に残るワンシーンです
そしてYOSHIKIの曲?日本人の私の心にもスーッと入ってくるんですね
賽の河原…あ!そうですね。妙に納得。
彼女は生還して、また新たな出会い~そしてまた振り出しに戻る(猟奇的な彼女)的な 少々やりすぎた感のあるラストに 吹き出してしまう私です。
真実
2008年08月06日 10:04
山崎さんこちらにも失礼します。

僕カノと言うと私はバスのシーンが1番でした~あのシーン ヒョクのシーンが1番泣けるみたいです 僕カノは音楽(OST)も素敵でした~感想になってませんが(笑)
たまねぎ
2013年01月16日 02:11
昨日、レンタル店に行ったところ、「災難」が旧作になってて、その日に貸し出されていました・・・残念。私みたいに楽しみにしていた人がいたんですね~
で、他に何かないかなと見つけたのが、ユ・オソンとキム・ドンウク(二人共、好きな俳優さん)が共演している「ダブル捜査線」で、山崎さんがご覧になってるかなと探していたら、こちらの「僕の彼女」に引っ掛かりました^^;
ご感想読ませていただいて、とても嬉しかったです私は、この映画を4回レンタルで観た揚げ句、DVD(曲付きの2枚盤)を買いました^^

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