太白山脈 (1994)

[182]人間はイデオロギーを超えられるのか……?


画像     日本軍から解放されたあとの
     48年から50年にかけて、

     羅南道の田舎町ポルギョで起きた
     パルチザンと右翼(政府軍)の闘いを
     描いた作品……。

     もちろん


映画としてもすごく面白いんだけど、
朝鮮戦争が起きるまでの
韓半島の歴史を知るうえでもひじょうに貴重な作品だよ。

ポルギョは住民の80%が「アカ」といわれる町で、
パルチザンが町を占拠する。

で、政府軍が奪還しようとして内戦状態になるんだけど、
住民の80%が「アカ」なのはポルギョが農民の町だから。
しかもほとんどが小作人……。

戦後になっても農地改革が行われず、
飢えに苦しむ小作人たちが
農地解放を求めてパルチザンに参加、
そして政府軍と戦闘を繰り返すんだよね。

とうぜん地主や町の有力者たちは政府軍を後押ししてるから、
住民たちが二つに分裂して殺しあうの……。

観てて理屈抜きにいたたまれない気持ちになるよね……。

最後、南北戦争が始まって北軍がポルギョに進攻してくる。
でも「北」はパルチザンが期待したような国じゃなくて……。


1994年の作品なんだけど、
「JSA」や「シルミド」などの作品が生まれたのは、
この作品が創られたからかも……?


俳優では断然キム・ガプスに注目。

パルチザンを率いている兄サンジン(キム・ミョンゴン)と
子供のころからまったくソリが合わず、
すすんで町の青年団監察部長になって
悪いことばっかりやってる弟サングの役なんだけどさ、

いやあ、なんかいいんだよねえ、
憎たらしい、どうしようもない男をちゃんとやってて……。

教師をやってるアン・ソンギも例によっていいんだけど、
さすがに今回は、
こういう役ばっかりじゃちょっとかわいそうかなあ
って思っちゃった……?

どっち側にもつかず、内戦を憂う
「良識」派を象徴するような役どころなんだけどね。
そういう役ばかり背負わされると、
本人がきつくないかなって余計な心配しちゃって……。

------------------------------------------------------

●てっせんさん
「風の丘を越えて」、例の友人のKさんも探してくれてるのですが、
ないですねえ……。
「KT」まだ観てないので探します。
ところで「MUSA」のコメントで
「韓国はこれまで、韓国にとって有為の人物をどれだけ
みずから踏み躙ってきてしまったことか…」とあって
ちょっと気になってるのですが……。ご教授を……!

●てっせんさん
崔承喜(チェ・スンヒ)、尹伊桑(ユン・イサン)の項目、
拝見しました。
二人とも日本ととても深い関係があるので、
いっそう複雑な気持ちになってしまいます。
崔承喜(チェ・スンヒ)は石井漠に弟子入りしていますから、
同じく石井漠のお弟子さんである大野一雄さんとも
とうぜん知らぬ間柄ではなかったのでしょうね。
また、作曲家の三枝成彰さんは最近こそ会わなくなりましたが、
以前は深い親交をいただいてまして、その三枝さんが
尹伊桑(ユン・イサン)のお弟子さんだったこともはじめて知り、
驚いています。
今では珍しく反骨精神の旺盛な方ですが、
そのあたり案外尹伊桑(ユン・イサン)の精神を
受け継いでらっしゃるのかもしれません……。
先端的な表現者はいつの世も権力(大衆を含めた)の
粛清の対象になってしまうことを痛感します……。

ありがとうございました。

------------------------------------------------------

151分 韓国 ドラマ

監督: イム・グォンテク
製作: イ・テウォン
原作: チョ・ジョンレ
脚本: ソン・ヌンハン
撮影: チョン・イルソン
音楽: キム・スチョル

出演
アン・ソンギ
キム・ミョンゴン
オ・ジョンヘ
シン・ヒョンジュン
キム・ガプス

第二次大戦が終わり、日本の植民地支配から解放された朝鮮半島。しかし、共産主義と資本主義のイデオロギー対立から再び戦禍が訪れてしまう。左翼勢力が支配していたポルギョの町は政府軍の侵攻によって右翼勢力下になる。そこでは、左翼の協力者への報復行為が行われていた。教師のキム・ボムは両者を中立の立場から批判し、同じ民族同士が血を流しあうような悲劇をなんとか止めさせようとするのだったが……。

この記事へのコメント

てっせん
2008年12月29日 23:59
この映画はだいぶん以前に観たんですが・・・
俳優がいいですねえ。
山崎さんご推奨のキム・ガプス。坂本順二監督の「KT」にも主演していて、やはり断然光っています。
それからキム・ミョンゴンとオ・ジョンへは「風の丘を越えて・・・」でパンソリ芸人の父娘役を演じています。
うーむ、しばらく韓国映画から遠ざかっていましたが、こうして再びこちらにコメントを書かせていただくようになったとたん、無性に観たくなって来ちゃいましたねえ(笑)
てっせん
2008年12月30日 22:17
例えば・・・舞踏家の崔承喜(チェ・スンヒ)と作曲家の尹伊桑(ユン・イサン)という芸術家がいました。この二人の業績については、こちらに纏められています。

チェ・スンヒは
http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2007/06/0706j0203-00001.htm

ユン・イサンは
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%B9%E4%BC%8A%E6%A1%91

で、チェ・スンヒは第二次大戦後、半島が開放されてからは親日派のレッテルを貼られたため南側で活動ができず北側に渡り、北朝鮮の舞踏団で指導的役割を果たしていたようですが、60年代末、権力闘争に巻き込まれ粛清されてしまったそうです。
また、ユン・イサンは、西ドイツに滞在中KCIAによって拉致され、韓国で拷問を受けた末、スパイ罪で死刑の判決を下されました。しかし西ドイツ政府の介入やカラヤンを始めとする文化人の抗議活動によって釈放されましたが、以後韓国に帰ることはできませんでした。
(続く)
てっせん
2008年12月30日 22:27
かように、北も南も、かけがえの無い才能に対して何とも償いようのない罪を犯してきました。彼らの運命を思えば悔しいし、失われたものの大きさを思えばそれも悔しくてなりません。名のある人々に対してさえこの民族はそのような仕打ちをしでかしてきたのですから、無名だが有為の数知れぬ人々に対して、一体これまでどのようなことをしてきたのか・・・日頃のそういう思いが、一昨日のちょっと刺激的な言い方になって出てきたのかもしれません。最近では、チェ・ジンシルが、実体の見えにくい攻撃者たちによって死に追いやられたということもありますし・・・

チェ・スンヒについて面白いエピソードを挙げておきます。かの三島由紀夫が学習院の生徒だった当時、机の引出しに彼女のブロマイドを忍ばせていて、それを勉強の合間にこそっと眺めたりしていたそうです(笑)。現在は韓国でももっぱら芸術家として再評価されていますが、同時代の人々にとっては、マドンナのような極めてセクシーで挑発的な存在だったのかもしれません。
てっせん
2008年12月31日 09:37
おはようございます。
昨夜は、崔承喜(チェ・スンヒ)と尹伊桑(ユン・イサン)について映画に関連付けてコメントする余裕がなかったんですが・・・

昨年頃、韓国でこの二人についてそれぞれ映画化されるというかなり具体的な話が伝えられていました。しかし、その後なんの消息も無いことや昨今のこの経済状態ですからどうなっていますことやら・・・

そして崔承喜については、藤原智子監督の「伝説の舞姫 崔承喜」というドキュメンタリーが撮られていまして、2000年に岩波ホールで上映され、私も観ました。
チェ・スンヒが舞う実写フィルムも織り込まれており、極めて美しかったですねえ(笑)。映画が始まる前、岩波ホール支配人の高野悦子さんのご挨拶があり、幼い頃、チェ・スンヒの実演を観てその美しい舞いに子供ながら魅了されたそうです。この映画、もう一度、観たいのですが、残念ながら、どうやらDVD化されていないようです。

もう一つ面白いのは、1930年代に今日出海監督によって「半島の舞姫」というタイトルで彼女が主演した映画が撮られていたそうです。これも、残念ながら失われてしまっているらしいんですが・・・。

この記事へのトラックバック