なつかしの庭 (2006)

[206]この映画には人生の宝ものがいっぱい詰まっている……?


画像     「ユゴ 大統領有故」を撮った
     イム・サンス監督の作品。

     同じ監督とは思えないほど(失礼)、
     めちゃくちゃいい作品だねえ。

     ファン・ソギョンという作家の
     同名小説の映画化らしいんだけど…。

     物語は、
     光州事件に関与して逮捕された
     元学生のヒョヌ(チ・ジニ)が、

17年ぶりに獄中から出所し、
カルムェにある
或る家の庭を訪ねるところから始まるの…。

その家は女教師ユンヒ(ヨム・ジョンア)が住んでいた家で、
じつはヒョヌは逃亡中、そこに匿われ、ユンヒと恋に落ちたんだよね。

しかも服役中、ヒョヌはヨンヒの子ウンギョル(女の子)を産み、
ひとりで育ててたんだけど、数年前、ガンで死んじゃってるの。

その懐かしい想い出の家と庭(青春の庭?)を訪ね、
最後、わが子に再会するというお話…。

その間、ヒョヌがヨンヒとの出会いや暮らしを回想したり、
若きヨンヒが現われて、かれが逮捕されたあとの
自分の暮らしや思いをヨンヒに語って聞かせたり…。

まあ、そういうふうに、
現在と過去と幻想を自在に折り重ねながら
二人の物語を構成していってるんだけどさ。

そういう意味で言うと
物語や手法がとくに目新しいというわけでもないんだけど、
まあ映像がすばらしいのよ、ものすごく詩情豊かで…。

これはもう観るしかないけど…、

ヒョヌが庭の向こうに広がる湖でひとり泳ぐシーン。
軒下でヨンヒがヒョヌの髪を切るシーン。
雨の夜、ヒョヌが光州の仲間のところへ帰っていくシーン。
ヨンヒがバスに乗ったヒョヌを見送るシーン…。

ヒョヌがトンネルの中を走り刑事たちから逃げるシーン。
校舎を占拠した学生たちが屋上から
包囲する機動隊に火炎瓶や机などを放り投げたり、
機動隊が攻撃に出たりするシーン。
ヨンヒの女友人が焼身自殺するシーン。

ヨンヒが最後にヒョヌと自分の像を描くシーン。
ラスト、ヒョヌがすでに学生に成長しているウンギョルに
街の雑踏の中ではじめて会うシーン…。

いや、ほんと、もう挙げたらキリがないくらい、
最初から最後まですばらしい写真(映像)の連続なの。

そしてそのひとつひとつの写真が
ヒョヌやヨンヒの心を、当時という時代を物語ってみせてて、
もう見事と讃えるしかないよね…。

エンディングに主題歌が流れて、
そこでこう歌われてるんだけどね。

  青春というものは大切な心の糧
  臆することなく胸を張ろう…。

この映画のメッセージはこの言葉に集約されてて、
イム・サンス監督はその二人の青春の時を
人間の「大切な心の糧」としてみごとに描いてみせてるの…。

ヨム・ジョンアもチ・ジニにもすごくいいし、
久しぶりに?必見の映画だねえ…! 


画像


●tomotyan712さん
チ・ジニ、時代物が多いんですか?

●kさん
ユン・ヒソクの追っかけですか? 
う~ん、どこがいいのかよく……。(笑)

●tomotyan712さん
う~ん、なにもかもビョンホンに繋げて考えるというのは、
わたしにはちょっと……(笑)。

●チェブさん
戦うこと=青春。そう言ってもたぶん言いんでしょうね。
戦うというのは、何事かとても困難なことにぶつかるという
意味なんですけど、そのとき自分がものすごく強烈に現れる。
青春が懐かしいのは、そんな時間だったからなんだろうなあって、
時々そう思います…。

●りぼんさん
ごらんいただいて本当にありがとうございました(笑)。
いい映画ですよねえ。
「感傷的になって」ということですが、私は人間の中にある
「感傷」はとても大事なんだと思っています。時々、私の師の
唐十郎さんと、「どっちが感傷的な作品を書けるか勝負しよう」
なんて言ってるくらいなんですよ…(笑)。
この映画のいいところはもうりぼんさんにほとんど語っていただいて
いるのでなにも申し上げることはないですね。
ラストの父と娘のシーン、ほんとに私も大好きです…。

ありがとうございました。

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112分 韓国 ロマンス

監督: イム・サンス
撮影: キム・ウヒョン

出演
ヨム・ジョンア
チ・ジニ
ユン・ヒソク
キム・ユリ
ユン・ヨジョン

「浮気な家族」「ユゴ|大統領有故」に続くイム・サンスの韓国現代史三部作」の最終章。
1980年の民主化デモ「光州事件」を背景にしたファン・ソギョンの同名小説を映画化。これまで80年代の映画といえば“時代に傷つけられた魂”を描いた社会派ばかりだったが、本作では“時代に埋もれた愛”に焦点を当て、『浮気な家族』(03)、『ユゴ-大統領有故-』(05)のイム・サンス監督がドラマチックなラブストーリーに仕上げた。韓国社会に常に問題提起してきたイム監督が脚本まで書くほど強く思い入れ、彼独特のイデオロギーを駆使。過激な時代の闇を描きつつも、情熱的で切ない男女の恋愛の行方を綴っている。主演のチ・ジニは青年時代と17年後を熱演。『ビッグ・スウィンドル!』(04)のヨム・ジョンアが恋に落ちる女性を演じた。
軍事独裁政権に抵抗し、若き日々を獄中で過ごしたヒョヌ(チ・ジニ)は、 17年の刑務所生活を終え出所する。乗り込んだタクシーで1枚の写真を見るヒョヌ。それは、獄中生活を支えてきたかつての恋人ユンヒ(ヨム・ジョンア)の写真だった……。 17年前、警察から逃れ、逃亡生活を送っていたヒョヌは協力者としてユンヒを紹介される。 2人はすぐに愛し合うようになり、潜伏場所のカルムェで現実とは別世界のような幸福な生活を送る。しかし半年が過ぎた頃、ソウルで仲間が一網打尽にあった連絡を受けたヒョヌは、カルムェを離れる決意をする。


この記事へのコメント

tomotyan712
2009年01月26日 19:17
山崎先生
1980年の民主化デモ「光州事件」でうずもれた恋を丁寧に描いていました。「大長吟」のチ・ジニが青年時代と17年後をうまく使い分けて好演していました。時代物より、現在ものの方が、向いていると思い増した。
現在と過去の使い分けの演出をどのようにしていたか、2回目の鑑賞で見たいと思います。
2009年01月27日 13:19
軒下でヒョヌの髪を切ってあげるシーン、私もすごく好きなシーンです。これを観たのは1年半くらい前なのに、山崎さんが上げられたシーンどれも、美しく目に浮かびます。皮肉屋イム・サンスの、唯一の純情な映画だと思います。ある映画祭に監督が舞台挨拶に来られて、当時韓国でヒットしていた「華麗なる休暇」(邦題、光州5.16)と比べられると思うがどう考えるか?という質問に、「いや、その映画は観ていない、観なくても分る」と少々むきになって答えていたのが面白かったです。あ、それから、山崎さんの印象にはあまり残っていないかもしれませんが、ヨム・ジョンアと関係を持ってしまう後輩の青年ユン・ヒソク君に、ワタクシ一目惚れで以来ずっと追いかけています。(今はテレビ中心)
tomotyan712
2009年01月27日 16:04

山崎先生
この映画を見たおかげで、話題の「光州5.16」を
今度こそ見たいと思いました。私は、ヒットしたものは、見るのが主義です。そして、なぜか、ビョンホンさんの映画・ドラマにつなげて考えてしまうんです。
ヨムジョアという女優は、私の好みのタイプではないですが、チジニの魅力に惹かれて最後まで見通しました。チジニは、繊細な演技ができる俳優ですね。娘もはつらつとしていて、最後を明るい未来につなげてくれました。若さに輝く魅力的な新人女優でした。
チェブ
2009年01月27日 23:58
山崎さんこんばんは
戦うこと=青春だった時代なのでしょうか?
ヒョヌは時代と戦って、ユンヒは戦うことを否定しているのか〈戦うこと〉と戦っている
この作品を見ていたらビョンホンが出演した「生き残った者の悲しみ」というドラマを思いだしてしまいました。時代に翻弄され死に行く彼女を救えない・・そんなシーンがありました。活動家と呼ばれる人がいた時代、何だかすごく切ないです。 そしてその時代がついこの間だということ、胸が痛みます。
けれども戦いがよいか悪いかは別として熱くなる何かがあった時代ということですよね。
二人が川岸をあるいてユンヒが石をポーンと投げるシーン、好きです。もちろん絵を描くシーンも。 最後の音楽もよくてちょと余韻の残る作品でした
青春時代が夢なんてあとからほのぼの思うもの・・青春時代の真ん中は胸にとげさすことばかり・・・なのかな
tomotyan712
2009年01月28日 08:52
山崎さん おはようございます。
自分のことだけ考えていられない、社会の悪と正さなければ突き上げてくる正義感、仲間意識・・青年の純粋さ・・「生き残ったものの悲しみ」と共通する・・恋人と違う価値観を持ったものの悲しみ、考えさせられました。
チジニさん、「チャングム」の時代物で、日本にブレイクしたような?これまで、これしか見ていなかったんです。(笑い)
りぼん
2009年02月26日 15:41
山崎さんこんにちわ。
この映画をはじめて予告編で見た時は、
あまり魅力を感じませんでした。
学生運動家と、それを助ける女性との
愛と別れ、といったようなものを類型的
に描いたものだと、思い込んでいたからです。
でも、山崎さんが御推奨の映画だったので
観てみましたが、これはもう、本当に
良い映画でした。一ヶ月位前に観たのですが、
今でも、この映画を思うと泣けてくるのです。
我ながら感傷的な人間だと思いますが、、、、。
最後に流れる歌と映像は切り離せませんね。
歌があっての映画であり、映画があっての歌だと
思います。この映画を観て真っ先に感じたことは
青春に対する深い敬意と言った様なものでした。
若さが拙く、愚かで、無分別で、破壊的だったと
しても、それはそれでいいのだと。(なんか
赤塚不二男さんみたいですが。)若さのいい面
も、悪い面も全部肯定してますね。それが又
詩情溢れる映像とピッタリあって心が豊かに
満たされる気がします 
               続きます。  

               


りぼん
2009年02月26日 16:01
    
    青春というものは
    大切な心の糧
    おくすることなく
    胸を張ろう
このフレーズに込められたメッセージが
この映画の核だと思います。
青春を描いた映画は沢山観てきましたが
青春に対する敬意といったものを感じ
させる映画は始めてでした。
最後、主人公が、父親として初めて、成長した
娘と出会うシーンが好きです。
べたつかず、感傷的でもなく、愁嘆場を
演ずるわけでもなく、それでいてやさしさに 
包まれていて、(又会おうね)と別れていく、、、
お互いに話したい事や、聞きたい事が
沢山あったでしょうに、あっさりと別れていく、、
印象に残るシーンでした、
  ご紹介ありがとうございました。

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