白昼の通り魔 (1966)

[224]この血気と理屈っぽさと映像のシャープさこそ、われらが大島組の映画だあ……?

  
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封切で観て以来だから40数年ぶりの再会である。

タイトルは好きでよく憶えていたんだけど、
内容はほとんど憶えていなかった。
通り魔の男のモデルもなぜか大久保清だって
ずっと思ってたんだけど、観ると全然違ってたべ。
同じ北関東方面の人間ではあったんだけどさ。(^^♪

大島渚監督に立つ瀬がないって感じ。
すいません、監督(泣)。
その代わり今度はしっかり観ました!(^^♪

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作品の出来不出来はともかくいかにも大島渚!って感じ。
監督大島渚が最初から最後まで画面にもうギンギン…!(^^♪

大島渚の登場まで
映画は京都や大船の撮影所で撮られていた。
セットで撮るのが当たり前って時代だったんだけど、
そういう映画を大島渚が初めて<街>に解放したんだよね。
カメラを街へ持ち出して、街で映画を撮りはじめた。

「書を捨てて街に出よう」の始まり?(笑)

いまで言えばロケなんだろうけど、
そういうことをはじめてやりだしたのが大島渚。
大島渚が日本のヌーヴェルバーグの旗手って言われたのも
それが大きいのかな?

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ついでだけど、そのころ(1960年前後)、
演劇にもアングラ(小劇場)の旗手が現れた。
えっ、と驚くひとが絶対多いだろうけど詩人の谷川俊太郎。
谷川さんが「芝居はもうおしまい」っていう戯曲を書いたのだ。

劇場で芝居をやってた俳優が突然、
こんな芝居やってられるか!こんなんただの張りボテじゃねえか、
ただのベニヤじゃねえか!って怒って、
芝居やめて観客にむかって怒鳴り散らす芝居なんだよん(笑)。

どう? 見事なアングラでしょう。(笑)

しかも谷川俊太郎に書かせて上演したのは、
これもみんな絶対驚くだろうけど、劇団四季の浅利慶太さんだよん。(^^♪
大島渚の映画の動きに連動してるでしょう。

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そういう時代だったんだよね。
1960年の安保闘争に触発された映画や演劇のニュー・ウェーブ。

そしてこの芝居がきっかけで
寺山修司が市街劇を、唐十郎がテントで芝居をはじめた訳だ。
それが由緒正しきアングラ(小劇場)の流れ。
たぶん誰も教えてくれないだろうから覚えておこう(笑)。

映画の話に戻るけど、そういう訳でこの映画ももう全編ロケ。
北関東(軽井沢方面)、神戸、大阪、東京…。
走ってる新幹線内での長いシーンもあるよ。
ああ、あの頃おれも大阪であの新幹線に乗り換えて
時々上京してたんだよなあと懐かしくなるよねえ。(^^♪

物語は村の青年4人のお話…。

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シノ (川口小枝)。

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マツ子 (中学校の教師、小山明子)。

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源治 (村長の息子、戸浦六宏)。

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英助 (のちに通り魔、佐藤慶)。

この4人は共同で養豚場をやっている。
夜も公民館でいつも一緒。
言ってみれば社会主義を志す同志?

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ところがその養豚場が洪水で流されてしまう。
そしてマツ子は教師に、村長の息子である源治は村会議員に立候補。

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しかしトップ当選を果たした源治は、
その日、山中でシノと心中を図り、死亡。

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シノは縄が切れて助かるのだが、
マツ子に頼まれて二人のあとを追ってきた英助に、
首を吊った源治の前で強姦される。

源治が死んだのは、
マツ子が好きで結婚を申し込むのだが彼女に断られたためである。

教師マツ子は日頃から生徒に「愛の無償性」を説いている。
源治はそれを証明しようとして、あるいは嘘っぱちだと証明しようとして?
シノに「おれを愛しているなら俺と死ねるはずだ。俺は死ねる」
とシノに心中をもちかけたのだ。

心中の相手にシノを選んだのは、
もともとシノと肉体関係を持ちつづけていたからである。
シノが金がなくなり、源治に借金、
代わりにシノは自分のからだを源治に許していたのだ。
まあ、なんだか複雑というか、奇怪というか、屁理屈というか(笑)。

このあとシノは村にいられなくなり関西へ出て、
おる屋敷の「女中」として働きはじめる。

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一方マツ子は英助と結婚する。
インテリな彼女はもともと
野性味溢れる、大衆性丸出しの英助が好きな訳だが、
源治とシノの一件がもとで英助に強姦され、
「責任取って」と源治に結婚を迫ったのだ。

しかし英助が好きなのは実はシノだった訳。
それでマツ子に「おまえは偽善者」だと言って、
シノを追いかけるように村を出て、
いっきに「白昼の通り魔」と化しちゃうんだよねえ(笑)。

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中国地方、関西を転々として罪を犯してきた英助は、
ある日偶然シノが働いている屋敷に強盗に入り、シノに再会する。
そして拒むシノを犯し、屋敷の女主人を殺害し、逃亡。

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シノは、捜査警察の口から
永介がこのところ世間を騒がせている白昼の通り魔だと知り、
故郷のマツ子に手紙で知らせる。
警察に届けたらいいものかどうか、と。

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マツ子は修学旅行で大阪を訪れる。
そしてそこでシノに会い話を聞くのだが…、というが大筋。
あとは観てのお楽しみ。

英助は、
自分が白昼の通り魔(強姦魔)になったのは
シノを犯したときの味が忘れられなくて…、みたいなことを言うんだけどさ。
どう考えたってウソだろって思っちゃうよねえ。
だって英助やってる佐藤慶、たしかにギラついた目してるけど、
女好きには見えないもんなあ。いや好きかも知れないけどさ、男だし。
でも先にインテリに見えちゃうんだよね。困っちゃったなあ。(^^♪

ま、物語的には、性的嗜好で通り魔になったというより、
自分を振ったシノや、日和見主義者の源治、
偽善者としか思えないマツ子への面当てと思ったほうが無難かな。

養豚場の共同経営の破綻=社会主義への挫折から、
カタストロフィー願望(破局願望)を抱いて、
ひとり、小さな皆殺しをはじめたって感じ?

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実際にはシノとマツ子の話のほうが比重は大きくて、
夫が通り魔だとわかったマツ子は
文字通り自分の「偽善」に苦悩し、最後シノと心中しちゃう。

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横川の釜飯を食ったおかげでシノはまたひとり生き残る。
つまり根っからの「大衆」であるシノの勝ちってこと?
と、やたら理屈っぽくなってしまうのはこの映画のせいだよね。(^^♪

インテリと大衆の闘いを描こうとしていると言ってもいい訳だけど、
マツ子をはじめ、大衆の代表であるシノや英助まで
もうどうしようもなく理屈っぽくて理屈っぽくて…。
監督が「朝まで生テレビ」で泡飛ばして怒鳴るように喋るのを、
出演者全員でやってるみたいな感じ?(笑)

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うん。なかなか面白い映画だよなあとは思うけど、
物語的にはかなり無茶苦茶かもな、強引かもなあって感じ。(笑)
共同幻想と対幻想(性)の問題をとことん混同しちゃってるからなあ。
まあ、そういう時代だったと言えばそういう時代だったんだろうね。

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でも私は大好きなんだよね、こういう大島渚監督。
もう大好きよ!(^^♪

小山明子、佐藤慶、戸浦六宏、小松方正、渡辺文雄、
そしてライターの田村孟ら、大島組の面々も。
血気盛んで、革命やるぞお~みたいなビシッとした面構え?
もう酒に飲まれず酒を飲んでしまうような面構え?
「よっ、60年代のわれらが志士」って声かけたくなっちゃうよね(笑)。

また観よう、大島さんの映画。(^^♪

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●てっせんさん
小六のときの謝恩会で「工場長殺人事件」を、
それもお客さんに犯人を当てさせるという趣向を…。
いやあ、てっせんさん、すごい、天才っ…!(笑)
つかこうへいもたまたまてっせんさんの芝居をこっそり覗いてて
後年真似したのかも…?(笑)
元気のあった時代が懐かしいですねえ。
いまの日本はもうヨボヨボの老体です…(笑)。

ありがとうございました。

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■99分 日本 ドラマ

監督: 大島渚
製作: 中島正幸
原作: 武田泰淳
脚本: 田村孟
撮影: 高田昭
美術: 戸田重昌
編集: 浦岡敬一
音楽: 林光
助監督: 佐々木守

出演
川口小枝 篠崎シノ
小山明子 倉マツ子(中学校教師)
佐藤慶 小山田英助
戸浦六宏 日向源治(村長の息子)
小松方正 シノの父
岸輝子 シノの祖母
川口秀子 マツ子の母
殿山泰司 校長
茅島成美 神保先生
観世栄夫 稲垣
渡辺文雄 原口刑事
矢野宣 村の世話役
高原良子 病院の女
滝沢修 声

家政婦シノ(川口小枝)は家事の最中、邸宅に踏み込んだ見知った男に首を締められて窒息させられ、犯される。意識を失っている間に奥方が包丁でメッタ突きにされ殺された。シノは刑事の尋問を受けながら、故郷の中学教師・マツ子(小山明子)に手紙をしたためる。今暗躍している「白昼の通り魔」はあなたの夫・英助(佐藤慶)だと。そして思い返す、英助に初めて陵辱された日のことを。その頃、彼らは貧しい農村に生きていた…カメラワークに凝りまくった大島渚の野心的実験作。

この記事へのコメント

てっせん
2009年02月12日 00:27
いやあ、谷川さんのそのお気持ち、よくわかります。実は、私もまったく同じような反抗心から、アングラもどき、やったことあるんです、小学六年生のときですけど(笑)。学校お仕着せの演劇って、セットも衣装も豪華だけどちっとも面白くないし、出演する連中も、優等生ばっかりだったんです。何もかも大人がこっちの知らないうちにいつの間にか決めて。

それで子供心にムラムラッと(笑)。ある日、担任から卒業式の謝恩会に有志で何かやってみないか、歌でも演劇でも何でもいいよという話が出て、ここぞと志願し、仲間を集めある劇を作ったんです。「工場長殺人事件」というタイトルで。セットほとんどなし、体育館の舞台の中央に机と椅子を適当に寝かせて、工場の機械に見立てただけ。衣装も普段着、内容は笑いを織り込んだ推理ものですけど、犯人を当日集まった観客に当ててもらうというものでした。大好評を得て、子供ながら憂さを晴らしました(笑)。

で、後年、つかこうへいの劇を観て、なんだ、昔のオレとおんなじことやってらって・・・(笑)

調子に乗り、失礼しました

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