キム・ギドク論 往復書簡1__文・てっせん

「ブレス」論--キム・ギドクとメタモルフォーゼ

文=てっせん


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キム・ギドク監督作品「ブレス」


この映画(「ブレス」)、
ひとことで言えば、変身譚じゃないかって思いました。
つまり、心身ともに蝕まれている女ヨンが、
生存のため自らをメタモルフォーゼ(変態)させていくという……。

もともとキム・ギドクは、
山崎さんの喝破されたように水への退行、
水の中で生きたいと痛切に希求する人間を描いています。
それが「春夏秋冬そして春」では、
なぜか陸棲動物として生きていくことを決意したんですね。
湖を去って山に登って行くシーンはそれを表徴しているんでしょう。

その後の映画の何本かは、
もともと水棲だった生き物が
いかに陸地に適応して生存していくかを描いたものだと、
私なりに位置づけています。

「うつせみ」は、
その種の映画の最初のものとして撮られたんだと思います。
ここでの主人公は、昆虫のナナフシなどに観られる、
擬態によって生き延びることを選んだと観ることができます。
愛を交わした女の夫の背後に絶えず身を置くことで、
他人の家の中にまんまと棲みこみ生存していくという……。

この男は、刑務所の中で
そういう生き物へと自らをメタモルフォーゼさせたんだと言えます。


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キム・ギドク監督作品「うつせみ」


「ブレス」は「うつせみ」と対になった作品だと思います。

ここでの女主人公は、いわばカマキリに変身するんですね。
ラスト近く、
独房で男と交わった後、女は男の鼻を指で塞ぎつつ口を吸いますね。
あれは、男のブレス=息=命を吸い取っている行為
なんじゃないでしょうか。
ちょうど、交尾を終えたカマキリの雌が雄を頭から食べ尽くしてしまう
ような……。

そして、男のブレス=命をもらった女は生気を取り戻し、
平和な家庭生活を営んで行くことを暗示するエンディングを迎えます。
一方、抜け殻となった男は、
彼を愛する同囚の若者によってとどめをさして貰う……。

「うつせみ」と「ブレス」とは、
水棲生物が陸でいかに生存していくかという物語の、
男と女が対になった作品だと結論できそうです。

ちなみに擬態には、
ナナフシなどが「外敵から身を守るため」、
樹木などの色や形にそっくりな姿になる「隠蔽擬態」と、
カマキリなどが
「捕食者となって獲物を得るため」の「攻撃擬態」とがあるそうですが、
「うつせみ」は隠蔽擬態、「ブレス」は攻撃擬態かと……。

そして女が、
面会房の壁を春夏秋冬に模様付けして歌ったりするシーンは、
自らがカマキリにメタモルフォーゼするための
必要な儀式だったという見方ができそうです。


キム・ギドクは、映画の中によく小動物を登場させますが、
田舎育ちの彼は、孤独な少年時代、きっと
それらの小動物や昆虫達を
驚異の目で観察していた時期があったんでしょう。

「ブレス」の中で看守長に扮したキム・ギドクは、
監房という飼育器の中の昆虫達を
子供にかえったかのような好奇心と、ある切実さをもって
観察していた……、となるわけなんですが・・・。

しかしキム・ギドク、
そんなところで観察する立場に身を置いていいのかな……、
という思いもします。
むしろ彼は、あの監房のなかで
ブレス=命を吸うか吸われるかの闘争を繰り広げているほうが
似合っているんじゃないかと……(笑)。


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※てっせんさんの「ブレス」へのコメントが
あまりにもすばらしいので、
ご本人の承諾を得て記事にさせていただきました。


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●チェブさん
わきっちょだなんてとんでもない、ど真ん中に座っていただきます。
仕掛け人はチェブさんなんですから…(笑)。
うまく言葉にできなくても、「面白い」と思った時には、
そのひとはもうわかってるんだと考えていいんじゃないでしょうかね…。

●てっせんさん
ソウル滞在中の岩川藍の話によると、オダギリジョー、だめみたい
なんですが…(笑)。でもギドクがなんとかしてくれてるような気も…(笑)。
私もいまは酒ほとんどだめです、医者に止められてまして(笑)。
若いときはけっこう飲んだんですけど、いまはおもにソフトドリククです(笑)。
ただし酒飲みには何時間でも付き合うタイプです…(笑)。

●てっせんさん
喜んでいただいて光栄です(笑)。
コピーするだけなので時間なんてほとんどかかっていません。
すいまぜん(笑)。
もともと映画の話をみなさんとしたいなあと思って始めたブログなので、
こういうページが出来て私のほうこそお礼が言いたいです。
ほかのみなさんのコメントも含めて、時々こういうページができると
嬉しいですね。どうぞみなさん、てっせんさん、これからもひとつ
ご協力をお願いしま~す。なんて政治家みたいになっちゃったりして…(笑)。

●スクリーンさん
ビョンホン、撮影は3月のいつごろからですか?
スクリーンさんも秋田へいらっしゃるんですか?
秋田の学生から、観光課の電話がパンクしてるらしいという
話を聞きましたよ…(笑)。

●チェブさん
いやあ、みなさん気もそぞろみたいですねえ。
そう言えば、そんな時間、ここ何十年か、
私はぜんぜん経験してないですねえ、だめですねえ…(笑)。
落ち着いたらまたお覗きください…(笑)。
あ、チェブさんも下戸…、てことはないですよね?(笑)。

●てっせんさん
えっ、えっ、なにをごらんになったのでしょう…?(笑)

●スクリーンさん
そうですね、あんまり押しかけて邪魔するのも…(笑)。
アレ、「公開」されるんですかね?
そしたらアレ、復活させたいんですが…(笑)。

●スクリーンさん
そうですか、アレ、「奴奴奴」いよいよ日本上陸しそうですか。
いやあ、一安心なんですが、しかし、ほかのコメント、
私にはチンプンカンプンなんですが…(笑)。

●スクリーンさん
へえ、そうなんですか? びっくり。
なにをしに来日したんですか? イベントかなにかだったんですか?
大変でしたでしょうね、ファンのみなさん…。

ありがとうございました。

この記事へのコメント

チェブ
2009年02月20日 17:40
てっせんさん こんにちは
うーんさすがです!いつもてっせんさんのコメントにはうならされますが、脱帽です。
「うつせみ」と「ブレス」対になっていると考えるのですね

自称ギドクファンといっても、私の見方は浅いのかなぁなんてちょっとシュンとしてしまいました(笑)
それに山崎さんとてっせんさんの往復書簡、男性同士羨ましくなるほど 息があっていますね
ちょっと嫉妬しています(笑)
もし二人でお酒を酌み交わして映画談義に花を咲かせることがあれば
私もわきっちょに置いてくださいな(笑)
てっせん
2009年02月21日 00:29
チェブさん、今晩は。
山崎さんとチェブさんとの、ギドクをめぐるやりとりで、ずいぶんと啓発され、また、自分なりに彼の「尻尾を掴む」ためのヒントもいただいた気がします。
オダギリジョー主演の新作も楽しみですね。
DVD化されて、山崎さんがご覧になったら、また、みなさんであーでもない、こーでもないと、やりあいたいですね(笑)。
それから、お酒、私はからっきし意気地なしのほうですので、山崎さんとチェブさんのお酌方に回らせていただきます(笑)。
てっせん
2009年02月21日 09:53
山崎さん
おはようございます。

こんなにも素敵なページにしていただきまして、すごく感激するいっぽう、大変恐縮しております。

お忙しいところ、お手をお煩わせするようなことになってしまい、申し訳ありませんでした。
この場で、あらためてお礼を申し上げさせていただきます。
ありがとうございました。

追伸
なんだか私自身、「うつせみ」の主人公のように、ヤドカリにでもなってしまったみたいです(笑)。
スクリーン
2009年02月23日 00:12
山崎様 こんばんは
 相変わらず すごいスピードで次々にご覧になってますね。毎日覗いて、拝読はしてるのですが、自分自身が映画、ドラマ共にDVD鑑賞ストップしてるので、コメントができずお恥ずかしいしだい。  なぜ。。DVD観賞ストップかって?? (^0^)ビョンホンさんの足音がそこまで聞こえているので、ビョンホンさんワールドに嵌って、他の作品まで余裕がありません。 ただ今回、キム・ギドク監督について、新しいコメント発見、また オダギリジョーについて 視にしたので、のこのこ登場。
先月 見たドラマ「京城スキャンダル」 オダギリジョーさん 日本警察 山下役で出演  ただただ、ハングルの台詞がお上手なので びっくり。。演技は???ギトク・監督の映画にも出演とのことですが、ちょっと見たいと思ってます。。オダギリジョー 駄目ですか^^ 日本の戦隊物のときより、今が良いかな。。
 
スクリーン
2009年02月23日 00:12
 500文字意識したのですが、増えてしまいました。
 てっせんさん チェブさん 相変わらず 先生と同じレベルでの映画鑑賞 コメント、楽しく 拝読させて頂いてます。いろんな作品みたいなと思いながらも、一人の俳優に嵌った私には、この時期、何も目にも、耳にも入らず、しばし 他の作品休憩中。。
落ち着いたら 一気に観賞  ぜひ 酌み交わしての映画談義 聴衆者として 参加したいです。
 うつせみ 2年ほど前にみました。好きな作品のひとつです。最近のギトク監督の作品とは一味 ふた味違いますよね。。
チェブ
2009年02月23日 10:45
山崎さん、おはようございますそしててっせんさん、スクリーンさん、みなさん
では!ジュースで乾杯ということで(笑)私も最近ちょっとたて込んでいて DVD鑑賞なかなかできないです(泣)
スクリーンさんもおっしゃっているように もうカウントダウンはじまっていますもの(笑)なんとなく気ぜわしい感じですね
「悲夢」も早くみたいのですがなかなか劇場へ行けません
では、また顔出します
てっせん
2009年02月23日 22:53
スクリーンさん、チェブさん、今晩は
言ってもいいのかなあ。多分まだイケナイのだと思いますが、内緒話ということで・・・(笑)。
とうとう、ついに、二年もの間待ちに待っていた例のアレを、観ちゃったんですねえ。
いやあ、大リーグの人、かっこよかったです(笑)。
ぜひ、大スクリーンで観たいですね。

失礼しました。
スクリーン
2009年02月23日 23:41
山崎様 こんばんは
秋田撮影は3月中旬頃からとメディアの発表になってます。きっと 秋田は大変な事態でしょう。良い子のスクリーンは彼の仕事のお邪魔はしません。拝見したいのは山々ですがね。。じっと 無事に撮影が終わるのを、関東から祈るだけです。
てっせんさん ついに 2年待ち焦がれた 例の物 観賞。。ですか^^  素敵でしょう。でも 主演でもなく、まもなく韓国である、授賞式でも助演候補なんですよ。。彼は個人的な賞はこの作品では頂いてません。あちらの国でのヒットはこれの功績十二分、なた各国で上映も貢献してると思うのですが、何か賞を上げたいです。本日の アカデミー賞に外国部門にノミネートされたら、受賞もありかな。。なんて、でも韓国作品では別の物がノミネート。「おくりびと」と充分張り合えたのにな。。ファンの欲目でしょうか。
  日本で公開されたら、ぜひぜひ劇場へ足を運んでくださいね。土日しか、興行成績カウントされませんので そこんとこ宜しくお願いしますね。
 まだ内緒話しか出来ないのが悲しいです。
スクリーン
2009年02月27日 01:45
山崎様 こんばんは

昨夜は 某国際空港で、素晴らしきお方に遭遇良い一日でした。
偶然にも こちらでお顔を存じ上げてる方、数名にもお逢いしましたよ。 みなさん 感じるもの、赤い糸が繋がっているようで。。。。
 さて【アレ】韓国のメディアによりますと、配給会社が日本に向け 直売の動きあるようで、夏以降には、いよいよ上陸かと期待してますが。。。
ぜひその折には 復活させましょう。。
 ギドクssi ミアネヨ  貴方の事 語らず、別件で、山崎様と会話しました。
スクリーン
2009年03月04日 00:24
山崎様 こんばんは
不明な書き込み 失礼いたしました。
大リーグ級の 韓国の映画俳優のことでした。 3泊4日の滞在で、帰国。ビョンホンファン まだ正常な日常生活に戻れない状態かと想います。

でも そろそろ 韓国映画、たまっているもの、気になるものから徐々に観ていきます。またコメントさせて頂きますね。
PS ノム 日本夏公開 ビョンホンさんご自身からファンミで発表ありました。大スクリーンでぜひ 皆さんご一緒に観ましょう。

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