涙女 (2002)

[232]この映画はなぜ雑音で始まり、雑音で終わるのか……?


画像     韓国コーナーにあったので、
     韓国映画だと思って
     ジャケットもろくに見ずに借りて観たら、
     中国映画だったよ…(笑)。

     製作に韓国が絡んでいたので、
     韓国コーナーに置いてあったんだろうけど、
     しかし、どうなんだろうね、こういう場合…?

まあ、韓国と中国の、
両方に置ければ問題ないんだろうけどさ、ツタヤさん…?(笑)

でも、とても面白い映画だったので、
韓国コーナーに置いてくれたことに感謝?
なんのこっちゃ…(笑)。

物語はいたって単純。

万山県から北京に出て来た一組の若い夫婦、夫ゲンと妻グイ。
グイは生活費を稼ぐため、幼い子どもを連れて道に立ち、裏DVDを売る。
子どもを連れているのは警官に見つかった場合、温情をくれるから…。

その子は、やはり田舎から出てきた知合いの子どもで、
金を払って借りてきたのだ…(笑)。
この間、夫のゲンは例によって真昼間から麻雀…。

グイは、DVDがすこし売れたころ例によって警官に見つかるが、
子連れの温情をもらって無事帰宅する。
しかし、なんてことだ、
その子の親はわが子を貸したままアパートからトンズラ…(笑)。

一方、ゲンも麻雀面子を殴って大怪我させて刑務所行き…。
ケンカの原因は、そいつが金のないゲンを
「女房にからだで支払わせるのか」とからかったこと…。

この冒頭がすごいの。
街の喧騒や、子どもの泣き声、グイ、路地裏住人、麻雀連中の
喋くりでもううるさくてうるさくてしょうがないの…。

60年近く映画を観続けてきたけど、
こんなに冒頭からうるさい映画はじめてかも…(笑)。

でも不快じゃなくて、おかしくて笑っちゃうの。
そのすさまじい生命力が愛しくなっちゃうのね…。

ところで困ったグイは、とりあえず子を連れて田舎へ。

しかし親は見つからず、
むかしからの男友だちで、葬儀屋をやっているヨーミンに相談し、
ヨーミンの知り合いに里親になってもらう…。

で、グイとヨーミンも素直に出来ちゃう、セックスしちゃう…(笑)。
ヨーミンも結婚してるんだけどさ。

後半、それを知ったヨーミンの妻が、
通りでグイを捕まえて、周囲の連中に大声で言いふらすの。
「こいつは北京で淫売してたのよ。こいつは私の夫と寝たのよ。
夫を横取りしようとしてんのよ」みたいなこと…。

このあたり、まあ、じつにサバサバしてるというか、
オープンというか…、いいんだよねえ…(笑)。
お隣の韓国とはなんかえらく違う感じがする…?
いや、同じ…?(笑)

ようやく子の件が落着したと思ったら、
こんどは夫が大怪我させた男と妻がやってきて、
入院費を払えという。

グイ、その金額に驚いて、
「私には無理だよ~、無理だよ~、
私の人生はなんでこんなについてないんだよ~」
みたいなことを言って大声でウソ泣きをはじめる…(笑)。

葬儀屋のヨーミンがそれを見てグイに
「いい仕事がある。おまえ、哭き女になれ」って言うんだよね。
「おまえ、元ミュージカル女優なんだしさ」って…(笑)。

ほんとはそこまでは言わないんだけど(笑)、
グイが劇団で芝居をやってたのは事実なのね、
いまは解散しちゃったんだけど…(笑)。

ちなみにその劇団の女座長はいま厚化粧してクラブで歌ってて、
客はみんな自分の歌とからだを目当てに飲みにくる、
私は人気歌手よ、男なんて…、
なんて言いながらアパートでひとり暮らしてるんだよね…(笑)。

いいよねえ。
昔は日本の元女優さんたちもこんな血まみれの妄想を
たくましく生きてたはずなんだけどさ…(笑)。

で、グイ、哭き女をはじめちゃうんだよね。
最初は見よう見まねなんだけど、
そのうちだんだん知られて仕事も順調になってくる…。

とうぜん中国のお葬式のシーンとか、
野辺送りのシーンがたくさん出てくるんだけど、
これがまたいいんだよね。
むかしの日本のお葬式の風景と変わんなくて…(笑)。

違うところは「哭き女」が踊ったり歌ったりすること。
参列者が室内だろうと戸外だろうと、
時間潰しに?みんながあちこちで麻雀してること。
湿っぽくないところ…。

えっ、日本と全然違う…?(笑)

中国のこうしたお葬式のシーンが観れるだけでも
この映画はお得だよ(笑)。

犬のお葬式に哭き女が登場するところもあるしね(笑)。

ところがラスト、意外なドンデン返しが…?

葬式へ行こうとしてるところへ刑事たちが尋ねてくる。
そしてグイに知らせるの。
ゲンが刑務所を脱走し、警官の銃を奪った。
撃ちあいになり、ゲンは撃たれて死んだって…。

グイは、聞いて、涙も出てこない。
で、ヨーミンに言うんだよね、
「結婚して、ゲンはもう死んだから」って…。

ヨーミンが
「いまそんな話をしてる場合じゃねえだろ」って言うと、
グイは察知して言うの、「遊びだったのね」って…。
と、ヨーミン、「おまえだってそうだったんだろ」…。

グイはそのあとひとりで
お葬式を出している家へ行って哭き女をやる。

死者を想う歌を歌っているうちに、
はじめてほんとに涙が溢れてきてボロボロになりながら
歌い、泣く…。

麻雀やってる参列者たちがその「哭き」に感動して
次々にグイの手にチップを弾む…(笑)。
で、「完」なんだよね…(笑)。

この映画のいいところは、
市場経済の波の中で落ちこぼれながらも
たくましく生きていこうとする、
どこにでもいそうなひとりの若い中国人女の姿を
等身大できっちり描いてみせているところだよね…。

そう言ってよければ、この世界に
雑音として生まれて、雑音として生きている人間の姿…。

冒頭の「うるささ」、
ロールエンディングの暗闇の中でも続く騒音は
それを表現しようとしているんだよね。

人間なんて角度を変えてみるとたしかにそうだし、
だからまた逆に愛おしくなるんだね…。

小品なんだけど、間違いなく傑作だよ。
そして私のすごく好きな映画…。

-------------------------------------------------------

90分 中国/カナダ/フランス/韓国 ドラマ/コメディ

監督: リュウ・ビンジェン
製作: ダン・イエ
脚本: リュウ・ビンジェン ダン・イエ
撮影: シイ・ウェイ
美術: リュウ・リイグオ
音楽: ドン・リイチャン

出演:
リャオ・チン ワン・グイシアン
ウェイ・シンクン リイ・ヨーミン
リ・ロンジュン
ウェン・ジン
チョウ・イフイ

不甲斐ない夫のため、葬儀で故人をしのび涙を流す“哭き女”という昔ながらの商売を始めたひとりの現代中国女性の力強い生き様を描いた悲喜劇。監督は「硯」のリュウ・ビンジェン。主演は本作で銀幕デビューのリャオ・チン。2002年のカンヌ国際映画祭ある視点部門をはじめ、世界各国の映画祭へ正式出品された。
万山県から北京に出て来た若妻グイは、麻雀に明け暮れる夫のゲンも当てには出来ず、違法コピーのVCDを売り歩いて食いつなぐと云うギリギリの生活に喘いでいた。VCDの違法販売も、巡回する警察の目をごまかす為に、20元で借りた他人の幼子を抱きかかえての大立ち回りだったが、この日は、違法商品を警察への賄賂として手渡す事を余儀なくされた上に、その帰り道で幼子を返すべくその親のもとに向うと、あろう事かその幼子の親は蒸発、子供の面倒を見る羽目になってしまう。しかも、金欠で麻雀の精算も出来ずにいた夫のゲンは、罵倒する面子の一人に暴行を働いた為に警察に逮捕されてしまっていた。思いもよらぬ展開を受けて田舎へ退いたグイだったが、今度は、葬儀屋を営むかつての恋人ヨーミンを自宅に招いていた最中、ゲンが麻雀の際に暴行した男とその女房が治療費の請求に現れる。大袈裟な嘘泣きでその場を凌いだグイを目の当たりにしたヨーミンは、葬儀の席で泣き踊る事で収入を得る「哭き女」を生業に一旗挙げようとグイに持ち掛ける。追い詰められていたグイは、ヨーミンとの二人三脚で「哭き女」としてデビュー、数々の場数を経てビジネスも軌道に乗ったと思われたのだが…。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック