夏至 (2000)

[217]どうやったら出せるのよ、トラン・アン・ユンの映像のこの色合い

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 ※2009/02/07にUPした記事に補筆したものです


「青いパパイヤの香り」を撮った
トラン・アン・ユン監督の3本目の作品。

物語はよくある「三姉妹」の話。

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長女スオンはカメラマンのクオックと結婚していて、子どもが1人いる。
次女カインは小説家のキエンと結婚しているが、子どもはまだいない。
三女リエン(トラン・ヌー・イェン・ケー)は未婚、
俳優の兄ハイと暮らしているが、学生の恋人がいる。

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物語はその四人の母親の命日に
みんなで食事をするところからはじまる。

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その席で次女の夫キエンが、
四人の母親がほんとに愛していたのは父親ではなく、
彼女の初恋の人・トアンだったのではないかと言いはじめる。

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いかにも小説家らしい物語遊びだが、
それを発端にいっけん幸福そうにみえる姉妹三人の
愛の揺らぎがひそやかに綴られていく。

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長女スオンの夫クオックは取材旅行だと偽り、別のわが家に帰る。
じつは四年前から別の妻子と暮らしているのだ。
取材旅行から帰ると、かれはそのことをスオンに告白する。
スオンは「気づいていた、あなたとやり直したい」と語るが、

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じつはスオンも夫の留守中ずっと不倫を続けている。
夫とうまくいかないのが原因なのだが…。
次女カインはある日、夫キエンに妊娠したことを告げる。
キエンは喜びはするが、
小説が煮詰まっているからと気分転換の旅行に出る。

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そして旅先のホテルで一夜の情事に耽る。
カインは帰ってきた夫のスーツを手入れしているうちに、
その情事の痕跡を発見する。

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三女リエンはこのところなかなか恋人に会えない。
じつはかれのほうがリエンを避けているのだ。
避けられる理由はたぶんに彼女が、
兄ハイを理想の男性とみなしていることにある。

と、まあ、話自体はいかにもありそうな話…。

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すでに衣食住が主題ではなくなった階層(三姉妹)の話なので、
ちょっとベトナム的ではないかもなあという違和感も
ちょっと拭いきれない。
高等遊民であるフランス人家族の物語が、
なぜかアジアのベトナムで繰り広げられているような?(笑)

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ただ写真(映像)の構図と色彩が例によって絶品。
一枚、一枚、すばらしい絵を眺めているみたいだ。
それも極彩色なんだけど、しつこくなくて、
まるでパステルカラーで仕上げられたような。

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映画を観てるとき私はほとんど無意識に、
あ、この映画は真似しろって言われたら真似できるかな?
みたいにして観てるところがある。
私の中のイメージ遊びなんだろうが(^^♪

そのとき、あ、この作家の真似はできない、
絶対無理ってたまにおもう監督に出会う。
キム・ギドクなんかそうなのだが、
このトラン・アン・ユン監督も絶対無理って端からおもう。
構図とか物語はともかくこの色彩感覚だけは絶対無理、
私にはまったくないから…。

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とくに緑色。
植物の緑色はともかく、
部屋の壁を緑に塗って撮ったらふつうはもう見てられない。
それくらいむつかしいと思うけどね、緑とか青、黄色って。

でもトラン・アン・ユンにかかると、
ああ、私にはもうほとんど魔法の世界って感じ(^^♪
やっぱり美術の都パリに行かないとだめなのかもな。ギドクもそうだったし(笑)。

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ちなみにシヨット画像を掲載してるが、実際の色合いはく別もの。
ぜひ一度観てご堪能あれ。

あ、ついでに言っておくと、
かれが物語を高等遊民のひそやかな物語にするのは、
そうしないとこうした映像が撮れないからかもね。
衣食住に悩む大衆の心で写真(映像)を乱されたくない?
そのあたりがトラン・アン・ユンとギドクの決定的な違いかも…。


●チェブさん
「フランスのインテリアの中にアジアンティストが入るとオシャレだよ」…。
いやあ、まったくその通りの映画ですねえ…(笑)。
しかし私、やっぱり男なんでしょうか、
オシャレなだけじゃ、なんかもうひとつ腹に溜まったかんじがしなくて、
おい、こら、たまにはギドクみたいに引っ叩けみたいな…。
でもラストの三姉妹、小粋でいいなあと思ったり…(笑)。

●tomotyan712さん
みなさんすごいですね、情報入手が。
私は出てる映画を観るのが精一杯です…。

●lee_milkyさん
お元気ですか?
いま秋田は大変なようです。秋田の友人が言っていました。
市内のホテルはビョンホン・ファンでいっぱいだとか…(笑)。
おっしゃる場面、ほんとにいいですよね。
遠近の重ねかたがすばらしくて、まるで夢と現実が
幾重にも折り重なっているかのように見えました。
また、映像があまり動かないので、見る側は想像力の翼を
思い切り広げることができます。
こういう撮り方は観客の想像力を信じていないとなかなかできないので、
そのあたりもこの監督偉いよなあと感動しました…。

●lee_milkyさん
ファンとしては複雑な気持ちになりますよねえ…(笑)。
なんども観たくなる映画は、私の場合、
写真(絵)と物語がみごとに一致している作品です…。

ありがとうございました。

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■112分 フランス/ベトナム ドラマ
監督: トラン・アン・ユン
製作: クリストフ・ロシニョン
脚本: トラン・アン・ユン
撮影: マーク・リー
音楽: トン=ツァ・ティエ
出演
トラン・ヌー・イェン・ケー 三女リエン
チャン・マイン・クオン 次女の夫キエン
グエン・ニュー・クイン 長女スオン
レ・カイン 次女カイン
ゴー・クァン・ハーイ 長男ハイ
アンクル・フン 長女の夫クオック
レ・トゥアン・アイン 長女の不倫相手トゥアン
レ・ゴック・ズン フオン
ドアン・ヴィエト・ハー ガン
レ・ヴー・ロン ホア
ドー・ハーイ・イエン ムイ
ホアン・ラム・トゥン トアン
グエン・フイ・コン 漁師
トラン・ヌー・ラン・ケー リトル
リトル・フン クオックと愛人の子

「シクロ」で95年ヴェネチア国際映画祭グランプリを受賞したトラン・アン・ユンの5年ぶりの新作。一貫してヴェトナムを舞台に人との絆や心の触れ合いをモチーフにしてきた監督が今回は家族に焦点を当て独自の優しい語り口を繊細なタッチで描く。
母親の命日に集まったスオン、カイン、リエンの3姉妹とその兄弟ハイ。姉妹はとても仲が良く、その全てを分かち合っていたが誰にも言えない心の秘密を個々に抱えていた。そんな姉妹達に酒宴の席でカインの夫、キエンが彼女たちに母が本当に愛したのは父ではなく初恋の人、トアンだったと大胆な仮説を唱える。両親を理想の夫婦とし、最後まで深く愛しあっていたと信じて止まない彼女達はその発言に自らを投影して心を揺るがして行くのだった。

この記事へのコメント

チェブ
2009年02月03日 07:32
おはようございます
三姉妹の うふふっ! って笑い声が聞こえてくる・・・彼女たちは 青々とした葉っぱの中に住んでいる妖精みたい
やはり色で魅せられているのか「青いパパイヤの香り」も、こちらの作品も青であったり、緑であったり。青・緑・黄色と来たら赤がくるのかと思うとパステルピンクだったり、茶色(家具の茶色と緑の組み合わせ)だったり
すごく洗練されたフランスのセンスも感じるのに、じめっとしたアジアの空気ももっている
独特の世界に引き込まれます
舞台は妖精の世界なのに、彼女たちの心の葛藤はいたって人間的という、時に残酷さを秘めているお伽話をみているような。 観終えるとなんともすがしがしいような、洗われるような 自分のまわりの空気が澄んでいるような 独特の雰囲気に包まれるのは何故なのでしょう
作品全体をちょっと別の見方をすると、フランスのインテリアの中にアジアンティストが入るとオシャレだよ・・・という、たぶんこの作品が出来たころの世情も反映されちゃっているのかな・・・
tomotyan712
2009年02月05日 06:04
山崎先生
この作品で、トラン・アン・ユン監督の傾向を知りたくて、鑑賞しました。
はい、色彩がとてもきれいです。強烈。鮮明です。物の質感の丁寧な描写もしてあります。
髪を扱う女性のしぐさに惹かれます。こんな感じで、「I come」の暗黒街の親分ソドンボの愛も展開するのか?それとももっと官能的なのか?トラン・アン・ユン監督の演出は?ビョンホンさんはラブシーンをどのように演じたのか?興味深々です。6月公開。日本公開は、あるのか、ないのか?また、やきもきさせられます。^^
2009年03月20日 00:22
山崎先生、大変ご無沙汰しております。
私も、この映画を「絵画」として観ました。
法事の日、男達が部屋の中で談笑している部屋の中が窓越しに見え、その部屋のドアが半開きになっていて、更に奥が見える。
あぁ、こんな風に遠近感を演出しているのかと思っていると、その窓がスーッと上に昇って、つまりカメラが下に降りて、その窓の下では三姉妹が法事の準備をしていて、最も近景だと思っていた窓の更に手前があったことを知らされた時は、夜中にもかかわらず、「あっ」っと声を上げてしまいました。
この映画、画面があまり動かないでしょう?
だから、主体的に観られました。そういう意味で、絵画的であり、スクリーンよりは舞台を観ているようでした。
2009年03月22日 22:39
山崎先生、お返事ありがとうございました。
>いま秋田は大変なようです。
はぁ~、そうらしいですね。
「夏至」を見て、「あ~」なんて叫んでる場合じゃないですね。羨ましいことです。
でも、一方では、今日「ノッティングヒルの恋人」を見ながら、そっとしてあげたいなぁなんて思いました。
だけど、、間近にビョンホンシを見たら、真っ先に突進してしまうんだろうなぁ。。。と、複雑です^^;

>まるで夢と現実が
幾重にも折り重なっているかのように見えました。
なるほどですね。
私は、そこまで考えが及びませんでした。
流石です。
私のブログにも光のことや色彩のことをコメントして下さった方があって、この映画、また見たくなっています。
こういう交流は映画初心者の私には、とても参考になります。
ありがとうございました。

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