女は男の未来だ (2004)

[278]ホン・サンスはなぜドラマを画面の外に追い出すのか……?


画像     ホン・サンス監督の作品は、

     「秘花~スジョンの愛~」
     「気まぐれな唇」に続いて
     3本目なんだけど、

     私にはこの作品が
     一番面白かったかも…。


アメリカから帰国したばかりの
青年映画監督・ホンジュン(キム・テウ)が、
大学時代の後輩で、ある大学で美術講師をやっている
ムノ(ユ・ジテ)を尋ねてくる。

喫茶店でお茶を飲んでいるうちに、
二人が学生時代に付き合っていた女ソナ(ソン・ヒョナ)の話になり、
彼女に会いに行こうということになる。

はじめムノはあまり乗り気ではない…。

ソナは大学を中退し、
いまはすこし離れたホテルでバーをやっていて、
訪ねていくと仕事が終るまで待ってくれと言われる。

ムノとホンジュンが酒場で飲んでいるところへ
仕事を終えたソナが現れ、
二人を自分のアパートへ連れて行き、酒盛りになる。
途中、隣の部屋の女も加わる…。

七年ぶりに会ったはずなのだが、話が弾むわけでもない。

そのうちホンジュンが酔って愚痴りはじめると、
ソナはかれを寝室へ運び、一緒に寝る…?

翌朝、
そのまま居間のベッドで眠ってしまったムノが目を覚ますと、
ソナが寝室から起きてくる。

ムノはソナに「自分のを舐めてくれ」と言う。
ソナはべつに嫌がる様子もなくムノのあれを咥える…。
このあたりいかにもホン・サンス的「気まぐれな唇」ふう……?(笑)

三人は、近くの山へ行く。

途中、グラウンドに寄ると、
ムノの教え子たちがサッカーをやっていて、
かれはそこへ残り、ホンジュンとソナだけ山へ登る。

帰ってくると、
ムノは教え子の学生たちとすでに飲みに行き、
そこにはもういない。

自分たちが帰ってくるのが遅かったからだと
ソナがホンジュンを責めると、ホンジュンが急に怒り出し、
走り去る。

ムノは、ソナが想像するような理由で
そこからいなくなったわけじゃないんだけどね(笑)。

ホンジュンは、走り去るとき、
自分はほんとうは夕べ一睡もしていないんだぞ、と言い残す。
朝、ソナがムノにやったことも知っているぞ、ということ…?

例によってホン・サンスは、
肝心なことは一切セリフにしたり描いたりしないので
推測するしかないのだが、

ホンジュンがアメリカに行ったのはたぶん、
ソナが、ムノとセックスしていることを知ったからである。
じゃあ三角関係だったのかというと、そうでもない…?

ムノはソナにとってたんなるセックスフレンドで、
本命はホンジュンだった…?
でもホンジュンのほうはそう思っていなかった…?
遊ばれたのは自分のほうだと思っていた…?

そのことを確認したくてたぶん、
帰国するとすぐにムノを誘ってソナに会いに来たのだ…。

このあたりのソナとホンジュンの気持ちの行き違いが
いままでの作品になくおもしろいんだよね…。

もすこし推測すると、
ホンジュンにとっては「愛=セックス」なんだけど、
ソナにとって「愛=セックス」にはなっていない…?
ホンジュンにはソナのそのあたりの心がわからない…?

ソナはホンジュンのほうが好きなんだけど、
かれはまじめ過ぎて、ロマンチスト(古典的)過ぎて、
荷が重いのかもしれない…。

セックスについていい加減なムノのほうが楽なのかもしれない。
だから、朝、ムノにねだられるとあんなことをした…(笑)。

ということは、彼女、
女である自分のからだが重すぎて軽くしたいってこと…?

彼女は学生のころ、
兵役から帰ってきた元恋人にホテルで強姦された。
そのことをムノに告白したあと、ムノに抱かれる。
おれとセックスして
もとの綺麗なからだに戻そうみたいなこと言われて…(笑)。

彼女はそのころとても純(イノセント)だったのだが、
ホンジュンとも付き合って…、
でもホンジュンがアメリカに去ってしまうと、
次第にその純な気持ち(イノセンス)が壊れて…、

ホステスのバイトを初めるようになったりして…、
男はみんな女のからだが目当てなのね、
みたいにわかったりしてきて…。
で、そのうち大学もやめて、ホステスが本業になって…?

ということは、まあ、ごく普通になったというか、
リアリストになっていったってこと…?(笑)

あるいは男がそう望むんならあたしもそうしよう、
みたいに、男と同じ次元でセックスするようになった…?
男の望む未来の女=「気まぐれな唇」になった…?(笑)

ところでムノは学生たちと飲み始めると、
いきなり女子学生に
「君が最後にセックスしたのはいつ?」なんて聞き始めて、
「先生は下品だ」と男子学生に責められる。
と、ムノが突然、「上品とはなにか?」などと怒りはじめる。

解散してひとりで帰ろうとすると、
女子学生が追いかけてきて、
「先生はまじめなんですよね、そこが好き」と言う。

ムノは君とあのホテルに入りたいと、一緒に安ホテルに入る。
先の男子学生があとをついてきて、ホテルのドアを蹴り、消える。

女子学生は、さっきたてついた男子学生だろう、
かれにはストーカー的なところがあって、
みたいなことを言う。

ほんと…? 君が好きだから、
君が講師のムノと寝るのが許せないんじゃないの?
って思うけど、

ホン・サンスの映画になると、
そういうロマンチストは過剰者=変質者にされてしまう…?
このあたりも、いかにもホン・サンス的で面白い…(笑)。

最後、ムノは女子学生をタクシーで帰し、
ノムがひとり残されたところで映画は終る。

かれは、いまの大学の教授になるのが夢なのだが、
さっきの男子学生にうわさを流されなきゃいいが…、
と、ちょっと不安な面持ちで…?


……みたいな話を例によって
ただ淡々と撮っていくだけなんだけどね。

淡々と、というのは、
ライターや監督はたいてい
物語をそれなりにドラマチックに構築しようとするけど、
ホン・サンス監督は
けっしてそうしようとはしないってこと…。

日常の進行がそうドラマチックでないとすれば、
そういう日常の等身大を撮ろうとする…?

いや、日常でもここで起きているような出来事は
それなりけっこう起きてるんだろうけど、
かれはけしてそれは描かない。

画面には描かないで…、
そういうのがあったとすれば、
画面の外側で起きているように撮っていく…。

撮ったとしてもけしてドラマチックには撮らない。
ドラマチックにみえる出来事を
非ドラマチックへと解体する方向で撮る…。

というのがホン・サンスの撮り方だよね。

それが、
自分でも言っているとかいう
サン・ホンスの作家主義的映画って言うやつ…?

たとえば、ムノの教え子たちが
グラウンドでサッカーをやっているシーンがあるんだけど、
カメラはただそのサッカーを見ているムノを撮ってるだけで、
サッカーをやっている連中は絶対に撮らないんだよね…。

映画のやばいところは、
画面上がすべてになりがちなところなんだけど、
そういう撮り方だと、物語の世界が
画面の外にも広がっているように感じさせることができるしね。
画面がすべてに、絶対にならない…?

主題的な問題でいうと、韓国映画はラブ・ストーリーが多い。
そのラブ・ストーリーもセックス=愛みたいな近代恋愛もの…?
ホン・サンスはそういう恋愛ものを日常のほうへ、
もっと何気ないもののほうへ解体しようとしてるってこと…?

そこにはもしかすると
韓国の儒教的な性愛観にたいする反発が
そうとう塗り込められてるのかもしれないんだけどね…。


ホン・サンス的結論。
人間、何事ももっといい加減なほうがいいんだよ。
だいたいがいちばんいい…?

あ、私的結論だったかなあ…(笑)。


それはさておき
私がいちばん好きなのは冒頭の喫茶店のシーン。

ムノとホンジュンが座っている席の向こうは
大きな窓になっていて、その窓の向こうの通りで、
本筋とはまったく関係のない女の子が
ずっとウロチョロしてるよね。

あとで男の車が来て、
あ、彼氏を待ってたのかってわかるんだけど、
あのシーン好き…(笑)。

ちょっと狙いがわかりすぎちゃうとこあるけど、
今回は許しちゃお~っと…(笑)。

「秘花~スジョンの愛~」と「気まぐれな唇」は、
その作家的スケベ根性が露骨だなあって気になって
あんまり面白くなかったんだけど、

この作品は、まあ、
そのあたりのことをさりげなく、
サラリとやってるのでけっこう面白かったんだよね…。

30年近く前のことなんだけど、
私も兄貴世代の「非等身大」の演劇を「等身大」のほうへ、
日常(生活)のほうへ解体する作業をやってきたので、
ホン・サンスの気持ちが私なりによくわかるんだけど、

わかるぶん、彼にはちょっと厳しくなっちゃうのかも…。
ごめんなさいだよね。

しかし、「豚が井戸に落ちた日」、
どこか置いてないのかなあ。
タイトルがものすごく気に入ってるんだけど…。


●てっせんさん
「この監督の場合、あらためて観直すのって、けっこうエネルギーがいる」
はははっ…。と、思わずひとりで大受けして笑ってしまいました。
もう、てっせんさんのおっしゃる通りなもんですから…(笑)。
この監督が男と女の、とくにセックスにこだわって撮ってるのは
好きなんですけど、
「撮ってくれるのは嬉しいんだけど、ヤッテル? あれはホントは
撮るもんじゃなくてヤルもんだよねえ。ヤルと撮るのが
バカバカしくなんない? 理屈こねたってしょうがない感じしない…?」
みたいなこと聞きたくなっちゃうところがあって…(笑)。
ホン・サンス、吉行淳之介読んでもっと勉強してほしいですよね。

●てっせんさん
結核文学の最後を飾った吉行さんのお好みの女優さんを
韓国女優の中から探すのはけっこう至難ですよねえ。
なぜか韓国女優のみなさんは、大柄で、健康で、
きれいで、あまりエロスを発しているひといませんから…。
ペ・ドゥナ、「チューブ(Tube)」で私がすっかりイカレたので、
吉行さんには若すぎる! ということにしておきたいです(笑)。
「ピーターパンの公式」のキム・ホジョンは、
身のこなしになんとも言えないエロティシズムが漂っていて、
けっこう吉行さん好みかもと思います。
てっせんさん、危うし、ライバル出現です!(笑)

ありがとうございました。
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■88分 韓国/フランス ロマンス/コメディ

監督: ホン・サンス
製作: イ・ハンナ マラン・カルミッツ
脚本: ホン・サンス
撮影: キム・ヒョング
編集: ハム・ソンウォン
音楽: チョン・ヨンジン

出演
ユ・ジテ ムノ
キム・テウ ホンジュン
ソン・ヒョナ ソナ
キム・ホジョン

かつて同じ女性を愛し合った中年男2人が、当の女性と再会、それぞれの思惑が絡み合い、そしてすれ違うさまを、あけすけなタッチでユーモラスに描く恋愛スケッチ。監督は「気まぐれな唇」のホン・サンス。ソウルに初雪が降った日、大学で美術講師をするムノは、学生時代の先輩でアメリカから戻ってきたばかりの映画監督ホンジュンと久々の再会を果たす。2人は昔話を語り合ううち、彼らが7年前に付き合った女性ソナの思い出で盛り上がる。そのまま2人は、酒の勢いも借りてソナのもとを訪ねてみるのだが…。


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この記事へのコメント

てっせん
2009年04月19日 21:38
せっかく山崎さんがホン・サンスの中で一番面白かったと書いて下さったのに、私、この映画、途中までしか観ていないんですよねえ(笑)。
つまらなかったというわけではなく、何かの用事で中断してそれっきりになってしまって・・・
この監督の場合、あらためて観直すのって、けっこうエネルギーがいるんですよね。また、いつ観る気になるものやら、自分でも計りがたいです(笑)。
てっせん
2009年04月20日 21:08
今晩は
吉行淳之介さんといえば、スタイルのよさとか見た目の派手さを誇る韓国女優の中に、果たして吉行さんが惹かれそうな女性がいるかどうか・・・なんてことをちょっと考えてみました(笑)。

小柄で不健康そうで、どこかアンバランスで薄汚れた感じのする女・・・こんなところが吉行さん好みだろうと思うんですけれど、この条件に合致する女優は誰でしょう・・・カンエイ検1級レベルの問題としておきましょうか(笑)。

答え・・・といっても私の独断ですが、ぺ・ドゥナなんて、すこしいいセンいってるかも。彼女よりもっと吉行さん好みと思えるのが、「ピーターパンの公式」で私好みの(笑)人妻役を演じてたキム・ホジョンなんですが・・・。たしか「女は男の未来だ」にも出てましたが、最近の韓国女優には珍しいタイプで、すべての条件が吉行さんの好みに合致してるように思えるんですねえ・・・(笑)。他にも誰かいたでしょうか・・・?

ヘンな話題にしてしまい、スミマセン。

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