膝と膝の間_1 (1984)

[384]民主化運動のひとつとして創られた韓国初の傑作セミ・ポルノ

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(2009/10/01にUPした記事に加筆、修正)


韓国で初めてのセミ・ポルノ映画。
製作は1984年。全斗換の軍事政権下。
翌85年にはやはりセミ・ポルノの名作「桑の葉」が創られている。
ちなみにあの光州事件が起きたのは1980年。
なんだかきな臭いよね(^^♪

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80年代から90年代にかけて、ビデオ屋さんへ行くと
韓国のセミ・ポルノ映画がたくさん棚に並んでいた記憶があるが、
この作品もあの中に並んでいたのかなあ。

当時、韓国のソフトポルノにはまったく関心がなかったが、
いまになって観ると、まあ、この映画もめちゃくちゃいい。
傑作。名作。(^^♪

この作品が生まれたから
間違いなく、翌年、傑作「桑の葉」も生まれたのだと思う💛

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韓国映画の年表をめくると、
80年代から90年代にかけてセミ・ポルノが凄くたくさん
創られている。

この作品の影響がいかに大きかったか想像できるが、
民主化と自由化の要求の先陣を切ったのは、
軍事政権に最初に抵抗の声をあげたのは
やっぱりポルノだったんだ。
われらがイム・グォンテク作品をいちばんよくわかってたのも、
こういうポルノ映画撮った監督たちだったんだって
思っちゃうよな(^^♪

事実、政治権力と真っ向から対立するのは、
阿部定事件がよく表しているようにいつの世も
性幻想(セックス)だもんね。

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いまの韓国映画…、
90年代半ばあたりから始まる韓国映画の主流は、
よく知られているように「恋愛もの」な訳だが、

80年代から90年代にかけて大量に創られた
ソフト・ポルノ映画の延長に花開いたと言えるのかも。
セミ・ポルノ⇒ソフト・ポルノ⇒ソフト・ソフト・ポルノ⇒恋愛もの。
それが韓国ルネサンスと言われる映画群の正体?(^^♪

韓国映画に詳しいてっせんさんに聞くとわかるのだろうが、
なんとなく韓国映画の軌跡が見えてきた感じだぜ(笑)。

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いわば2組の母娘の物語。
1組は、チャヨン(イ・ボヒ)とその母(テ・ヒョンシル)。
父親は実業家で階層的には上流家庭。

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彼女はいま音大器楽科でフルートを専攻する大学生で、
チョ・ビン(右、アン・ソンギ)という恋人がいる。
ゲっ、国民俳優アン・ソンギはセミ・ポルノ出身だったのか!
と思っちゃだめだよ(笑)。
これはただのポルノ映画じゃないんだから(^^♪

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これが父親(キム・インムン)なのだが、
この父親には実は愛人がいて、娘ポヨンを産んでいる。
母親はそんな夫が許せず、夫への憎しみが
娘チャヨンに対する過度な躾として表れている。
それも性に対する躾として。

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その反動がチャヨンに表れ始める。
きっかけは痴漢に襲われたことである。
以来、膝を触られると性衝動が突きあげてきて
相手構わずセックスしてしまうのだ。

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「膝」にも実はトラウマが隠されている。
子供のころ母親にフルートの外国人家庭教師をつけられる。
その家庭教師がロリコンで、チャヨンの膝を愛撫していたのだ。

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ある日、母親はそれを目撃し、娘チャヨンを激しく殴りつける。
オモテは性に対する罪悪感を植えつけるためだが、
ウラには性に対する憎しみ、恐怖心が隠されている。

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で、チョンヤンは膝を触られると、
母親への反撥として性衝動を抑えられないようになったのだ。

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母親の過度な躾は夫への憎しみのせいだけではない。
チョンヤンは後に父親から聞かされる。
母は私生児として生まれた。母親が愛人暮らしをしていたせいだ。
そのため彼女は…、母親は
自分の娘チョンヤンを「きれいに」育てたかったのだと。

自分の母親が愛人暮らしをしていたので、
女は放っておくと性的にふしだらになってしまう。
そんな恐怖心を抱いたんだろうね。
もう少し言うと、母親は娘を罰することで自分の母親を罰し、
愛人の子である自分を罰しようとしてきたのだろう。

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しかし性は衝動。無意識。
理屈でなかなか制御できるものではない。
チョンヤンの膝は男に触られると衝動してしまう。

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フルートにも衝動してしまう。

いまも大学でフルートを続けているのだが、
西欧音楽を聴くたびに膝を…、自分の「膝と膝の間」を
強烈に感じてしまう。
で、時にフルートを使い自分の「膝と膝の間」を慰めてしまう。
このあたり抜群。フルートがあの外国人家庭教師のせいで
男根になってしまっているのだ。

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コンサートを聴きに行った夜、
以前から彼女を狙っているスイリに膝を触られ、
欲情し、会場を出てスイリと交わってしまう。
それも激しく降る雨の中で。コンサートの大音響が聞こえる中で。

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秀逸のシーン。
「情事」のイ・ミスクに匹敵するほどエロチックで美しい(^^♪

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その頃、恋人のチョ・ビンは…、
われらがアン・ソンギは何をしているかと言うと、
マイケル・ジャクソン(=西欧文化)が嫌いなものだから、
別の場所で母上と一緒に韓国の伝統芸能「パンソリ」を聴いている。
この大馬鹿者めが(笑)。

彼は実は名家の息子で、
儒教文化を生きる若者として育てられてきた。
それに対してチョンヤンは洋楽(西欧文化)。

そういう意味で言うとチョ・ビンは服従心の強い若者、
チョンヤンは反発心、反抗心の強い若者として描かれている
ことになる。
もっと言えば全斗換の軍事政権に対して怒れる若者として(^^♪

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過ちを犯したチャヨンは母親の呪縛から逃れようと、
家を出て田舎暮らしを始める。
恋人チョ・ビンに別れの手紙も書く。
自分の行動は母親への反抗なのだろうと。

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しかしその平和な田舎でも、
ソウルからやってきた無軌道な若者の餌食になる。

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野原で犯される。
突き上げる性衝動を抑えられない自分もいる。

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犯されるところを別の男に盗み撮りされ、後に脅迫され、
その男にも犯される。

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ばかりか偶然そこへ現れた若者たちにも輪姦される。
そのシーンはセミ・ポルノの面目躍如、刺激的で
映像がほんとに美しい。あ、美しいと言うのもなんだが(^^♪

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心とからだのバランスを失ったチョンヤンは結局、
自宅へ帰り、ガス自殺を図る。
それを家政婦が発見し、病院へ運ぶ…。

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もう1組の母娘は、
チャヨンの父親の愛人(イ・イノク)と
その間に生まれた娘ポヨン(イ・ヘヨン)である。

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この母親は朝鮮戦争で両親を失い、孤児院で育つ。
口の利けない恋人がいたが、チャヨンの父親の愛人になり、
ボヨンを産んだのだ。
父親はたぶんチャヨンの母親が性的に厳格過ぎたため
彼女と愛し合うようになったのだろう。

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異母姉妹になるチャヨンとポヨンは年もちょうど同じくらいで、
会えばすごく仲がいい。互いをとても思いやっている。
お互い家族的な境遇をよく理解しているからだろう。

ちなみにチャヨンの母親は、
心の底からこのポヨン母娘を憎んでいる訳ではない。
ポヨン母娘は、かつての自分と自分の母親の姿である。
それを見たくなくて近づかないだけだ。

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ポヨンとその母親は、
チャヨン母娘とまったく反対に姉妹みたいに仲がいい。
ただ母がちゃんとした相手と結婚してくれれば
自分にもちゃんとした「お父さん」がいて、
チャヨンみたいに幸せになれたのにと少し不満は抱いている。

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ある日、久しぶりに現れた父親が、
ポヨンをあるアパートへ案内し、告げる。
「明日からおまえはひとりでここに住みなさい。
おかあさんは事情があって、
いま住んでいる家に一人で住むから」と。

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父親は、ポヨンの母親を結婚させることにしたのだ。
相手はたぶん彼女の将来を思って父親が紹介した男なのだろう。
男には子供たちがおり、再婚。
ポヨンは母親に再婚を勧めていたのだが、
いざとなると寂しくもあり、複雑な気持ちになる。


●てっせんさん
そうなんですか。
監督のイ・ジャンホ、70年代~80年代にかけて、
韓国映画ヌーベルバーグの旗手と称えられた監督なんですか。
と、やはり韓国映画界は70年代から80年代にかけて
1度変貌を遂げてると考えていいんでしょうか。
で、そのあとまた韓国ルネサンスと呼ばれる
現在のような映画群へと展開されていく…?
主演のイ・ボヒは80年代の大スターだった…。
ですよねえ。彼女には、いまの韓国女優にはなかなかない、
「近寄りがたい美しさ」を感じます。
あ、韓国の女優に限りませんね…(笑)。
ところで三島由紀夫のお話が出てきましたが、
ああ、と納得するところ大です。
この作品の複層的な物語の創りかたと、
三島の複層的で、図式的な物語の創りかたはとてもよく似てます。
それに、幼少期、母親にスポイルされるチャヨン(イ・ボヒ )は、
祖母にスポイルされた幼少期の三島を
そのまま彷彿させるところがありますから…(笑)。

ありがとうございました。

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■97分 韓国 エロティック/ドラマ
監督: イ・チャンホ
製作: イ・テウォン
脚本: イ・チャンホ
撮影: ソ・ジョンミン
音楽: チョン・ミンソプ
出演
イ・ボヒ
アン・ソンギ
イ・ヘヨン

伝統的な儒教道徳に縛られながらも流れ込む西洋文化にさらされ、性に目覚めてゆく一人の少女の体験をエロティックに描く韓国初のセミ・ポルノ。製作は李泰元、監督・脚本は「暗闇の子供たち」の李長鎬、撮影は徐廷眠(ソ・ジョンミン)、音楽を鄭珉燮(チョン・ミンソプ)が担当。出演は李甫姫、安聖基ほか。

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この記事へのコメント

てっせん
2009年10月02日 22:46
・・・大島渚の傑作「青春残酷物語」 (1960) みたいな映画なのね。事実、「青春残酷…」を研究して作ったんじゃないの?・・・

この一作でそこまで見抜くとは、さすがに、鋭いご眼力と脱帽します。
監督のイ・ジャンホ、七十年代から八十年代にかけて、韓国映画ヌーベルバーグの旗手と称えられた人です。

そしてこの映画、私もたいへん面白かったです・・・(笑)。画像的には奥行きのある、韓国の農村風景の撮り方が特徴的だと思いました。やはり圧巻は山崎さんご指摘の、あの豪雨の中でのエロスのシーン。思いっきり土砂降りの雨を降らせ派手な雷鳴を轟かせたりしていますが、決して安っぽくならず、エロスを発散させていますねえ。監督のイ・ジャンホ、さすがにヌーベルバーグの旗手と言われただけの、見事な演出だなあと思いました。それから、三島由紀夫「音楽」を読んでいたかもしれないなとも思いました。もっとも、「音楽」の内容はすっかり忘れてしまいましたが・・・(笑)

さらに主演のイ・ボヒ、仰るとおり八十年代の大スターでした。日本でも一部に熱烈なファンがいたようです・・・(笑)。最近は肉付きがよくなって往年のシャープさはないですけれども、ドラマに出演してたりして、独特の雰囲気を放っています。

そして、「セミ・ポルノ→ソフト・ポルノ→ソフト・ソフト・ポルノ→恋愛もの」という流れが成り立つのか、私も、かつてコリアンエロスと呼ばれた一群の映画を殆ど観ていませんので、これからの研究課題です・・・(笑)

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