こんな日は映画を観よう

アクセスカウンタ

zoom RSS 若い男 (1994)

<<   作成日時 : 2010/02/16 02:57   >>

トラックバック 0 / コメント 3

[469]時代に選ばれたイ・ジョンジェの生涯忘れられない名作…?


画像


1994年の作品…。

イ・ジョンジェの初主演作品。

大鐘賞をはじめ、
イ・ジョンジェがその年の新人賞を
総なめにしたという作品。

じつはこれもイ・ジョンジェの大ファンの
tenchanさんが贈ってくださった
ほんとうにほんとうに貴重な作品…。

韓国映画、字幕ナシ、
予備知識いっさいナシで初鑑賞。

その大胆さに自分でも仰天…(笑)。

しかも恐ろしいことに、およそ理解できた…?(笑)

観終えて、絶句…!
私のきわめて個人的な好みで言えば
なんと「太陽はない」を上回る大傑作だったよ…!!

しかも驚いたことにあとで調べたら、
監督は…、え…? 信じられん、どうなってるの…?
と、一瞬、わが目をこすってしまったんだけど、

あの凡作「黒水仙」を撮ったペ・チャンホだった…!(笑)

一言でいえば、
ようやく訪れた韓国の「戦後」を
ひとりの若者(イ・ジョンジェ)を通して描いた…、
かのような典型的なヌーヴェル・ヴァーグ作品…。

アメリカナイズされたソウルの夜の
プール・バーでビリヤードに興じるハン(イジョンジェ)。
物語はそこから始まる…。

かれはトップモデルになりたいと
芸能事務所に通っている若者だが、
日々の暮らしはエネルギーを持て余し、

バーに入り浸って女を引っかけたり、
ドライブで検問を突破したりと、無軌道だ。
ちょうど日本の戦後の若者がそうだったように…?

そんなかれに入れ込む女がいる。
プール・バーで知り合ったジェイ(シンウンギョン)と、
芸能事務所のマネージャーであるソン(キム・ボヨン)だ。

ジェイはハン同様、
アメリカン・カルチャーに浸ることで脱韓国、
脱「戦後」したいと願っている女子大生…?

ソンは、事務所での自分の権力を利用して、
ハンをツバメとして飼っている女。
はやい話が自分に逆らうとハンに仕事を回さない女ね…(笑)。

そんなハンの前にもうひとりの女が現れる。
美術館(画廊?)をやっている若い未亡人のスンヘ(イ・ウンギョン)だ。

ハンがバイトをしているコンビニに偶然現れたのだが、
かれは彼女を見て一目で虜になる。

匂いたつ白のファッション、美貌、乗り回している高級車…、
そこに自分の夢の具現を見たからだ。

アメリカン・カルチャーとともに流れてきた自由への渇望。
アメリカン・ドリーム。脱韓国、脱戦後の夢…。

接近してきたハンにスンヘも言い知れぬ魅力を感じる。
ハイソサエティ化することで自分が失ったものを
ハンが醸し出しているからだ。

人間の野性味…、生命力…。
すこし言いかえると、
ハンの身体に刻み込まれている(韓国)戦後の「傷跡」…?

そうしてハンと同じような、
「戦後」の自由を謳歌するような
アメリカナイズされたファッションに身を包み、
若い欲望と野望がひしめきあうメトロポリス・ソウルで
デートを楽しむ…。

ジェイとも馴染みになる…。

ある意味、古典的なドラマ構成ではあるけど、
そのあたりの若者たちの
戦後的な息遣いの描写がすごくいいんだよね。

で、物語を先にすすめると…、

と言ってもほんとに大雑把にしかわからないし、
私の勘違いもたぶんにあるかもしれないんだけど、
そのあたりは勘弁してもらって…、

ハンはスンヘを通じて大きな仕事をもらう。

が、マネージャー・ソンと専属契約させられているので、
夜、事務所に侵入してその契約書を盗みだそうとする。

そこへたまたまソンが現れ、
ひっぱたかれるうちに怒りで思わずソンを殴り返し、
突き倒す。

と、ソンは床に転がっていたバーヘルに頭を打ち、
運悪く死んでしまう。

混乱したハンは
その死体を車で運びだし、湖に沈める。

そしてバーで泥酔してるところへジェイが現れ、
屋上へ誘い出す…。

この屋上のシーンがもう秀逸…!
ことばがわからないのがめちゃくちゃ悔しいんだけど…、

恐怖心と混乱で(?)
ヘジェイを押し倒してセックスしようとする。
が、ハンの様子がおかしいのでヘジョイが拒否する。

と、ハンはフラフラと屋上の縁に上がり、
いまにも飛び降りそうな感じ…。

ヘジェイが何があったのか問いただそうとすると、
こんどは一転して大声で明るく笑いはじめる…。

たぶん大きな仕事が入って、
巨額の金を手にしたことを伝えてるんだとおもうんだけどね。

その翌日(?)、ハンは
買ったばかりの(?)ベンツで海辺のロケ地へ向かうのだが、
途中、トラックと衝突事故を起こして即死する…。

というのが大筋…。

作品の完成度という意味では「太陽はない」のほうが
明らかに上である。

しかし映画としての素晴らしさ、重要度は
まちがいなくこの「若い男」のほうが圧倒的に上だ。

理由ははっきりしている。
アメリカナイズされた戦後韓国を体現しているハンが、
ラスト、「死」んでしまうからである。

シーン的には「勝手にしやがれ」や
「俺たちに明日はない」「太陽がいっぱい」などを
彷彿させるところがあるんだけどね…。

ハンが「死ぬ」ことがそんなに重要なことなのか?

これもはっきりしている。
死ぬことでハンは、
次代が乗り超えていかなければいけない人物になったからである。

乗り超えていかなければいけない「戦後」…。
乗り超えていかなければいけない「アメリカ」…。

観るものにとって
ハンは明らかにその指標になっているのだ。

「太陽はない」も素晴らしい作品だが、
物語的にはそういう韓国の時代の刻印を
つよく受けているわけではない…。

実際、この作品を観て、
わたしは長い間の疑問が解けた…、ような気がしている。

イ・ジョンジェは誰が観たってすばらしい俳優だ。
なのにどうして代表作と呼べるような作品がないのだろう?
という疑問と不満がずっと私の中にくすぶっていた。

でも、ほんとうはすでにもうあったのだ。
若干21、2歳で撮ったこの「若い男」である。
このあとの「太陽はない」を入れてもいいのかも知れないが…、

ただ私がまだ観ていなかっただけなのだ。

そしてこの2作品を観終わって感じることは、
イ・ジョンジェにはもうこれ以上の作品は撮れないだろう
ということである。

この作品が、
韓国のこの時代の刻印を決定的に受けているからだ。
イ・ジョンジェが、
韓国のこの時代に、自らを決定的に刻印してしまっているからだ。

そうした俳優が、
刻印された時代を抜け出して生きることはほとんど不可能だ、
とおもうからである。

そのことはイ・ビョンホンと比較するとよくわかる。

イ・ビョンホンには、
ドラマの上でも、映画の上でも代表作とも呼べる作品は
けっこうある。
そしてたぶんこれからもそんな作品を創るだろう。

それはなぜか?
イ・ジョンジェと違って、
ビョンホンの作品はどれも韓国の時代の刻印を受けていないし、
本人も自分を時代に刻印したことは…、
あるいは、できたことはないからである。

その意味では、
かれの作品は極上のエンターテイメントを超えることはない…。

そこがイ・ジョンジェとイ・ビョンホンという
韓国を代表する二大俳優の決定的な違いなのだとおもう。

そう言ってよければスタートラインが違ったのだ…。

念のために言っておくが、
これはどっちが優れているかという問題ではない。
どっちが幸か不幸かという問題でもない。

イ・ビョンホンが神に選ばれた俳優だとすれば、
イ・ジョンジェは時代に選ばれた俳優だということである…。

ついでに言っておけば、
イ・ミスクとイ・ジョンジェの名作「情事」が
なぜ撮られなければいけなかったのか、
その理由もこの作品のなかにはっきりと表れている…。

イ・ジョンジェ、
この作品をほんとうにありがとう。

ラスト、スンヘの部屋で流れた
あのハンが自分で作ったプロモーション・ビデオを
わたしは生涯、忘れられないでしょうね、
あなたとともに…。

そして
この作品を送って教えてくだすったtenchanさん、
ことばでは言い表せないほど感謝しています…。

画像


●tenchanさん
はい、拝見させていただきました。
このDVD、もう私の宝物にさせていただいてます…。
あくまで私の見方ですけど、
韓国の「戦後」という視点で捉えるのが
やはり一番いいかなあと思っています。
韓国も長い間米軍や軍事政権下にあったので、
どこかに日本が経験したような「戦後」があるはずだ、
で、それを描いた作品があるはずだと思っていました。
「膝と膝の間」や「情事」、そして先日拝見させていただいた
「太陽はない」などにそれらの影が見え隠れしてましたが、
決定的というか、正面から「戦後」を描いてるとは
言いがたいというか…。
その意味ではこの「若い男」は記念碑的な作品なんじゃないかと
思います。
ちなみに韓国の「戦後」という時期は、
光州事件(80年)から金大中大統領が誕生した1998年あたりかな?
と思っているのですが…。
しかし、イ・ジョンジェ、
想像以上にすごい俳優だと感動のしまくりでした…!

追伸)
もうひとつの「戦後」を描いた作品として
「キルソドム」 (1985) がありました…。

●ひらいさん
この作品も面白かったでしょう。
わたしもこのころはまったく韓国映画と縁がなかったので、
いまになってものすごく後悔してます…。
きっといい映画がたくさんあったんじゃないですかねえ。
え? チョン・ドヨンと? それもタイトルが「下女」?
と、わたしもびっくりしました。
チョン・ドヨンとやるの想像したこともなかったので…(笑)。
その意味ではめちゃ楽しみです…?(笑)

●tenchanさん
映画ファンはどうしてもハリウッド育ちみたいなとこありますよね。
わたしもそうなんですけど、じつはおっしゃるように、
ハリウッドがドンドンつまらなくなってくなあ、面白くないなあ
と思ってた時に韓国映画に出会ったんです…!
いまやすっかり嵌っていますが(笑)、おい、ハリウッドみたいに、
日本みたいになるなよって心の底から叫んでます…(笑)。
中でも韓国映画、90年代がめちゃくちゃすごいですよね。
そうですね、ソウル・オリンピックから金大中政権の発足
までの期間が、韓国が「戦後」から脱出していく期間だったと
みていいような気がします…。
「IRIS」、観終わったらぜひ「IRIS」にもお立ち寄りください…(笑)。

ありがとうございました。

クリッとしていただけると嬉しいです
使い捨てコンタクトレンズ★安い・早い・確実にお届け★
デメカル血液検査キット


にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村

ブログん家


■116分 韓国 ドラマ
監督/ペ・チャンホ
出演/
イ・ジョンジェ
シン・ウンギョン
イ・ウンギョン
キム・ボヨン
クォン・オジュン
チョン・ミソン
ミョン・ゲナム
カン・ソンジン

ハン(イジョンジェ)はお気楽に遊びまわる一方で、スターになる野心も持っている都会の若者。運転免許がないのにプールバーで引っ掛けた女の車でドライブに出かけて検問を振り切り逃げ回ったり、彼に入れ込むジェイ(シンウンギョン)が他の男から盗んだ財布で豪遊したりと、彼の生き方は行き当たりばったりだ。トップモデルを夢見て芸能事務所に所属するが、そのマネージャーが彼の体目的に迫ってくるのを拒絶してからはいい仕事を回してもらえないでいる。ある日ハンは高級車にのる美しい年上の女性に一目ぼれする。その女性スンヘは、夫が亡くなってから気分が沈んでいたが、ハンの若さに触れて気力を取り戻すのだった。スンヘの紹介でハンは大企業の専属モデルという大仕事をゲットする。しかしネックは所属事務所との専属契約だった。「契約書を盗み出して焼いちゃえば」というジェイの冗談じみた言葉を受けて、ハンは深夜事務所に忍び込む。




黒水仙 特別版 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ

ユーザレビュー:
韓国作品です50年間 ...
日本の撮影スタッフっ ...
秘められた過去の真実 ...

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
「若い男」も観ていただいてありがとうございます
中古品をやっと手に入れたので 画像が悪くて申し訳ありません
1994年に公開された映画には 「フォレストカンプ」「スピード」「ピアノレッスン」などがあるんですね
このころの韓国映画は まだまだ荒削りでストーリーも単純なんですけど 情熱というかパワーを感じます
「戦後」・・・うーん そうですね!
韓国分化院(前は麻布十番にあったんですが)でごくたまに日本語字幕の上映会を催されることがあります

tenchan
2010/02/15 20:54
こんばんは

「IRIS」盛り上がってますね!
『夏物語』のスエとの関係をを超えると!?
私も観るのを楽しみにします(個人的には『夏物語』の思い入れが強いので超えてほしくないなあと・・・・笑)
本題ですが『若い男』!相当良かったですよ!
山崎さんが言われるようにヌーヴェルヴァーグの作品のように!
作品の後半のジョンジェの刹那な表情に『勝手にしやがれ』のベルモンドを思い出さずにはいられなかったです。
ヌーヴェルヴァーグ以降、フランス映画が世界を驚かしたように、この時期を境にtenchanさんが言われる韓国映画の情熱やパワーが爆発したのではないでしょうか?(その時期は全くと言っていいほど韓国映画の存在を知りませんでしたが・・・・涙)
韓国映画のエポックメイキングとしてジョンジェがこの作品で山崎さんが言われる時代の刻印を受けていた・・・・納得です。
ただ、ジョンジェにはいい監督、いい作品にもっと出会ってほしい!
ゴダールやトリフォーに愛されたジャン=ピエール・レオのように!
tenchanさんが言っていたチョン・ドヨン(強烈だ!)
との『下女』!今から楽しみですね!
いい作品の匂いがすでにしてきます。

失礼しました。
ひらい
2010/02/21 21:57
「IRIS」で盛り上がってる中「若い男」で申し訳ありません^^;
「IRIS」のテレビ放映を見てから 山崎さんの評を読みたいと思っていますので 今はお預け状態です
イ・ソンジェの「ホリデー」を観た時に感じたことなんですが・・・ 
ソウルオリンピックを境に急激に近代化していった韓国 これが山崎さんのおっしゃる戦後なのかも知れないと思いました
「風の丘を越えて〜西便制」「グリーンフィッシュ」
「八月のクリスマス」などいい作品が90年代にはありますね
最近ハリウッド映画が私には詰まらく感じますが 韓国映画がこのようにならないように願っています
「下女」は1960年に公開された映画のリメークで 当時はずいぶんセンセーショナルな作品だったらしいです
tenchan
2010/02/22 21:49

コメントする help

ニックネーム
本 文
若い男 (1994) こんな日は映画を観よう/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる