アドリブ・ナイト (2006)

[505]一切サービスしないイ・ユンギ監督の揺ぎない姿勢に拍手…?


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退屈なんだけど、けっこう面白かったかも…(笑)。

「訪問者 - Host & Guest -」系統の作品。
インディーズ映画なのかな…?

ソウルの街中で誰かと待ち合わせている若い女の子がいる。
ラスト近くでようやくわかるんだけど、
ポギョン(ハン・ヒョジュ)って娘…。

そのポギョンに二人の若い男の子が声をかける。
「ね、ミョンウンじゃない…?」

ポギョンが人違いですというと、男の子たちが頼む。

ミョンウンという女の子が家出して戻らないんだけど、
その子の父親がいまガンで危篤なんだ。
ミョンウンのフリをして、その父親を看取ってくれないか、と…。

ポギョンはいったん断るが、
男の子二人がしつこく頼んでくるので断りきれず、
車に乗って同行する…。

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ソウルからかなり離れた山村の家へ着いたときは
もう夜である。

家には父親の弟夫婦、ミョンウンという子の叔父夫婦、
そしてかれらの子どもたちと思われる若い男の子、
女の子ら、その他(?)がいて、病床の父親を見守っている。

父親は昏睡状態…。

ポギョンを見て、みんなすぐにミョンウンではないことに気づく。
叔父の妻(?)だけはミョンウンだと言って抱きつくが…。

ポギョンをミョンウンとして父親に会わせたものかどうか、
協議が始まる。
結果は5対5で結論が出ない…。

そのうち話し合いは弟夫婦と叔父夫婦の、
遺産をめぐるちょっとした諍いになっていく…。

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ポギョンにはとりあえず、
家出したミョンウンの部屋が与えられる。

部屋から、
娘ミョンウンが帰ってくるのを願って、
すでに他界している母親や父親が買った洋服、靴下などが
出てくる…。

ポギョンは知ってか知らずか、その靴下に履きかえる。

ポギョンは、
男の子のひとりのチャン・キヨンに外へ呼び出される。

かれはミョンウンの幼馴染で、
どうやらミョンウンが好きだったようだ。
ミョンウンとの思い出をポツリポツリと聞かされる…。

家のほうから人々の泣き声が聞こえてくる。
父親が死んだのだ。

ポギョンは一緒に家の中へ戻る。

そのまま二階のミョンウンの部屋へ戻ろうとするが、
踵を返して、父親の枕元へ座り、そっと父親の手を取る…。

キヨンがポギョンを車に乗せ、ソウルへ送っていく。
途中、キヨンが尋ねる。
きのう、街中でひとと会う約束をしていたらしいけど、
相手は恋人だったのか、と。

ポギョンはポツリと答える。
知らない男…、援助交際の相手、と…。

キヨンはすこし驚く。
だったらほんとうのことを言う必要はないのにと思ったからだ。

ポギョンが言う。
それまでの自分をなにもかも壊したかったからだ、と…。

ごめん、正確じゃないかもよ。
巻き戻して調べんのちょっと面倒臭くて…(笑)。
でも、だいたいそんなことだよ…(笑)。

夜明け、ソウルに着くと、キヨンはひとり戻っていく。

ポギョンが携帯をだし、電話をかける。
ポギョンの母親が出て、こんなに朝早くどうしたのかと聞く。

なんでもないの、電話してみたかっただけ、誕生日おめでとう…、
と言う。

ありがとう。とうさんは日曜なので山に行ったわよ、
と母親の声がして電話が切れる…。

というお話…。

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あんまり説明の必要ないとおもうけど、
ポギョン、もうひとりのミョンウンだったわけだよね。

で、一夜のアドリブ・ナイトを経験して、
これじゃだめ、あたし生まれ変わらなきゃ、
おとうさん、おかあさん、大事にしなきゃって思った…?

あとで調べたら
原作は日本の作家、平安寿子の「アドリブ・ナイト」だった。
道理で妙に日本ぽいなあと思ったはずだぜ…(笑)。

なにが…?
わかるじゃないか…!(笑)

冒頭でちゃんと言っておいたけど、映画としては退屈?
だってドラマとしてはほんどなにも起こらないんだもん。
ひとの臨終に際しての話なはずなのに…!(笑)

いいかえると、
ライターも監督もカメラも客にたいするサービスなんて
一切しないんだよね。

この監督に比べたら
ホ・ジノやホン・サンスがいかに客にサービスしてるか、
ほんと、よ~くわかる…?(笑い)

とにかくただひたすら淡々と
目の前で起きていく出来事を映していくだけ…。

監督のそのポリシーは俳優の演技にも徹底しててさ。

すごいよお、下手だよお、ここに出てくる俳優さんたち(笑)。
な~んにも演技しないんだもん。
客に受けようなんて魂胆カケラもないんだもん(笑)。

そのへんのひとたちが生活してるように、
ただそこで生活してるだけ…。

だから主役のハン・ヒョジュを除くと、
そのへんにいるひとがそのまんま映画に出てる感じ…?

いやあ、ホントに凄いよね、感動するよね、
だってホントは演技なんだもん。
そういう演技やって、それが見事に成立してんだもん。

日本の俳優は逆立ちしたってこういう演技できないよ。
たけしの映画に出てくるひとたち、
これに近いことやろうとしてるんだけど、
ここまで見事にできてないもん…。

凄い! 私は立ち上がって拍手を贈りたい!

アレ? どうなってるのかって…?
あ、間違わないでね、ほんとに熱烈に誉めてんだからさ…(笑)。

退屈なんだけど面白い理由のひとつはそれなのね。
ここまで徹底してサービスしないでやってる俳優さんたちに
めちゃ感動するからなんだよね…。

でも、なんで監督はここまでサービスしないんだろ?
はじめに戻っちゃたったけどさ…(笑)。

サービスってのは言いかえると、「補償」だよね。

客は自分の心の補償を映画に期待する。
期待するから映画を観る…。

作る側だって同じだよね。
面白い映画を作ることで自分を補償したい。
お客さんへはむろんだけど、自分をも補償したいんだよね。

で、なにがしかそれが補償されるような作品ができると、
お客さんは面白かったって喜ぶし、
作る側も期待に応えられたことで自分が補償される…?

これは避けられないし、間違ってもないと思うんだよね。

ビョンホンがいいのは、
間違いなくその補償をしてくれるからなんだよね。
たとえ作品的にはつまんなくても、
ビョンホン個人は最低限の補償は絶対やってくれる…。

うん、偉い…!(笑)

じゃ、なんでこの監督さん、イ・ユンギ さん、
なにも補償しようとしてくれないの?
なんでこんなに一切サービスを拒否してんの…?

一言で言いうとさ、
主人公のポギョンがなにも補償されない現実を生きてるから…。

故郷を…、父や母を捨ててソウルにやってきた。
でもなにも変わらない。死ぬほど退屈…。
自分の望みを誰も補償してくれない、この映画みたいに…(笑)。

それで彼女は援助交際はじめたんだよね。
もうどうでもいいよ、なにもかも、自分を捨てたいって…。

そういう主人公の彼女を…、
なにも、一切補償されていないポギョンの世界を表現するには
どうすればいいのか…?

よし、観客を…、自分をも一切補償しない映画にしよう!

そう考えてこういう映画にしたの…、
じゃないかって…、わたしゃ…、思う…(笑)。

だってほかに理由考えられないもん…。

じゃ、ほんに補償はゼロか、絶対ゼロかっていうと、
じつはそうでもないの、あるの、用意してあんの。

ラスト、ポギョンが母親に電話するとこもそうなんだけどさ。
ソウルに帰る途中…、休憩したとこ…。
ここ、この映像…!

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お日様が出る直前の時刻で、
まあ、ほんの一瞬の映像なんだけど、
ほんと、きれいなんだよねえ…。

ポギョンのがきのうまでの自分にさよならして
再生への道を歩みはじめるかのような感じがして…?

なにが彼女を補償してくれたのか…?

ミョンウンの部屋にあった洋服と靴下だろね。
平凡と言えば平凡なんだろうけど、

帰ってこない娘ミョンウン。
でもそのミョンウンのために服と靴下を買い揃える、
母親と父親の娘にたいする想い…。

いいかえると、
ボギョンの心の中ではそこまで家族が死んでいなかった
ってことなんだろけどさ…。

で、この映画観て日本ぽいなあって感じたのは、
いま書いてきたようなことなんだよね。

もう誰もなにも補償されない国…。
補償できるひとのいない国…。

そういうものを感じたからなんだよね、この映画に。
ああ、これ、日本のことみたいじゃんって…。

いやいや、
最近の韓国映画の中ではかなりおすすめします。

あ、ただし、ものすごく退屈かもしんないけどね…(笑)。

●ひらいさん
ゲッ、イ・ユンギ監督、チ ョン・ドヨンとハ・ジョンウで
「素晴らしい一日」(平安寿子)という作品も撮ってるんですか!
観たい観たい観たいです…(笑)。
「チャーミング・ガール」、レンタル屋さんで探してるんですけど、
もう置いてないのかなあ…。
イ・ユンギは韓国のルイ・マルじゃないかというお説、
すぐ訂正いただきましたけど、
この作品を見る限り、ひらいさんがそうおっしゃりたいの、
よ~くわかります。
言われて、あ、そうだ、似てる!なんて私も思いましたから…(笑)。
ネオ・リアリスモ風であることは間違いないですね。
いずれにしろ、騒々しい映画が多い中で、
こういうふうに心静かに撮っている作品、私も大好きです(笑)。

ありがとヴざいました。

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■99分 韓国 ドラマ

監督: イ・ユンギ
原作: 平安寿子 『アドリブ・ナイト』(文春文庫刊『素晴らしい一日』所収)
脚本: イ・ユンギ
撮影: チェ・サンホ

出演
ハン・ヒョジュ
キム・ヨンミン
キム・ジュンギ
チェ・イルファ
キ・ジュボン

平安寿子の同名短編を韓国で映画化したドラマ。ひょんなことから見知らぬ危篤男性の娘役となり、その臨終に立ち会うハメになったヒロインの奇妙な一晩の出来事をリアルなタッチで綴る。主演はTV「春のワルツ」のハン・ヒョジュ。監督は「チャーミング・ガール」のイ・ユンギ。
平凡な20歳代初めの女性が一夜に体験する騒動により,自分の人生に小さな希望の糸口をつかんでいく話。
ソウルの週末の午後,平凡に見える20代初めの女性ポギョンは,道路で偶然にキヨンをはじめとする見知らぬ青年たちから頼みごとを受ける。
彼らの故郷の村のある大人が死にかけているのだが,ポギョンが,その人の娘ミョンウンとよく似ているとのこと。青年たちは,頑としてポギョンを捕まえて,臨終を見届けてくれと頼む。ポギョンは,彼らの切実な頼みに迷いながらも,同行することを決める。
ポギョンたちは,闇が敷かれた夕方になって,やっと村に到着する。会うやいなや,ポギョンに敵対的な感情を見せたミョンウンの初恋の男ジホ,そして,臨終を待つ家族と村の人々は,ポギョンをおいて色々な意見が入り乱れている。しかし,どさくさまぎれに娘の役割をすることになったポギョンは,結局,そこで一夜を送るようになる。

この記事へのコメント

ひらい
2010年07月28日 13:43
こんにちは

山崎さんにイ・ユンギ監督作品を取り上げて頂きたく長い間、待ち続けておりました!
といっても私が観たのはこの作品の他に第1作目の『チャーミングガール』(原題は“女、チョンヘ”)だけですが(涙)
この監督がチョン・ドヨンとハ・ジョンウで撮った『素晴らしい一日』(日本の作家で平安寿子の原作・・・『アドリブナイト』と一緒ですね)でさえも日本でのDVDの発売がない・・・・(カンヌ女優なのに・・・涙)
山崎さんがおっしゃるようにサービス補償一切ありません!ですから(笑)
2本しか観ていませんので大きい声では言えませんが韓国のルイ・マルと個人的には思っています。
どうでしょうか?山崎さん?
ひらい
2010年07月28日 15:57
またまた失礼します。

よく考えてみたら、ルイ・マルはサービス精神旺盛でしたね(笑)
ネオ・リアリスモ風ですかね(笑)

失礼しました。

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