「美しい彼女」(1997) あとがき_2

[507]シム・ウナはなぜ菩薩の涙を流すのか…?


ビョンホンの謎が解けたってどういうことよ。

その前に前回のつづきをちょっと。
なに?
この作品、呪われてるね。
いまなんて言った?
呪われてる…。
観ないビョンホン・ファンが多いから?
そういうことじゃなくて…、いや、それもあるかな(笑)。

コメントいただいてる方、みなさんおっしゃってるよね、
また観るのすごく勇気いるって。
これだけ感涙絞られたら勇気いるよ。
おれだって自信ないもん。
それって呪われてるからだと思わないか。
この作品が?
ことば悪いな。そうだな。呪術をかけられてるから…。
同じじゃん(笑)。

ワイドショーの取材でさ、
恐山へ行ってイタコさんに会ったの憶えてる。
憶えてるよ。あの30歳前後のイタコさんだろう。
彼女、すごかったね。やっぱり一種の天才。

50代くらいの女性のお客さんに、
死んだおじいちゃん呼んでほしいって言われたよね。
で、津軽弁で口入れして、おじいちゃんに憑依されて、
その女性のお客さんと喋りはじめたじゃない。
ほんとにおじいちゃんだったんだろうな。
そのひと、もう感涙にむせびながらイタコさんと…、
イタコさんに降霊したおじいちゃんと喋ってたよね。
おれも思わずもらい泣きしちゃったよ。

あの女性、
そう言っちゃなんだけど、呪術にかけられていたんだよね。
イタコさんに?
と言ってもいいかな。
そういう意味か、呪われてるって。

プレヤーにDVD入れて、再生スイッチ押して、
映像と主題歌が流れてくるとほとんど瞬時に
ソニョンとジュンホのあの涙の海に引きずりこまれちゃうじゃない。
それって呪術をかけられてしまうからなんだよ、この作品に。
一度観てしまったひとは…。
あの50代の女性がイタコさんに呪術をかけられたみたいに。

いいかえると、
この作品、映像・音楽が一緒になってそこに、
観てるひとの前に磁場を作り出してしまうんだよね。

わかる。
あのイタコさんとお客さん、
二畳くらいの小さなテントの中で対座してるんだけどさ。
イタコさんが口入れしはじめたとたんにそこが磁場になる?
変容してしまう。
おれの言葉で言えば「劇場」になってしまう。
そう。最高の劇場に。
で、お客さんが物語に…、
降霊してきたおじいちゃんに憑依されてしまう。
ということだよね。
この作品はそういう凄まじい呪術力を持っているのよ。
もう奇跡としか言いようがないような。

観る側からすると、
その磁場に引っぱり込まれるのがちょっと恐い。
日常生活あるわけだし(笑)。
入るにはそうとう覚悟しなくちゃいけない(笑)。
ということだよね。

おれ0歳のときからこの歳までひたすら映画観てきたけどさ。
なんだよ、0歳って。
物心ついたときにはもうおふくろに抱えられて映画観てたじゃん。
あ、おまえんちの庭、映画館だったもんな(笑)。
でも、これだけ呪術力をもった映画に会ったの、
ちょっと記憶にないのよ。
それだけでこれがどんなに比類なき作品かってことがわかる。
それ言っておきたくて。
言ったらすっきりした?(笑)

ビョンホンの謎ってなに?
シム・ウナの話からしようか。
引っぱるなあ(笑)。
そうじゃなくて、いまイタコさんの話をしたからだよ。
ああ。シム・ウナ、典型的な憑依型だもんね。
うん。ビョンホンと同じ。
デビュー作「サランヘヨ」にも十分その片鱗出てたよ。

女優は男優にくらべて圧倒的に憑依型が多い。
もともと巫女さん的資質が男にくらべて豊かだからさ。
でも、シム・ウナ、憑依の深度のケタがちょっと違うのよね、
ふつうの女優さんとは。
肩を並べられるのは、女優じゃないけど、ビョンホンくらい(笑)。
ひとり忘れてない?
だれ?
韓国の女優さんじゃないけど、ほら、おまえの好きな。
あ、木内みどりさん(笑)。

シム・ウナの凄さは表情を見てるだけでわかる。
そこもビョンホンと同じ。
刻一刻と、微妙に変化していく表情を見せてくれる。
まるでスローモーションでも見てるみたいだよね。

ひとはゆっくりゆっくり死んでいく…、と言ったけどさ。
そのゆっくりとした死の時間っていったいどんな時間なのか。
シム・ウナは期せずしてその時間を表現して見せてくれるのよ。
たとえば…。

画像


目の淵にひと粒の涙がスーっと浮かんできて、
一筋、ツーと、ゆっくりと頬を伝っていく。
そういう時間。蓮の花がゆっくりと開いていくみたいな…。

その演技力たるや、もう後にも先にもシム・ウナひとり。
そう言っても過言じゃないかもね。
ビョンホンいるじゃん。
だからビョンホンを除くと。

しかもこの顔、菩薩だろう。観音菩薩。
そうなのよ。おれが痺れた全盛時の山口百恵(笑)。

もうこの菩薩顔を見てるだけで救われるのよね。
心底思ったよ。
観音菩薩に救われるって、
もしかしたらこういうことなのかも知れないって(笑)。

一方でこれじゃない。

画像


どこが菩薩なのよ。どこがお嬢さんなのよ。
ただの長屋の姉ちゃんが泣き叫んでるだけじゃん(笑)。
すごいよねえ。
天上の人が一転、地上のただの人なんだもん(笑)。
だけど救われるのね、なりふり構わないシム・ウナに。
ものすごく人間を…、女を感じて…。
すげえって全身痺れちゃったよなあ。

空港の改札でジュンホを引きとめようとするシーンなんだけどさ。
あとで観てごらん。
彼女のジュンホを掴もうとする手の動き、位置。
ほんとすごいから。

画像


ここの演技もすごかった。
ジムの階段でジュンホに別れを告げるシーン。
写真ないけど、
倒れてるジュンホに「私の子どもたちを返して」って迫るシーン。
シム・ウナ、もうエゴ丸出し。
おい、おまえ、そういう女なのか。そうだと思ったぜ(笑)。

でも、おれ、こういうシム・ウナを一番抱きしめてやりたくなるのね。
「おまえな、そんなこと言うなよ」って泣きながら。
なんだかモーレツに愛しくなるの(笑)。
おれってヘン? ひとにも時々そう言われるんだけど(笑)。

画像


このドラマの中でいちばんホッとしたシーン。
離婚調停でさ、「私たちは愛し合ってます」って言って、
それからジュンホに返事を迫る。
で、ジュンホが「私も彼女を愛してます」って言うと、
下向いてちょっと口もとが緩んでしまう。
なんだよ、おまえ、ただのガキじゃん。幼稚園生じゃん(笑)。

このあと、ビョンホンが「おまえ素直に言えよ」って怒りだす。
こっちもガキ。あっちもガキ。ガキ同士の夫婦ゲンカ。
いやあ、もう最高におかしかったよ。
それから…。

そうやっていつまで彼女の写真を引っぱりだすつもり?
それ始めたら、このレビュー終わるの、3ケ月先だよ。
そうする?
しない。無理(笑)。

誰だったかな。
うちの主人はこのドラマを観てシム・ウナにKOされましたって
コメントされてたよね。
あれ、めちゃわかる。おれも完全にKOされちゃったもの。
でも女性ファンにちょっと驚かされた?
みなさん、こんなに熱烈にイカレてたのか、シム・ウナにって(笑)。
嬉しかった?
まあね(笑)。でも、なんでよ。

シム・ウナ、このドラマで、
女性が人生で経験する根源的なこころを
いっきに全部表現してくれてるからじゃないのかな。
そうやって女性たちの中にあるこころを…、
観るもののこころを補償してくれてる?

前夫と結婚して、前夫が交通事故で死んで、
そのあと双子を産んで育てて、ジュンホに出会って、
再婚して、愛しあってるんだけどいろんな局面に立たされて、
離婚寸前まで行って、死を契機に和解しあって、
そして最後はジュンホを看取る…。

たしかに女性が…、女性に限らないけど、
一生の間に経験しそうなことをソニョンは全部経験してるよな。
で、その時々の、刻々のこころをもう見事に表現してみせる。
だよな。
その俳優に感動したり、その作品に痺れたりするのは、
結局その俳優や作品が、
自分のこころの中にあるものを表現してくれてるからだもん。
補償してくれてるから。

この若さで。若干25歳で。そんな俳優いた?
やっぱり天才と言うしかないよなあ。
無意識(こころ)がケタ違いに大きくて深くないと、
とてもここまで演技できないって。

このドラマに限って言うと、ビョンホンよりいいかも。
明らかにいいじゃない。
ゲッ、否定しないのかよ(笑)。
でも、それはあくまで役がいいからよ。
ジュンホよりソニョンのほうが全然役得なんだもん。
ジュンホよりはるかに役の幅が大きいし、
複雑で微妙なこころの表現を要求されてる。
それをこれだけ完璧に演じられたら、
さすがのビョンホンもどうしようもないって。
諦めるしかない(笑)。

ただ忘れちゃいけないのは、相手がビョンホンだったからだよね。
ビョンホンが物語に憑依する。
で、彼女がもともと持ってる憑依能力にがぜん火がついた?(笑)
おまけにどんなに火がついても、
ビョンホンはそれを全身で受け止めてくれるしさ。
芝居めちゃくちゃ好きな人間だから。
わかる。人間ってそういうもんだよな。
そういうもんだって(笑)。

その二人の表情をまた、
歌いまくる天才イ・ジャンスが、
一瞬のチャンスも逃さずバチバチ写真に撮りまくっていくから、
シム・ソナの表情も、ビョンホンの表情も、もうどんどん
輝きはじめちゃったんだよね。

ほかの俳優さん、スタッフさんもひっくるめて、
こんなに息がぴったり合ったチームもちょっとめずらしい。
それも奇跡というしかない…。

しかしシム・ウナ、
なんでこんなに「美しい彼女」いいんだろう。
「イ・ジェスの乱」はまだ観てないけどもう断トツにいい。

「八月のクリスマス」もいいよね。
でもこれにくらべると全然弱い。
たぶん物語の幅が小さすぎるんだよ、彼女にとっては。
かもね。
これだけの広さと深さは、あの作品じゃたしかに出し切れないな。
そういう意味では
「カル」や「ボーン・トゥ・キル」のほうが
シム・ウナの資質をまだ発揮できてるかも。
「美術館の隣の動物園」になるとちょっとね。
「インタビュー」になるともう最悪(笑)。

これだけの力量をもった俳優からすると、全然物足りないよ。
ドラマなんてまったく書けてないんだもん。

あれ、彼女の最後の作品になったけど、
これだけ才能豊かな俳優からすると、
映画の仕事自体がもうつまんなくなってやめちゃうって(笑)。
その意味じゃビョンホンも恐い?
まさかやめるなんてことはないだろうけどさ。
わかんないよ、先のことは。
脅かすなって(笑)。

憑依されてるときの人間の状態、知ってる?
知らないよ。おれ、そういう才能ないもん。
いつもされてるじゃん。
いつもっていつ?
いい映画観てるときなんか。
この「美しい女」なんか憑依されっぱなし。
まあな。そのくらいの能力はおれにだって(笑)。

憑依されてるひと観たことあるのね、目の前で、なんども。
同じひと?
そう。女性で、男に憑かれたのよ、あのイタコさんみたいに。
で、あとで聞いたのよ、いま自分に起きたことわかってるのって。
そしたら?
全部わかってるんだって。でも自分ではどうにもならない?
意識は醒めてる?
醒めてるどころか、その男が喋った言葉もちゃんと覚えてるし、
姿形まで微細に憶えてる。
見えてるんだ。
こういう男だったって似顔絵まで描いてくれた。
すごいねえ。でもなんで急にそんな話するのよ。
憑依って言うと誤解されやすいからさ。
ああ、わかる。
憑依されて演技してるときってじつはとてつもなく冷静で、
頭脳明晰ってことだよな。
わかってるじゃん。
何年おまえに付き合って芝居やってると思うの(笑)。
てことは、シム・ウナもビョンホンも、
あれ、全部意識しながらやってるんだよって、
一言いっておきたくて。

そろそろビョンホンの謎いく?
その前にもう一言。
また?

ソニョンのおかあさんの話でてきたっけ。
あ、それ、おれもずっと気になってたんだよな、頭の隅っこで。
一度も出てこなかったような気がするんだけどさ。
見逃したのかなあ。
見逃したにしてもヘンだと思わないか?
あの家にはソニョンのおかあさんの影も形もないじゃない。
ましてこのドラマ、
ジュンホの「瞼の母」の話といってもいいほどなのよ。
ヘンだよな。
ヘンだろ、おれたち日本人からすると。
忘れたのかなあ、書くの。
(ポカリ)
痛い。
イ・ジャンスにそんなことあるか、天才なんだぞ。
でも長嶋(茂雄)さん、忘れもので有名だったよ。
ごめん、ポカリして。
(ポカリ)

孤児だったのかもよ。
なに?
ソニョンも。
おとうさんいるじゃない。ユ医院長。
だからユ医院長が拾って育てたのよ、わが子として。
ソニョンを?
拾ってという言葉はちょっとあれだけど…。

ソニョン、ジュンホに言うじゃない。
はじめて会ったときあなたはそんな寂しい目をしてた。
あたしはその目にあたしを見たの。
でもいまは寂しくない。あなたがいるからって…。

あれ、あたしも寂しかった、おかあさんをはやく亡くしたからとか、
そういう意味じゃなかったの?
ふつうはそう受けとるよね、おれたち日本人だから。
あ…。
なに?
じゃあ、おとうさんの言うとおりにやってきた。
それで窮屈だったっていうのも…。
うん。
孤児の自分を引き取って育ててもらった恩があるからみたいな…。
じゃないのかなあ。

だったらジュンホに言えばいいだろ、あたしも孤児だったのって。
言えないだろう、おとうさん(ユ医院長)のこと思ったら。
それにジュンホにもわかってたんじゃないの、そのこと。
言われなくても、あの家に入ったときから…。

だとすると、ソニョン、めちゃ複雑。
だから言ったじゃん、複雑な役なんだって。

でもイ・ジャンス、どうしてそのこと書かないのよ。隠すのよ。
隠してんじゃないのよ。
書かなくても観てるひとにはすぐわかるから書かないだけ。
ジュンホと同じように? 韓国のひとには?
じゃないかと思うのよ。

ちょっと待って。
そうすると、もしかしたらあのユ医院長も?
だってソニョンとジュンホが結婚式あげたとき、
親戚縁者だれも来てる気配なかったじゃん。
と思うのよ。
だからソニョンにしてもユ医院長にしても、
あの記念写真を撮ることには格別の想いがあった。
ちょっとおれらには想像が及ばないほどの…。
ユ医院長の娘ソニョンにたいする思いも同じ。

チョさんも明らかに孤児だよな。
葬儀のときウニしかいないんだもん。身寄り現れないもん。
そのウニもじつは幼くして孤児になった。
チャン会長も。
ドンスも身寄りがない。孤児。
ウニと結婚したとき、ジュンホ・ソニョン家族以外誰も来てないし。
あのこころ優しいサンミンさんだって考えると怪しい。
いい歳こいてなんでユ家族同然に住みついてるのよ(笑)。

ミニョクには母親いるよね、病気で死んじゃったけど。
それだって本人がそう言ってるだけでどこまで本当か。
そこまでは疑う必要はないかも知れないけどさ。
パクおばさんも。
身寄りがないことだけは確かだって気するよね。

どっちにしろ
おもな登場人物はほとんど孤児ってことだな。

そう思うと、
ソニョンがジュンホに言った、
あの「わたしの子どもを返して」って言葉、
あまりにも痛々しいなあって気してこない?
あのときおれは「返してはないだろう、ソニョン」って思ったけどさ。
でも、あとで反省したのよ。
ソニョンが孤児だとしたら、一瞬、
「わたしの子ども返して」っていう気持ちもわからないではないなあって。
ま、言ったあと、ソニョンも
自分の言葉に愕然としたんだと思うけどね。

画像


このシーン観て「風の丘を越えて」だと思ったの、
そういう意味もあったの?

バンソリをやってる放浪の旅芸人ユボンは、
孤児のソンファを養女にしてバンソリを仕込む。伝える。
義父ユボンが死ぬと、
こんどはソンファが孤児の女の子を養女にしてバンソリを伝える。
その厳しさをイム・グォンテクは、
二河白道を渡るというイメージで描いたんだとおもうけどさ。

ジュンホの手をとって二河白道を渡ろうとするソニョンも
じつは孤児だった。
という意味も含めて「風の丘を越えて」を思い出したの?
おまえ、わかってなかったのね。
言ってくれないとわからないよ、いくらおれでも。

でも、なんでよ、いまごろになってソニョンは孤児だったなんて。
話には道筋ってのがあるだろう。
それにこのドラマめちゃくちゃ複雑で奥深いから、
その道筋つけるのにおれも苦労してるのよ。

ここに出てくるひとたちが孤児、
あるいは孤児同然のひとたちだってのはわかったよな。
わかった。
それでシム・ウナは菩薩の涙を流してるのよ。
は?
もちろんイ・ジャンスが要求してるわけだけどさ。
菩薩の涙を?
そう。
ソニョンに流せって?
ソニョンにじゃなくて、菩薩に。
…?
シム・ウナはソニョンの役をやってるだけじゃないのよ。
菩薩の役もやらされてるのよ。
で、イ・ジャンスは菩薩に、菩薩をやってるシム・ウナに、
はい、つぎは菩薩の涙を流してって要求してるの(笑)。
またそれに応えてみせるから、
うわあ、シム・ウナ、凄い!
って、観てるほうはただもう呆然となっちゃうわけね。

わかるように言って。
だから言ったじゃん。
このドラマは孤児たちのドラマなのよ。
その孤児たちに向かって菩薩が涙を流してんのよ。
なんでわからんのだあ!
怒るなよ。
ごめん、おまえがあんまりバカなもんだから、つい(笑)。

韓国映画を観はじめたころ、ちょっと困惑したよな。
たいていの作品に孤児が登場するし、
孤児を描いた作品も多くてさ。
で、観てるうちに、
韓国の社会はそうとう深く「孤児問題」を抱えてるんだなあと思った。
でもさ、このドラマを観て、それ間違いだって気づいたのよ。
正確にはたぶんこう言うべきなのよ。
どう?
誤解を招きやすい言い方になっちゃうかもしれないけどさ。
韓国の社会は「孤児社会」なんだって。
孤児の問題を「社会問題」として抱えてるんじゃなくて、
社会そのものが孤児社会なんだって。
そうか。

日本人は、韓国映画を観るとどうしても、
あ、また孤児だ、孤児が出てきたって観てしまう。思ってしまうよね。
でも、韓国のひとたちにとっては、そんなことは当たり前ってのかな。
孤児社会で生きてるわけだからさ。
だからイチイチ、
ソニョンは孤児なんですよって説明される必要もない?
そうか。

そういうふうにさ、韓国映画やドラマを観てるとき、
韓国のひとたちと日本人とでは、
どうしてもそこで意識のズレが生じてしまうってのかな。
たとえ日本人が理屈ではわかっててもさ。

で、このドラマが凄いのは、
表面的には、孤児ジュンホのボクサー物語を、
そのジュンホとソニョンとのラブ・ロマンスを描いてるんだけど、
根っこでは、韓国の
「孤児社会」そのものを描いていてみせてるからなのよ。
菩薩の涙を流しながら…。

あ…。
そう思わない? そう見えない?
それで最後、シム・ウナにあの涙を…。

画像


絶対にそうだって。
だってなんど観てもこの涙、菩薩の涙にしか見えないもん。
ほかのシーンでもなんどか流させてるけどさ。
でないと、ソニョンの涙にしては、
人間の涙にしてはあまりにも美しすぎるもん。

画像


たいしてジュンホがボクシングで流す
あの真っ赤な血の顔、ひどいよね。
あれはさ、
孤児ジュンホが「火の河」に落ちて焼かれてる顔なのよ。
生きていく中で傷つけられている顔。
流した血。流してる血。
その顔にたいして彼岸の菩薩が涙を流す。

それをソニョンが代わりにやってるわけよ。
イ・ジャンスがソニョンを菩薩にして流させてるのよ。
そうか。
彼岸の菩薩がソニョンの中に入っていって流してる、
と言ってもいいな。
そう考えるとわかりやすいよね。

そうか。そういうことか。
そう考えると、ソニョンの涙がどうしてあんなに美しいのか。
観ててどうしてソニョンの涙の美しさに感涙してしまうのか、
よくわかると思うのよ。

解けた。
解けたわ、このドラマの謎が!
ビョンホンの謎も解けた!

でも、もう字数制限が近いわ(笑)。
またあしたかよ(笑)。

火の河
二河とは「火の河」と「水の河」のことである。

-----------------------------------------------------

お知らせ
私事ですが、いま「東京新聞・都内版」に、
「わが街わが友」というエッセイを書いています。
(9回連載・最終面)
お読みいただけると幸いです。

また申し訳ありませんが、
コメントへの返信はこのあとがきが終わったあとに
書かせてください。
いまはちょっと余裕がないものですから。

ついでですが、「あとがき1」は字数制限に達していて、
返信を書くスペースがありません。
この「2」か「3」に書かせていただきます。

-----------------------------------------------------

●月見草さん
いやあ、すばらしい作品でした。
最終話なんて、これまで観た韓国映画・ドラマの中でも
最高の部類に入るんじゃないでしょうか。
とにかく凄すぎていまだにボーッとしています。
ビョンホンはやっぱり男と女の物語が最高ですよね。
え、チョン・ドヨンとの共演作ってなんでしたっけ?

●チュモニさん
なにをそんなにドキドキ…、「美しい彼女」私に略奪されたから?(笑)
イ・ジャンス、ビョンホン、シム・ウナに捧げるつもりで書きました。
ほんとです(笑)。

●rokugatunotikoさん
みなさんと一緒に感動できて私も幸せです。
いい作品をつくるにはビョンホンひとりがいくら頑張っても
どうしようもないんですよね。
特にディレクター、相手の女優さんがすばらしくないと(笑)。
その意味では奇跡的な作品だとおもいます。
いやあ、私もなかなか現実に戻れません(笑)。

●tomotyanさん
ディレクター、ビョンホン、シム・ウナがあまりにも素晴らしいので、
私もつい一緒になって台本書いてしまいました(笑)。
カメラマンもビョンホンとシム・ウナに
もうぞっこんだったんじゃないですかね。
でないとこんな素晴らしい写真(映像)は撮れないとおもいます。
はい、OST、ブログを読んでいらっしゃるという方が
すぐに贈ってくだすって、ここのところいつも見ています。
曲も映像もほんといいですねえ。
「順々に展開していく中で、だんだん分かっていく楽しさを
味わっています」
それは私もまったく同じなんですが(笑)。

●Liblaさん
私はいつも冷静すぎて面白くないと言われるタイプなんですが…。

●チュモニさん
いつもフォローをいただいてほんとにありがとうございます。
しかしジュンホと一緒にどこを浮遊して…(笑)。
魔法の小枝なんてとんでもないです。
この作品がたぶん私に乗り移って、
勝手に書かせているんじゃないでしょうか(笑)。

●shidarezakuraさん
お帰りなさいませ。ホッとしましたあ(笑)。
100回くらいお呼びしてたのですが…(笑)。
昔々なんですが、私の敬愛する例の吉本隆明さんが
「アジテーター」には2つのタイプがあると言っていました。
ひとつは、声高に、強く叫んで、ひとを引っ張っていくタイプ。
もうひとつは、「私も情けない、どうしようもない男の人がモーレツに
愛おしくなります!」と、ひとに思わせて引っ張っていくタイプ(笑)。
わたしら、もう完璧にあのひとにアジラレちゃってますよねえ。
それがまた嬉しかったりするのですが…(笑)。
東京新聞、わざわざありがとうございます。
東京に住んでいたころの「街」についてのエッセイなので、
shidarezakuraさんに関係ある話かどうかわからないのですが…。

●rikoさん
吹替えそんなにひどかったんですか…。
でもいまはDVDで観れますので、もうすこし観られてもいいような
気がしますね。
やはりボクシング・シーン、観ていられないので、
ごらんになられない方が多いんじゃないかと思うのですが。
ファンは当然、ドラマの内容を知っているでしょうし…。
観ても、何人かの方がコメントなさっていましたが、
そのシーンは早送りして観てしまうとか…(笑)。
実際、私もそのシーンは観てて痛ましすぎると感じたくらいで…。
ビョンホンがジウン監督と組むのは、
自分の資質をよくわかってくれてるし、
「あとがき_補」で書いたような自分の心の悩みを
よくわかってくれているからだと私は思っているのですが…。

●itigotyanさん
「鑑賞は、いろいろな捕らえ方があっていいのではと思います」
まったくそうです。
ですから、このブログで書いていることは、
あくまで私の個人的な見方、考え方を書いているのです。
その見方、考え方を押し付ける気も毛頭ありません。
そのことは大原則にしていただかないとまずいと思います。
私があえて「山崎哲」という名前を出しているのもそのためです。
社会的にはいちおう「もの書き」で通っていますので、
自分の責任を負って書いてます、ということを言っておきたいからです。
もうひとつ。
私はこれから上映される映画のガイドをやっているわけではないし、
やろうとも思っていません。
映画の作品論をやろうと思ってやっています。
意図的に軽いタッチではやっていますが…。
作品論ですから、すでに読者が観たものという前提になっています。
でないと、その作品について作品論的には書けないからです。
その上で、この映画面白いと思いますので、
観てないかたがいらしたらごらんになってみてはいかがですか、
と言っているだけです。
ですから、まだその映画を観ていない方、
内容を知らずにその映画をごらんになりたい方は、
私のブログはお読みにならないほうがいいと思いますよ…(笑)。
読む場合でも、観てから読むことにするとか…。
そこまで私は責任を持つことはできませんので…。
ずっとお読みいただいている方は、いま言ってることは
すでにご了解いただけてるものと思っていますが…。

●shidarezakuraさん
東京新聞お読みいただいたそうで本当にありがとうございます。
高田馬場、びっくりしました。
Sとは早稲田~馬場も遊び場だったんですよ(笑)。
映画館あるし、20代のころは稽古場がなくて早稲田の教室を
無断使用してたりしたこともありまして…(笑)。
学生時代も、広島だったんですが、上京しては、
リュックを背中に古本屋さん訪ねて早稲田通りをいったい
なんど歩いたことでしょう…(笑)。
目白のあの通りも…(笑)。いまは車で都内に通ってることもあり、
しょっちゅう走ってるとろです。
神楽坂、shidarezakuraさんも…。
しかも私同様、必ず坂道のほうを振り返るなんて…(笑)。
あれはいったい何なんでしょうねえ(笑)。
しかし東京って面白いですね。
shidarezakuraさんともどこかですれ違いにお会いしてたかも
しれないですね…。

●ishiiさん
ご訪問いただいてありがとうございます。
「わが街わが友」は私の古い友人が担当してる欄なんですよ(笑)。
それもあって東京新聞は縁が深く、
「本音のコラム」10年くらい書いてたこともあるんです。
ishiiさんが東京新聞にお代えになるすこし前のお話ですが…。
友人に会ったら必ず伝えておきますね(笑)。
このブログ、もともと私の好きな映画のことを書こうと思って
はじめたのですが、私もいまやすっかり韓国映画に嵌りまして…。
カン・ジファン、自分の映画第一作は「映画は映画」だと…?
ファンも「訪問者」はインディーズ映画だからと…?
そうですか。困りましたねえ。そういうことを言ってるようでは
今後あまり期待できないかもしれませんねえ(笑)。
映画としてはもう断然「訪問者」のほうが上だと思います…。

ありがとうございました。

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村


ブログん家


■韓国ドラマ 1997年

演出: イ・ジャンス
脚本: キム・ヒョソン クォン・ユンギョン
音楽: チェ・ギョンシク

出演
イ・ビョンホン ・・・ファン・ジュンホ
シム・ウナ・・・ ・・ユ・ソニョン
キム・ミンサン・・・キム・ジュン
ユ・ヒョンジ・・・・・キム・ウォン
ソン・スンホン・・・イ・ミニョク
オ・ジミョン ・・・・・ユ医院長
キム・スミ ・・・・・・パクおばさん
ソン・オクスク・・・・チャン・スンジャ
ソン・ジェホ・・・・・チョ

この記事へのコメント

shidarezakura
2010年08月17日 22:05
遠くで呼ばれたような・・・・・・?
やっとPC前に来ることが出来ました。

私も情けない、どうしようもない男の人がモーレツに愛おしくなります!でも同性にはチト厳しい・・・?(笑)

今日東京新聞に問い合わせました。山崎さんの書かれた「わが街わが友」もう掲載が11日から始まっていたのですね?水、木、金に掲載されるようなので9回終わるのが予定どうりだと27日ということですが、月末にもう一度確認してからバックナンバーを送ってもらうようにするつもりです。
これで少しでもゼニになるといいけど・・・(笑)
shidarezakura
2010年09月03日 22:36
やっと東京新聞を手にすることが出来ました。懐かしく、あったか~い気持ちにさせていただきながら拝読しました。
なぜか学生時代を思い出したりして…。
目白駅から寮までの立派なお屋敷が立ち並ぶ住宅街を眺めながら、明るい未来を想像しながら歩いていました(笑)。

山崎さんは坂道のほかに川もお好きなんですね?
OL時代は高田馬場の神田川沿いのマンションに住んでいたんですよ。中野駅付近をSさんと飲み歩いている山崎さんをあの頃の高田馬場駅付近に置き換えてみると…これがなんとしっくりくるんです…(笑)私の中で。
神楽坂は私も好きな街です。あの坂道いいですよね!私もいつもふりかえるんですよ。

反省すべきは東京の街をあまり歩いてない事です。
山崎さんは何事にも愛情を持ってご覧になっているんだと改めて感じ入りました。街の捕らえ方も勉強になりました。限られた中ではごく一部しかお伝え出来ませんが、折に触れてお話しさせていただけたらと思います。
そうそう…山崎さんはどんな字を書かれるのか興味がありましたが、拝見できたのも嬉しかったです。
ありがとうございました。
ishii
2010年09月04日 08:12
8年ほど前から朝日をやめて東京新聞を購読しており、
“わが街わが友”は大好きで必ず読んでいます。
そこで韓国映画にはまっていてブログを書いていらっしゃることを知り、わたしも韓国映画大好きでかなりの数観ているのでとても面白く拝見しています。
カン・ジファンの“訪問者”は観たくてたまらず、“映画は映画だ”の舞台挨拶のとき、ジファンのファンクラブに入っているらしい人を見つけ頼んで衛星放送で放映されたものを送ってもらい観ました。いまはTSUTAYAにあるんですね。
とても良い映画でしたが、本人は公式には映画第1作目は“映画は映画だ”と言っているんです。ファンの方に聞いたらあれはインディーズで、商業映画はとしてはね、とのことでした。

この記事へのトラックバック