終電車 (1980)

[513]世紀の傑作。これを観ずして私のカトリーヌ・ドヌーヴを語るな
★★★★★★

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若いころ…、
思えばあったよなあ、私にも若いころが…(笑)。

カトリーヌ・ドヌーヴ と言えば、「シェルブールの雨傘」。
「シェルブールの雨傘」と言えば、カトリーヌ・ドヌーヴだった。

ドヌーヴが好きなのか、「シェルブール…」が好きなのか。
本人の私にもまったくわからなかったが、
それで「シェルブールの雨傘」という題名で台本を書き、
上演したことまであった。

もちろん中味は
映画とはなんの関係もなかったのだが…(笑)。

誤解しないでね。これ、紛れもない「事実」なんだから…(笑)。

でもこの映画を観たとたん、
カトリーヌ・ドヌーヴと言えば、「終電車」。
「終電車」と言えば、カトリーヌ・ドヌーヴになってしまった。

終電に飛び乗るたびに、ドヌーヴに会いに行こう…!
とまではさすがにならなかったが…。
だって遠すぎるよね、フランスなんだもん…(笑)。

10年ぶりくらいに観たのだが、やっぱりすごい。
全身痺れまくり…。

名手トリュフォー が
彼女のために書いたというだけあって、
ドヌーヴのドヌーヴらしさがもう全編に溢れ返っている…。

トリュフォーは
私はどうも観るたびに一言いいたくなるところがあるのだが、
さすがにこの作品だけは非の打ち所が一点もない。
トリュフォー万歳!と絶叫したくなる…。

と言いたいんだけど、やっぱり一点だけある(笑)。
どうも私はうそをつけないなあ。
うそをつくとおへそあたりが痒くなっちゃて…(笑)。

ね、トリュフォーさん、あれはないんじゃないの。
あのラストは…?

ベルナール(ジェラール・ドパルデュー )は最後、
舞台を降板して、マリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)に別れを告げて
パルチザンに身を投じる…。

終戦後、マリオンは、
負傷して病院に収容されているベルナールを訪ねる。
愛を成就させたいと思いで…。

それがこのシーン…。

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向こうのビルにひとが見える。どうみたって本物の人間…。
だからマリオン、ほんとに会いに行ったんだと思うよね。

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わかりにくいかもしれないけど、向こうのひと、まだ本物。
でも、ホラ…、

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つぎの瞬間、向こうのひと、絵になってる。
舞台の書割になっちゃってる…。

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そう。この場面、じつは舞台だったんだよね。
解放後に、モンマルトル劇場で行われた…。

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うまいよねえ、トリュフォー。絶妙。天才…!
って言いたいんだけどさ、
でもやっぱりこれはないんじゃない、トリュフォーさん。

だって私はもう最初からハラハラドキドキして観てたのよ?
なんど観てもハラハラドキドキするのよ?
そのハラハラドキドキしてた私はどこへ行けばいいの?
突然、こんなハッピーな終わりが来て…。

いや、いいよ。映画だからそりゃいいと思うんだけどさ。
この三人の関係どうなったわけ?
同じ屋根の下、同じ家で暮らすわけ、このあと…?
三人、ひとつベッドで寝るわけ…?

いくらフランス、家族が壊れてるからって、トリュフォーさん…。
映画観たひと、みんなそう思うとおもうけど…。

この映画、セザール賞総なめしたけど、
アカデミー賞は獲れなかったじゃない、外国賞。
審査員もそのへん気になったんじゃないの?
私はアカデミー賞の全部門、あげていいと思ってんだけどさ…(笑)。

え? なに、トリュフォーさん…?
しょうがないだろ、
これはカトリーヌ・ドヌーヴ のために書いたんだから…?
ドヌーヴ、そういう女優なんだから…?
婚歴みればわかるだろ…?

そ、そうかあ。そういうことだったのか…!
そこまでドヌーヴに捧げるなんて、
トリュフォーさん、あ、あなたはなんて恐ろしいひとなんだろ…!

ということだそうです。
私のつけた文句は、あの、ひとつナシということで…(笑)。

この映画に私がどうしようもなく惹かれるのは、
舞台がナチ占領下のパリで、しかもモンマルトル劇場で、
ドヌーヴが女優という役どころだからだとおもう。

ずっと芝居やってるので、
ああ、こういうふうに生きたい、
こういうふうに芝居やってたいって…、なんて言うの?
私の願いをそれこそ描いてみせてくれてるから…?

なんどでも言いたいけど、ほんと痺れちゃうんだよね。

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これ、新作「消えた女」の稽古をしてるところ…。

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ベルナールは怪奇劇場で人気を博して、
で、劇場主のマリオンと契約を交わし、マリオンの相手になる…。
ユダヤ人差別を徹底的に憎んでるやつなので、
私は最初からこいつの大ファン。
顔いいしねえ、いかにも怪奇俳優って感じで…(笑)。

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国外逃亡した思われてるユダヤ人演出家、
女優マリオンの夫でもあるルカは、じつは劇場の地下に身を潜め、
国外逃亡の機会を狙いながら、こうやって「消えた女」の
演出もしてる…。

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みんなが帰ったあと、
そっと劇場に戻って、地下の夫の世話をするマリオン…。

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稽古の途中に突然、停電…。戦時下だもんね。

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稽古の途中のころ、みんなでカフェ・バーに…。
トリュフォーは、戦時下、
ラジオなどから流れてくるシャンソンが唯一の救いだったと言って、
映画の中でけっこうシャンソンを使ってるの…。
それがもう抜群…。
こういうシーンだけで私はもう涙なわけ…(笑)。

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ベルナールはその席に女性を連れてくる。
このときマリオンの表情に、瞬間、嫉妬みたいなのが表れる。
はじめて観たとき、あ、もしかしてマリオン…、って、
私はここで初めて思ったの憶えてる。

ベルナールは、ナチの将校連中がいるってんで、
座らずにこの店すぐに出ちゃうんだけどね…。

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しかし、まあ、カトリーヌ・ドヌーヴ のきれいなこと…!

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舞台の初日…。

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中央に座って観てるのは、親独派の演劇評論家ダクシア。
こいつ、この劇場は汚いユダヤの血が流れてるなんて、
酷評し、劇場をつぶそうとしてんだよね。
見るからにド頭にくる野郎…。

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観客はブラボーと拍手喝采…!
嬉しいよねえ。いつも泣いちゃうんだよ、私、ここ…(笑)。
マリオンも大成功に感激して、
緞帳が降りるとベルナールの唇にキスして、
ベルナールは呆然としてさ、
はじめてマリオンの気持ちに気づくんだよねえ…(泣)。

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終演後のある日、カフェに行くと、酷評した評論家ダクシアがいる。
ベルナール、かれを見て怒る。

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引きずってマリオンの前に連れて行き、彼女に謝れと怒鳴りつける。

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雨降る外に連れ出し、殴る、蹴る…。

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そのあとマリオンがベルナールに猛然と噛みつく。
公演を中止させられたらどうするのよ、
劇場を潰されたら…!

どっちの気持ちもわかるから私はもう泣くしかない…(泣)。

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劇場がナチに取り上げられそうになって、
ファンで頼みのドイツ軍将校(?)に会いに行く。
でもその将校は自殺していた…!

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本番中、ゲシュタポが地下を見せろと現われる。
待たせて、地下室を元に戻して、危機一髪、難を逃れる。

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このとき、ルカを片隅に匿ったベルナール。
ゲシュタポが立ち去ったあと、ルカは言う。

妻は君に夢中だ。
君は彼女を愛せるか。

すごよねえ、ルカ。
かれは公演中、ずっと地下で舞台の声に耳を澄ませてるの。
それだけでわかるのよ、マリオンの気持ちが。
さすが演出家…、というよりさ、
夫婦であることより演出家、女優としての自分たちを選ぼうとする。
そこに感動するというか、なんというか…(泣)。

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ベルナールはマリオンに舞台の降板を申し出る。
レジスタンスに身を捧げるため…。

半分はルカにあんなこと言われて、
ここにいる自信がなくなったのかもね…。

そして劇場を去る日…、
マリオンがさよならと言って去ろうとすると、
ベルナールはドアを閉め、いきなり彼女にキスする…。

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マリオンも遠まわしに自分の心を伝え…。

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この瞬間、ずっと表情を殺してきたマリオンの目に涙が…。
カトリーヌ・ドヌーヴの凄さをもういやと思うほど
思い知らされるシーン。

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そして連合軍がノルマンディーに上陸。
市内でもパルチザンが銃をもって攻勢に出はじめる…。

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で、私が文句を言ったラストシーンへ…(笑)。

世阿弥は、
演技の真髄は「秘するが花」と一言で言ってみせたが、
カトリーヌ・ドヌーヴ はここで
みごとにそれをやってみせてるんだよね。
けしてきれいなだけじゃないのよ…?(笑)

ベルナールは、
君には二人の女がいる、
夫を愛していない人妻と…、と言ってマリオンに遮られたけど、

ベルナール、
君は闘志溢れるパルチザンでかっこいいけどさ、
人間、そんな単純なものじゃないの。
マリオンの心はもっともっと複雑なの。
複雑でないと、こういう顔はできないの。
君はまだ若すぎる…(笑)。

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え…?
あ、この顔は…、きれいだよなあって、ドヌーヴ…(笑)。

この作品についてはもうなにも言うことはありません。

つけ加えておくことがあるとすれば、
このドラマ、実在の人物たちをモデルにしながら
組み立てられているってことくらいかな。
マリオンだけはフィクションの人物らしいけど…。

観てない方があったら、ぜひ観てくださいな。
と、ただそれだけです、私はもう…。

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■131分 フランス ドラマ/ロマンス

監督: フランソワ・トリュフォー
製作: フランソワ・トリュフォー
脚本: フランソワ・トリュフォー シュザンヌ・シフマン
撮影: ネストール・アルメンドロス
音楽: ジョルジュ・ドルリュー

出演
カトリーヌ・ドヌーヴ
ジェラール・ドパルデュー
ジャン・ポワレ
ハインツ・ベネント
ポーレット・デュボスト
アンドレア・フェレオル
サビーヌ・オードパン
リシャール・ボーランジェ

ヌーヴェル・ヴァーグを代表するトリュフォーが極めて伝統的なフランス映画のムードの中に、その円熟の映画話術を開花させた、なめらかなビロードの手触りのする作品である。
ドイツ占領下のパリ。女優マリオンは、南米に逃亡したユダヤ人で、支配人兼演出家の夫の代わりにモンマルトル劇場を切り盛りしていることになってはいたが、その実、夫ルカは劇場の地下に潜み、夜の妻の訪問だけを楽しみに国外脱出の機会を待つ身だった。
現在の演出家ジャン=ルーは独軍にも顔がきき、御用評論家とも親しい。相手役ベルナールはどうもレジスタンスと通じているらしい。そして新作『消えた女』は好評を持って迎えられるが、評論家ダクシアは芝居をユダヤ的と非難した。それを怒ったベルナールは偶然居合わせた彼を殴りつける。劇場存続に賭けるマリオンは愛を感じ始めていたベルナールを遠ざけねばならない。
そんな折、いよいよレジスタンスの参加を決意したベルナールが劇場を去ろうとすると、抜き打ちのゲシュタポの捜査。マリオンはベルナールを地下に向かわせ夫を救う。初対面の彼にルカは、妻は君に夢中なのだ、と告げる。その夜、結ばれるベルナールとマリオン……。
劇場は解放の日まで執念の上演を続け、ルカは800日ぶりに陽の光を浴びる……。
感情を抑えたドヌーヴの能面的美貌がこのサスペンスフルな作品を完全に支配している。女優を演じるという難行を完璧にやってのけたのはさすが。占領下にあっても逞しく生活を謳歌するパリの市井の人々が影の主役(彼らが殺到する早い時間の地下鉄最終便が題名となっている)で、その丹念なディテール描写が映画全体に生きてくる具合も絶妙である。

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