イザベラ (2006)__後

[519]中国返還前のマカオを舞台に描かれたこの大傑作を見逃すな!
★★★★★★

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ヤンとの帰り道…。

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センは見知らぬ男二人に捕まり、頬を二つ三つ張られた。
「逃げるな。マンに手を出すと俺たちが承知しない。
観念しろ。もうすぐ返還だ」と脅された…。

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アパートに戻ると、ヤンが男たちのことを聞いた。
センははじめて自分のことを喋った。

フェイというヤクザがいて、
おれの上司と一緒にタバコの密輸をしていた。
おれの仕事は連絡係と集金だった。
先月、積荷を押収され、フェイの手下のマンが捕まった。

この件にはポルトガル人も関わってる。
警察は返還を前に汚職を失くそうとしている。

マンは司法取引でおれの罪を証言する。
おれ一人の罪だと…。

そう。センはそれで停職処分の身で、
その最中にヤンに出会ったわけ…。

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この映画、じつはこういう字幕が時々出てくるの。
警官、あるいは元警官たちの汚職事件のニュース…。

ポルトガルは近くマカオを中国側に返還する。
で、その返還前に、ポルトガル警察は汚職を根絶しようとする。
ヤン刑事も、その捜査に引っかかったんだよね。

それがこの物語の大枠になってるわけ…。

マンの司法取引…?

汚職にはポルトガル人も関わってる。
ポルトガル警察としては、
司法側としては、そのポルトガル人を表に出したくない。
センひとりの罪にしてくれたほうがいいわけだよね…。

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ヤンがどうするのかと尋ねると、センは答えた。
逃走して裁判を免れるか、ヤンの口を塞ぐしかない…。

ヤンは言った、「一緒に逃げよう」と…。

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ヤンには学校に男友だちがいる。
ヤンが好きで、いつもなにかとヤンを助けてきた子である。
ヤンは彼にすこし話を曲げながら、
自分がカレシと国外へ逃亡することを伝え、
買い物に付き合わせた…。

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センは知らない男から電話を受け、イザベラのことを聞かれた。
彼女は死んだと答えた…。

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ヤンは、逃亡する際の買い物をしてきたといって、センに見せた。
だがセンは、「誰がおまえを連れて行くと言った」と跳ねつけた。

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ヤンは電話をしてきた男に会った。
と、男に意外な話を聞かされた。

「エラ(イザベラのこと)は、
あんたと別れてすぐおれと付き合った。
彼女は妊娠したが、腹が大きくなるまでおれに言わなかった。
聞くと、こんどは堕ろさない、一人で育てると言った」…。

センが「ヤンを引き取る気は?」と聞くと、男は言った。
「それができれば16年前に引き取ってる」と。
そうして続けた…。

「彼女は、名前もエラに変えてあんたを忘れようとしたが、
忘れられなかった。
エラの心の中では、おれの子は…、
ヤンは中絶したあんたの子だった」…。

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センが帰ってくると、
ヤンははじめて犬「イザベラ」をとうに見つけたことを話した。
でもあんたには言えなかった。
部屋を出されるのではないかと思って、と。

そうして言った。
「もうわたしを捨てないで」と…。
センはヤンを抱きしめた。

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翌日、センは
ひとり寺へ行き、色紙を折り、火にくべ、言った。
「受け取れ。受け取ってくれ。これも。
受け取ってくれ、イザベラ」…!

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それから池へ行き、銃を投げ捨てた。
センは決心したのだ…。

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ヤンは男友だちと逃亡用の買い物をつづけ、
タイ語の会話を練習した。

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件の男友だちはセンを捉まえ頼んだ。
彼女は、チンピラとタイへ逃亡すると言ってる。
あなたが彼女と別れたのは知ってるけど、助けてください。
彼女はチンピラに騙されているのだ、と…。

ヤン、いつも話作っちゃうんだよね(笑)。
センはヤンの中で刑事からチンピラに格下げされた、
ということでもあるんだけど…(笑)。

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アパートへ帰るとセンは言った。

きょう弁護士と話した。
罪を認めれば情状酌量で4年だろうと言われた。
服役態度がよければ2年で出所できる。
時計を質入れした。逃亡資金を足せば3年分の家賃が払える。

おれは刑事だ。逃げるのはチンピラだ…。

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17歳のとき彼女(イザベラ)が妊娠した。
おれはカツアゲした金で子どもを堕ろさせた。
おれは刑事になり、高級時計ほしさに
麻薬常習者からヘロポンを掠めとり、売り捌いた。

ここ(マカオ)の暮らしは厳しい。
金がなきゃ地獄だ。だから悪事をやった。
でも全部間違ってた。もうやめだ。

約束してくれ。出所したら一緒に禁煙しよう…。
(イザベラが肺がんで死んだからだ)

ヤンは黙って頷いた…。

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翌朝、センはヒゲを剃り、
ヤンの運転するバイクに乗り、出頭した。
ヤンは言った、「外で待ってるから」と…。
センは司法裁判所の階段をひとり上がった…。

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(A)このシーン、じつは冒頭でもある。どういうことか観て考えよう(笑)。
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(B)ヤン、イザベラを取り返したの? どういうことか観て考えよう(笑)。
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ヤンは男友だちに語った…。

私の彼は刑務所に入ってるの。
なぜかわかる? 私のためよ。
彼と約束したの、出所してきたら一緒に住むって。
犬を飼い、料理をし、たまにはギャンブルも…。
ステキでしょ。
禁煙したこと言った? 彼が嫌うの、女は吸うなって。
横暴よね。でも、いいの。彼がイヤがるなら、やめるわ…。

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センは最後に、イザベラに子を中絶させたことを告白した。
とすると、出所後、一緒に住もうというのは、
恋人同士としてということなのか…?

そうではない。
そうだとしたら、
イザベラに「おれの心を受け取ってくれ」というのは、
あまりにも常軌を逸しているからだ…。

ヤンはどうなのだろう?
センを「彼」と呼び、自分のことを「女」と語ってみせるが、
そのまま受け取っていいのか…?

そうではない。
そうだとしたら、あまりにもセンの心に疎すぎるからだ。
彼女がそんな鈍感な心の持ち主でないことは、
女の子から
犬イザベラを取り返せなかったことひとつ取ってもわかる…。

センは、
ヤンは自分の子ではないが、
死んだイザベラの心を受け取って、
ヤンを自分の子として育てる、自分はヤンの父親になる、
と決意したのだ…。

ヤンもまたその心を受け取った。
一方で、母がセンを愛した気持ちがとてもよくわかった。
で、まるで自分の恋人であるかのように、
自分の父親センのことを語ってみせたのだ。

母のイザベラだったら、
自分の男友だちにこう話したに違いないと、
ヤンは、自分を死んだ母に擬して、
自分の男友だちに語ってみせたのだ…。

そうすることでヤンはまた
センにたいする自分の心を表現した…。

いまさら言うことでもないけどさ、
ひとのひとにたいする心は一筋縄ではいかないよね。
ものすごく複雑だよね。

この作家は、その人間の心の複雑さを、
こうした複雑な構造をとることで表現してみせてるわけ…。

それだけじゃないのよ。

ヤンは
自分とセンのことをロマンスとして語ってみせる。
うっとりと語ってみせる…。
でも、そうした彼女の語りくちのウラには、裏面には、
自分たちの置かれている、あるいは置かれてきた状況の悲惨さが、
マカオという街と暮らしの悲惨さが貼りついてるんだよね。

その裏面を彼女は転倒して語ってるのよ。
自分の心を転倒させて語る…。

いやあ、この作家、
そのあたりがもうめちゃくちゃ上手いんだよねえ。

それだけじゃないの。
うん、それだけじゃないの。まだあるのよお…(笑)。

書き始めると止まらなくなっちゃうから、
一言ですませるけどね。

この作家、映像そのものも素晴らしいんだけどさ、
その構成の仕方、時間の交錯のさせ方がまた抜群なのよ。
現在、過去、大過去をじつに巧みに交錯させてるのよ。
上の(A)(B)はそれで入れてるんだけどね…(笑)。

わたしも書くときはいつもそれやってるけどさ、
脱帽したいくらい上手いのよお…!
ぼんやり見てると「…?」ってなっちゃうから
観るときは気をつけようね…(笑)。

音楽もいいのよお。サントラ出てるのかなあ。欲しいなあ…。
すでに言ったけど、
舞台はマカオの裏の顔…、中国的な顔。
で、音楽は表の顔…、ポルトガル的というか西洋風というか…。

ポルトガルの伝統音楽を
モダンにして使ってるんじゃないかと思うんだけどさ、
そうやって異なるものをぶつけることで、
「マカオ」という複雑な都市を描いてみせてるんだよね。
そこもほんと上手い…!

で、俳優…、いいよお~…(笑)。
チャップマン・トー 、大好きなんだけど、
だいたいいつも脇で、しかもコメディータッチが多いよね。

でも、これ主役。初主役? しかもシリアス!(笑) 
なんだけど、いいのよお。
「え~っ」て驚くほど痺れちゃうのよねえ…!

イザベラ・リョンにも痺れまくり。
わたし、彼女、ほかの作品で観たことあったのかなあ。
わかんないんだけどさ、
ちょっとハスッパで、しかも哀切で、
いっぺんにファンになっちゃったわ…。

あ、この映画ね、
チャップマン・トーと監督のパン・ホーチョンが映画会社作って、
それで撮ったらしいんだよね。

だからそんなにお金かけて創ってるわけじゃないんだけど、
それでもこんなにすばらしい映画になってるのよ。
ハリウッドなんか全然目じゃないんだって…(笑)。

わたしゃ二人の心意気にも大拍手…!

ビョンホン・ファンの方がここ読むかどうか知らないけどさ、
もし読んだらぜひビョンホンに教えてあげてくださいな。
こんな映画の撮り方もあるんじゃないかって…(笑)。

ごらんになってない方、
いますぐレンタル屋さんに飛んでいって、
すぐ飛んで帰って、
そしてすぐ観たほうがもう絶対いいです…!


■109分 香港 ドラマ
監督: パン・ホーチョン
脚本: パン・ホーチョン デレク・ツァン ワン・チーマン パン・シューワイ
出演
チャップマン・トー
イザベラ・リョン
アンソニー・ウォン
デレク・ツァン
J・J・ジャー

マカオ返還の直前、警察官のセンは人生最悪の1日を過ごしていた。
贈収賄容疑で停職処分を受けた彼は、慰めを求めてバーをさまよい、
ヤンと出会う。
彼の年齢のおよそ半分の若さである彼女を口説き、ベットへと誘う。
しかしそこで彼を待ち受けていたのは、彼女は実の娘であるという
衝撃の事実だった。
彼女が同居を主張することで、センの独身人生は終わりをつげる。
彼らはマカオの街を徘徊し、行方不明となったヤンの子犬を捜し歩く。
しかし二人がこの関係に慣れていく中一方で、センは裁判に直面し、
ヤンの身元も怪しくなっていく・・・。


●すみれさん
では、ビョンホンにお伝えいただけるということで…?(笑)

●ovniさん
ごらんいただいてありがとうございました(笑)。
そうなんです。チャップマン・トー 、だいたいいつも
「インファナル・アフェア」の時みたいなのが多いので、
これ観てちょっとびっくりしたんですよね。
アンソニー・ウォン、出てくるたびになにか食ってるので
笑っちゃいますよねえ…。
「あなた好みの女になりたい」というのは?
私は単純に、父と娘の話として観てたんですが…。

●すみれさん
ご鑑賞ありがとうございました(笑)。
え~と、物語は男と女の話ではなくて、これはあくまで
父と子(娘)の話だと思うのですが…。
自分のほんとうの子ではない、
でも出所してきたら自分のほんとうの子として育てよう、
というセンの心に私は打たれたのですが…。
また、ビョンホンにセンの役をやってほしいということではなくて、
そんなにお金をかけずに、誰か好きな監督と、
こういう小さな、いい映画を撮るとりかたもあるんじゃないか、
ということが私の言いたかったことです。
韓国の映画界にはそういう環境も整っているような気がします…。

ありがとうございました。

 
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この記事へのコメント

すみれ
2010年08月30日 16:54
  はい 了解です(笑)
 後ほどに感想を。。。。
ovni
2010年09月12日 18:13
ついに、見ました!
レンタル屋さんに行っても貸し出し中で(1本しかない)3回目でようやく借りられました。
そんなこんなで、思い入れもたっぷりだったのですが、
よかったですねえー。
チャップマン・トーは、「インファナル・アフェア」で見てました。
わたしはひそかなるアンソニー・ウォンのファンなので、とてもうれしかったです!
あえてひと言いわせてもらえば、「男のための映画」って感じかなあ。「あなた好みの女になりたあい」っていう女がやっぱり男は好きなんだなあって改めて思いましたわ。
すみれ
2010年10月21日 02:59
 こんばんは~

 やっとこ今見終わりました~(今更ですが)
色々考えて見たらもったいないから一度さら
~っと見てみようと。。
  で こういう男性を好きになるのは
 いい女だけだってわかりました~
 わたしにはとてもとても縁がない~
 映像の良さ音楽の良さは 私にもわかりましたよ~
 
ビョンホンさんがセンのような役を演じるというより
 いつかこういう映画を作れるような機会があれば
 いいでしょうね!

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