愛の傷 (2005)

[532]島と本土の関係を女と男のロマンスに置き換えて描いた佳作
★★★★☆☆

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7,882…人。

なんの数字か?
封切時のソウルでの観客動員数…、この作品の…。
寂しいよねえ。大赤字だよねえ。

でも数字ほどひどい作品じゃないよ。
いろいろ問題はあるけど…、山ほどあるけど(泣)、
私は好きだよ。応援しなくちゃ…(笑)。

若いエリート弁護士キム・インソが
あるデザイン学校で講演するために、
ソウルからバスに乗って江陵に向かう。

イソンとお見合いをして一目惚れした
エリート・キャリアウーマンのチェ・ソンジュが、
かれを追っかけてきてバスに同乗する。

そしてイソンがバスの中で、
ソンジェに請われて自分の「愛の傷」の話をはじめる。

これがこの物語の大枠の話法(第1の語り手)…。

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2年前…、
イソンは特許業務でコジェ島のテウ造船所へ行く。
そして造船所の現場で働いているファヨンを好きになるが、
エリート故に女との付き合い方を知らなくて(笑)、
ファヨンをいろいろと傷つけてしまう…。

ある日、ファヨンが泥酔し、
イソンはタクシーに乗せ、島外れの海岸沿いの
彼女の家へ送っていく。

その家で彼女は、
祖母と、病気の母親チョンスンと、三人で暮らしているのだが、
海岸と、彼女の家を囲んでいる「ショロの森」の美しさに
圧倒されてしまう。

祖母は、
孫娘ファヨンがいつもあなたの話をしていると歓待する。
イソンが「ショロの森」について尋ねると、
「長い話になるけど」といって話を始める。

この祖母の語りが第2の話法(第2の語り手)なんだよね…。

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私は18歳のときこの家に嫁に来た。
夫に強引に連れてこられた。
家には、私と2歳しか違わない夫の娘チョンスンがいた。
彼女は私の娘であり、たったひとりの友だちでもあった。
私は彼女がいたから生きてこれた。

夫は乱暴者で、ここでイワシの漁をしていた。
娘にクツひとつ買ってやれないほど貧乏だった。

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ある年のある日、
夫はクツを買ってやるのだと、チョンスンを連れてでかけた。
以来、チョンスンは帰ってこなかった。
どこへやったのかと聞いても殴られるだけ…。

数年後(?)、
町でイワシを売ってると、
あるひとがチョンスンからの手紙を渡してくれたので、
居所を聞き、クツを買い、舟に乗って会いに行った。

チョンスンは祈祷師の家に売られて、
コブのある息子の嫁になっていた。
会って、抱き合い、話をすると、
子どもを産めば里帰りさせてくれるということだった…。

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その日を境に、
イソンとファヨンの関係はすすみはじめる。

で、ある日、イソンの両親が造船所を訪れる。
ヘリをチャーターしてやってくるほどの富豪…。

イソンは働いているファヨンを強引に車にさらい、
結婚相手として彼女を紹介するのだが、
両親は端から相手にしない。
そしてファヨンもまたイソンを…。

その胸をファヨンは、母チョンスンと
「シュロの森」の話をすることで語る(第3の語り手)。

私は母と祖母が死んだら、あの「シュロの森」を切り倒す。
母や祖母のように、
「空約束」を守って一生を過ごしたくない、と…。

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数年後、私の母チョンスンはひとりで家へ帰ってきた。
子どもが生まれなかったので放り出されたのだ。
父は怒り、暴力を振るった。

その父も、ある年、漁にでかけて
嵐に会い、海に沈んで死んでしまった。
祖母と母チョンスンの、二人だけの苦しい生活がはじまった…。

ある嵐の夜、海岸に漁船が座礁した。
祖母と母は、船長と乗組員数人の世話をした。
やがて母と船長は愛し合うようになった。

船が出航する日が来た。
船長は母に南の島からもってきた「シュロ」を渡し、
漁をやめて必ずこの島に戻ってくる、待っていてくれと言った。

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母と祖母はシュロを植えて待った。
私が生まれた。
数年後、船長から一通の手紙が届いた。
あの日船長が撮った一枚の写真が入っていて、
写真のウラには「すまない」とだけ書かれていた…。

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話し終えると、ファヨンは言う。
口のうまいあの男は残された二人の人生を台なしにした、
私はシュロの森をなくしてみせる、と…。

インソは言う。
だめだよ、
シュロの森は君には恨みの対象だろうが、
お母さんたちにとっては希望の象徴だ…。

ファヨンは言う。
「私は大丈夫よ。だから行って(ソウルに帰って)。
私は母たちと暮らしていく」…。

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そして話は現在に…、インソの語りに戻る。

インソは言う。
「僕もあの船長と同じように彼女を残してソウルに戻った」…。
同行してる女チェ・ソンジュが言う。
「船長は彼女を捨てたのよ。
あなたも島に戻らないほうがいいわ」…。
イソンは返す。
「ソンジュさんはぼくの母に似ている」と…。

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同じころファヨンは、
インソに語った夢を実現しようと、
デザイン学校(大学)に通っていた。

先に言っておくと、
インソは彼女の通ってるその大学に講演に来たのね。
で、インソもその講演(講義)を教室で聞いてるの…。

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インソは大学の教室で講義をはじめる。

講義をはじめる前にすこし個人的な話をしたいと断り、
2年前のコジュ島の話に触れたあと、こう語る…。

 バカみたいですが、彼女のことを片時も忘れられませんでした。
 でも私が彼女のもとへ戻るには時間が必要でした。
 シュロの苗木を残して逃げた男とは、違う男になるためです…。

 彼女への愛を確信したとき、私は島を訪れました。
 でも彼女はいなかった。
 母が他界した後、祖母と別の町へ移っていました。

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教室の隅で講義を聴いていたソンジュは
ひとりの女子学生に気づく。
もちろんインソは彼女に語っているのだ…。

 彼女は別の町へ移って、
 シュロという悲しみの象徴を消し去ったのです。
 講義の前に彼女に伝えたいことがあります。
 シュロの森は消え、愛に姿を変えた、と…。

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ソンジュは教室を出て行く。
イソンが彼女を…、ファヨンを選んだことを知って…。

 それでは講義をはじめます…。

ファヨンに伝え終わると、イソンはそう言って講義をはじめる…。

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この物語は、
三代にわたる女と男との関わりを描いている。

祖母と祖父の物語。
母チョンスンと、祈祷師の息子、船長との物語。
ファヨンとイソンの物語である。

主役は女である…。

夫に暴力を受け続けた祖母。
子を産めないとコブ男(嫁ぎ先)に追放され、
子を産んだら産んだで船長に捨てられた母チョンスン。
そして二人のような人生は嫌だと思っているファヨン。

その意味では、
イソンは自分がソウルへ帰ったという言い方をしてるが、
正確には、ファヨンが母の二の舞を恐れて、
イソンと別れたのだとみたほうがいい…。

そしてこの三人の女たちの歴史は、
じつはそのままコジェという「島」の歴史と重ねられている。
誤解を恐れずにいえば、
女=島、男=韓国本土という構図になっているのだ。

「女-男」を「島-本土」に重ねるために、
祖母、孫娘の「語り」が用いられているのだ。
「島」の長い歴史を内側から語るために…。

一方の主役であるイソン(男)は、
その意味でいうと、本土の側からの、外側からの視線である。
外側から島を語る…。

ラスト、イソンは、
ファヨンのもとへ帰るには「時間」が必要だったと言っているが、
その時間とは言ってみれば、
島を外側からではなく、
内側から眺められるようになる時間が必要だった、
ということである。

外側から眺めているだけでは、
ファヨンの心に自分の心を重ねることができないからだ…。

こうした物語の構造を私はとても高く評価する。

ただ映画としてどうなのかというと、
残念ながらあまりうまく行っていない。
その理由はひとえに、
語りが主になって、映像が従になってしまっているからだ。

観てないひとのためにわかりやすく言うと、
映像が語りのための説明みたいになってしまっているのだ。

これはまずい…(笑)。
映画はあくまで映像が主である。映像が生命線なのだ。
言葉で語るのではなく、
映像で語っていかないと、映画としてはだめなのだ…。

具体的に言うと、シーンが圧倒的に少ないし、
カットがこれまた圧倒的に少なすぎるのだ。
予算の問題を別にすればたぶん、
物語(語り)の面白さに身を預けてしまってるのだとおもう…。

ほんとうに惜しい…!

ただ問題点をクリアして出来上がったとしても、
この映画がはたして韓国内で興行的に成功したかどうか、
疑問もある。

だってこの映画「夏物語」路線なんだよね。
笑いもないし、もっとウェットだし…。
そういう映画、韓国のひとたちにはあまり
受けないのかもしれないという気がして…。

日本でDVD発売したのはタキ・コーポレーション…?
韓国でお客さんがこんなに入らなかった映画を
よくぞDVD化してくれたと感謝したいよね…。

興味のある方はぜひごらんくださいな。
うまくはいってないけど、
それでもけっこういい映画になっていますよ…。


●たまねぎさん
そうですか、千円でDVDを…、得しましたねえ(笑)。
おっしゃる通り、余韻がすごく残りますよね。
キム・ミンジョン、いいですよねえ。
特にラストシーンなんか最高です。
私はほかには「淫乱書生」しか観てないんですけど、
こっちのほうが全然よかったです…。

ありがとうございました。

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ブログん家


■108分 韓国 ロマンス/ドラマ

監督: ユ・サンウク
脚本: ユ・サンウク

出演
キム・ユミ
キム・ミンジョン
チョ・ウンスク
イ・アヒョン
イ・ギョンヨン

エキゾチックな風景のコジェ(巨済)島を背景に,シュロ(棕櫚)の木にからまった三代にわたる女性の切ないメッセージとハン(恨)を描いたロマンスドラマ。
若くて能力ある弁護士キム・インソは,大学の特別講義のためカンヌン(江陵)行バスに乗り,彼を追いかけてきた女性チェ・ソンジュを発見する。彼女は,昨夜,彼と見合いをした堂々とした魅力的なキャリアウーマン。しかし,インソは,積極的なソンジュに対して淡々としている。むしろ冬の風景のように憂鬱な顔で自分の秘めた愛の物語を聞かせてあげる。
2年前,特許権業務でコジェ(巨済)島のテウ(大宇)造船所にやってきたインソ。彼は,到着した日,フット・バレーボールをして労働者たちと親交を深めている間に,造船所の現場職労働者,トランスポ-タ-のファヨンを知るようになる。インソは,野生の中に隠された彼女の汚れない純粋さと,その魅力に強烈な欲望を感じて,いたずらのように彼女に接近する。1年だけつきあおうというインソの冗談のような提案が,ファヨンの心を傷つけて,会食席でファヨンは感情をもてあまして酔っ払ってしまう。
酒に酔ったファヨンを送ることになったインソは,ファヨンをおんぶして彼女の家がある丘をかろうじて登る。エキゾチックなシュロの木が山を覆っている海辺の寂しい人里離れた家。そこに孤独に暮らしている三人の女性,ファヨンと祖母,そして中風にかかったファヨンの母。祖母は,インソを歓迎してくれて,インソは,丘をいっぱいに埋めたシュロの木の森について尋ねる。
戻らない愛を待ちながら限りない懐かしさから森になってしまったシュロ。シュロの木の森にからまった三人の女性の話に耳を傾けたインソは,ファヨンに向かった愛で胸がいっぱいになり,話が聞こえなくなる。しかし,母や祖母のようにつまらない愛を待って暮らさない,シュロの木の森を焼いてしまおうという憎悪に満ちたファヨンは,インソを受け入れず,結局インソは,ファヨンを島に残して逃げるようにソウルへ向かう。インソは,ファヨンを忘れることができるだろうか。シュロの木の森は,彼らの真の愛を成就してくれるだろうか。

この記事へのコメント

たまねぎ
2010年09月08日 20:28
@@またまたびっくりです^^:
だってこのDVD千円位で買えたので持ってます。何で買ったのかというと、キム・ミンジョンのファンでもありましたから^^;
そんな単純な頭ですので、こちらの解説もへ~っ@@へ~っ@@と、そうなんだーという感じで読ませてもらいました^^;幻想的で余韻の残る映画でしたが、また今度観てみたくなりました。山崎さんにこの映画も取り上げてもらって嬉しかったです!
余談ですが、9月24日チャ・スンウォンの初ファンミが東京であるのですが、楽しみにしている私です^^
ドラマですが「ボディーガード」もとても面白いです!

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