ボーイズ・ドント・クライ (1999)

[537]性同一性障害者ブランドンにたいする暴力はどうしてこんなに過剰になるのか?
★★★★☆☆

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ユースケ君のお薦め作品…。

観終わってしばらくは、
……………………………………
…………………………………
……………………………
って感じだった。

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ラスト、
性同一性障害者ブランドンを、
ジョンとトムという男が輪姦し、
逃げようとすると追いかけて殺しちゃうんだけどさ。

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そのシーンがもうあまりにも残酷で、
さすがの私もことば失っちゃったんだよね。

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リアルにやるのがアメリカ俳優の演技スタイルだから、
そういう意味でいうと、ヒラリー・スワンク(ブランドン役)も
ピーター・サースガード(ジョン役)もほんとによくやってると思うけど、

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作品に関して言うと、
ここまでやる必要があるのかなあっていうのが
私の正直な気持ち…。
こういう気持ちになるのは珍しいんだけどさ。

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この映画は実話だってことが…、
実際に起きた事件を描いてるんだってことが、
あらかじめわかってれば少しは違ったのかもしれない。
観るほうは、最初からそれなりに覚悟して、
心の準備をして観れるから…。

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でも、そうじゃない。
劇映画のフリをして、とてつもなく残虐なシーンを観せて、
そしてエンドロールではじめて実話だってことがわかる…。

そういうふうに作ってあるから、
衝撃度がより強くなってくるんだよね…。

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でも、なんでそんなことするのか、
監督の真意が私にはまったくわからない。理解できない。

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たとえショッキングな事件でなくても、
実際にあった事件を描く場合には、
最初にその断り書きを入れるのが、事件の当事者たちや、
観てくれるひとたちにたいする礼儀だと思うんだけどね。

ちなみに私も
実際に起きた事件を素材に舞台を作っているけど、
「……事件」というふうに
必ず断り書きを入れて書き、創るようにしてる…。

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もうすこし言っておくと、
この事件はいかにもアメリカ的な事件だと思うけど、
それと同じようにあらかじめ断り書きを入れない作りかたも
いかにもアメリカ的だなあと思っちゃうんだよね。

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この事件が暴力的だとすれば、
この映画の作り方にもどこか同じような暴力の匂いを感じる、
と言ってもいいのかな…?
いい映画だと思う一方でさ…。

わかるかなあ…、わかってほしいんだけどなあ…(笑)。

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ところで
この事件の大きな問題はとりあえず二つあるんだとおもう。
ひとつは性同一性障害に関して…。

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ブランドンは身体的には女性なんだけど、
自分は男だと思ってる。
こういう場合、周囲は…、
私たちはただそれを素直に認めればいいんだよね。
ブランドンは男だって…。

だってさ、
そのひとが女なのか男なのか、
そういうことは私たちが…、周囲が決めることじゃないでしょう。
本人が決めることなわけでしょう。
ドゥルーズ・ガタリ風に言えば家族が決定すること…。

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身体的に男性だからと言って心的にも男性だとは限らない。
同じように身体的に女性だからといって心的にも女性とは限らない。
それが人間なんだもん。

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人間の性はもともと「n個」なんだよね。
n個あって…、いろんな性のかたちがあって、
男なのか女なのか、あるいはそのほかの性なのかは、
家族が…、あるいは本人が決めることなわけよ。

そのことに他人は…、
周囲は…、社会は口を挟む権利なんてなにもないし、
また挟んじゃいけないんだよね。

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なのにジョンとトムは、周囲のひとたちは、
ブランドンの性にたいして口を差し挟んじゃってる。
差別し、排除しようとしてる…。

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それは言いかえると、
性の問題に社会が関与しているってことなんだけど、
そうなると、こうした悲劇的な事件はもう避けようがないとおもうよ。
いつかどこかで必ず起こる?
間違いなく、くり返し起こる…?

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もうひとつの大きな問題は暴力…。
ジョンとトムはどうしてこうも
ブランドンにたいして過剰な暴力を働くのかってこと…。

二人がどんな経歴の持ち主なのか、
詳細がわからないのでなんとも言えないんだけど、
理屈で言えば、

二人がブランドンに加えた暴力と同等の暴力を
これまでに受けてきたからなんだよね。
少なくとも二人は自分の中でそう受け止めている…?

だから自分たちが受けた暴力にノシをつけて、
ほんらいはまったく関係のないブランドンにたいして
暴力を振るい返している…?

親鸞じゃないけど、
「機縁」がなければ人間はこうした暴力は振るわないんだよね。
その意味では暴力ってのは「対抗暴力」…。

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じゃあ、ジョンとトムは
どうしてこんなにもはげしい暴力を受けたのか?
あるいは受けたと思っているのか…?
そこにアメリカって国の問題が絡んでくるんだと思うのよね。

これも理屈でしか言えないんだけどさ。
ジョンとトムの暴力-被暴力が凄まじくなるのは、
ここに描かれているような「差別」が
幾重にも幾重にも入り組んでしまってるからだとおもう。

人種差別、民族差別、国家差別、州差別、地域差別、
職業差別、性差別、階級・階層差別みたいなものが
もうそれこそ徹底的に
細分化し、深く、広く、網の目のように張り巡らされている…?

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私はアメリカ人じゃないし、
アメリカに住んだこともないから実感的にはわからないんだけど、
アメリカ映画をずっと観てるので想像はできる…?

ブランドンを見てて不思議に思うひともいるかもしれない。
どうしてこの町を出て行かないんだろう、
「ギルバート・グレイプ」の主人公たちみたいにって…。

でも私は出て行けないんだと思うの。
ブランドンもよその街へ行きたいって言ってるんだけど、
いったん差別の網の目(暴力の網の目)に引っかかってしまうと、
もう全然身動きできなくなってしまう…?

それがアメリカって国なんだと思うのね。
それくらい差別の網の目が張り巡らされている…?
彼我の違いを認めて受け入れようとしない…?
「グラン・トリノ」の時にもすこし問題にしたんだけどさ。

アメリカでの暴力-被暴力が凄まじいものになってしまうのは、
そのことを抜きには理解できないんじゃないかと思うの…。

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話を最初に戻すとさ、
この映画に私が目を背けてしまうのは、
ここに描かれている暴力にたいして免疫がないからなんだよね。
まあ、日本人の大半は私と同じなんじゃないかと思うんだけど…。

じゃ、アメリカ人はどうなのかって言うと、
けっこう免疫できてんじゃないかと思うのよ。
日本人ほどショックは受けない…?
こういう暴力シーンはそう珍しいわけでもないから…?

どうしてもその疑いが拭いきれないんだよなあ。

でも繰り返すけどさ、
たとえそうであったにしても、
実話を扱う場合はあらかじめ絶対断り書きを入れるべきだって
思うよ…。


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■119分 アメリカ ドラマ

監督: キンバリー・ピアース
製作: ジェフリー・シャープ
ジョン・ハート エバ・コロドナー クリスティーン・ヴァッション
共同製作: モートン・スウィンスキー
製作総指揮: パメラ・コフラー
ジョナサン・セリング キャロライン・カプラン ジョン・スロス
脚本: キンバリー・ピアース アンディ・ビーネン
撮影: ジム・デノールト
音楽: ネイサン・ラーソン
音楽スーパーヴァ

出演
ヒラリー・スワンク ブランドン・ティーナ
クロエ・セヴィニー ラナ
ピーター・サースガード ジョン
ブレンダン・セクストン三世
アリソン・フォランド
アリシア・ゴランソン
マット・マクグラス
ロブ・キャンベル
ジャネッタ・アーネット

1993年、ネブラスカ州リンカーン。20歳になるブランドンは少年の格好をし、町に出かける用意をしていた。従兄でゲイのロニーは“フォールズ・シティの連中はオカマを殺す”と警告するが……。ブランドンはフォールズ・シティへと向い、地元のバーでラナと出会い恋に落ちる。しかし、ある事件がもとでブランドンの“秘密”が明るみになったとき悲劇が始まった……。実際に起こった事件を基に映画化。ヒラリー・スワンクが性同一性障害の主人公を演じてアカデミー主演女優賞を受賞。

●vicさん
コメントありがとうございました。
おっしゃるように、アメリカの複雑さを描いた
ショッキングな映画でしたね。
あとになって、いまのハリウッド映画、けっこう暢気なものが
多いので、こういうのも結構かなと思いました…(笑)。
ブログ、拝見しました。
ピアノやってらっしゃるんですね。
私は全然だめですが、
ピアン聞くのはこれがもう大好きなんです…!(笑)

ありがとうございました。


この記事へのコメント

2011年01月10日 09:58
衝撃的な映画でしたね。
おっしゃる通り、暴力の蔓延の度合いが日本とは全然違うアメリカの作品です。
こういう、ゲイや性同一性障害などのセクシュアル・マイノリティに対する偏見、拒否反応が、地方ではかなり強いようです。

セクシュアル・マイノリティだけではなくて、黒人やアジア人、非キリスト教人に対する嫌悪感が高じて殺人事件になることもあるようです。

アメリカの都市部では日本以上に進んでいて、ゲイの人達も堂々と暮らしているみたいですが...

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    Excerpt: 主演のヒラリー・スワンクが アカデミー賞主演女優賞を受賞した作品。 コレを見たら、文句なしでしょう。 すごい演技力。 彼女無しでは成功しなかった映画です。 Weblog: Playing the Piano is ME. racked: 2011-01-10 10:06