風の中の牝鶏 (1948)

[565]台本も演技も演出も、無残であることで小津は戦中・戦後を刻印した?
★★★☆☆☆

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私の小津の戦後第2作…。
1作目は、1947年発表の「長屋紳士録」。

小津はシンガポールへ従軍してるの。
その時、こう思ったとのちに語ってるのよ。
「これからは自分の撮りたい映画を撮ろう」って…。

それがいわば小津の戦争体験…。

でも、この2作を観ると、
え? うそ、これがあんたのほんとに撮りたかった映画…?
なんて思わず怒鳴りつけたくなるような映画だよね(笑)。

実際、野田稿梧も観たあとボロクソに貶したんだけどさ。
よくぞ言った、野田、偉い…(笑)。

で、野田に言われてさすがに応えたのか
小津さんもあとで反省するのよ。

「自分の将来にプラスになる失敗作ならまだいいが、
それにしては『風の中の牝鶏』は、
あまりいい失敗作ではなかった」って…。

素直で可愛いよねえ(笑)。

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むろん当時の批評家たちもボロクソ。
戦争に対する反省、懺悔が中途半端だ、歴史的認識が甘い、
だって…。

笑っちゃうよねえ。

てめえらは自己批判したのかよ、
戦中はあんなに聖戦だって煽ったくせに。
ほんとに自己批判して蟄居したのは高村光太郎くらいじゃねえか。
このなし崩しの転向者どもめ…!

なんて言いたくなるよね。
私は戦後文学勉強したんだから知ってるぞよ…(笑)。

しかしそれとは別個にたしかにひでえのよ、この作品。

敬愛してる監督にそんなこと言っていいのか…?
いいのよ、敬愛してるからって甘やかしちゃだめよ。
神聖化しちゃだめなの、外国の映画人たちみたいに…(笑)。

まず台本がひどいよね。どうしようもないよ。
セリフ聞いてると、こっ恥かしさを通り越して、
ゲラゲラ笑い出したくなっちゃうよね。

成瀬巳喜男の「浮雲」と比べるとわかるけど、
もう小中学生の作文みたいなの。
思ったことをそのまま直情的に言っちゃうからなんだけどさ。

お、おい、どうしたの小津さん? しっかりしろ!
って精神病院に運び込みたくなっちゃうよね(笑)。

それくらい戦前の小津が壊れちゃってるのよ。
で、庇うべき点があるとすれば…、

あの端正で壊れそうになかった小津さんでさえ、
戦争でこんなに壊れちゃったんだ。
戦後の混乱の中でもう
なにがなんだかわかんなくなっちゃったんだってこと…?

とそういうふうに、本人の意図とは全然別個のところで、
戦争と戦後を見事に表現してみせたってこと…?

わかるでしょ?
私が小津さんけっこう可愛いなあって言うとこ…?
さすが小津、偉い!ってベタ誉めしたくなっちゃうとこ…?

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台本もひどいけど、俳優の演技もひどいよお(笑)。
それ観るだけで観る価値あるから観るといいと思うんだけどさ、
カットと次のカットの演技がみごとに繋がらないのよ。

心が繋がらない、声が繋がらない、みごとに無茶苦茶。
分裂状態…、「おいしいマン」の日本人俳優たちみたい…(笑)。

その俳優、田中絹代、佐野周二、村田知英子
といった名だたる俳優さんたちなんだよ…?

小津が直情一本やりのセリフを、
無理やり直情的に成立させようとしちゃってるからなんだけどさ。
いやあ、戦争って恐いよねえ…(笑)。

なんの疑いもなく戦争を聖戦視してた1億総国民が、
戦争が終わったとたん、こんどはなんの反省もなく聡懺悔した?
それが小津さんや俳優さんたちを狂わせたんじゃないの?
って気がしてくるんだけど、私は…(笑)。

そう言えばあのオウム事件が起きたとき、
私は同じような戦中戦後的状況に晒されたっけ。
殺すぞっていったい何本脅迫電話を受けたやら…(笑)。

じゃ全然救いがない作品かって言うと、そうでもないのよ?
と、おいらは急に庇いたくなる…(笑)。

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時子(田中絹代)は、
子どもの入院費用が払えなくて一夜だけ売春する。
復員した夫・修一(佐野周二)はそれを知って堪えられず、
時子を責める。

あるとき時子が売春したという宿を訪ね、女将に女を呼ばせる。
そのときに現れたのがこの若い女…。

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父はもう働けない、母はもういない、弟は学校。
で、一家を自分が食べさせていかなくちゃいけないので、
しかたなく体を売っている…。

でも、見てよ、すごくきれいでしょう(笑)。
自分でお弁当をこしらえてきて、
お客がいないときは上の河原でひとり食べたりしてる。
そう、体は売っても心はきれい…、壊されていない女の子…。

この娘が戦前、小津が描いていた作品の人物だよね。

で、修一も…、佐野周二もそうだったじゃない。
ほら、名作「父ありき」での笠智衆の息子役…!
こんなきれいな人間だったよね。

その周二が、ほら、戦争でこんなになっちゃって…(笑)。

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ひどい格好だよねえ。
髪はボサボサ、服装は乱れっぱなし…。
あんた、だれ? 佐野周二? うそ!って感じでしょう…(笑)。

そうなんだよね。
上の若い女から下の佐野周二みたいになっちゃった。
戦中戦後の時代の中で、
日本人が上の若い女から下の佐野周二みたいになっちゃった。

田中絹代が夫に突き飛ばされて、
二階から一階へドドドっと階段を転げ落ちたみたく…。

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これがその噂の名(迷)場面、この作品の…(笑)。

そう。そういう意味なんだよ、この場面。
戦中戦後にかけて日本人は階段から転げ落ちるように、
なにかを失った…。
上の若い女が持っているようなものを失った…。

私・小津も、佐野周二も、田中絹代もみんな、
みんな、みんな失ってしまった…、ごめんなさいっていう…(笑)。

そういう意味では間違いなく
小津は自分の、自分たちの戦中戦後体験を描いてるのよ。
みっともなくてすいません…、こんなざまで…、って、
生き恥を晒しながらちゃんと描いてるのよ。
でも台本や演技や演出がひどすぎるもんだからさ…(笑)。

あ、実際、この映画、
「父ありき」でラスト、息子の佐野周二は戦争へ行くんだけど、
あの続編として書かれたフシがあるんだよね。
なので戦争であの息子がこんなに無残になったというお話…?

と、まあ、そういう映画なのでしたあ。

あ、最後に見て、私の笠智衆…。

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これがじつは当時の実年齢。
実年齢の役は珍しいのよ?
若いよねえ。おじいちゃんでなくても、かっこいいよねえ…(笑)。

■84分 日本 ドラマ
監督: 小津安二郎
製作: 久保光三
脚本: 斎藤良輔  小津安二郎
撮影: 厚田雄春
美術: 浜田辰雄
衣裳: 斎藤耐三
編集: 浜村義康
音楽: 伊藤宣二
出演
佐野周二 雨宮修一
田中絹代 時子
村田知英子 井田秋子
笠智衆 佐竹和一郎
坂本武 酒井彦三
高松栄子 つね
水上令子 野間織江
文谷千代子 小野田房子
長尾敏之助 医師
中川健三 巡査
岡村文子 女将
清水一郎 古川
三井弘次 男A
千代木国男 男B
谷よしの 看護婦A
泉啓子 看護婦B
中山さかえ 看護婦C
中川秀人 時子の息子浩
長船フジヨ 彦三の娘あや子
青木放屁 彦三の息子正一

戦後間もなく、復興は進めど物価も上昇し、人々は苦しい生活を強いられている。戦地から中々帰ってこない夫を待ちながら、衣服を売りつつ時子(田中絹代)は子供の浩(中川秀人)と暮らしている。しかしある日、浩が突然の腸カタルに罹った。一命は取り留めたものの、入院費は一括前納せねばならない。もちろんそんな金はない。時子は、一夜限りの過ちを犯した。友人の井田秋子(村田知英子)に強く窘められて反省した時子。とうとう夫の修一(佐野周二)が帰ってきた。再会を喜び合いながら留守中の話に差し掛かった時、夫は妻の過ちを知る。夫は逆上し家を出る。新しい仕事の相談にも身が入らない。家に帰っては妻を問い詰め、時子を苦しめる。修一は時子が過ちを犯した場所を訪れると、そこにはまだ21歳なのに家計を支えるために売春をしている房子(文谷千代子)がいた。修一は戦後の女性の苦しい立場を知り、心では時子を許しているが、まだ納得できないところがある。その晩家に帰った修一は、縋りつく時子を振り払う。時子は階段から転がり落ちてしまう……。

●すみれさん
はい、すごく韓国映画のタイトルぽいです。
内容をもうそのままタイトルにしていますから…(笑)。
あれ? 興味湧きますか?
すごく嬉しいというか、すごく困ったというか…(笑)。
でも観てもいろんな意味で面白いのは間違いないとおもいます。
ネットレンタルやってると思いますが…。

ありがとうございました。

 
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この記事へのコメント

すみれ
2010年10月06日 11:19

 こんにちは~
 タイトルが韓国の映画っぽい!!

 山崎さん本当はおすすめの映画??
 だってすっごく興味がわく解説ですよ~

 これだけの俳優でしかも小津監督作品
 違う意味で貴重な作品ですよね!!

  レンタル出来るのでしょうか??

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