仁義の墓場 (1975)__前

[592]他人との、世界との結節点を失い、石川力夫は狂犬と化す
★★★★★★

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私がド肝を抜かれた作品。
正真正銘、ド肝を抜かれたのは後にも先にも
この作品だけ…。

深作欣二監督の最高傑作。
日本映画の最高峰…。

韓国映画風にいえば、日本最強映画…(笑)。

混乱の戦後、新興ヤクザ社会を駆け抜けた、
狂犬・石川力夫を描いた「実録」もの…。

深作欣二、じつはこの作品以前にも、石川力夫を描いている。
菅原文太主演の「人斬り与太 狂犬三兄弟」(1972)だ。
が、悔いが残ったのか、渡哲也主演で再映画化した。

渡は、病気のため、NHKの大河ドラマを途中降板。
日活は当時すでにロマンポルノ路線に切り替えていたので、
行き場を失くしていた…。

深作はその渡を起用したのだが、
文太の石川力夫がなぜ不満だったのか、
この作品を観ると自ずとわかる…。

われらが文太は狂犬になれない。
資質としての優しさがいやおうなく表れてしまうのだ(笑)。

深作が渡に目をつけたのは、私の見当によれば、
渡主演の「東京流れ者」(鈴木清順・監督)や「野良犬」などが
脳裏にあったからだろう…。

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いきなり石川力夫の少年期の写真、
当時のかれを知る実在の人物たちの証言からはじまる。

石川は水戸市出身。

深作さんも水戸市出身で、
しかも同じ時代を生きてこられたので、
かれにたいする想いには一方ならないものがあったのだと
おもう…。

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石川は敗戦後、上京、
新宿を根城にするテキ屋一家「河田組」に入った。
前列中央が河田、右隣が石川…。

といってもこっちは映画の中の河田組。
実と虚を混在させ、等価に扱っているのが、作品の最大の特徴。
これぞ深作の「実録もの」なのだ…。

私が20代から「実録」と舞台に銘打ったり、
いまも続けている「犯罪フィールドノート」はじつは
深作手法の剽窃、物真似…、すいません、監督…(笑)。

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石川力夫。渡哲也…。

故・金子正次が「竜二」を撮ったとき、
脳裏にあったのはこの「仁義の墓場」であり、
渡哲也のこの姿だった…。

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ジャン…!
こうやって本ブログにタイトルを公開するのは初の快挙(笑)。
バックの新宿がいいのよ。泣けてくるのよ…(笑)。

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新宿への進出を企んでいる「池袋親和会」の
若い衆を脅して逃げる石川…。

カメラマンは東映の名手・仲沢半次郎。
アクションシーンはつねにこうやってドキュメント風に斜めり、
敗戦直後の凄まじいエネルギーと疾走感を
画面に充満させている…。

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MPと握手しているは組長の河田(ハナ肇)、
右手前でうな垂れているのは石川…。

このあと石川は河田に暴走するなと説教される。
石川にしてみれば、組のためを思ってやったのだが、
なにをやっても組長の思惑と…、他人の思惑と外れてしまう。

自分がどんなにひとを想おうと、ひとと心が重なり合うことがない。
それが石川の資質であり、悲劇なのだ。

そのため石川はこうやって、
他人の前ではいつもうな垂れているしかない…。
私にはかれの心がよくわかる…(苦笑)。

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石川には、函館の少年院時代に契った兄弟がいる。
今井幸三郎(梅宮辰夫)だ。

その今井、今井の兄弟分の杉浦(郷鍈治)らと、
三国人グループが組織する中野の「山東会」を襲撃、
テラ銭を強奪し、山東会を壊滅させる…。

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杉浦を演じる郷鍈治。左は渡…。

郷さんも私の大好きだった俳優。
画面に郷さんが出てくるだけで私はもうだめ…(泣)。

郷さんは宍戸錠さんの実弟で、
奥さんはこれまた私の大好きなあの「ちあきなおみ」さん。
92年に肺がんで他界されたときはほんとにショックだったよ…。

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襲撃後、
山東会の連中に追われ、石川はたまたま置屋に逃げ込んだ。
その部屋にいた女は、のちに石川の妻となる地恵子(多岐川裕美)…。

多岐川裕美、みんな知ってる?
きれいでさあ、けっこう一世を風靡したんだよ。

ちなみにこに出てくる中野は、
私が中野にいたころ飲み歩いていたあたりなんだよね(笑)。
そのころはまだ戦後の名残りと思われる場所がすこし残ってた…。

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ギャーッ、出たあ、成田三樹夫だあ!
見ろ、これがおれの超お気に入りの成田三樹夫だあ~…!
いいだろ、おかしいだろ、笑い堪えきれないだろ…!(笑)

石川が池袋親和会の青木を叩きのめし、病院送りへ…。
ベッド上でその青木をやってるのは、
これも東映にはなくてはならない今井健二さんだよ(笑)。

成田三樹夫さんは青木が属する親和会の梶木昇役…。
と、そこへやって来たのが…。

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河田組の松岡と遠山…。

またまたギェーッ!って喜びたくなるよね。
だって室田日出男(中央)と曽根晴美(右)なんだぜ…!

ああ、ほんとはめちゃくちゃ暗い映画なのに、
記事書いてると、どうしても明るくなっちゃうなあ。
役者って救ってくれるよなあ、ほんと凄いわ…(笑)。

石川の不始末を詫びに来たのだが、
梶木はその見舞金を突っ返して、
親和会一同は河田組への復讐だと新宿に終結する…。

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河田はこの出入りをなんとか避けたいと、
警察署長を前に、野津組の組長・野津(安藤昇)に相談。
野津がMPのチカラを借りるよう進言して、
事態はとりあえず終結する…。

安藤さん演じる野津はこのとき、
なんと「光は新宿から」をスローガンに衆議院選に出馬中。
結局、落選するのだが、出馬は紛れもない事実。
戦後の混乱、万歳ってかんじ…?(笑)

警察所長をやってるのは、ホラ、浜田寅彦さん。
いいよねえ、この居ずまい。
もうそこにいるだけでなんとなく笑っちゃうんだよね…(笑)。

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なにを思ったか、石川、野津組の賭場へ…。

銭をすったあげく、現れた野津組長に
「いまのままじゃおまえは男になれねえ」と説教され、
帰りに組長の車に火を放つ…。

野津の河田組長への入れ知恵が気に食わなかったのか?
いや、なにもかもが気に食わない…。
それが石川なのだ。

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河田は、石川の行状についに堪忍袋の緒を切らし、
石川を木刀で半殺しにする。

石川は今井を訪ねて、
「刃物を貸せ、指を落とす、
でないと組長に会わす顔がねえ」と…。

前列左から、
梅宮辰夫(今井)、山城新伍(田村)、渡哲也(石川)、郷鍈治(杉浦)。
そして渡をうしろから手当てしてるのは、
じつは今井の女・照子をやっている池玲子…。

どうすか、この面子…、
なんて私が得意になってどうするべ…?(笑)

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石川は河田にまた会いに行く。
なにも喋らないので…、ことばを持っていない男なので、
とても真意がわかりにくいのだが、

私の見当によれば、
石川は河田に詫びを入れたかったのだとおもう。
でもどうすればいいのか、詫びかたがわからない。
自分のなにが悪いのか、自分にはよく理解できないからだ。

河田は、会いに来たのは自分への面当てなのだとおもう。
で、また石川を邪魔者扱いにする。
こいつはいるだけで邪魔…、そばにいるだけで邪魔…。
河田にはもうそうとしか受け取れないのだ。

瞬間、石川はドスを抜き、組長を襲う…。

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組長を刺したあと、石川が逃げ込んだのはまたも
地恵子のところ…。

石川は「寒い、寒い」と自分のからだを抱きしめ、酒をねだる。
悪寒がするのは、自分を囲んでいる世界に悪寒がするからだろう。
そして自分自身にも…。

この二枚の写真を見るだけで、
狂気を演じる渡哲也に誰もが身震いするはずだ…。

その渡を支えていたのは、
日活からただひとり東映に殴りこみにいった緊張感でも
あったとおもう…。

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河田組長への傷害で府中刑務所に服役。
1年後、出所…。

出迎えにきた今井と杉浦に言われ、
石川は、河田に10年の関東所払いを食らわされたことを知る。

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出所した足でまた地恵子のところへ…。

石川は、四谷の荒木町で働いてくれと、
地恵子を荒木町の置屋へ売り、
その金で大阪へと向かう…。

地恵子はもともと、
石川に侵入強姦され、一方的に情婦にされた身だ。
なのにいつのまにか石川を愛するようになっている。

石川だけが、
女としての自分に会いに来てくれる男だったし、
孤独な石川にまた自分の身を重ねて見ていたからだろう…。

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釜ケ崎のドヤ街に住みついた石川は、
やがてシャブを覚え、シャブに嵌っていく…。

渡に跨っているのは、
日活ロマンポルノで一世を風靡した、芹明香(ドヤの女)。

どうですか、男性諸君、私の芹明香…。
いかん、私のにしてしまうと怒られそうだわ(笑)。
でもねえ、私、彼女がまた大好きでさ…。

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シャブでイッテしまってる渡と芹明香…。
ほんと、ゾクゾクしちゃう写真だよねえ。
なんで隣で男が位牌拝んでるのか知らないけどさ…(笑)。

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シャブを買う金もなくなり、ある組の事務所を襲うが、
すでに体力もなく危うくなったところを、
やはりシャブ中の小崎(田中邦衛)に助けられる…。

どうよ、演劇人代表の田中邦衛さん(笑)。
好きなんだよねえ、私、この唇と、
この唇から漏れるブツブツが…。

いやあ、あのブツブツやらせたら、
邦衛さんの右に出る俳優いないんだってば…?(笑)

そして1年も経たないうちに、
石川は小崎を連れて東京へ舞い戻る…。

続きは「後」へ…。


●平成の力夫さん
そうか、アレはヘロインでしたか。
ご訂正ありがとうございました。
しかし「平成の力夫」さんとはまたカッコいいですねえ!(笑)

ありがとうございました。


■94分 日本 ドラマ/任侠・ヤクザ/アクション
監督: 深作欣二
企画: 吉田達
原作: 藤田五郎
脚本: 鴨井達比古
撮影: 仲沢半次郎
美術: 桑名忠之
音楽: 津島利章
出演
渡哲也 石川力夫
梅宮辰夫 今井幸三郎
郷えい治 杉浦誠
山城新伍 田村弘
高月忠 谷
ハナ肇 河田修造
室田日出男 松岡安夫
曽根晴美 遠山敏
前川哲夫 神野
土山登士幸 武田
畑中猛重 哲
城春樹 五郎
田中邦衛 小崎勝次
今井健二 青木政次
汐路章 徐辰
玉川伊佐男 岡部
多岐川裕美 石川地恵子
池玲子 今井照子
衣麻遼子 夏子
小林千枝 河田の妾
芹明香 ドヤの女
三谷昇 石工
河合絃司 刑事
関山耕司 刑事
相馬剛三 警官
浜田寅彦 警察署長
近藤宏 警察次長
伊達三郎 親分
成田三樹夫 梶木昇
安藤昇 野津竜之助

終戦直後の新宿は、ヤクザと外国勢力との抗争が続く混乱の只中にあった。テキ屋一家「河田組」の石川は兄弟分の今井、杉浦と中野の「山東会」を襲撃しテラ銭を強奪、さらに抗争によって同会を壊滅に追い込んだ。石川はこの抗争の最中、置屋の若い女、地恵子を強姦して情婦にする。
石川の凶暴性を持て余した組長の河田は、「池袋親和会」の青木を消せと示唆する。石川は青木の情婦を犯し、青木を叩きのめす。復讐に集結する親和会勢力に一大抗争の危機を迎えるが、野津組組長野津の仲裁により事なきを得た。
杉浦は野津の盃を受け、組織に同化していく。破壊衝動の収まらない石川は、逆恨みから野津の車に放火する。石川殺害を命じられた杉浦だが、失敗して妻と共に姿を消した。
石川は河田から制裁を受けるが、逆上して河田を刺してしまう。今井にかくまわれる石川だが、その身を案じた妻・地恵子が警察に通報したことから逮捕される。
一年八ヶ月の懲役を受けた後、出所した石川は河田組から十年間の関東所払いを食らい、大阪へと流れ着く。釜ヶ崎のドヤ街で石川は小崎と出会い、娼婦からヘロインを覚える。
身体を蝕まれ中毒となった石川は、一年後に無断で帰京し、今井組の賭場へ現れる。しかし今井は石川を拒み、石川は今井とその妻を射殺する。石川は自殺しようとするが未遂に終わり、警察病院に収容された後、殺人及び殺人未遂で懲役十年の刑を宣告される。
服役中の昭和二十六年一月二十九日、心身を磨耗した地恵子が自殺した。それは刑務所内で胸部疾患が悪化した石川が、病気治療のため仮出獄を許される、わずか三日前のことであった…。
火葬を終えた地恵子の骨壷をぶら下げ、死神のように彷徨う石川。河田組に現れた石川は、地恵子の遺骨を齧りながら河田に金をねだる。さらに幹部の神野、松岡からも金を獲た石川は、石材店を訪れ墓石を作るよう要請する。そして、「墓にはこう彫ってくれ」と言いながら一枚の紙片を渡した。
河田組組員に襲撃され負傷した石川は、病院生活を経て府中刑務所に収監された。そして昭和二十九年一月二十九日、石川は刑務所の屋上から身を投じ、二十九年の短い生涯を自らの手で終えた。その日は奇しくも亡妻・地恵子の三回忌の日であった。
刑務所の独房内には、石川が書いた遺書が残っていた---「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」
新宿・常円寺境内。石川が建てた自分と地恵子、そして今井の墓石がある。そこには「仁義」の二文字が刻まれていた。その墓を訪れる人は、もう誰もいない。

  
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この記事へのコメント

平成の力夫
2012年01月06日 20:14
シャブじゃなくてぺーね
ヘロインの事だからね

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