仁義の墓場 (1975)__後

[592]石川力夫=深作欣二の狂気に私は到達できるのか?
★★★★★★

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東京へ帰ると、石川は荒木町の地恵子を訪ねる…。

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地恵子はシャブを打っている石川の変わりように驚く。
一方で、彼女はすでに肺を病んでいた…。

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今井を訪ねると、すでに一家を構えていた。
かれは一年も経たないうちに帰ってきた石川に驚き、
諭そうとするが、

石川は、厄介者を追い払おうとする今井の変節を知り、
ドスを抜いた…。

ここも名を連ねよう。
手前に梅宮辰夫、渡哲也。
奥に左から、郷鍈治、池玲子、山城新伍、田中邦衛。

溜息が出るよ。
こういうスター揃いの映画はもう到底無理だろうなあ…。

渡の姿勢にも注目。
全編こういうかんじ…、犬…、狂犬…。

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ドスを抜く直前の渡の表情…。
見てるほうまで背筋が凍りついてしまうよ。

この日は今井を仕留め損ない、その翌日…、

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こうやって雨の中をまた今井組を訪ね…、

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こんどはピストルで今井と、その妻・照子を射殺。
そしてそのまま逃走し、中野のある安宿に潜伏する…。

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が、警官隊と、今井組、河田組の組員たちに包囲され、
結局、逮捕されてしまう…。

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そして殺人及び殺人未遂で
懲役10年の刑を宣告される…。

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地恵子がかき集めた保釈金のおかげで一時保釈の身に…。
が、石川は病床に臥す地恵子のそばで
シャブを打って過ごすだけ…。

石川が窓の外に目をやると赤い風船が…。

この風船は…、私には、
「自分は風船みたいなものだ」と言っていたという
石川にたいする深作監督の献花のように見える…。

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服役中の昭和26年1月29日、地恵子、自死。

石川が、胸部の病いが悪化し、
治療のため仮出獄を許された3日前のことだった…。

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その数日前、じつは
地恵子と石川の婚姻届が出されていたという…。

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石川はひとり、地恵子の遺骨を拾った…。

この映画のシーンはどこも美しいが、
中でもこのシーンは秀逸だ。

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遺骨を抱いて、石材屋へ行き、墓を作ってくれと依頼する。
地恵子の墓…? それとも…?

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その足でそのまま河田組長を訪ねる。
しかし地面(畳)に這いつくばった犬(石川)はものを言わない。

業を煮やした松岡(室田日出男)が用件を尋ねると、
石川は、置いた骨壷のフタを開いて
地恵子の遺骨を手にすると…、

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口に入れ、カリカリと齧りはじめた…。

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あまりにも有名なシーンだが、
なんど観てもその凄絶さに言葉を失う…。

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「いやがらせか」と怒る河田組長に石川は言う。

そろそろ自分も一家を構えたいので、
新宿2丁目にある河田組の土地がほしい。
ついては事務所を建てる費用2000万円も…、
と…。

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数日後(?)、石川は墓地でシャブを打っていた。

このシーンにも深作さんの献花が…。

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その背後を、河田組の組員が襲撃、メッタ斬りにするが、
石川はそれでも死なず刑務所へと収監された…。

刀を手に石川を襲うのは、
私の大好きな好漢・刈谷俊介だよ~ん…(笑)。

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昭和29年1月29日、
刑務官たちは、屋上に石川の姿を発見し、駆けつけた。

石川は、見下ろし、
履物を脱ぎ捨て、空にわが身を放った…。

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奇しくも、その日は、
妻・地恵子の3回忌だった…。

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石川の独房の壁には、かれの書き文字が遺されていた。
「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」…。

これほど自己を端的に批評しえた遺書もめずらしい。

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新宿・常円寺境内にひっそりとある石川の墓。

そこには石川地恵子の名と一緒に、
石川力夫、今井幸三郎の名が刻まれている。
そして横には「仁義」の二文字が…。

石川が河田組長にせびった金はそうすると、
この墓と、永代供養料を払っておくための費用だったのか…?

今井幸三郎の名が並んでいるのは…?
自分の「仁義」を通すため…?

石川の真意は闇だが、
かれにとって今井とだけは短い間ながら、
心が折り重なった時があったのではないかとおもう…。

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現在(撮影当時)にパンして映画は終わるのだが、
新宿を覆うこのビルはどこか
無数の石川力夫の墓のようにもみえる…。

この物語は、
敗戦直後の新宿に充満するすさまじい活気と
エネルギー(馬鹿騒ぎ)の描写から始まる。

実際それは、エネルギーに満ちた韓国映画が
束になっても勝てないほどすさまじいものだ…。

たぶん…、
その日の撮影が終わるたびに街へ繰り出し、
ドンチャン騒ぎをして俳優たちのエネルギーを引っ張り出した
深作演出のたまものなのだろうが…(笑)。

が、中盤前あたりから、
次第にそのエネルギー(馬鹿騒ぎ)は画面から消えていく。
新宿のウラ社会も次第に秩序立てられていくからだ…。

そのころから石川は
自分のエネルギー(馬鹿騒ぎ)の行き場を失う。

まるで自分のエネルギーを殺すために
シャブを打ち始めるかのように…、
己を内向させようとしているかのようにみえる。

しかしシャブですら石川の最後のエネルギーを、
今井を殺し、河田を脅し、自分を始末するエネルギーを、
「ひとりする馬鹿騒ぎ」のエネルギーを…、
奪えなかった。

そう見えて私は嬉しくもあり、哀しくもある…。

「実録」を謳い、ドキュメントであるかのように撮ってあるが、
はたして石川が描かれたような人物であったかどうか、
私は知らない。

ただこれだけは言えるのではないか。
深作さんは石川力夫に自分を重ねて描こうとしたのだ、と…。

狂犬でありたい。
自分の狂気を解放したいと思い…。

といって、それはなにも深作さんの特権ではない。
表現者の多くがそう思っているはずだ。
故・金子正次がそうだったように…。

この映画を観るたびに思うことは、
結局最後はそのことに尽きる。

私は、この石川力夫=深作欣二の狂気に
はたして到達できるのだろうか…、
ということに…。

女性はちょっと観るのは辛いかもしれないが、
映画ファンだったらこれは必見の作品です…。

■94分 日本 ドラマ/任侠・ヤクザ/アクション
監督: 深作欣二
企画: 吉田達
原作: 藤田五郎
脚本: 鴨井達比古
撮影: 仲沢半次郎
美術: 桑名忠之
音楽: 津島利章
出演
渡哲也 石川力夫
梅宮辰夫 今井幸三郎
郷えい治 杉浦誠
山城新伍 田村弘
高月忠 谷
ハナ肇 河田修造
室田日出男 松岡安夫
曽根晴美 遠山敏
前川哲夫 神野
土山登士幸 武田
畑中猛重 哲
城春樹 五郎
田中邦衛 小崎勝次
今井健二 青木政次
汐路章 徐辰
玉川伊佐男 岡部
多岐川裕美 石川地恵子
池玲子 今井照子
衣麻遼子 夏子
小林千枝 河田の妾
芹明香 ドヤの女
三谷昇 石工
河合絃司 刑事
関山耕司 刑事
相馬剛三 警官
浜田寅彦 警察署長
近藤宏 警察次長
伊達三郎 親分
成田三樹夫 梶木昇
安藤昇 野津竜之助

終戦直後の新宿は、ヤクザと外国勢力との抗争が続く混乱の只中にあった。テキ屋一家「河田組」の石川は兄弟分の今井、杉浦と中野の「山東会」を襲撃しテラ銭を強奪、さらに抗争によって同会を壊滅に追い込んだ。石川はこの抗争の最中、置屋の若い女、地恵子を強姦して情婦にする。
石川の凶暴性を持て余した組長の河田は、「池袋親和会」の青木を消せと示唆する。石川は青木の情婦を犯し、青木を叩きのめす。復讐に集結する親和会勢力に一大抗争の危機を迎えるが、野津組組長野津の仲裁により事なきを得た。
杉浦は野津の盃を受け、組織に同化していく。破壊衝動の収まらない石川は、逆恨みから野津の車に放火する。石川殺害を命じられた杉浦だが、失敗して妻と共に姿を消した。
石川は河田から制裁を受けるが、逆上して河田を刺してしまう。今井にかくまわれる石川だが、その身を案じた妻・地恵子が警察に通報したことから逮捕される。
一年八ヶ月の懲役を受けた後、出所した石川は河田組から十年間の関東所払いを食らい、大阪へと流れ着く。釜ヶ崎のドヤ街で石川は小崎と出会い、娼婦からヘロインを覚える。
身体を蝕まれ中毒となった石川は、一年後に無断で帰京し、今井組の賭場へ現れる。しかし今井は石川を拒み、石川は今井とその妻を射殺する。石川は自殺しようとするが未遂に終わり、警察病院に収容された後、殺人及び殺人未遂で懲役十年の刑を宣告される。
服役中の昭和二十六年一月二十九日、心身を磨耗した地恵子が自殺した。それは刑務所内で胸部疾患が悪化した石川が、病気治療のため仮出獄を許される、わずか三日前のことであった…。
火葬を終えた地恵子の骨壷をぶら下げ、死神のように彷徨う石川。河田組に現れた石川は、地恵子の遺骨を齧りながら河田に金をねだる。さらに幹部の神野、松岡からも金を獲た石川は、石材店を訪れ墓石を作るよう要請する。そして、「墓にはこう彫ってくれ」と言いながら一枚の紙片を渡した。
河田組組員に襲撃され負傷した石川は、病院生活を経て府中刑務所に収監された。そして昭和二十九年一月二十九日、石川は刑務所の屋上から身を投じ、二十九年の短い生涯を自らの手で終えた。その日は奇しくも亡妻・地恵子の三回忌の日であった。
刑務所の独房内には、石川が書いた遺書が残っていた---「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」
新宿・常円寺境内。石川が建てた自分と地恵子、そして今井の墓石がある。そこには「仁義」の二文字が刻まれていた。その墓を訪れる人は、もう誰もいない。

  
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