女が階段を上る時 (1960)

[621]戦後の階段を踏みしめながら上っていく高峰秀子の姿が見える
★★★★★☆

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これも年末に観た作品…。

私の大好きだった高峰秀子さんが亡くなったので、
本棚から引っぱりだして観たのだ…。

木下恵介が高峰秀子を偶像化して撮ったとすれば、
成瀬巳喜男は高峰秀子を一介の女として撮ろうとした
と言ってもいいのかな…?

この作品も、
銀座のバーのマダム・圭子の生き様を描いたもの。

私とはあまり縁のない銀座の夜の話だし(笑)、
いかにもといった話なので、
作品的にはもうひとつかなとは思うが、

成瀬はとにかく女優の使い方がうまいので、
私の超お気に入りのひとつである…。

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高峰秀子(圭子)と淡島恵子(ユリ)…。

ユリは、もともと圭子のバーで働いていたのだが、
お客の小沢栄太郎(美濃部)の女になり、
独立して、バーを始める…。

でも借金で首がまわらず、
睡眠薬で偽装自殺を企てるも、結局、ホントに死んでしまう。

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そのユリの母親の沢村貞子…、日本のおかあさん。
懐かしくて涙が出そうになった(笑)。

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圭子の店の女給のひとり、団令子(純子)。
この純子も、圭子の客の中村鴈治郎(郷田)をベッドに誘い、
小さなバーを出す…。

この映画、1960年なんだけど、
このころはまだホステスのこと「女給」って言ってた。
うん、昭和がプンプン…!(笑)

あ、団令子さんは私が
銀幕ではじめて意識したピチピチギャル女優だったのよ…(笑)。

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女給相手に下着屋さんをやっている菅井のきんさん…(喜)。

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きんさんの友だちで、怪しげなトランプ占いで食ってる千石規子。
例の上目遣いが、うん、私はたまらなく好き…(笑)。

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高峰さんの母親(中央)、お馴染みの賀原夏子。
いじわるだけど、哀愁漂う天下一品の女優さんなんだよ(笑)。

ちなみにここは圭子の実家で、佃島。
遠くでポンポン船の音が聞こえてる…、うん、昭和だねえ(笑)。

あ、当時の銀座は…。

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圭子の店がある通り、夜…。

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圭子の店に通う森雅之(藤崎)が勤めてる銀行…。

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銀座の地下街…。
男はプレス工場をやっている加東大介。
飲めないのだが、圭子が好きで店に通っている。

圭子は若くして愛する夫を交通事故で失う。
以後、結婚しないと固く誓っていたのだが、
いろいろあって夜の商売に疲れはてたころ、
この大ちゃん社長に結婚を申し込まれ、その気に…。

ところがドッコイ、
じつはプレス工場の社長だなんて真っ赤なうそ。
なんと大ちゃん、誇大妄想が絡んだ、
ただの結婚詐欺師だった…(笑)。

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北千住に住んでて、このひとが奥さん…(笑)。

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高峰さんの背後に見えるのは、あの、お化け煙突…?

大ちゃんのエピソードが一番面白いんだよね。
高峰さんだけじゃなくて、みんな、絶対騙されるよ…(笑)。

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森雅之(藤崎)の妻の東郷晴子さん…、相変わらず綺麗。

大ちゃんの結婚詐欺にあったあと、
圭子は誰も信じられなくなり、
以前から好きだった藤崎についに身を任せる。

が、その藤崎も翌日、こうやって
大阪に支店長として栄転していく、奥さんや子供と一緒に…。
しょうがないなあ、出すか…。

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うわさの藤崎、森雅之…(笑)。

しかし高峰さんが森雅之とやってると、
どうしてもあの傑作「浮雲」が脳裏をよぎる。
「僕も君が好きだが、妻子を捨てる勇気はない」だって…(笑)。

「浮雲」では妻を捨てたけど、
高峰さんをほっといて女から女を渡り歩くだらしない男。
うん、こんども似たようなもの。

煮え切らないこと夥しくて、いかにも日本の男って感じ。
そういうのがまた森雅之うまいんだよね…(笑)。

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その藤崎を見送った、東京駅…。

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圭子の店のマネージャーをやっている仲代達矢(小松)。
若いよねえ、20代後半…?

喫茶店のレジで働いていた圭子を、
銀座の夜のマタ゜ムに育てあげた青年で、
じつは圭子が好きだったのだが、
結局、圭子とは一緒になれず、最後離れていく…。

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圭子は、今夜も、
その日の風が吹くだけのバーの階段を上がっていく、
というお話…。

「浮雲」は終戦直後のお話。
「女が階段を上る時」はその15年後…、1960年ころのお話。

舞台の銀座を見ていると、わずか15年で、
東京がこんなに復興したのかと驚いてしまうが、
それでも佃島や北千住の風景が現れると、
戦後が…、昭和がまだとてもつよく感じられる。

そして、
その昭和の風景に凛として立ってみせる高峰秀子さん。

高峰さんを見ていると、
ああ、私はこのひとから生まれてきたんだと
どうしても思ってしまう…。

「このひと」というのは「戦後」という意味だ。
私が生まれた戦後を
もっとも強く感じさせる女優…、人間…、
それが私の高峰秀子さんなのだ…。

戦後とは、
前に向かって飛翔するチカラだと言ってもいい。
生きていこうとするチカラ…、
それを私は高峰さんからもらったような気がするのだ。

子供の頃から、
高峰さんの映画をよく観て育ったせいだろう。

が、戦後にはじつはもうひとつのチカラがある。
後ろに向かって落下しようとするチカラだ。

戦後の中に、
たしかにそういうチカラが胚胎していることを、
私は太宰治の文学で思い知らされた…(笑)。

そして自分の中にも、
獏とではあるがそんなチカラが働いていることを…。

別にわざわざ戦後と言う必要はないかも…。
ひとは生きる時、この「飛翔と落下」を往復してるのだから。
飛翔と落下の闘いを続けているのだから…。

が、一方で、
その飛翔と落下の振幅がもっとも大きかったのは、
やはり「戦後」だったのだと思っている。
人間の実存が露わにされた時代…。

それで「戦後」にこだわってるのだと思う。

余談めくが、
月見草さんが高峰秀子さんの太宰評を聞かせてくださった。

その中で月見草さんは、
太宰治と高峰秀子さんは「水と油」の関係ではないか
と書かれている。

なるほどなあとしきりに感心した。

でも「水と油」ではあるが、
私が知るかぎり二人はもっとも戦後的な人間だ。
なので私の妄想に誤りがないかぎり、
太宰は誰よりも高峰さんを評価していたはずだ…(笑)。

落下しようとする者は、
飛翔しようとする者をもっともよく知るはずだから…。

さらに思う。
太宰も高峰さんもたんに
「水と油」を背負わされただけではなかったのか、と。
「戦後」という時代に…。

私の大好きな二人が、
向こうでたおやかに談笑している姿が
私には見える…。

高峰秀子さん、
たくさんの素晴らしい映画、
ほんとうにありがとうございました。

どんなに感謝しても足りない思いです…。

■111分 東宝 ドラマ
監督: 成瀬巳喜男
製作: 菊島隆三
脚本: 菊島隆三
撮影: 玉井正夫
美術: 中古智
音楽: 黛敏郎
出演
高峰秀子 矢代圭子
森雅之 銀行支店長・藤崎
団令子 女給・純子
仲代達矢 マネージャー・小松
加東大介 工場主・関根
中村鴈治郎 実業主・郷田
小沢栄太郎 利権屋・美濃部
淡路恵子 マダム・ユリ
山茶花究 バーの持ち主
多々良純 闇屋・金貝
藤木悠 みゆきの夫・松井
織田政雄 圭子の兄・好造
細川ちか子 女将・まつ子
沢村貞子 ユリの母・とし子
北川町子 女給・清美
中北千枝子 女給・友子
柳川慶子 女給・雪子
横山道代 女給・みゆき
野口ふみえ 女給・夏子
賀原夏子 圭子の母・ふじ枝
東郷晴子 藤崎の妻・志津子
田島義文 風間重役
瀬良明 美濃部の部下・水谷
佐田豊 呉服屋店員・吉川
本間文子 関根の妻・みね子
千石規子 女占い師
菅井きん 下着屋の勝子
園田あゆみ 女給・光子

圭子はバー“ライラック”の雇われマダムである。ある日、三国人のマスターに呼ばれ売上げの減ったことを責められた。経済研究所長という肩書を持つ高級利権屋の美濃部が最近店に寄りつかなくなったこと、その美濃部が以前圭子の下で働いていたユリに店を持たせていること、圭子はすべてを知っていた。マスターから暗にユリのように体を張れと言われた。夫に死なれて、女手一つで生きていかなければならなくなった圭子が、マネジャーの小松の口ききでこの道に入ったのは五年前であった。圭子は、バーの階段を上る時が一番悲しかった。しかし、上ってしまえばその日その日の風が吹いた。美濃部が現われ、ユリの店へ案内した。店は繁昌していた。ユリが席をはずした隙に、美濃部は圭子をゴルフに誘った。--圭子は店を変えた。小松と、女給の純子がいっしょについて来た。関西実業家の郷田が、店を持たせるからと圭子に迫ったが…。

●月見草さん
お写真、ほんとにありがとうございました。
うちの座員たちも写真を見て「お~!」と驚嘆の声をあげていました。
また、昨日からワークショップをやっているのですが、
参加しているひとたちの中に偶然にも黒石の女性、
大館の女性と、二人も大鰐、弘前近辺の女性がいたんです!
はい、青森、秋田の話で大いに盛り上がりました…(笑)。
しかし月見草さん、私の太宰にえらく厳しいですね(笑)。
それも核心をついてるだけに耳が痛いんですが、
ひとつだけ太宰の援護をしておきます(笑)。
戦争中、文学者のほとんどは翼賛文学を書いたんですよね。
まあ、中には脅されて仕方なく書いた文学者もいたんでしょうけど、
でも、中に一人だけ翼賛文学を書かなかった作家が、
戦争を賛美しなかった作家がいたんです。
はい、誰あろう、太宰治です。
津軽の太宰を、大手を振って褒めてあげてくださいな(笑)。
ついでに言っておきますと、戦後になって、
自分が翼賛文学をやってしまったことを反省したのも、
私の知る限りひとりだけです。
詩人の高村光太郎です。かれは反省して蟄居しました。
あとの連中はみんな反省もなにもしておりません。知らんぷりです。
そう言えば、光太郎の「乙女の像」は十和田湖の湖畔にありますね。
なのでつい、東北は偉い! と思ってしまう私です(笑)。
あ、これもついでですが、光太郎が妻の千恵子と眠っているお墓は、
うちの稽古場から300mほど先の墓地にあるんですよ(笑)。
その墓地は「染井墓地」と言うんですけど、
そのあたり、というか、このあたり、じつは染井吉野(桜)の
発祥地なんですよね。
なのでいま、光太郎と千恵子は、染井吉野桜に包まれています。
といっても、弘前公園の桜には負けてますが…(笑)。

●月見草さん
太宰の長女園子さん、政治家に! 園子さの長男も…!?
びっくりしました。
長女園子さんは祖父の血を、次女里子(津島佑子)さんは
お父さん太宰の血を継いだということになるんでしょうかね。
そう言えば、津島さんとNHKの番組で一度ご一緒させて
いただいことがあるんですよね。
私好みのすごくステキな方でした…(笑)。
私は、三島の死は渋谷の劇場で知り、トイレに30分くらい
ひきこもってましたね。
太宰が好きなので、三島はあまり好きじゃないんです(笑)。
でも、あの時だけはなぜか不覚にも涙を流してしまいました(笑)。
太宰と三島は、じつは双生児みたいなところがある
と思っています。幼少期、親の愛情を得られなかったせいだと
思いますが、三島は、太宰が自分に似てるので嫌ったんだと
睨んでるんですが…。
太宰文学は母子文学だと思うですよね。
自分のほんとうの母親が誰なのかわからなかった子が、
生涯、母親を訪ね歩いた文学というんでしょうか。
作品「津軽」がまさにその代表作ということになるんでしょうけど、
母と子を描いてるので、子は一度は必ず太宰文学を
通らざるをえないような気がしているんですが…。
しかし…、死に方まで高峰さんと真逆だなんて…、
もう許してくれてるんですよね、太宰のこと…(笑)。

●月見草さん
コメントの返信に時間をとられるなんてことは全然ないので
どうぞ気にしないでください。
三島由紀夫、ほとんど読んでいます(笑)。「仮面の告白」も
「金閣寺」も「潮騒」も「花ざかりの森」もけっこうすんなり読めて
面白いんですけど、でも好きとはいかないんですよね。
おっしゃるように虚飾で、無理しないで太宰みたいに素直に
なりなよ、いじけるまでは行かなくていいからさ、みたいな感じ
ですかね…?(笑)
太宰の山崎富栄さんとの心中は、私にはどこか、母子偽装心中の
ように思えています(笑)。
ああ、園子さんのご主人、津島雄二さんだったんですか。
え、岩下志摩さんがいまテレビでビョンホン靴下を履いてると
おっしゃってるんですか?
なんですか、それ、天下の岩下志摩ともあろうものが、しょうもない(笑)。
まあ、岩下さんがビョンホン・ファンだとは知っていましたが…(笑)。
そう言えば、岩下さんとビョンホンに漂う気品、似てますよね。
韓国にはいい女優さんたくさんいますけど、イ・ウンジュとシム・ウナ、
その中でも異才を放ってましたよねえ。
その二人が奇しくもあの監督の作品を最後に…、
というのはやはりただの偶然ではないと思いましたね、
「サプライズ」観たとき…。
お便りお待ちしています…(笑)。

あり゛とうございました。

  

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この記事へのコメント

月見草
2011年03月25日 19:29
山崎さん、またまたこんにちわ!

岩木山紹介下さり、嬉しくて何度もブログおとづれて、知人にもついお知らせメールしてしまいました。
大好きな高峰秀子さんに反応して、読んでいたら、何と月見草の名前が出てきて、またまた嬉しくなりました。
山崎さんのおっしゃるように絶対成瀬巳喜男さんの方が高峰さんの魅力引き出していると思います。乱れるも良かったですね。
太宰とは水と油ってコメントしたの忘れてました。
でも本当に育った環境が真逆ですよね。高峰さんは泥の中に凛と咲いてる蓮の花を思わせます。
太宰治は斜陽館みてもわかるように、本当に恵まれたお坊ちゃんです(心に寂しさはあっても明日のパンの心配はないです)ぐれたくてもぐれることの出来ない環境ととぐれてもぐれてもまだぐれることの出来る恵まれた太宰だと思います。そう太宰治はきっと高峰さんを畏敬の思いで見ていたことでしょうね。
高峰さんは表面はぶっきらぼうでも懐の深い人、黄泉の国できっと太宰治の甘えを聞いてくれていることでしょうね。
月見草
2011年03月28日 15:10
山崎さん、そう太宰に厳しかったですね。
太宰は津軽のじょっぱりと反骨精神旺盛の愛すべき天才と思ってます。
砂漠で水を飲むように若かりし時太宰文学をむさぼり読みましたー
三島由紀夫が市谷で自決したとき九段の寮で朝刊を手にした時は驚きました。その三島が、坂口安吾と太宰治を木の葉が沈んで、石が浮くように世間の評価は間違ってるというようなことを何かで書いてるのを読んだことがあります。大人になったら、太宰は卒業しなくっちゃという風評被害のひとりかも・・・・
2,3年前、生誕100年ということで、おらほの地方新聞は毎日のように太宰特集を組んで、生い立ちからゆかりの人の追悼文やとにかく太宰一色でした。太宰の長女で、政治家夫人で画家の園子さんの油絵やイラストも添えて・・・・
皮肉なもので、太宰の生家津島家の名を高めているのは、太宰治の子孫です。園子さんの長男も今政治家を目指しています。
太宰にはやはり凄いオーラとパワーが亡くなった今でもありますね。
鑑定団の中島さんが高峰さんと骨董つながりで親交あるみたいなのですが、ワイドショーで言ってました、でこちゃんは12月28日という年末でワイドショーも無い時、そして、30,31と師走の大変な時でない、一番いい日を選んだかのようにひっそりと亡くなって、でこちゃんらしいと言ってました。亡くなりかたまで真逆です。
月見草
2011年03月28日 21:45
山崎さん、何か交換日記つけてるような気分です。
私は嬉しいですが、お忙しい山崎さんを煩わせて申し訳ないです。コメント今回で当分お休みしますのでご安心下さい。ひとこと、山崎さんは絶対三島由紀夫は苦手と思ってました。私にはわかります。私は仮面の告白だけはスーと読めましたが・・・・
太宰と三島が双生児・・・太宰の才能を認めていたのかもしれませんね。太宰が本音で三島の文学はたてまえなのかもとふっと思いました。虚飾に満ちてるように思われます。生意気なことばかり書いてしまいました。すみません。
園子さんの旦那様は元大蔵大臣の津島雄三さんですよ。
山崎さんの大好きなイ・ウンジュさんとシムウナさんがなぜ・・・あの監督のせい・・・面白かったです。
ほんとかも って思っちゃいました。
だって得がたい韓国の女優さんでしたよね。
あっ、今岩下志麻さんがBSNHK「ザ・スター」に出てイビョンホンの待ちうけとビョンホン靴下履いてると言ってましたー
津軽には大鰐も紹介してますね。タケさんに甘えていた太宰、母を求めての母子文学なのですか・・・なるほど
ほんといろいろありがとうございました。


月見草
2011年03月29日 08:32
山崎さんおはようございます。
津島雄二でした雄三ではありません。間違いました。
東大在学中司法試験合格、大蔵官僚を経て青森第一区から衆議院議員11回当選、前回息子さんに引継ぎましたが、民主躍進で落選しました。
青森県民はこんなところにも太宰の恩恵を受けてます。

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