座頭市 (1989)

[702]真剣を使わざるをえないほど勝新を追い込んだものはなにか
★★★★★☆

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勝新太郎の遺作ともいうべき作品…。

いまでもよく憶えてるが、
公開されるとわたしはイの一番に映画館に飛び込んだ。

撮影中、とんでもない事故が起きた。
監督もつとめた勝新が殺陣の撮影に真剣を使用し、
死者を出してしまったのだ。
事故を起こしたのは勝新ではなく、息子の奥村雄大だったが…。

当時わたしはワイドショーのコメンテーターをやっていた。
キャスターにコメントを求められてなんと答えたか。
「う~ん…、困りましたねえ…」だったかな?(笑)

翌90年に起こした「コカインパンツ神隠し事件」は憶えてる。
「勝さんは、映画で現実を侵食しようとしている!」(笑)

「困りましたねえ」とは、
勝さん、困ったことをしてくれましたねえ、ということではない。
そう思わせながら、じつは、
わたしの勝新をここまで追い込んでいる時代を、
「困った時代だ」と切り捨てたかったのだ。

ワイドショーでそんなこと正面切って言えるわけがない。
「う~ん、困りましたねえ」と
苦笑いしてみせるしかないじゃないか…!?(笑)

そんなこともあって、この映画を…、
われらがヒーロー勝新の胸の内をすぐに見届けたくて
走りこんだのさ(笑)。

物語は牢獄のシーンから始まる。

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市が盲目であることをいいことに罪人どもが市をからかう。
あんまの市はバカを装い堪える。
と、鶴太郎の「革命家」(笑)が近づいてきてそっと市に囁く。

 オレは幕府を批判して捕まったんだ。
 あんまさん、安心しなよ。
 オレがきっといい世の中にしてやるよ。

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放免された市は、
ある漁村の、旧知の漁師(三木のり平)を訪ねる。
じいちゃん漁師はよく来てくれたと、紬の着物を与え、
市の忘れていったカネを返す。

市が、その金はあんたにやったんだと言うと、
じいちゃんは…、
そうだったのか、じゃあ貰っておこう、貰った、
オレのカネだ、市つぁんに小遣いをやろう、
と言って市にくれてやる。

市はカネをもらう。
のり平じいちゃんから、人間の情と、限りない心の安息をもらう…。

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市は、その金を手に五右衛門一家の賭場へ行く。
と、そこで女渡世人・おはん(樋口可南子)に出会い、
一夜の、女の情を、「菩薩」の心をもらう…。

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五右衛門(奥村雄大)は、関八州(陣内孝則)と手を組み、
あたり一帯を仕切ろうとしていた。
いまふうに言えば、ヤクザと官僚の裏取引き。

おはんにはそれが渡世人の堕落、裏切りにみえる。
うわさに聞いたこの男…、市のほうがよほど…、と思うのである。

この3人、じつはあまり物語の本筋とは縁がない(笑)。
なんで出てきたの? このあとどこ消えちゃったの?
みたいな感じ…(笑)。

でも重要な役…、市のモチーフを支えてるんだよね。
鶴太郎の革命家・ツルさん(笑)が言う、
「安心しなよ、いい世の中にしてやるよ」と言った、
いい世の中…、市が望んでいる「みろくの里」…。

この映画の撮影がなんで、
広島県福山市にある「みろくの里」を撮影現場に選んだのか、
もうわかるよね。

あ、もうひとりいたよ。
村の子供たちを相手に私設「てら小屋」(?)をやっている、
おうめ(草野とよ実)…。

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市は、腹減って行き倒れそうになったところを(笑)、
このおうめと子供たちに助けられる。

で、ともに暮らすうちに、
市は、このおうめの中に「女の神」を、
「女としての鑑」を見て、母の形見である手鏡をあげる。

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おうめは生まれて初めて鏡で自分の顔を見て、小さく声をあげる。
「あ、おかあさん…!」と。
自分の顔が、いまは亡き母親に似てたからなんだけどね。

市を包む、先の3人の心は、
このシーンに集約できると言っていいかも。

一言でいえば、「母と子」の関係…。
母親に抱かれて、限りなく幸福だった幼児時代。
子に抱かれて、この上なく幸福だった母親時代。
そうした母と子の時代…、関係…。

市、おうめ、じいちゃん漁師、革命家ツルさん、
そして女渡世人のおはん…。
なんだかんだ言っても、このひとたちは、
そうした幸福な時代をからだが知ってる、憶えてる。

そして、その原記憶が他人と関係を結ぶときの、
あるいは生きていくうえでの礎になってる…?

一方にそうでない連中がいる、
それを経験しそこなった連中が…。

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役人の地位を利用して裏金をゴッソリ手にするにもかかわらず、
心の行き場がなくて血を求める関八州…。

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支配欲に支配されて血を求める五右衛門…。

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五右衛門同様の、赤兵衛(内田裕也)…。

本ストーリーは、この二人のいわば縄張り争い。
赤兵衛は市を抱き込み、五右衛門を倒そうと目論む。
五右衛門は、市を消そうとして、腕の立つ浪人(緒形拳)を雇う。

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浪人は、道中、たまたま市と知り合い、市に惚れるのだが、
しかしこの浪人とて心の安らぐ場所はどこにもない。
母と子のあの原体験がないのだ。

なので、最後は、市に刃を抜く。
まるで自分から死を望むかのように…。

本ストーリーはラスト、
五右衛門が先手を打って赤兵衛一家に殴り込み、

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赤兵衛を殺害…。
と、そこへ市が樽に隠れて現れ、

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五右衛門とその一家を根こそぎ倒すというもの。

と書くと、いかにも定番ストーリーという感じだが、そうではない。
いや、ストーリー自体はいかにも定番なのだが、
全編を通して流れる血の量、
殺される人間の数が半端じゃないのだ。

殺陣に今更ながら「真剣」を使うというのもヘンだし、

陣内孝則の関八州や、
内田裕也の赤兵衛の狂い方も奇妙。
狂わせなきゃいけない設定上の必然性はないし、
だいたい今風の言葉使いもヘンだよ(笑)。
奥村雄大のほうは文語調なのに…(笑)。

もっと奇妙に思うのは音楽。
マカロニウェスタン調のポップス? 
歌入りなだけど、それも日本語じゃなくて、なんと横文字…!
な、なんなんだあ、これは…!だよねえ。
わたしは好きなんだけど…(笑)。

観ればわかるのだが、
なにもかもどこかバラバラ…、不統一。
にもかかわらず、その狭間から、
映画を創っている勝新太郎の狂気と愛情が溢れでてくる…?

で、これを観たとき、わたしは思ったよ。
ああ、この不統一感…、壊れかたをオレは知ってる。
いまだよ、まさに「いま」の日本(1989年当時)だって…。

陣内孝則の関八州も、内田裕也の赤兵衛も、
そして心の行き場を見失ってる緒形拳の浪人も、
いまの日本人の姿だって…、他人との関係を失った…。

ラストシーンを見てもわかる。

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浪人を斬った市が山の向こうへと消えていく。
その山の向こうからは、盲目の「あんまさん」たちが歩いてくる。
何事もないかのように、
一本の棒をみんなでしっかり握り合って…。

この「あんまさん」たちを反転させた姿がいまのおれたちだろう、
日本人だろうって勝新は言ってるような気がしたんだよね。

いま改めて観てもそう思う…。

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しかし、いいねえ、すごいねえ、三木のり平と勝新のシーン。
相手のやることがお互い手に取るようにわかって、呼吸が抜群。
観てるだけでブルブルしちゃうよ。
こういう演技、もういまの日本の俳優にはできないよね…(笑)。

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おうめをやっている草野とよ実のような演技も!
「新人」ってあるからたぶん映画初出演なんだと思うけど、
素直でホントにキレイなんだよね。
つまんない俳優みたいに策を弄さないもんねえ。
大拍手…!

そしてこんな子を抜擢する監督・勝新にも。
ホントあたま下がるよね。

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ちなみにこれは、市が、
鏡を覗き込むおうめを廊下でこっそり覗っているシーン。

このシーン、大好きなんだよね。

勝新がこう言ったことあるんだよね。
「中村玉緒は勝新太郎なしでも存在しうるが、
勝新太郎は中村玉緒なしでは存在しえない」…。

妻の玉緒さんに贈った賛辞だって言われてるけど、
賛辞以前に、勝新は「真実」を言ってるんだと思うのよ(笑)。
女性はすごい、母親はすごいって言ってる…?

母親(女)はオレなしでも存在できるが、
オレ(子)は母親(女)なしでは存在できなかったって…(笑)。

このシーン、わたしはどうしても、
勝新のその言葉を思い出しちゃうんだよね…(笑)。

われらが勝新、どう考えても偉大なり…。


■116分 日本 時代劇/アクション
監督:勝新太郎
製作:勝新太郎 塚本潔 ジューン・アダムス
製作プロデューサー:塚本潔 真田正典
原作:子母沢寛
脚本:勝新太郎 中村努 市山達巳 中岡京平
撮影:長沼六男
美術:梅田千代夫
編集:谷口登司夫
音楽:渡辺敬之
照明:熊谷秀夫
録音:堀内戦治
助監督:南野梅雄
出演
勝新太郎 市
樋口可南子 おはん
陣内孝則 関八州
内田裕也 赤兵衛
奥村雄大 五右衛門
緒形拳 浪人
草野とよ実 おうめ
片岡鶴太郎 正義の男
安岡力也 用心棒
三木のり平
川谷拓三
蟹江敬三
ジョー山中

勝新太郎の製作、監督、脚本、主演による座頭市シリーズの26作目の作品。演出へのこだわりの為、真剣での殺陣を行ない死者を出す事故を起こしてしまったことでも知られる。
牢獄生活を終えた盲目の按摩・座頭市は、知り合いを頼ってとある漁村に辿り着く。近隣を取り仕切るのは、地域一体を監督し絶大な権力を有する八州取締役に近づき、地盤を確固たるものにせんとする極道・五右衛門一家。市は賭場へ出向き、彼らと揉め事を起こすが、女親分おはんの執り成しによってその場は治まり、その後、五右衛門が放った刺客達を返り討ちにする。五右衛門一家と対立する赤兵衛一家の親分・赤兵衛は市の腕を見込み、用心棒として雇う。対する五右衛門一家も凄腕の浪人を雇い入れるが、彼は市が旅の道中で知り合い、意気投合した人物だった。そして、村を巻き込んだ凄絶な総力戦が幕を開ける。

 

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この記事へのコメント

ドッカカカカーーーン
2014年02月28日 23:24
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ドッカカカカーーーン
2014年02月28日 23:25
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ドッカカカカーーーン
2014年02月28日 23:27
ドッカカカカーーーンドッカカカカーーーン。
女剣士女剣劇大好き
2014年02月28日 23:30
女剣士女剣劇大好きです。
座頭市のライバルはやはり女剣士とか女剣劇だと思います。
1970年代前半だったかな。主役の女性が悪人男数人を泥水の川で倒し赤色い血の水にした映画の雰囲気に似ています。座頭市の仲間ではありません。
管理人さんへ。女剣士と座頭市はどちらが強いかコメントください。
ドッカカ~ン
2015年09月05日 09:37
ドッカカーンしましょう。この作品。

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