四月の涙 (2009) ヨーロッパ

[749]なんだか久しぶりにトルストイに出会ったような気持ち
★★★★★☆

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最近はまた以前のように、
洋画のコーナーも覗くようになった。
韓国映画がねえ(笑)。

しかし、これ、ヘンな映画だったなあ(笑)。

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1918年のフィンランド内戦…、
ドイツよりの白衛軍と、ロシアよりの赤衛軍との戦い。

赤衛軍の女性兵士たちが戦闘の末に投降すると、
白衛軍の兵士たちはレイプを繰り返したあげく、
逃亡したといって殺戮する。

女性兵士リーダーのミーナは難を逃れたかにみえたが、
すぐに白衛軍の准士官アーロに捕まる。

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が、かれはほかの白衛兵士と違い、
投降した彼女は正当な裁判を受ける権利があると主張して、
彼女をボートで判事のいる裁判所へ送り届けようとする。

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途中、ミーナが逃げようとして、ボートが転覆。
二人は、小さな無人島に泳ぎつく。

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アーロが高熱を発したミーナを介護すると、
ミーナは次第にかれに心を開く。

アーロは彼女に惹かれる。
ミーナも…、といって言っていいかどうかまだ微妙だ。
逃がしてもらうためにアーロに近づこうとしているのかもしれない。
このあたりの描き方はけっこうスリリングだ。

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1週間後、島へ来た白軍の小船に乗せてもらい、
ようやく裁判所へ着く。

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判事は詩人で作家のエーミルである。
かれはアーロを歓待し、滔々と自説を繰り広げる。

この建物はじつは元精神病院だった。
院長はトルストイに影響を受け、
患者たちを開放し、ときに瞑想させた。
私も人間の精神に関心がある、と。

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アーロは人文主義者と世評の高い判事に公正な裁判を期待した。
が、様子が違う。
判事は送られてくる捕虜たちの銃殺に忙しかった。

アーロ、作家だから期待するというのはどうなのよ?
と、いちおう作家の私は思ったが(笑)。

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作家判事が質問してもミーナは名前すら喋らない。

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判事は監禁小屋を訪れ、暴力で名前を聞き出すのだが、
かれが知りたいのは、無人島でアーロとなにがあったか、
ということのようだ。
判事はそのことをアーロにもさりげなく問いただす。

作家的関心なのか、それともただいやらしい男なのか?
ミーナに関心があるのか、アーロに関心があるのか?
ゲシュタポ的雰囲気を醸しだしているだけで、
まだよくわからない(笑)。

島で二人が寝たのかどうか、正直わたしもわからない。
お互い特別な感情は持っていると思うのだが、
捕虜に乱暴を働いてはいけないという信念を持っているアーロは
彼女への欲望を自己処理していたし(笑)。

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一方、作家判事はヘンな趣味も持っている。
なにかと自分をひとりのカメラマンに撮らせるのだ。

これがそのカメラマンなのだが、
「幽霊が…」と言ってかれはアーロに1枚の写真を見せた。
判事によると、首を吊ってるのはこの元病院の院長で、
患者もこのカメラマンを除き、みな死んだという…。

おいおい、詩を愛し、文学を、音楽を愛する作家判事さんよ、
あんたが殺したんじゃないの?
と、いちおう作家の私はすぐに疑う(笑)。
アートと政治(軍人)が結びつくと碌なことにはならないからだ。

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アーロはミーナに、自分は隊に戻る、
君も喋れば釈放されるかもしれないと知恵を授けようとする。

彼女はアーロに、タンミスト村にエイノという子がいる、
無事かどうか確かめてほしいと1枚の写真を渡す。

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二人に特別な関心を寄せ、壁穴から覗き込んでいる作家判事。
かれは異様な覗き魔でもある。

人間の精神に関心があると言っていたが、
う~ん、かれが一番関心あるのは、
じつはこうした変態的自己なのかもしれない(笑)。

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アーロは村へ行き、エイノ少年に会う。

エイノは、この父親の息子の子のようだ。
息子は赤衛軍に身を投じ、戦死。
ミーナは、その夫を想い、幼いエイノを夫の父親に預け
赤衛軍兵士と戦いはじめたようだ。

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アーロが辞去すると、エイノが家を出てついてくる。
休んでいるとエイノ少年が「ワルシャワ労働歌」を歌いはじめた。
私にはいちばん身に染みるシーンだった。

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この映画で感動するのは、
じつは北欧フィンランドの過酷にみえる自然。
あまりにも過酷なせいで、人々はみな貧しいのだが、
皮肉なことに(?)、その自然があまりにも美しく見えるんだよね。

あまりにも自然が美しいから、
その過酷さにも耐えてみんなここで生きてるのかなあ
なんて思っちゃうほど。

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アーロは、エイノをほかの孤児少年らと一緒に
町の孤児院へ送る。
エイノが泣くと、いつか自分が迎えに行くと慰める。

で、隊には戻らず収容所へ戻る、
エイノ少年のためにもミーナを救出しなくてはいけないと。

結局、この小さな旅でアーロは、
内戦と自国にたいする目を大きく開かれた。
それまではたんに正義感の強い青年にすぎなかった?

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ミーナは作家判事に呼ばれる。
ミーナは、この男も、
レイプしたあの白衛軍の兵士たちと同じで、
女を陵辱したいのだろうと思っているのだが、違った(笑)。

かれが欲しいのは女ではない、男だ、アーロだ。
かれはアーロは必ず戻ってくるはずだと期待していた(笑)。

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訪れた美人妻を海岸でカメラに収める作家判事。
かれは何事もいちいちアートにしなければ気がすまない(笑)。

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アーロが戻ってくると作家判事は、
妻を交えて酒とピアノ(音楽)の饗宴を催す。
そしてさりげなく妻にアーロとのセックスをすすめ、
自分は聞き耳を立てる(笑)。

妻は先刻、エセ芸術家の夫の性癖を承知している。
アーロにも敬意を払ってきた判事の正体がすこし見えてくる。

ある晩、判事はそろそろいいかとアーロを踊りに誘い、
取引を求める。
君が一晩わたしと寝てくれたらミーナを解放する、と。

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アーロはミーナを救うために身を任せる。

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翌朝、アーロはミーナを連れて収容所を出る

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湖のそばまで来ると、アーロは逃げろと彼女に銃を渡す。
ミーナは一緒に逃げようと言う。
アーロは、はじめてミーナの愛を知るのだが、
そこへ追っ手の白衛軍がやってきた。

アーロはミーナを逃がす。

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隊長らしき男がミーナを殺そうと馬を走らせると、
背後から銃で射殺するのだが、直後…、

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かれも、所属していた隊長に虫ケラのように射殺される。

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作家判事も森の中で首を吊る、
精神病院(=収容所)のあの院長と同じように。

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数日後、町の孤児院へ、エイノの叔母が迎えに来る。

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叔母に身をやつしたミーナだ。
エイノは母の顔を知らないが、
叔母さんが「私の名はミーナよ」と言うと、
エイノは尋ねる、おかあさんと呼んでもいいか、と。

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ミーナはエイノを乗せ、ボートで沖へ出る。
アーロと過ごしたあの無人島へ行ってみるつもりなのか。

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映画は、エイノ少年のこの笑顔で終わる。

ミーナは、向かいに座った息子エイノに
戦死した夫、救出してくれたアーロ、明日の国フィンランドと、
いくつもの顔を重ねて見ているのだろう。

緊張感と、サスペンスに溢れたとてもいい映画である。
なにも説明しないところがグッドだし、
なによりも北欧の自然の美しさと厳しさに感動する。
ちょっとトルストイ的世界に出会ったような気持ち。

にもかかわらず「ヘンだなあ」という感慨も。
どこが?(笑)

うん、あの作家判事先生。
フィンランドのド田舎の収容所で
ひとり「地獄に堕ちた勇者」をやってるもんだからさ。
いや、やってもいいよ、いいんだけどさ(笑)。

でも、もう古い私らからすると、
アレはさんざん見てきたパターンだから、
なんで今頃また? って思っちゃうんだよねえ。

しかもまた監督がどこか真面目に一生懸命撮ってるから、
なんか観てて可笑しくなるというのか…、ごめん(笑)。

そのなんとなくヘンな感じを除くととてもいい映画なので(笑)、
時間があればぜひ観てください。

アーロとミーナをやってる
サムリ・ヴァウラモと、ピヒラ・ヴィータラもすごくいいよ。
エイノ少年をやってる子も! こころ洗われるから。

こそっと本音を言っておくと、
もうあの判事先生はいいよ、知識人どもの変態は、
てのはあるけどね。

くどい? ごめん(笑)。

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■114分 フィンランド/ドイツ/ギリシャ ドラマ
監督 アク・ロウヒミエス
出演
サムリ・ヴァウラモ
ピヒラ・ヴィータラ
エーロ・アホ

1918年のフィンランドの内戦を背景に、敵同士で出会ってしまった男女の運命と許されざる愛の物語を、かなしく残酷な史実に基づいて描く衝撃の恋愛ドラマ。
フィンランドの作家、レーナ・ランデルの小説をベースに、同国映画界を代表するヒットメーカー、アク・ロウヒミエス監督が映画化。犠牲心と正義感にあふれる主人公と、命の危険を顧みず強く意思を貫く女性兵士を、若手俳優のサムリ・ヴァウラモ、ピヒラ・ヴィータラが熱演。戦争という狂気が支配する極限状況下で出会いながら、人間性を見失わなかった男女の姿が激しい感動を呼ぶ。
1918年フィンランド内戦末期、右派の白衛軍は、左派の赤衛軍の残党たる女性兵を追い詰め、乱暴した揚げ句に逃亡兵として射殺する殺りくを繰り広げていた。地獄のような状況下で、女性兵のリーダーのミーナ(ピヒラ・ヴィータラ)は脱出途中に敵の准士官アーロ(サムリ・ヴァウラモ)に捕まってしまうが、アーロはほかの兵士と違い、彼女を公平な裁判にかけるために奔走する。

 
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