逢びき (1945) イギリス

[731]この映画が古典的な名画になったのは駅を舞台にしたからだ
★★★★★★

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「コレ、観ませんか」
と、例によってオギちゃん(オギワラ)が持参した映画。

「え…!」
と、ジャケット見て、一瞬、ひっく返りそうになった。
あたりが大過去に戻ったような気がして…(笑)。

しかしオギの意欲には頭が下がる。
洋画といえばハリウッドしか観なかったらしいのに、
最近はヨーロッパ映画多いよな。しかも年代を問わず…。
私を驚かそうとしてるのかしらん(笑)。

ともあれ、いいことだ。
人間はそうやって出会いで大きくなってくんだよ(笑)。

気分が外に向かっているときはハリウッドもいいが、
内側に…、人間の心のほうに向いてるときは
やっぱりヨーロッパ映画に限る。
ハリウッドには文学ないから…。

怒るなよ、ハリウッド。
ほんとのことじゃないか…(笑)。

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旧世代にはよく知られた、デヴィッド・リーンの名作。
製作されたのは1945年。
イギリスがヒットラー・ドイツと戦っていた時代…。

そんな最中に、
イギリスはよくこんな「不倫」ドラマを創らせたよねえ。
さすが日本とはものが違う?

怒るなよ、ニッポン、ほんとのことじゃないか…(笑)。

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物語は、駅を通過する列車の轟音とともに始まる。

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主人公で、語り手のローラ…、夫と二人の子供がいる。
毎週木曜日、彼女は
郊外のミルフォードという町へ買い物へ行く。
で、映画を観たり食事をしたりしている。

この日も駅構内の食堂でひとり、
お茶をしながら帰りの汽車を待っていた。

そこへ医師のアレックが入ってくる。
かれもまた、毎週木曜日、
この町の友人の病院へ手伝いに来てるのだが、
ローラは一目でかれに好印象を抱く。

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で、たまたま目に入ったゴミを取ってもらったのが縁で、
毎週木曜日、ローラはこの町でアレックとお茶をしたり
映画を観たりするようになる。

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街中でお茶をしたり映画を観たりしているぶんには
まだいいんだろうが、

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こうやって人目を避けて
郊外へドライブに行ったりするようになるとまずいよね。
もう立派な「逢びき」…(笑)。

といっても、
お互い、崖から身を投げる覚悟で
口づけを交わすのがやっと…(笑)。
じつはアレックにも妻がいるのだ。

まだ性にたいして
倫理的な一線がきちんと生きられている時代なので、
ささいな欲望、行動が大きなドラマになる。

なにもかもがグズグズと崩れてしまっている現代だと、
ドラマを作ること自体がほんと難しくなる…、
と、痛感しちゃうよね、オギちゃん(笑)。

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友人の車を借りてドライブしたある日、
ローラは、アレックと一緒に車を返しに行く。

と、アレックは、
今夜は家に帰らない、友人も今夜は帰宅が遅い、
と暗に彼女を誘うが、
ローラは部屋には入らないとひとり駅に向かい、汽車に乗る。

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が、発車直前に電車を飛び降り、
そのまま一目散にアレックのいる友人宅へ向かう。

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そしてアレックと口づけを交わした途端に、
この部屋の持ち主が帰ってくる足音が聞こえ、
ローラはあわてて裏口からひとり部屋を出る。

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友人は、ローラが残したマフラーを見て事を察する。
アレックスは弁解をせずローラの後を追う…。

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外は雨。
ローラは濡れながらどこへともなく走る。

劇は、ローラが夫にたいして、
胸のうちで自分に起きた出来事を語るというかたちを
とってるんだけど、このとき彼女はこう言う。

「走らずにはいられなかった。
恥ずかしさと屈辱感で胸がいっぱいだった」…。

物語的にはたぶん、この言葉に尽きる。
屈辱感というのは、
アレックの友人が誤解したことにたいする屈辱感。
今風に言うと、
これは肉欲とかじゃなくて真実の愛なんだ、
純愛なんだってことかな…?

ローラには、人間としての自尊心がある。
それがとても彼女を美しく見せるんだろうなあ。
ワタシ、反省…(笑)。

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アレックは彼女に追いつくが、
もうこれで自分たちの仲は終わりだと覚悟する。
かれの中にもローラと同じような自尊心があるから
わかるんだろうね。

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で、言う。
自分は家族を連れて南アフリカへ行くことにした。
そこで兄の仕事を手伝う、と…。

ローラは驚き、胸が張り裂けそうになるが、
次の木曜日にもう一度会い、最後の時を大切にしたいと思う。

そして次の木曜日、
ローラは二人で思い出の場所を回ったあと、
駅へ見送りに向かう。

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そしてかれの乗る汽車を、
いつもの構内食堂でお茶をしながら待っていると、

最後の時を大事に過ごしたいという彼女の思いは、
無残にもうち砕かれた。
ひとの女性の登場によって…。

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このお喋りおばさんの登場によって!
と言ったほうがいい…?(笑)

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そう。おばさんのお喋りのせいで、結局、
ローラはアレックを見送りにホームにも出れなかったんだよね。
で、ローラは思った。

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「お願い、おばさん、はやく死んで…!」(笑)

ほかにもいろいろと仕掛けが施してあって、
エンタメとしては極上の作品に仕上がっているんだけど、
舞台の主役はやっぱり「駅」なんだろうな。

いまでこそ駅は町の中心になった感があるけど、
もともとは町外れにつくられていた。
村や町の「周縁」に…。
他国へ…、異郷へと向かう村落の外れに。

この物語に即していえば、
このミルフォード駅は、二人にとって
自分の生活からもっとも遠いところ…、外れ。

そこを好む…、そこへ足が向くということは、
「異なるもの」に出会いたいという気持ちが、
二人の中にあったということだと思う。
その波長心が合って、ローラとアレックは恋に落ちた…?

どうして異なるものに出会いたかったのか?
答えはたぶんひとつ。
ローラの生活が平穏で、あまりにも幸せすぎたから…(笑)。

夫もいい夫で、家族的にはなにひとつ問題がなかった。
でもなにも問題がない、平穏だ、幸福だというのは、
限りなく「死」に近いってことでもある…(笑)。

と、人間はしばしば事を起こすことで…、
問題を起こすことで生き返ろうとせざるをえない?(笑)
はんたいに事や問題が積み重なると、平穏を求めるしね。

いや、ほんと厄介な存在だよな、人間は。
というのがいちばんの感想だよね。

あ、この映画、
ラフマニノフのピアノ協奏曲をテーマ曲に使ってる。
それも私のお気に入りの理由…(笑)。

名画らしい名画を観たいと思ったらぜひどうぞ。
私も30数年ぶりに観ました…!


■86分 イギリス ロマンス/ドラマ

監督:デヴィッド・リーン
製作:ノエル・カワード
アンソニー・ハヴロック=アラン
ロナルド・ニーム
原作:ノエル・カワード
脚本:ノエル・カワード
アンソニー・ハヴロック=アラン
デヴィッド・リーン
ロナルド・ニーム
撮影:ロバート・クラスカー
音楽指揮:ミュア・マシースン
出演
セリア・ジョンソン
トレヴァー・ハワード
スタンリー・ホロウェイ
ジョイス・ケアリー
アルフィー・バス

語り尽くされた感のあるメロドラマの名作だが、そのモノローグの切実さ気高さに今観ても我が意を得たり、というロマンチストは多いのではないか。製作・脚本のカワードの原作戯曲では順次的に語られる物語が、甘美さを控えた理知的な回想形式で描かれ、その抑制が、主題である中年の淡い不倫の恋にぴったりより添い、地味な人妻のヒロインを燦然と輝かせている。
ローラは会社員の妻で、息子が一人。毎週木曜、近郊の小都市への買い出しついでの昼食や映画鑑賞を楽しみにしている平凡な女だ。ある夕方、帰りの汽車を待つホームで目に入った砂を医師アレックが取り除いてくれた。何となく感じの良い人物と思って別れたが、その後も待ち合いのバーで顔を会わすうち、次第に彼に魅かれていく。夫は愚直だが善良な男で、罪悪感に駆られ顔色を悪くする妻を優しく慰める。
それが余計、彼女には辛かった。アレックにも妻子があったが、彼女への気持ちは本物だ。一時は全てを洗いざらいぶちまけて、夫に許しを乞うことも考えたローラだが、アレックの友人のアパートでの密会を友人に誤解されたのを契機に、二人して敢然とその思いを断ち切り、アレックは海外への赴任を打ち明け、想い出のためにも強く生きて--と彼女を諭して去っていった。映画館でデートを重ねたり、冬の公園で遊ぶなどディテールが実に豊かで、50年代以降大作ロマン専門になった感のリーンの繊細な本領を「旅情」同様、十二分に窺わせ、ことに列車の窓に、二人の幸福な絵姿を夢想する場面は、それまでの抑えた描写が効を奏し、実に甘くはかなく忘れ難い。

 

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