冬の小鳥 (2009) 韓国

[781]孤児院で過ごす子供の心を内側から捉えた韓国映画の秀作
★★★★★☆

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幼くして孤児院に預けられた少女が、
養女として海外(フランス)に引き取られていくまでを
丹念に描いた秀作…。

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主人公のジニ、9歳…、
演じてるのは「アジョン」で大活躍したキム・セロンちゃん。

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彼女は父に新しい服を買ってもらい、一緒に食事をする。
父の好きな彼女は大喜びだったが…、

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その宴は、父との別れを意味していた。
翌日、父に、遠い山村の孤児院に預けられてしまうのだ。

すぐに父が迎えに来ると思っていたが、
彼は二度と彼女の前に現われることはなく、
彼女は最後、海外へ貰われていく…。

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ジニの父…、ソル・ギョング。
孤児院で娘の最後の姿を見送るシーン…。

冒頭から娘とずっと一緒にいるのだが、
顔が映されるのはこの短いワンシーンだけ。
うまい演出だが、
ソル・ギョング・ファンの私としてはもっと観たかった…?(笑)

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父が彼女を置いて孤児院を出たときから、
ジニの顔から笑顔が消える。

ここが孤児院であることはわかるのだが、
父がなぜ自分をここに預けたのか、
そして父はどこへ行ってしまったのか、なにもわからないからだ。

いや、彼女だけではない。
じつは観てるほうにもわからない。

どんな事情があって彼女が預けられたのか、
彼女がどんな家に住んでいたのか、
最後までなにもわからない。

そう言ってよければ
なにもわからないまま孤児院に預けられ、
なにもわからないまま孤児院で過ごし、
そしてなにもわからないまま誰かにもらわれていく…、
そういう少女のお話なのである。

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観ているほうも、9歳の少女・ジニにわかることしかわからない。
そういうふうに撮られている映画なのである…。

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彼女の「わからない」というこの事態は、
自分を囲んでいる周囲(世界)を…、自分が生きている時間を
彼女が物語化できないことを意味している。

すこしいいかえると、
なにもわからないまま孤児院に預けられた瞬間に、
彼女の中の時間が止まったのである。
時間が…、中断された…。

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途中、養子縁組が決まり、3人の子がもらわれていく。

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ひとりは足の不自由な年長の子である。
彼女は、園に出入りする男の子が好きだったが、
フラれて自殺未遂騒ぎを起こす…。

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ジニのことを一番思ってくれた女の子もアメリカ人に
もらわれていく。

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一緒に園で過ごした子供たちは、
そのたびに別れの歌をうたって送り出すのだが、
送るほうも送られるほうもみごとになんの感慨もない。
感動がない…。

心が生きていないからである。
時間が止まっているからである。

その傾向がとりわけジミは強いのだが、
そのためこうした出来事も、自分とは
なんの関係もない外側で流れていく出来事であるかのように、
写し取られていくだけである。

物語化されないのだ。
自己が世界から疎隔化されているため…。

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最後、ジミは車に乗せられて園を出る。
フランス人の家庭にもらわれることが決まり、
フランスに向かうのだが、

これも後でわかるだけで、
すでに言ったように、なんの前触れもなく、
なにもわからないいままに園を出て行く感じである。

もちろん彼女に笑顔は戻らない…。

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観ていて、園の鉄の扉が胸に刺さる。
あの扉の向こうの子供たちは、自分が誰かにもらわれていくのを
ただ待っているだけだからである。
ほかにはなにもない。なにもありゃしない…!

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フランスの空港に降り立ったジミ…。
もらうひとたちが韓国に迎えにこなかったので、
ひとりで行ったのである…!

付添いがいるはずなのだが、影もない。

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ジミは時々改札口のほうを見やり、ひとを探す。
自分の新しい親を捜しているのだが、
この時、ようやく彼女の中で少しなにかが動きはじめたことがわかり、
観てるだけで涙が出る…。

観終わったあとに調べたら、
映画は監督ウニー・ルコントが実体験をもとに創ったとあり、
ああ…、と思ったよ。

引用にあるように、
監督も、カトリック系児童養護施設で過ごし、
フランスの家庭に養女として引き取られたというのだ。

繰り返すが、
この映画の特徴は、少女ジミがわかることしか
観ているほうもわからないように撮られていることだ。

彼女は世界から疎隔された状態に置かれ、
出来事や自分を物語化できない。
その彼女に沿って撮られているので、
物語はすべて未成のままに進行し、終えてしまうことだ。

観る側は、ジミの
その心的体験を反復体験させられてしまうことになるのだが、
監督の実体験をもとにしていると聞いて、

もしかしたらこの監督は、
いまだに幼女のころの自分の体験をどう物語化すればいいのか
よくわかっていないのかもしれない…、
という気もしてきた。

かの紫式部も言ったように(笑)、

「うそのお話」のほうが自分の中の真実を伝えやすいので
ひとは自分の体験をフィクションにすることで…、
物語化することで伝えようとするはずなんだけど、
この監督がその手法を取ろうとしているようには
思えないからなんだけどね…。

いいかえると、幼年期の自分の体験を、
外側からカメラで眺めるようにはまだ眺められない…?

孤児社会韓国の孤児の様子を
こうやって正面から描いてる映画あったかなあ。
私はもうそれだけで拍手したい…。

ソル・ギョングが小さい役で出演してる理由もわかった。
イ・チャンドンが製作してたんだよね(笑)。

うん、こういう映画をちゃんと
若手に撮らせようとするイ・チャンドンはさすが。
イ・チャンドンにも改めて乾杯…!

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忘れるとこだった。
オラがムン・ソングンも医者の役で出てるよ。

いいなあ、相変わらず。
ここだけちょっとオラの心も暖かくなったよ…(喜)。

●lee_milkyさん
こんにちは。
そうですか、キム・セロンちゃん、ル・コント監督に似てるんですか。
キム・セロンちゃんの院に入れられる前の笑顔と、
院に入れられてから笑顔を失った顔がひじょうに対照的ですよね。
凍てついた表情を観てるだけで胸が痛かったです…。
「LBH映画を語る会」の件、了解しました。
時間ができたら入れ替えておきます…。


■92分 韓国/フランス ドラマ
監督:ウニー・ルコント
製作:イ・チャンドン
ロラン・ラヴォレ
イ・ジュンドン
出演:
キム・セロン ジニ
パク・ドヨン スッキ
コ・アソン イェシン
パク・ミョンシン 寮母
ソル・ギョング ジニの父
ムン・ソングン 医者

これが監督デビューとなるウニー・ルコントが、その脚本に惚れ込んだ「オアシス」「シークレット・サンシャイン」のイ・チャンドン監督のプロデュースを得て撮り上げた韓国・フランス合作映画。実際に韓国のカトリック系児童養護施設からフランスの家庭に養女として引き取られた監督自らの体験をベースに、過酷な運命を受入れ悲しみを乗り越えていく一人の少女の心の軌跡を繊細に描き出す。
1975年、韓国。9歳のジニは、大好きな父に連れられ、ソウル郊外へとやって来る。浮かれ気分も束の間、何も分からないまま、ある施設の門をくぐる。やがて父だけが黙って施設を後にする。そこは、孤児が集まるカトリックの児童養護施設だったのだ。父が必ず迎えに来てくれると信じるジニは、自分は孤児ではないと周囲に馴染むことを頑なに拒み、反発を繰り返す。そんな反抗的なジニを、先輩のスッキが気に掛け、何かと面倒を見る。そして、少しずつスッキに心を開き始めるジニだったが…。

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この記事へのコメント

lee_milky
2012年04月27日 02:21
ご無沙汰しております。
ミルキーです。
ル・コント監督、ジニ役の少女を方々捜し歩いたそうですが、あきらめかけた頃にようやく見つけたのが、ほとんど素人だったキム・セロンちゃんだったそうです。
それを知って、ル・コント監督のポートレートを見たら、セロンちゃんに似てるんですよ。
それから、再度映画を見たものだから、ワンシーンワンシーンが痛々しくて、今でも鮮明に心に焼き付いています。

ところで、LBH映画を語る会の方ですが、このほど故あって名称もサイトも変えました。
新しいサイトにも、リンクさせて頂きましたので、よろしくお願いいたします。
http://jkfilm.blog.fc2.com/

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