ここよりどこかへ (2008) 韓国

[824]モラトリアム期の男女の空ろな目と心を描いた秀作
★★★★★☆

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観ているときは
たいして面白がって観てるわけでもなく、
ただなんとな~く観てるかんじなんだけど、

観終わったあとになって、
いやあ面白かったなあ、いい映画だったなあ、
なんて思うような映画に出会うことがある。

それも、どこがどうというわけじゃなく、
ただなんとな~く面白かった、
ただなんとな~くいい映画だった、と思うような…(笑)。

めったに出会えるわけじゃないけど、
これもそのじつに希少なる1本だと言っていいかも…。

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右、スヨン…、大学を出たあと就職もせずプラプラしている。
いわゆるプータロウである。26歳。

この娘が主役なのか?
うん、そうだよ、はやくも観る気なくなった?

イギリスに音楽留学したい、金出して、と親にすがる。
なに寝ぼけてるの、就職するか結婚するかしなさい、
と親はまったく相手にしない。
ちなみにピアノを弾くが下手くそ…(笑)。

で、パッグ片手になんとなく家出し、
友人のトンホのアパートに居候をはじめる。

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左がそのトンホ。

え、顔が見えない?
観たいの?
観てもスヨンと同じでどうってことないと思うけど…。(笑)

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じゃ正面から…、ね、どうってことないだろ?
あ、クリックすると拡大になって顔わかるよ(笑)。

しかし先に言っておくと、
このスヨンとトンホの、
救いがたいほど「どうってことない」感じがこの映画の核心で、
それがすごくいいわけなのだ、観終わると…。

ちなみにこの絵(写真)もどうってことないんだけど、
そのどうってことない感じがすごくよくない?
ボクはよいと思う。好き…。(笑)

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トンホは除隊したばかり。

やはりギターをやっていて、仲間とバンドを組んでいる。
が、やる気があるのかないのか、練習には身を入れない。
スヨンと同じくただボーツという感じである。
なのでやがて仲間から除名される…(笑)。

スヨンにたいする想いも同じだ。
好きなのか本気なのかようわからん。
まあ、好きなんだとは思うが、迫るわけでもない。
こんな感じでただボーッとしてる。

こらこら、女の子の前で…、パンツはよ仕舞わんかい!

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スヨンは、子供相手にピアノ教師をはじめる。
が、ごらんのように、
留学費を本気で稼ぎたい気持ちがあるのかどうか、
さっぱりわからん。
ただいつもボーッとしてる(笑)。

ま、はやく言えば、
映画はこの顔がず~~っと続くのである。
ご丁寧にも、最後まで…。

タイトルは「ここよりどこかへ」である。
この「ここ」というのは、
韓国という意味と、現実社会という意味のようである。

いまここにいるけど、ここではないどこかへ行きたい、
とは思っている。
いまここではないどこかが、どこなのかよくはわからない。

イギリスのようでもあるし、
現実から遠く離れた音楽の世界のようでもある?
でも確信はない。ひたすらない…(笑)。

ないので、つい、こうやっていつどこでもボーッとしてしまう。
ま、そんな感じなのかな?

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「ここよりどこかへ」というのは、じつはこの男が歌う歌なのである。
海外留学から帰国したというミュージシャンのヒョン。

スヨンは歌が気に入ったのか、
なんとなくヒョンにお近づきになりたいらしく、
なんとなくアパートまで押しかける。

音楽を教わりたいのか、
お近づきになって留学させてもらいたいのか
ようわからん(笑)。

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が、ようわからんのはヒョンも同じである。
スヨンの音楽が気に入ったのか、
二人でほんとにCDを出したいのか、
スヨンとただ寝たいだけなのか、さっぱりわからん。

わかるのはただ、
このヒョンには同棲している女がいること。
彼女はスチュワーデスという超現実派の女だということ。

スヨンとしようかなあ、どうしようかなあ、
と、なんとなくやってると、
必ずその彼女に現場を押さえられて事が未遂に終わること(笑)。

「ここよりどこかへ」なんて歌ってるけど、
スヨンやトンホ同様、
そのどこかかがいったいどこなのかさっぱりわからず、
ただボーッとしてること。

「ボーッ」の元祖で、ただ漫然と生きながらえているみたい、
ということくらいかな…?

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と、まあ、いろいろとそんなことがあるんだけど…、
どんなことよ?(笑)

結局、ヒョンはどうもろくでもない男だとわかり、
スヨンはトンホのアパートに帰る。

で、賞金の出るバンド競演大会が開かれることがわかり、
バント仲間から干されたトンホと組んで出場することにする、
留学費を稼ごうと思って…。

出来た歌がひどい。
な~んにもやる気がありません、ただボーッとしてます、
みたいな感じの幼稚な歌…(笑)。

写真は二人でその歌の稽古をしてるとこなんだけど、
ほんとひでえ歌だな、なんだよ、これ…、
と聞いてるうちに、

お…、お…、おっ、なかなかいいじゃん!
いい感じじゃん!名曲じゃん!
なんて思っちゃうから不思議だよねえ…。

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ところがその本番の夜、
スヨンはステージに上がっても歌わない。
歌えない。

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なにかが違う…、ここではない…、ここではない…、
という気持ちに襲われるのである。
彼女はそのままステージを降り、トイレではげしく吐く。

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これはその帰りのタクシーの中。
彼女は、運転手に行き先を聞かれると、
ただ「出て、車を走らせて」といったきりで、
ひとりとめどなく泣きはじめる。

肝心なことについては寡黙な映画なので、
彼女の心中を言葉にするのはなかなか難しいんだけど、
彼女が泣きたいのはたぶん、
自分がモラトリアムに捕らわれているからだと思う…?

言い換えると、
まだ自分を定かには獲得できていない、
自分を取り囲んでいる現実を自分の現実として、
自分の人生を自分の人生として獲得できていない…。

そのことに襲われる苦しみと悲しみ…?

何事にたいしても
ただ「ボーッ」としてしまうのもそのせいだと思う。

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このあと、彼女は友だちの店で働いて、留学費を貯める。

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そしてひとり韓国を発つ。

見送りに来たトンホが、
「どこに行っても同じことだよ」と言うと、
「違うの」と、はじめて確信に満ちた言葉を発する。

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これがラスト映像。

スヨンが改札口に向かい、
トンホと一緒に右手のほうに消える。
が、カメラは彼女のあとを追わないで、このまま終わる。

つうことは、スヨンは、
「ここ」から…、観てる私の目の前から消えた。
「ここ」ではない「どこか」へとたしかに旅立っていった、
ということを表してるんだよね。

トンホが言うように、まあ、どこ行ったって
たいして変わり映えしないのが現実だとは思うけど、

スヨンにとっては、
自分の意思で旅立つということが大事だったんだよね、
ここではないどこかへ…。
そうすることで自分を獲得することが…。

ね、いい映画だなあって気がしてきたろ…?

しかし、珍しく反韓国的映画だよなあ。
韓国映画っていうと活力に満ちた人間ばっかり出てくるって
感じなんだけど、この映画は反対。

活力の「カ」の字もない登場人物たちなんだもん。
ひたすら「ボーッ」としてる人間たちが主役なんだもん。
邦画かと思っちゃったよ…(笑)。


■106分 韓国 青春/ドラマ
監督:イ・スンヨン
脚本:イ・スンヨン チョン・ヘイン
出演
チャ・スヨン
ユ・ハジュン
パン・ジュンソク
ペク・ポンギ

才能も,熱情も,確信もなく,夢の世界から現実の世界へ進入した若者たちの話。
大学卒業後,ずっと白手(プータロウ)の26歳スヨンの夢は,英国へ音楽の勉強をしに行くこと。留学させてくれと両親に色々と駄々をこねるが,戻ってくるのは,嘲弄と蔑視だけだ。
一人で疲れたスヨンは,自分の力で留学費用を用意しようと決心して,これ見よがしに家出を敢行する。訳もなく復学生の友人トンホの自炊の部屋に踏み込んで寄生し始めたスヨンは,自分に向けられたトンホの切ない感情を無視したまま,海外留学派ミュージシャンのヒョンとつきあう。
浮気者のヒョンは,音楽レッスンを言い訳にしてスヨンを何とか一度落とそうとするが,毎度同居する恋人に見つけられてしまう。
スヨンは,紆余曲折の末に,留学費用を稼ごうと大きな賞金がかかったバンド競演大会にトンホとアヌビアスナナというチームを作って出場するが,ヒョンが現れ,自分が審査委員だと言って再び露骨にスヨンに寄りつこうとする。

 

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